43 / 56
エンディング後
情報屋、対峙する
しおりを挟むイリアを昏睡させた謎の香水。
俺はこいつの正体を探るべく、城から少し離れた物置のようなボロ屋に一人籠っていた。
匂いを嗅いでみる、が不思議な香りがするだけで特に体調に変化はない。
「なぜイリアはこれで……? 」
一滴だけ指に垂らして舐めてみたが、特に毒物と言うわけではなさそうだ。
「ふむ……魔法で解析してみるか」
俺はそう思い、その液体の下に魔方陣を描く。そして強く念じると、魔方陣から目映い光が溢れだした。
「これは……眠り姫の花じゃないか」
眠り姫の花、とは微弱な魔力を纏った植物で、その匂いを嗅ぐと眠りを誘う。
しかしその効果は大したものではなく、精々5分程度しか持たない。
なるほど、これならば魔法の扱いに長けた俺が何の影響もないのが分かる。
しかし、それにしてもあの花にそこまでの効果を引き起こせるだろうか……?
「一体どういうことなんだ……?」
「あら、精が出ますね」
女の声、イリアのものではない。
俺は反射的にそちらを向くと、そこにいたのはーー。
「エミリア……」
「今晩は、ロキ。良い夜ね」
つかみ所のない笑顔を浮かべてエミリアが言う。
俺は直ぐに魔法を彼女に向かって撃ったのだが、彼女は難なくそれをかわした。
「あら怖い。そんなに怒らないでよ、私はお話ししに来たの」
「罪人がノコノコ来るなんて脳が溶けちまったのか? 今すぐ牢屋に戻してやるよ」
「もう、ちょっと落ち着いてよ」
エミリアがぱちんと指をならす。すると、重たい鎖が巻き付いているかのように身動きが取れなくなってしまった。
「な、何だこれ!? 」
「ふふ、やっと二人きりでお話出来るね」
彼女の魔法であることは分かった。しかしこの俺が破れないなんて、一体どういうことだ?
「どうしてって顔してるね。簡単よ、私が主人公だからに決まってるじゃない」
「何を言ってる!? 」
「あら貴方の奥様もそうなんじゃない? 前世の記憶を持ち、ここがゲームの世界だと理解している人間」
「なぜそれを……」
確かに出会った頃イリアは言っていた。前世の自分はここの世界の人間ではなく、ここはおとめげーむということを。
しかしなぜエミリアがそれを知っている?
「私もそうだからよ、前世での名前は五木 笑莉。もちろんここがゲームと言うことも知っている」
そしてエミリアはふふっと楽しそうな笑顔を浮かべる。
「何が言いたい」
エミリアが何を望むのか分からない。
「前世の記憶を取り戻したときは嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。前世では冴えない私が乙女ゲームの主人公! 誰からも愛されて、皆の注目を集める人気者」
すると打って変わってエミリアは絶叫する。
「これでやっとあの人と結ばれる、あの人とのエンディングを迎えることが出来る、そう思ったの」
「あの人……? 」
エドワードのことだろうか?
そこまでしてこの魔女のような女が人を愛することなんてあるのだろうかと俺はふと思った。
0
あなたにおすすめの小説
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる