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疑念
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マルクスの後ろに立っていた兵士オリバーがマルクスの耳元で囁く「これは今、何が起きているのでしょうか?何かマズイ状態なのでは・・・」それを聞いたマルクスは何も言わずに目配せをした。オリバーは頷き他の兵士たちにも何かを伝えた。
ただそこに集まった大衆はカイゼルが裁かれる姿を見に来ただけだが何やら様子がおかしくなってきた。周りはざわつき穏やかな雰囲気ではない。それを察した高官が兵士に命令する「槍を持て。奴を刺せ」近くにいた兵士が槍でカイゼルを刺すと男はグッタリして意識を失った。
石垣の上に置かれた木造の台の炎はどんどん大きくなりカイゼルの足元にあった薪は炎を纏いながら燃え上がった。その熱さから周りにいた人々は後ろへ引き下がって炎に包まれたカイゼルを見守っている。高官は声を上げる「今、カイゼルは死んだ。もう街に魔術師が現れることはない。安心せよ」と語気を強めた。
みんなが見守る中、台の上で生きた魚がピチピチと跳ねながら炎に焼かれて、魚の焼けた匂いがする。魚の体は焼けながら緑の煙を発した。周りにいた人々は驚いて叫ぶ「なんだ?あの魚から出る煙は?」「もしかして毒じゃないの?」と慌てふためいている。
兵士たちがタオルや布で口元を覆い隠した。マルクスは10人の兵士にハンドサインを使って後退するように命じた。そのとき、どこからともなく音が聴こえてくる。
フルートが奏でるその美しい音は一体どこから聴こえてきているのだろうか・・・?
大衆は周りを見渡し高官や兵士たちも音の行方を捜した。しかし、フルートを奏でている者の姿は見えない。その音はなんとも心地よく優雅な演奏は心の奥深くに響いた。
だんだん周りにいた人々の様子はおかしくなり、ひとりまたひとりと燃え盛る木造の台のほうへ足を運び始めた。高官や兵士たちも同じく炎のほうへ歩みはじめる。まるで操り人形のように動いている。
マルクスは10人の兵士にハンドサインを送り、高官やこの国の兵士たちを捕まえて耳に栓をしていくのだった。それはワインで使うコルクを耳栓で使えるように加工したものだった。
その間にも多くの大衆は炎の中に身を投じていく。それを見て我に返った高官や兵士たちが震え上がった。マルクスが率いる10人の兵士は周りを見渡して音を発している場所を探した。耳栓をしているのでフルートの音は聴こえはしないのだ。物陰で動いているものがいないかを目で確かめている。城の外壁の上で人影が動き、マルクスがそれに気づいた。マルクスは高官を抱えた手を離し立ち上がって高台を指差した。
オリバーがそれに素早く反応して弓矢を射る。他の兵士たちが高台のほうへ走り出した。マルクスは馬に乗り城の外へ駆け出した。
幾人かが燃え盛る炎の中に身を投じていったがフルートの音が鳴りやんで都市参事会の領主たちは歩みを止め炎に入る寸前で助かった。大衆たちは我に返り、驚きのあまり地べたに腰をついた。
城の外壁の内側と外側から人影があったほうを追っていくマルクスと兵士たち。恐らくその相手が本物のカイゼルである。どうやって焼かれた人物と入れ替わったのかはわからない。そして、あの魚は一体なんだったのかもわからない。
オリバーと数人の兵士が高台につくと血の痕のようなものが石畳についていた。オリバーが射た弓矢がカイゼルに当たっていたようだ。この血痕を追えば奴がどこへ向かったかわかるはずだ。オリバーがハンドサインを送り兵士たちを連れて血痕を目印に奥に進んでいく。一方、マルクスは外壁沿いに馬を走らせて奴を探すが見当たらない。高台から逃げるのであれば外壁の外側に梯子かロープを使って逃げるはずである。外壁の内側は兵士や各街の都市参事会のメンバーたちがいて逃げ場はないはずだ。演奏さえしていなければ人を操ることはできない。まさに奴は袋のねずみである。
血の痕を追っていくオリバーたちは高台から城の内部へ進み、大きな扉がある部屋の前で歩みを止めた。飾りがついた神々しい扉の前で血痕は途切れている。「まさかそんな・・・ここは王の部屋だぞ」オリバーが息を呑んだ。それは誰もが疑いようのない王の部屋の前だった。
王の部屋の前で血痕が途切れていることは事実だ。「仕方がない。入るか・・・」オリバーが耳栓をはずし決意を固めて扉を叩いた。
「誰だ?入ってよいぞ」部屋の中から声が聞こえる。その声の主はバウティスタ王だ。恐る恐る扉を開けてオリバーは事情を説明した。「バウティスタ王。我々は王・ヨハネより派遣された兵士です。ここにカイゼルは来ませんでしたか?」オリバーがそう言うと部屋の奥に座っているバウティスタ王がそれに応える「カイゼルとな?なぜ奴がここに来る。奴は火炙りの刑に処したはずだぞ。高官や我が兵たちもまだ戻っておらぬ。なぜお前たちがここに奴を探しに来ているのだ?」と逆にオリバーたちの行動は疑われることになってしまった。
オリバー「バウティスタ王よ。今は非常事態なのです。火に炙られた男はカイゼルではなかったのです。奴は高台に現れ、またもや人々を操ったのです」オリバーの体は前のめりになった。
王座に座っているバウティスタ王のほうへ近づきオリバーが気づく、王の右肩に血が滲んだ痕があることを・・・・。
バウティスタ王「待て。そこを動くな。それ以上、近づいてはならぬ」王は近づこうとするオリバーと数人の兵を制止する。オリバーたちは立ち止まり会話を続けた。
「なぜですか?王様。我々はカイゼルを追っているのです。奴の血はこの部屋の前で途切れています。カイゼルはこの部屋に入って来たのではありませんか?」
オリバーの脳裏にはバウティスタ王がカイゼルなのでは?という推理が浮かんだ。右肩の血が滲んだ痕は紛れもなく”ついさっき”できたものなのだ。偶然ということは考えられない。しかし、もしその推理が間違っていたらこの国を敵にまわすことになる。慎重に事を進めなければ国同士の争いになりかねない。オリバーは後ろにいた兵士エミリオに耳打ちする「高官と兵士を呼んできてくれないか?」そう言ってエミリオを石垣の火刑台のほうへ向かわせた。時間を稼ぎつつ状況を把握する。まさか王室でこんな緊迫した状態になるとは思いもしなかった。冷汗が止まらない。
ただそこに集まった大衆はカイゼルが裁かれる姿を見に来ただけだが何やら様子がおかしくなってきた。周りはざわつき穏やかな雰囲気ではない。それを察した高官が兵士に命令する「槍を持て。奴を刺せ」近くにいた兵士が槍でカイゼルを刺すと男はグッタリして意識を失った。
石垣の上に置かれた木造の台の炎はどんどん大きくなりカイゼルの足元にあった薪は炎を纏いながら燃え上がった。その熱さから周りにいた人々は後ろへ引き下がって炎に包まれたカイゼルを見守っている。高官は声を上げる「今、カイゼルは死んだ。もう街に魔術師が現れることはない。安心せよ」と語気を強めた。
みんなが見守る中、台の上で生きた魚がピチピチと跳ねながら炎に焼かれて、魚の焼けた匂いがする。魚の体は焼けながら緑の煙を発した。周りにいた人々は驚いて叫ぶ「なんだ?あの魚から出る煙は?」「もしかして毒じゃないの?」と慌てふためいている。
兵士たちがタオルや布で口元を覆い隠した。マルクスは10人の兵士にハンドサインを使って後退するように命じた。そのとき、どこからともなく音が聴こえてくる。
フルートが奏でるその美しい音は一体どこから聴こえてきているのだろうか・・・?
大衆は周りを見渡し高官や兵士たちも音の行方を捜した。しかし、フルートを奏でている者の姿は見えない。その音はなんとも心地よく優雅な演奏は心の奥深くに響いた。
だんだん周りにいた人々の様子はおかしくなり、ひとりまたひとりと燃え盛る木造の台のほうへ足を運び始めた。高官や兵士たちも同じく炎のほうへ歩みはじめる。まるで操り人形のように動いている。
マルクスは10人の兵士にハンドサインを送り、高官やこの国の兵士たちを捕まえて耳に栓をしていくのだった。それはワインで使うコルクを耳栓で使えるように加工したものだった。
その間にも多くの大衆は炎の中に身を投じていく。それを見て我に返った高官や兵士たちが震え上がった。マルクスが率いる10人の兵士は周りを見渡して音を発している場所を探した。耳栓をしているのでフルートの音は聴こえはしないのだ。物陰で動いているものがいないかを目で確かめている。城の外壁の上で人影が動き、マルクスがそれに気づいた。マルクスは高官を抱えた手を離し立ち上がって高台を指差した。
オリバーがそれに素早く反応して弓矢を射る。他の兵士たちが高台のほうへ走り出した。マルクスは馬に乗り城の外へ駆け出した。
幾人かが燃え盛る炎の中に身を投じていったがフルートの音が鳴りやんで都市参事会の領主たちは歩みを止め炎に入る寸前で助かった。大衆たちは我に返り、驚きのあまり地べたに腰をついた。
城の外壁の内側と外側から人影があったほうを追っていくマルクスと兵士たち。恐らくその相手が本物のカイゼルである。どうやって焼かれた人物と入れ替わったのかはわからない。そして、あの魚は一体なんだったのかもわからない。
オリバーと数人の兵士が高台につくと血の痕のようなものが石畳についていた。オリバーが射た弓矢がカイゼルに当たっていたようだ。この血痕を追えば奴がどこへ向かったかわかるはずだ。オリバーがハンドサインを送り兵士たちを連れて血痕を目印に奥に進んでいく。一方、マルクスは外壁沿いに馬を走らせて奴を探すが見当たらない。高台から逃げるのであれば外壁の外側に梯子かロープを使って逃げるはずである。外壁の内側は兵士や各街の都市参事会のメンバーたちがいて逃げ場はないはずだ。演奏さえしていなければ人を操ることはできない。まさに奴は袋のねずみである。
血の痕を追っていくオリバーたちは高台から城の内部へ進み、大きな扉がある部屋の前で歩みを止めた。飾りがついた神々しい扉の前で血痕は途切れている。「まさかそんな・・・ここは王の部屋だぞ」オリバーが息を呑んだ。それは誰もが疑いようのない王の部屋の前だった。
王の部屋の前で血痕が途切れていることは事実だ。「仕方がない。入るか・・・」オリバーが耳栓をはずし決意を固めて扉を叩いた。
「誰だ?入ってよいぞ」部屋の中から声が聞こえる。その声の主はバウティスタ王だ。恐る恐る扉を開けてオリバーは事情を説明した。「バウティスタ王。我々は王・ヨハネより派遣された兵士です。ここにカイゼルは来ませんでしたか?」オリバーがそう言うと部屋の奥に座っているバウティスタ王がそれに応える「カイゼルとな?なぜ奴がここに来る。奴は火炙りの刑に処したはずだぞ。高官や我が兵たちもまだ戻っておらぬ。なぜお前たちがここに奴を探しに来ているのだ?」と逆にオリバーたちの行動は疑われることになってしまった。
オリバー「バウティスタ王よ。今は非常事態なのです。火に炙られた男はカイゼルではなかったのです。奴は高台に現れ、またもや人々を操ったのです」オリバーの体は前のめりになった。
王座に座っているバウティスタ王のほうへ近づきオリバーが気づく、王の右肩に血が滲んだ痕があることを・・・・。
バウティスタ王「待て。そこを動くな。それ以上、近づいてはならぬ」王は近づこうとするオリバーと数人の兵を制止する。オリバーたちは立ち止まり会話を続けた。
「なぜですか?王様。我々はカイゼルを追っているのです。奴の血はこの部屋の前で途切れています。カイゼルはこの部屋に入って来たのではありませんか?」
オリバーの脳裏にはバウティスタ王がカイゼルなのでは?という推理が浮かんだ。右肩の血が滲んだ痕は紛れもなく”ついさっき”できたものなのだ。偶然ということは考えられない。しかし、もしその推理が間違っていたらこの国を敵にまわすことになる。慎重に事を進めなければ国同士の争いになりかねない。オリバーは後ろにいた兵士エミリオに耳打ちする「高官と兵士を呼んできてくれないか?」そう言ってエミリオを石垣の火刑台のほうへ向かわせた。時間を稼ぎつつ状況を把握する。まさか王室でこんな緊迫した状態になるとは思いもしなかった。冷汗が止まらない。
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