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復興の宴
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カイゼルはピアノの演奏をやめ、立ち上がると「あとは頼んだ」とオーガスタたちに言ってギルドホールのほうに体を向けて歩き出した。しばらくしてギルドホールの前の広場にカイゼルが姿を現すと群衆は拍手で彼を出迎えた。皆が彼への尊敬の眼差しを向けている。カイゼルはニクラスのほうへ歩み寄って街中のすべてのねずみを消し去ったことを報告した。
ニクラス「素晴らしい。旅人カイゼル殿。そなたの実力しかと見届けた。これは褒美の金貨20枚だ。受け取るがよい」金貨の入った袋をカイゼルに渡した。カイゼルはこれを受け取ると深々と群衆のほうに頭を下げた。神父ヴォルフラムは興奮冷めやらぬ様子で声を張り上げる「ここに賢者様が現れたのだ。この街の災いは去った。皆の者よ!宴の準備をするのじゃ!街は復興し明日からメアベルクは活気を取り戻しまた飲食の商いができるぞ」
神父の声に呼応して住民たちは歓声をあげた。「そうだ!宴の準備だ!」「よし!今宵は飲むぞ!」と住民たちは声をあげていく。
その宴はここ数十年で最も大きな一大イベントとなった。備蓄していた食料や酒がテーブルに並び、踊り子たちが舞台で踊りを披露して場を盛り上げる。手拍子を叩く者、歌う者、皆が陽気にはしゃぐ。
都市参事会のメンバーと一緒にカイゼルが酒を飲み宴を楽しんでいる。ただギルド隊長のルーカスとギルド分隊長のベルンハルトとカスパルは納得がいかない様子だった。3人の表情は暗い。
ダームも酔いがまわったころ不機嫌なルーカスに向かってこう言った「事実は事実だ。私たちが知らない世界、技術はまだまだたくさんあるんだよ。ルーカス、そう片意地を張るな」と。そして、ルーカスの肩を軽く叩いて立ち上がり近くにいた女性に声をかけた「これはこれは貴婦人、ご一緒に踊りなどいかがですか?」医師のダームは上機嫌で若い女と手を取り合って踊りはじめた。この数か月、彼は彼で張り詰めた空気と戦っていたのだ。ねずみの大量発生から流行り病が始まり疫病で苦しむ人々が次々と死別していくのではないかと最悪の事態を想像していた。それは親であったり子どもであったり死神は誰の元へでも降り立つことを彼は知っていた。その苦悩から解放された喜びからかいつもの冷静なダームではなく、イヤなことをすべて忘れるためにおどけているようにさえ見えた。
宴は朝方まで続き、ギルドホール前の広場の中央に焚べられた薪は炭に変わっていた。火は小さくなり暖を取るには物足りたいほどだった。
テーブルに寝そべっていたベルンハルトが寒気を感じて起きた。そして、辺りを見渡すと地面に寝ている若者がポツポツと周りにいて、毛布に包まっている若いカップルが寄り添って座っていた。寝ぼけた目を覚ますためにテーブルに置いてあるジョッキの水をコップに入れて一気に飲む。ベルンハルトはカスパルを起こした。都市参事会のメンバーもどうやら宴の途中で帰ったようだ。そこに会員たちの姿はなかった。
明け方の静かになったギルドホールへ向かって馬の駆ける音が遠くから聞こえてくる。
一体、誰だろう?こんな今朝早くに・・・。
ベルンハルトとカスパルがその音のほうを見つめる。馬の上に誰かが乗っているようだ。近づいてきてわかったがこれは王から派遣された兵士である。ふたりは立ち上がり馬上の兵士を見上げた。
馬上の兵士「ここにカイゼルと名乗る男がいたと聞いた。そなたたちは知っているか?」
兵士に問われたベルンハルトは答える「ええ、この街のねずみを一匹残らず駆除した旅人です」。兵士は首を横に振った「それは間違いだ。カイゼルが操っているのがねずみなのだ。駆除されたのではなく撒いたのはヤツだ」。衝撃すぎてベルンハルトは言葉を失った。カスパルが馬上の兵士に問う「あなた様はどうしてそれを知っておられるのですか?」。カスパルもベルンハルト同様に衝撃を受けて言葉が震えた。馬上の兵士はマルクスと名乗った。
マルクス「ムリもない。他の街でも同様の手口で人々を不安と恐怖に陥れ、賢者のように振る舞うカイゼルの口車に乗って金貨を渡している。街は救われたのではなく陥れられたのだ」。馬上の兵士はそのことを告げるとカイゼルを追って去って行った。
ニクラス「素晴らしい。旅人カイゼル殿。そなたの実力しかと見届けた。これは褒美の金貨20枚だ。受け取るがよい」金貨の入った袋をカイゼルに渡した。カイゼルはこれを受け取ると深々と群衆のほうに頭を下げた。神父ヴォルフラムは興奮冷めやらぬ様子で声を張り上げる「ここに賢者様が現れたのだ。この街の災いは去った。皆の者よ!宴の準備をするのじゃ!街は復興し明日からメアベルクは活気を取り戻しまた飲食の商いができるぞ」
神父の声に呼応して住民たちは歓声をあげた。「そうだ!宴の準備だ!」「よし!今宵は飲むぞ!」と住民たちは声をあげていく。
その宴はここ数十年で最も大きな一大イベントとなった。備蓄していた食料や酒がテーブルに並び、踊り子たちが舞台で踊りを披露して場を盛り上げる。手拍子を叩く者、歌う者、皆が陽気にはしゃぐ。
都市参事会のメンバーと一緒にカイゼルが酒を飲み宴を楽しんでいる。ただギルド隊長のルーカスとギルド分隊長のベルンハルトとカスパルは納得がいかない様子だった。3人の表情は暗い。
ダームも酔いがまわったころ不機嫌なルーカスに向かってこう言った「事実は事実だ。私たちが知らない世界、技術はまだまだたくさんあるんだよ。ルーカス、そう片意地を張るな」と。そして、ルーカスの肩を軽く叩いて立ち上がり近くにいた女性に声をかけた「これはこれは貴婦人、ご一緒に踊りなどいかがですか?」医師のダームは上機嫌で若い女と手を取り合って踊りはじめた。この数か月、彼は彼で張り詰めた空気と戦っていたのだ。ねずみの大量発生から流行り病が始まり疫病で苦しむ人々が次々と死別していくのではないかと最悪の事態を想像していた。それは親であったり子どもであったり死神は誰の元へでも降り立つことを彼は知っていた。その苦悩から解放された喜びからかいつもの冷静なダームではなく、イヤなことをすべて忘れるためにおどけているようにさえ見えた。
宴は朝方まで続き、ギルドホール前の広場の中央に焚べられた薪は炭に変わっていた。火は小さくなり暖を取るには物足りたいほどだった。
テーブルに寝そべっていたベルンハルトが寒気を感じて起きた。そして、辺りを見渡すと地面に寝ている若者がポツポツと周りにいて、毛布に包まっている若いカップルが寄り添って座っていた。寝ぼけた目を覚ますためにテーブルに置いてあるジョッキの水をコップに入れて一気に飲む。ベルンハルトはカスパルを起こした。都市参事会のメンバーもどうやら宴の途中で帰ったようだ。そこに会員たちの姿はなかった。
明け方の静かになったギルドホールへ向かって馬の駆ける音が遠くから聞こえてくる。
一体、誰だろう?こんな今朝早くに・・・。
ベルンハルトとカスパルがその音のほうを見つめる。馬の上に誰かが乗っているようだ。近づいてきてわかったがこれは王から派遣された兵士である。ふたりは立ち上がり馬上の兵士を見上げた。
馬上の兵士「ここにカイゼルと名乗る男がいたと聞いた。そなたたちは知っているか?」
兵士に問われたベルンハルトは答える「ええ、この街のねずみを一匹残らず駆除した旅人です」。兵士は首を横に振った「それは間違いだ。カイゼルが操っているのがねずみなのだ。駆除されたのではなく撒いたのはヤツだ」。衝撃すぎてベルンハルトは言葉を失った。カスパルが馬上の兵士に問う「あなた様はどうしてそれを知っておられるのですか?」。カスパルもベルンハルト同様に衝撃を受けて言葉が震えた。馬上の兵士はマルクスと名乗った。
マルクス「ムリもない。他の街でも同様の手口で人々を不安と恐怖に陥れ、賢者のように振る舞うカイゼルの口車に乗って金貨を渡している。街は救われたのではなく陥れられたのだ」。馬上の兵士はそのことを告げるとカイゼルを追って去って行った。
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