Are you NUTS?

島村春穂

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家出

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ひどく寝汗を掻いていた。


新幹線のレールの音を聞いて、目覚めたくないと思った。


窓から見えた工場の吐く煙を眺めて、辿り着いた街があまりにも巨大なことに、今更ながら気がついた。そして、もう後戻りができないかもってことも。


ほんの数時間前まで、あたたかいあのベッドに、身を庇うようにして丸まっていたのが、もう遠い記憶となっていた。


窓際に、ビルがさし迫ってきた。


コピー機の前で屈んでいる、ひどく痩せた女の姿がはっきりと見えた。





降りたホームの風っていうのが生ぬるかった。


足を止めるひとは誰もいない。流れていくほうに、彼も歩いた。


群衆の早さに、競争社会ってものを初めて知った気がした。


右も左もまるでわからなかった。いま居る彼の場所さえも。


一度立ち止まってしまったなら、息ができなくなりそうな気がした。


少し世間知らず過ぎたかな。誰にも追いつけそうになかった。


しばらくして、その理由というのが、きっと自分がどこにも行くあてがないからなんだと、彼はようやく気がついた。




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