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いびつなラヴ
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映画のロケで使われた棚田があるここは、市町村でいえば、市でも町でもなく、村にあたる。のどかな風景といえば、それは聞こえもいいが、スーパーはもっぱら、個人商店だけで、それも車で片道二十分もかけなければならないほど、過疎な田舎であった。回覧板をまわすのもひと仕事で、ここ村越宅から次の隣人へ届けるのでさえ、車を使わなければならなかった。
昔ながらの屋敷にいまは、貴子と、一郎の連れ子である匠の二人だけで住んでいる。裏庭には鬱蒼と雑木林が広がっていて、夏場には涼しいが、真っ昼間でも屋敷のなかはどこかほの暗い。
それこそ昔ながらの屋敷なのだから、キッチンと呼ぶよりは台所と呼んだほうがしっくりくる。しかも風鈴が吊るしてあったり、年代物の柱時計があったり、団扇があったり、それに、流しの緑色のタイルが所々剥がれていたり、いつのものが分からない火の用心のシールが黄ばんで貼られてあったりする。この屋敷では、昭和五十年代で時が止まっているようであった。もちろん、これらはみな、貴子の趣味でこうしているわけではない。貴子がここにくる以前からあったものだ。
ミーンミンミンミーン! ジジジジジジジー。
きょうも蝉がうるさいくらい鳴いている。匠の夏休みが終わってから一週間が過ぎていた。とはいえ、匠の長い夏休みは、まだ続いているのだが……。
「またなの……」
貴子は、だめよ、と釘を刺すような目つきで、背後の匠を睨んだ。
だが、腰を掴んでいた手が臆せず這いあがって胸までくると、匠をきつく睨みつけていた目がぎゅっと閉じた。
匠はここ数日毎日のように求めてきた。しかも飽きるどころか、ますます性質が悪くなってきたように思う。ついさっき、ここで一緒にお昼を食べたときには、目すら合わせてくれなかったくせに、ほんとうに同一人物かと疑いたくなるくらい、ベタベタ甘えてくる。
貴子はさっきから、泡の付いた手のまま、匠の腿を恐恐と掴んでいる。蛇口の水は、でっぱなしであった。
「石原さん……」
「ねえ……匠さん。いま洗い物してるから……」
そういうなり、貴子の脇から差しいれられた腕が、泡が付いたままの手を握ってきて、水で洗い流し始めた。お互いの指と指のすき間を合わせるようにして重ね、愛撫めいて丁寧にだ。
蛇口をひねった手は、そのまま貴子の前掛けエプロンで拭き始めた。
「やだ……」
貴子の躰が、くの字に曲がった。匠の手が股ぐらに触れたからだった。
「だめ。こんな関係はだめなの……」
艶っぽいいい声だ。貴子の引き寄せた眉根から、呵責に苛まれる様が滲みでていた。
脇下から絡まる腕が、再び這いあがってきた。
おばさん然とした白いノースリーブのフリルは、肌にピタリと張り付くほどタイトで、胸のふくらみそのままに盛り上がっている。手触りもとてもよく、匠の手の平にもよく張り付いた。そのノースリーブの下で、ブラジャーの刺繍がゴソゴソこすれている。
「ね、ねえ……匠さん……」
腕のなかで、貴子が身をよじった。
貴子の胸はどんと、おおきくて匠の手の平からこぼれるほどであった。もはや死語となったボインという呼び名がふさわしい。しかも、ほどよい弾力を残しながら、波打つように柔らかい。あつめるように寄せられた双乳から、深い谷間がくっきりとできた。そのまま持ちあげられながら揉んだり、くすぐられたり、双乳を仲たがいさせて回し揉んだりされている。
「ちょ……やめなさいっ」
やめて、でも、やめてください、でもなく、やめなさい、といって拒んだのは、匠が初めてのことである。貴子は、お腹から熱いものが下りてくるのを感じた。
「うるさい」
匠の視線は、深い谷間に一点にあつめられている。
「……いけないってえ……」
貴子は、諦めと理性の狭間で遠い目をしていた。ノースリーブの裾を掴まれると、ああ……と、言い尽くせないため息をついたのち、儚げにその目を細めた。
ノースリーブの裾がぐいとめくられ、ピンク色のブラジャーが露わになった。じつによく、色白に映える。皮肉にも、一度めくりあげられたノースリーブは、大ぶりなこの胸のせいで、まったくずり落ちることがなかった。
宛てがわれた指と指のすき間から、いびつに柔肉が波打つ。肌ざわりもいい。ヒタヒタと吸い付くようだ。ほんとうに色が抜けるように白くて、歳を感じさせない。ぬくもりを貪るように、匠が味わい深げに撫でまわしてきた。
「うううぅ……」
一方、貴子のほうは、肩口から顔をせりだしてくる匠を嫌って、そっぽを向いて抗う。
さっきから、男としての媚態に濡れた吐息を耳際にかけられている。眉根をきつく引き絞って、下唇を噛み、いやいやするのがせいぜいだ。匠にこう背後から迫られてしまうと、もうそれだけで、躰中の力が抜けてしまう貴子であった。
女のシンボルを好きに玩ばれている手を、ずっと不安そうに握っている。その左手の薬指には卸したての指輪がしてある。ついこないだ。二カ月前に、一郎からもらったものだ。
せめて、なにもしゃべりかけてこないで……。と、貴子は切に願うばかりであった。
匠の指が、まるで牛の乳しぼりでもするみたいに、人差し指から、中指、そして薬指から小指へと、流れるように蠢き、真雪に白い柔肉を波立たせた。またその逆に、小指から、薬指、そして中指から人差し指へと、乳房をあつめるようにして揉みしごかれる。時折、親指が乳腺を刺激してきて、貴子をひどく狼狽えさせた。
「やめてえ……」
辱めをうけながら、お願いする立場になっていたのは、貴子のほうであった。しかし、哀願も虚しく、なにか物言いたそうな手が、柔肉をぐっと掴み、きつくなった。
「だめだってえ……」
ひどく狼狽する貴子の巻き髪に、匠が猫撫で声をうめきながら顔を埋めてきた。
昔ながらの屋敷にいまは、貴子と、一郎の連れ子である匠の二人だけで住んでいる。裏庭には鬱蒼と雑木林が広がっていて、夏場には涼しいが、真っ昼間でも屋敷のなかはどこかほの暗い。
それこそ昔ながらの屋敷なのだから、キッチンと呼ぶよりは台所と呼んだほうがしっくりくる。しかも風鈴が吊るしてあったり、年代物の柱時計があったり、団扇があったり、それに、流しの緑色のタイルが所々剥がれていたり、いつのものが分からない火の用心のシールが黄ばんで貼られてあったりする。この屋敷では、昭和五十年代で時が止まっているようであった。もちろん、これらはみな、貴子の趣味でこうしているわけではない。貴子がここにくる以前からあったものだ。
ミーンミンミンミーン! ジジジジジジジー。
きょうも蝉がうるさいくらい鳴いている。匠の夏休みが終わってから一週間が過ぎていた。とはいえ、匠の長い夏休みは、まだ続いているのだが……。
「またなの……」
貴子は、だめよ、と釘を刺すような目つきで、背後の匠を睨んだ。
だが、腰を掴んでいた手が臆せず這いあがって胸までくると、匠をきつく睨みつけていた目がぎゅっと閉じた。
匠はここ数日毎日のように求めてきた。しかも飽きるどころか、ますます性質が悪くなってきたように思う。ついさっき、ここで一緒にお昼を食べたときには、目すら合わせてくれなかったくせに、ほんとうに同一人物かと疑いたくなるくらい、ベタベタ甘えてくる。
貴子はさっきから、泡の付いた手のまま、匠の腿を恐恐と掴んでいる。蛇口の水は、でっぱなしであった。
「石原さん……」
「ねえ……匠さん。いま洗い物してるから……」
そういうなり、貴子の脇から差しいれられた腕が、泡が付いたままの手を握ってきて、水で洗い流し始めた。お互いの指と指のすき間を合わせるようにして重ね、愛撫めいて丁寧にだ。
蛇口をひねった手は、そのまま貴子の前掛けエプロンで拭き始めた。
「やだ……」
貴子の躰が、くの字に曲がった。匠の手が股ぐらに触れたからだった。
「だめ。こんな関係はだめなの……」
艶っぽいいい声だ。貴子の引き寄せた眉根から、呵責に苛まれる様が滲みでていた。
脇下から絡まる腕が、再び這いあがってきた。
おばさん然とした白いノースリーブのフリルは、肌にピタリと張り付くほどタイトで、胸のふくらみそのままに盛り上がっている。手触りもとてもよく、匠の手の平にもよく張り付いた。そのノースリーブの下で、ブラジャーの刺繍がゴソゴソこすれている。
「ね、ねえ……匠さん……」
腕のなかで、貴子が身をよじった。
貴子の胸はどんと、おおきくて匠の手の平からこぼれるほどであった。もはや死語となったボインという呼び名がふさわしい。しかも、ほどよい弾力を残しながら、波打つように柔らかい。あつめるように寄せられた双乳から、深い谷間がくっきりとできた。そのまま持ちあげられながら揉んだり、くすぐられたり、双乳を仲たがいさせて回し揉んだりされている。
「ちょ……やめなさいっ」
やめて、でも、やめてください、でもなく、やめなさい、といって拒んだのは、匠が初めてのことである。貴子は、お腹から熱いものが下りてくるのを感じた。
「うるさい」
匠の視線は、深い谷間に一点にあつめられている。
「……いけないってえ……」
貴子は、諦めと理性の狭間で遠い目をしていた。ノースリーブの裾を掴まれると、ああ……と、言い尽くせないため息をついたのち、儚げにその目を細めた。
ノースリーブの裾がぐいとめくられ、ピンク色のブラジャーが露わになった。じつによく、色白に映える。皮肉にも、一度めくりあげられたノースリーブは、大ぶりなこの胸のせいで、まったくずり落ちることがなかった。
宛てがわれた指と指のすき間から、いびつに柔肉が波打つ。肌ざわりもいい。ヒタヒタと吸い付くようだ。ほんとうに色が抜けるように白くて、歳を感じさせない。ぬくもりを貪るように、匠が味わい深げに撫でまわしてきた。
「うううぅ……」
一方、貴子のほうは、肩口から顔をせりだしてくる匠を嫌って、そっぽを向いて抗う。
さっきから、男としての媚態に濡れた吐息を耳際にかけられている。眉根をきつく引き絞って、下唇を噛み、いやいやするのがせいぜいだ。匠にこう背後から迫られてしまうと、もうそれだけで、躰中の力が抜けてしまう貴子であった。
女のシンボルを好きに玩ばれている手を、ずっと不安そうに握っている。その左手の薬指には卸したての指輪がしてある。ついこないだ。二カ月前に、一郎からもらったものだ。
せめて、なにもしゃべりかけてこないで……。と、貴子は切に願うばかりであった。
匠の指が、まるで牛の乳しぼりでもするみたいに、人差し指から、中指、そして薬指から小指へと、流れるように蠢き、真雪に白い柔肉を波立たせた。またその逆に、小指から、薬指、そして中指から人差し指へと、乳房をあつめるようにして揉みしごかれる。時折、親指が乳腺を刺激してきて、貴子をひどく狼狽えさせた。
「やめてえ……」
辱めをうけながら、お願いする立場になっていたのは、貴子のほうであった。しかし、哀願も虚しく、なにか物言いたそうな手が、柔肉をぐっと掴み、きつくなった。
「だめだってえ……」
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