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一章 子供編
2話 温かい
しおりを挟む◆◆■◆◆
この世界は、「ヴォワ・ラクテ」という名前の星にある。世界には〈魔力〉が満ちていて、生物の生きるためのエネルギーとなっている。また、生物は魔力を使って、さまざまな現象を起こすことができる。
ヴォワ・ラクテに生きている生物は、4つの種族に分けることができる。人族、霊族、魔族、天族。それぞれは住む場所も生き方も違うが、元は同じ生物から進化してきたのだという。
私、エメが属する種族は人族らしい。人族は、さらに4つの種に分けられる。1つ目は「元人」。その名の通り、他の人族の元となった種である。地球の人間とほぼ違いが無く、異なる点は、心臓に「スルス」と呼ばれる魔力を生み出す器官があるということ。
2つ目は「獣人」。元人に、獣の特徴が現れた種である。獣の耳と尻尾が生え、その現れた獣の特性を受け継いでいるため、元人よりも身体能力が高い。ケモミミを見るのは楽しみである。
3つ目は「鳥人」。私は、この鳥人に転生したらしい。元人に翼や尾羽といった鳥の特徴が現れた種である。子供のときは、今の私の様に小鳥の姿で生まれ、成長すると人化できるようになるらしい。イリスによると空も飛べるらしいので、頑張ろうと思う。
最後は「有鱗人」。元人に鱗のある生き物の特徴が現れた種である。蛇やトカゲ、竜などがいるが、数が少ないため、めったに会うことはないとか。
◆◆■◆◆
「⋯⋯とこのように、人族だけでもかなり種類が多い。他の種族も同じくらい多いから、説明はまた今度するからな」
「ちゅん!(はーい!)」
「後は、魔法についてだが、これはもっと大きくなってから、実践と共に教えよう」
「ぴぃ⋯⋯ちゅん⋯⋯(え~⋯⋯はい⋯⋯)」
そんな風にイリスに色々教えてもらっていると、ぐぅ~~~っとお腹が鳴ってしまった。ちょっと恥ずかしい⋯⋯。イリスは一瞬きょとんとした後、目元を綻ばせて「夕飯にするか」とキッチンに向かっていった。ところで、イリスにタメ口だったのが今更気になって、「イリスさん」と呼びかけてみたところ、「呼び捨てでいい」と言われた。タメ口なのも気にしないと言ってくれたので、遠慮なく話している。
ご飯ができるまで少し時間ができたので、今いる部屋を観察することにした。見て回るには私の体が小さすぎるため、仕方なく籠の中で大人しくしている。私が居る籠は窓際のテーブルの上にあり、日当たりが良い。窓から外を見てみると、木のてっぺんが丁度見えた。どうやらこの部屋は2階にあるようだ。周りは不思議な色の木に囲まれていて、この家は森の中にあるようだった。しかし、こんなカラフルな木があるとは、異世界だなぁと感じる。
部屋の中に視線を戻して、丁度向かいにある本棚を見た。やっぱりというかなんというか、見たことのない文字だが読めるようだ。俗に言う、転生者特典というやつだろうか。本棚にあるのはほとんどが歴史関係の書物だった。私、日本でも歴史は苦手だったんだよなぁ。
あとは、私の居るテーブルの横にベッドがあり、その向こうに一人用の黒いソファとローテーブルが見える。全体的にシンプルで、壁や床も木でできてて温かみがある。他に人の気配を感じないから、イリスは一人暮らしなのかな。そんな風に考えていると、足音と共に部屋の扉が開いた。
「エメ。ご飯ができたぞ」
「ちゅん!(はーい!)」
イリスが手を差し伸べてきたので、飛び乗る。ナデナデされながら部屋を出て、一階に降りた。大きなダイニングテーブルの上に、いい匂いのするスープの入った鍋と、いろんな野菜のサラダが盛られた大皿、丸いパンの入った籠が乗っていた。
私をテーブルの上に降ろした後、イリスはそれぞれを小皿に取り分けて、私の前に置いた。そして直ぐ側で椅子に座り、小皿に取り分けたスープをスプーンで掬って差し出して来た。一口飲んでみると、とても美味しかった。
「うまいか?」
「ぴっ!ぴっぴ!(美味しい!もっと!)」
「よかった。⋯⋯ほら、ゆっくり飲め」
うまうま。スープに浮いてるこの小さい肉片のようなのも旨い。スープをゴクゴク飲んだ後、サラダが気になったので、嘴でつついていると、イリスがレタスみたいな野菜をちぎってくれたので、パクッと食べる。小さい木の実もあったので、それも食べる。
スープとサラダでお腹がいっぱいになってしまった。お腹を満たすと、やはり赤ちゃんだからか眠くなってきた。こっくりこっくりしていると、イリスに体をすくわれて、ゆっくり撫でられた。
「眠いなら寝ろ。子供は寝て育つものだ」
「ぴひょー⋯⋯(ふぁーい⋯⋯)」
大きな手の温もりに包まれながら、自分の羽毛に顔を半分埋めて、私は眠りに落ちていった。
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