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凋落
三/六
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蒼甫は一先ず、ベッドのうえ、胡坐を掻いた。カーテンで仕切られた密室には荒川看護師の残り香がある。仄かにこれを香りながら、めくるめく余韻に浸りつつ、依然として屹立したままの慾棒を手で慰めているうち、ティッシュがないことに今更ながら気づく。
暫く宙空を虚ろに漂う蒼甫の双眸からは、後始末に面倒なのが窺い知れた。寸止めには慣れている質である。ここは潔く射精することを諦め、検診衣を手早く整えると、スリッパを履き、ややあ、とカーテンを開けた。
待ち構えていたように荒川看護師が気づく。「具合は大丈夫ですか?」と、採血しながら尋ねた。
「ええ。もう大丈夫です」
と、他人行儀に行こうとする蒼甫を引き止め、「バインダー返しますから、お待ちください」と、荒川看護師が再び引き止める。「はい」と返事こそしたものの、採血はまだまだ終わりそうもなく、罰が悪そうに立ち尽くす蒼甫を見兼ね、「そこに座っててください」と荒川看護師が気遣い、目配せしたそこというのは彼女のすぐ後ろの丸椅子のことで、明らかな特別扱いであった。
ただでさえ目立つ蒼甫だから、検診衣を着た地域住民らから一斉に虚ろな視線が集まるのは言うまでもなかった。
この特別扱いはさらに続き、採血が終わると、荒川看護師は血液検査で順番待ちをしている次の名前を呼びあげる前に、蒼甫のバインダーを一瞥してから室内をざっと見渡すと、「腹部エコー検査が空いてますね」と告げ、わざわざ蒼甫を連れ立ってその場所まで案内し、バインダー入れにも荒川看護師が屈託なくやってくれた。これだから、地域住民らの鈍色な視線は益益きつくなる。
蒼甫はさすがに気まずくもなり、空いた長椅子にちょこんと腰掛けるなり、身をちぢめた。
腹部エコー検査というのはオプションになっていて、希望するひとだけが別途料金を支払って受けられる検査である。だから、順番待ちをするほどでもなく、個室から検診衣を着た初老男性が一人出てくると、後に少し遅れて出てきた女性臨床検査技師から、「藤森蒼甫さん」とすぐに名前を読み上げられた。
暫く宙空を虚ろに漂う蒼甫の双眸からは、後始末に面倒なのが窺い知れた。寸止めには慣れている質である。ここは潔く射精することを諦め、検診衣を手早く整えると、スリッパを履き、ややあ、とカーテンを開けた。
待ち構えていたように荒川看護師が気づく。「具合は大丈夫ですか?」と、採血しながら尋ねた。
「ええ。もう大丈夫です」
と、他人行儀に行こうとする蒼甫を引き止め、「バインダー返しますから、お待ちください」と、荒川看護師が再び引き止める。「はい」と返事こそしたものの、採血はまだまだ終わりそうもなく、罰が悪そうに立ち尽くす蒼甫を見兼ね、「そこに座っててください」と荒川看護師が気遣い、目配せしたそこというのは彼女のすぐ後ろの丸椅子のことで、明らかな特別扱いであった。
ただでさえ目立つ蒼甫だから、検診衣を着た地域住民らから一斉に虚ろな視線が集まるのは言うまでもなかった。
この特別扱いはさらに続き、採血が終わると、荒川看護師は血液検査で順番待ちをしている次の名前を呼びあげる前に、蒼甫のバインダーを一瞥してから室内をざっと見渡すと、「腹部エコー検査が空いてますね」と告げ、わざわざ蒼甫を連れ立ってその場所まで案内し、バインダー入れにも荒川看護師が屈託なくやってくれた。これだから、地域住民らの鈍色な視線は益益きつくなる。
蒼甫はさすがに気まずくもなり、空いた長椅子にちょこんと腰掛けるなり、身をちぢめた。
腹部エコー検査というのはオプションになっていて、希望するひとだけが別途料金を支払って受けられる検査である。だから、順番待ちをするほどでもなく、個室から検診衣を着た初老男性が一人出てくると、後に少し遅れて出てきた女性臨床検査技師から、「藤森蒼甫さん」とすぐに名前を読み上げられた。
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