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魔術師の最期
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バウティスタ王「もうよい。下がれ。ここにカイゼルはいない。そなたたちが勇敢な兵士であることはわかった。ヨハネ王もそれを誇りに思うだろう」
オリバー「王様。そのような言葉をいただけたことを我々は誇りに思います。しかし、カイゼルがこの城内のどこかに潜んでいるやもしれません。せめてこの国の高官と兵たちがこの部屋に来るまで我々に護衛させていただけませんか?」
オリバーは王の命令に食い下がり、部屋に留まろうとした。この状況で王の身に何かあればたとえカイゼルを追っている者であってもあらぬ責任を追及される可能性はある。楽器の音に誘導され高官や兵士たちは危うく炎の中に身を投じそうになっていたがその災難は去った。次はカイゼルを探し出すか追い払うのみである。せめて王の近くからはカイゼルを遠ざけたいという心理が働いてこの部屋から出ることはできなかった。
バウティスタ王「しかし、なぜそなたたちはあの魔術師の術が効かなかったのだ?あの音色の前では何人たりとも敵わぬはずだ」その言葉にオリバーは素早く反応した。
「今、音色と申されたか?私はカイゼルが人を操ったとは言ったが音色とは一言も言っていないぞ」と口調を強め、弓を構えた。それを聞いて「しまった」と声がする。バウティスタ王はグッタリと前に倒れ込み王座の後ろから人影が姿を現す。
カイゼル「もう王は手遅れだ。体に毒が回って動くことすらできない」そういうとフルートを取り出して音を奏でようとする。口元にフルートを近づける動作をした瞬間、オリバーが矢を放ちカイゼルの左手を射抜いた。
「うおっ!」と叫びその場にカイゼルは倒れ込んだ。オリバーが他の兵士たちに命令する「早く王を安全なところへ。そして、すぐに応援を呼んで手当をしろ!」兵士たちは王を両脇に抱えて部屋から連れ出した。引き連れていた数人の兵士はそれぞれの役割を考え行動を開始した。王室に残ったのはカイゼルとオリバーだけになった。
床の上で悶えるカイゼルと冷静に弓で狙いを定めるオリバーのふたりだけの空間となった。「どうして人を欺く。お前は死刑になった身であることを忘れるな!いつでも矢で射抜けるんだ」そういうとオリバーは距離を取ったままカイゼルの全身が見える位置に体をズラしてゆく。カイゼルの左手から血が溢れ出て床に垂れ広がり膝をついて立ち上がることすらままならない。肘をついて立とうとしても血で滑りまた転がる。うめき声を上げながらカイゼルがいう「見逃してくれないか?そうだ、金貨をやろう!金貨だ。10枚やるぞ」そういって革のウェストバッグを開け右手で金貨を取り出した。その手をオリバーのほうへ差し出す仕草をしているが、それを無視して問い詰める。
「お前がやったことは国を滅ぼす行いだ。いくら金貨を積まれてもお前が助かる道はない。なぜ人を弄ぶのだ?」そういうとオリバーは弓矢をカイゼルの心臓のほうに向けた。まるで獣を射るときのようである。
「ぐぅっ!貴様を道連れにしてやる。地獄の業火で焼かれるのだ。国など知ったことではない」と最期まで悪あがきをしているカイゼルであった。震える手で持っていた金貨を落とし、うつ伏せになって尚も生きながらえようとしている。
そこへマルクスがこの国の兵士と共に駆けつける。その後ろには高官や都市参事会のメンバーもいた。もう魔術師カイゼルの逃げ場はどこにもなくなったのだ。どうすることもできない袋のねずみとなり左手に刺さった矢から血を垂らしながら悶えうめいている。
「なんとも無様な姿よ。我が国の王によくも毒を盛ってくれたな」と高官は激昂し隣に立っていた兵士から槍を奪いカイゼルの背中を一突きした。あまりの激痛にカイゼルは声を上げることもなく動かなくなった。
うつぶせのままフルートを震える手で口元に運び、うつろな目をしたまま息を吹きかけるが音は出ない。その姿が哀れにも見えるのだがたくさんの人を屠った殺人鬼であることは忘れてはならない。
こうして魔術師カイゼルは出血多量により絶命した。
数日後にバウティスタ王は一命を取り留め、王・ヨハネから派遣された兵士たちはこの国から感謝状を受け取り、自国では勲章をもらうこととなった。
メアベルクの街にいる識者フェンナーと東の街オルドバの識者ジョセフが共に協力して開発したワインのコルクを加工した耳栓は魔術師の催眠を無効化することに成功した。さらに至近距離の攻撃ではなく遠距離攻撃が最適ではないかとギルド隊長のルーカスとライアンが知恵を絞り、それが採用され、派遣された兵士は弓矢の名手が選ばれているのだった。
ヨハネ王に召集を受けた各街の都市参事会のメンバーたちは知恵を絞り、耳栓をしたあとに声による指示や命令が適わないことを補うため、いくつものハンドサインを作りそれを兵士たちに訓練させて獣の狩りをしながら実践経験を積ませている。もしものときのための念入りな対策が施され、これは今までに例がなかった。
数十年前に流行っていた感染症は、もしかしたら魔術師カイゼルの仕業だったのかもしれないとメアベルクの医師ダームは密かに想いを巡らせていた。いくつもの街でねずみから感染症が始まり、多くの人が死に至っている。それは魔術師が操りきれなかったねずみの暴走だったのではないかと推論した。
カイゼルの遺体は焼かれたが、不思議なことにあのとき奴が手にしていたフルートはどこにも見当たらなかったという。そして、時折、あの音色が街に響いているという噂が流れた・・・・。
オリバー「王様。そのような言葉をいただけたことを我々は誇りに思います。しかし、カイゼルがこの城内のどこかに潜んでいるやもしれません。せめてこの国の高官と兵たちがこの部屋に来るまで我々に護衛させていただけませんか?」
オリバーは王の命令に食い下がり、部屋に留まろうとした。この状況で王の身に何かあればたとえカイゼルを追っている者であってもあらぬ責任を追及される可能性はある。楽器の音に誘導され高官や兵士たちは危うく炎の中に身を投じそうになっていたがその災難は去った。次はカイゼルを探し出すか追い払うのみである。せめて王の近くからはカイゼルを遠ざけたいという心理が働いてこの部屋から出ることはできなかった。
バウティスタ王「しかし、なぜそなたたちはあの魔術師の術が効かなかったのだ?あの音色の前では何人たりとも敵わぬはずだ」その言葉にオリバーは素早く反応した。
「今、音色と申されたか?私はカイゼルが人を操ったとは言ったが音色とは一言も言っていないぞ」と口調を強め、弓を構えた。それを聞いて「しまった」と声がする。バウティスタ王はグッタリと前に倒れ込み王座の後ろから人影が姿を現す。
カイゼル「もう王は手遅れだ。体に毒が回って動くことすらできない」そういうとフルートを取り出して音を奏でようとする。口元にフルートを近づける動作をした瞬間、オリバーが矢を放ちカイゼルの左手を射抜いた。
「うおっ!」と叫びその場にカイゼルは倒れ込んだ。オリバーが他の兵士たちに命令する「早く王を安全なところへ。そして、すぐに応援を呼んで手当をしろ!」兵士たちは王を両脇に抱えて部屋から連れ出した。引き連れていた数人の兵士はそれぞれの役割を考え行動を開始した。王室に残ったのはカイゼルとオリバーだけになった。
床の上で悶えるカイゼルと冷静に弓で狙いを定めるオリバーのふたりだけの空間となった。「どうして人を欺く。お前は死刑になった身であることを忘れるな!いつでも矢で射抜けるんだ」そういうとオリバーは距離を取ったままカイゼルの全身が見える位置に体をズラしてゆく。カイゼルの左手から血が溢れ出て床に垂れ広がり膝をついて立ち上がることすらままならない。肘をついて立とうとしても血で滑りまた転がる。うめき声を上げながらカイゼルがいう「見逃してくれないか?そうだ、金貨をやろう!金貨だ。10枚やるぞ」そういって革のウェストバッグを開け右手で金貨を取り出した。その手をオリバーのほうへ差し出す仕草をしているが、それを無視して問い詰める。
「お前がやったことは国を滅ぼす行いだ。いくら金貨を積まれてもお前が助かる道はない。なぜ人を弄ぶのだ?」そういうとオリバーは弓矢をカイゼルの心臓のほうに向けた。まるで獣を射るときのようである。
「ぐぅっ!貴様を道連れにしてやる。地獄の業火で焼かれるのだ。国など知ったことではない」と最期まで悪あがきをしているカイゼルであった。震える手で持っていた金貨を落とし、うつ伏せになって尚も生きながらえようとしている。
そこへマルクスがこの国の兵士と共に駆けつける。その後ろには高官や都市参事会のメンバーもいた。もう魔術師カイゼルの逃げ場はどこにもなくなったのだ。どうすることもできない袋のねずみとなり左手に刺さった矢から血を垂らしながら悶えうめいている。
「なんとも無様な姿よ。我が国の王によくも毒を盛ってくれたな」と高官は激昂し隣に立っていた兵士から槍を奪いカイゼルの背中を一突きした。あまりの激痛にカイゼルは声を上げることもなく動かなくなった。
うつぶせのままフルートを震える手で口元に運び、うつろな目をしたまま息を吹きかけるが音は出ない。その姿が哀れにも見えるのだがたくさんの人を屠った殺人鬼であることは忘れてはならない。
こうして魔術師カイゼルは出血多量により絶命した。
数日後にバウティスタ王は一命を取り留め、王・ヨハネから派遣された兵士たちはこの国から感謝状を受け取り、自国では勲章をもらうこととなった。
メアベルクの街にいる識者フェンナーと東の街オルドバの識者ジョセフが共に協力して開発したワインのコルクを加工した耳栓は魔術師の催眠を無効化することに成功した。さらに至近距離の攻撃ではなく遠距離攻撃が最適ではないかとギルド隊長のルーカスとライアンが知恵を絞り、それが採用され、派遣された兵士は弓矢の名手が選ばれているのだった。
ヨハネ王に召集を受けた各街の都市参事会のメンバーたちは知恵を絞り、耳栓をしたあとに声による指示や命令が適わないことを補うため、いくつものハンドサインを作りそれを兵士たちに訓練させて獣の狩りをしながら実践経験を積ませている。もしものときのための念入りな対策が施され、これは今までに例がなかった。
数十年前に流行っていた感染症は、もしかしたら魔術師カイゼルの仕業だったのかもしれないとメアベルクの医師ダームは密かに想いを巡らせていた。いくつもの街でねずみから感染症が始まり、多くの人が死に至っている。それは魔術師が操りきれなかったねずみの暴走だったのではないかと推論した。
カイゼルの遺体は焼かれたが、不思議なことにあのとき奴が手にしていたフルートはどこにも見当たらなかったという。そして、時折、あの音色が街に響いているという噂が流れた・・・・。
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