青い鳥と白い魔法使いの旅行記(休載中)

華衣

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一章 子供編

3話 拾ったもの Sideイリス

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 ある日、森で鳥人の卵を拾った。

 この森で魔法の研究をしている俺、イリスは、森の奥にある湖のほとりで、鳥人の卵を見つけた。周囲に親の姿も無く、巣らしきものも無い。親に捨てられたか、育てる前に親が死んでしまったか。どちらにせよ、親のいないこの卵に興味が湧いたため、拠点に持ち帰ることにした。

 鳥人の数は、元人げんじんや獣人よりも少ない。有鱗人よりは多いが、人里に降りてくることが稀なため、有鱗人よりも見かけない。鳥人のほとんどは自然の多い山奥などを好み、生涯をそこで過ごすためだろう。空を飛べる翼は機動力に優れ、豊富な魔力もあるため、天敵が少ない。そのため、他種に頼る必要も無かったのだろう。
 また、元人や獣人の様に群れで暮らす者も少ない。鳥人の集落は、せいぜい一国に2~3つ程だといわれている。その他は、家族で一つの巣に住む。巣作りに最適な場所を探して長距離を旅することもあるが、産卵するのは必ず巣を作った後、巣の中でする。だからこそ、俺が拾った卵がなぜ湖のほとりに捨て置かれていたのか謎なのだ。

 拠点に帰って、適当な籠に布を敷き、その中に卵を置いた。魔力で卵の中を探ってみたが、間違いなく鳥人の卵であり、生命が育っていた。俺は長いこと魔法や魔法に関わるものの研究をしているが、鳥人を孵化させるのは初めてだ。卵を温めるために、籠と布に保温の魔法をかけた。これで今は大丈夫だろう。鳥人は卵を温めながら、魔力を注いで育てるらしいが、そういう専門書を持ってはいるが読んでこなかったため、どのくらい魔力を注げばいいかが分からない。読まなかったことを少し後悔しつつ、一階の奥にある書庫へ向かい、専門書を取り出した。



 それから、俺は魔法の研究の傍ら、卵の世話をした。幸い、中の子は元気に育っている。既に拾ってから2か月が経っていて、本には3か月程で生まれると書かれていたため、あと1か月世話をすれば生まれるだろう。この時にはもう、俺はこの鳥人の子に対して愛着が湧いていた。愛しくて、早く生まれて欲しいと思っていた。こんな感情を誰かに抱くなんて初めてで、自分は変わってしまったなとため息をついた。ただ、それは決して悪い変化では無いと思った。
 ふと、生まれた子のために名前を考えようと思った。紙に名前の候補を書き出して、男と女で分けて決めた。男なら「ファイ」、女なら「エメ」だ。生まれてくるのが今から楽しみだ。



 そうして、丹精込めて世話をした子は、少し目を離した隙に無事生まれていた。嬉しさと同時に、これからの日々への期待がこみ上げてくるのを感じた。




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