メロディアストーン

パープルエッグ

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黒い影

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暗闇の中、黄色いベストを着た男たちが山から降りてきた。背中にリュックサックを背負い、深くハットをかぶっている。
男たちは登山用のブーツで生い茂った草を踏みしめながら体勢を崩さぬように大木に手を添えて一歩ずつ前に進む。

先頭を歩いていた男が言う「こっちだ。向こうに明かりが見える。目標はここから1キロほど南下したところにある」。その後ろにはぞろぞろと連なって生気のない男たちがついて行く。

ここは山のふもとにある街だ。北に行けば山が連なり、ここから10キロほど南に行けば海が見える。実に長閑のどかな風合いを持った街である。

山と海の自然に恵まれ、食べ物が豊富にあるこの街はメアベルクと呼ばれている。先頭の男が20人の男を引率してメアベルクの街に降りてきた。
先頭の男が立ち止まって振り返ると腰につけた小さな革のウエストバッグから銀貨を取り出して20人の男にチップを配ってゆく。

先頭の男「さぁそれぞれここから1キロほど離れた場所でやるべきことをやったら解散だ。あとは自由にしてくれ」

生気のない男たちはうつむき気味のまま返事もなく、バラバラと四方八方に散らばっていった。まだ夜が明けていない暗闇の中、街の灯りも乏しい。

先頭の男は暗闇の中に姿を消し、生気のない男たちはまるでゾンビのようにとぼとぼと歩いていく。

生気のない男のひとりがリュックサックから袋を取り出し、袋の口を結んでいた紐をほどいた。袋の中から「チュチュ」と鳴き声を響かせながらねずみたちが出てくる。一匹、また一匹とねずみは街の中に逃げ隠れていった。

まだ朝日も昇らぬ早朝にメアベルクの街をきりおおかくし不気味さが増してゆく。

メアベルクの街に異変が起き始めたのは、それから一週間が過ぎたころからだった。

いつものようにパン屋の主人ベルンハルトがパンの生地を用意してクルミやひまわりの種が入った木箱を取り出しフタを開けると中から小さなねずみが飛び跳ねるように顔を出した。

思わずベルンハルトは声を上げた「うわぁ!ねずみがいやがった」すぐさま木箱のフタを閉じて裏庭の焼却炉のほうに持って行き、ねずみが入った木箱ごと焼却炉の中に放り込んで火をつけた。

ベルンハルトは焦った表情のままパン工房に急いで戻り、部屋の隅に吊るされたロープを力いっぱいに引いた。

ロープの先にあるベルが2階の寝室でけたたましく鳴り響く、妻のアンネマリーは深い眠りから一気に目覚めて飛び起きた。

目を見開いたアンネマリーはバスローブのまま階段をズカズカと降りてきて夫のベルンハルトに聞く「どうしたの?何があったの?」アンネマリーは心配そうに夫を見つめて肩にそっと手を当てた。部屋の中央にある大きなテーブルに両手をついたベルンハルトが言う「クルミの箱の中に小さなねずみがいたんだ」それを聞いた妻は驚いた表情で「まぁなんてこと・・・」と信じられない様子で絶句ぜっくした。

ここ数十年と何の問題もなく平和だったメアベルクの街に異変が起きたのだ。他の街や村では数十年前に疫病が流行り、それは”小さなねずみから始まった”と伝えられている。

疫病が流行れば、今までの生活が一変する。ベルンハルトの脳裏にはそうぎった。

アンネマリーが恐る恐る棚に保管してあるドライフルーツが入った木箱を開けるとそこにも小さなねずみが入っていた。思わずその木箱から手を放し「きゃっ」と悲鳴をあげて体をのけ反らせた。床に落ちた木箱からドライフルーツが散乱さんらんしねずみはすぐに走って逃げていった。

ベルンハルト「もうおしまいだ。毎日、掃除しているし部屋に虫一匹入れたことすらないのに、なんだこのありさまは・・・」彼の顔には絶望が垣間見かいまみえた。

アンネマリー「落ち着いて。何か手立てはあるはずよ。そうだギルドホールに相談にいきましょう」夫にそう提案した。

ベルンハルト「いやダメだ。それは最後の手段だ。もうすべての食料品を先に処分して徹底的に掃除をするんだ」
この日、ベルンハルトとアンネマリーはパン工房にある食料をすべて焼却処分し部屋の隅から隅まで徹底的に掃除をした。
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