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第二章
森の聖地②
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リアンは、まだ少しショックを受けているフィンの肩をポンと叩くと、自らも、より一層注意深く周囲を見回しながら、セラフィナの後を追った。
しかし、セラフィナの案内があっても、道は、次第に奇妙になっていった。特徴的な形をした巨木、奇妙な模様の岩…先ほど、確かに通り過ぎたはずの目印が、何度も、何度も彼らの前に現れるのだ。
「おかしいな…」
フィンが、ついにコンパスを取り出すが、その針は、狂ったようにくるくる回り続けるだけだった。
「コンパスも効かないし、いくら進んでも、同じ場所をループしている…まるで、森が僕たちを拒絶しているみたいだ…」
フィンのお手上げ、という表情を見て、セラフィナが静かに口を開いた。
「この森は、聖地そのもの。訪れる者の心を映す鏡です。しかし、今のこの森は、聖地の力が弱まり、深い『悲しみ』に沈んでいる。その悲しみが、我々のような異邦の来訪者を、無意識に拒絶しているのです。道がループするのは、森が、我々を迷わせているのではありません。森自身が、道を見失っているのです」
その言葉に、リアンははっとした。
(道を見失っている…?僕と、同じだ。怖いんだ。苦しいんだ。どうしたらいいか、分からないんだ)
彼は、この巨大な森を、自分と同じ、迷子の子供のように感じた。拒絶されているのではない。助けを求めているのだ、と。
セラフィナは、リアンの心の変化を感じ取ったかのように、彼に真っ直ぐ向き直った。
「リアン殿。焚き火の前で話したことを覚えていますか?あなたの役割は『調和』すること。この森の悲しみや苦しみ…その『声』に、あなたの心を澄ませてみてください。拒絶するのではなく、受け入れ、寄り添うのです。そうすれば、道を見失った森は、あなたに、進むべき道を尋ねてくるはず」
リアンは、言われた通りに目を閉じ、深く、深く集中する。
彼の周囲で、空気が変わった。フィンは、それまで耳元で不快に響いていた森の囁きが、すっと凪いでいくのを感じた。セラフィナは、リアンの体から、あの日の広場で咲き乱れた花々と同じ、温かく、清らかなオーラが、さざ波のように広がっていくのを見て、静かに微笑んだ。
リアンの意識は、深く、深く、森の魂へと潜っていく。
耳に届く、無数の悲しい囁き。それは、やがて、一つの巨大な「痛み」の奔流として、彼の心に流れ込んできた。
(痛い…苦しい…助けて…)
森が、泣いている。
リアンは、その痛みを、自分のことのように感じた。そして、彼は、ただ受け入れるだけではなく、自らの心の中から、温かい光を、その痛みに向けてそっと差し伸べた。それは、祈りにも似ていた。
(大丈夫だよ。僕たちが、助けに来たから)
彼の魂が、そう「唄った」瞬間。
森の悲しみの奔流が、ぴたりと止んだ。そして、その静寂の奥底から、まるで応えるかのように、か細く、しかし、温かい「ありがとう」という鼓動が、リアンの心に響き返ってきた。
それと同時に、リアンの脳裏に、一本の、揺るぎない光の道筋が、すっと浮かび上がった。それは、森の悲しみの、さらに奥深く…この森の本当の「心臓」へと続く道だった。
目を開けたリアンの瞳には、もう迷いはなかった。その瞳には、仲間たちには見えない、金色の光の道が、確かに映っている。
「…こっちだ。僕が、案内する」
その言葉は、まだ少し震えていたが、間違いなく、彼が一行のリーダーとして、最初の一歩を踏み出した瞬間だった。
フィンとセラフィナは、驚きと、そして、確かな信頼の眼差しで、前を歩き始めた彼の背中を見つめていた。
しかし、セラフィナの案内があっても、道は、次第に奇妙になっていった。特徴的な形をした巨木、奇妙な模様の岩…先ほど、確かに通り過ぎたはずの目印が、何度も、何度も彼らの前に現れるのだ。
「おかしいな…」
フィンが、ついにコンパスを取り出すが、その針は、狂ったようにくるくる回り続けるだけだった。
「コンパスも効かないし、いくら進んでも、同じ場所をループしている…まるで、森が僕たちを拒絶しているみたいだ…」
フィンのお手上げ、という表情を見て、セラフィナが静かに口を開いた。
「この森は、聖地そのもの。訪れる者の心を映す鏡です。しかし、今のこの森は、聖地の力が弱まり、深い『悲しみ』に沈んでいる。その悲しみが、我々のような異邦の来訪者を、無意識に拒絶しているのです。道がループするのは、森が、我々を迷わせているのではありません。森自身が、道を見失っているのです」
その言葉に、リアンははっとした。
(道を見失っている…?僕と、同じだ。怖いんだ。苦しいんだ。どうしたらいいか、分からないんだ)
彼は、この巨大な森を、自分と同じ、迷子の子供のように感じた。拒絶されているのではない。助けを求めているのだ、と。
セラフィナは、リアンの心の変化を感じ取ったかのように、彼に真っ直ぐ向き直った。
「リアン殿。焚き火の前で話したことを覚えていますか?あなたの役割は『調和』すること。この森の悲しみや苦しみ…その『声』に、あなたの心を澄ませてみてください。拒絶するのではなく、受け入れ、寄り添うのです。そうすれば、道を見失った森は、あなたに、進むべき道を尋ねてくるはず」
リアンは、言われた通りに目を閉じ、深く、深く集中する。
彼の周囲で、空気が変わった。フィンは、それまで耳元で不快に響いていた森の囁きが、すっと凪いでいくのを感じた。セラフィナは、リアンの体から、あの日の広場で咲き乱れた花々と同じ、温かく、清らかなオーラが、さざ波のように広がっていくのを見て、静かに微笑んだ。
リアンの意識は、深く、深く、森の魂へと潜っていく。
耳に届く、無数の悲しい囁き。それは、やがて、一つの巨大な「痛み」の奔流として、彼の心に流れ込んできた。
(痛い…苦しい…助けて…)
森が、泣いている。
リアンは、その痛みを、自分のことのように感じた。そして、彼は、ただ受け入れるだけではなく、自らの心の中から、温かい光を、その痛みに向けてそっと差し伸べた。それは、祈りにも似ていた。
(大丈夫だよ。僕たちが、助けに来たから)
彼の魂が、そう「唄った」瞬間。
森の悲しみの奔流が、ぴたりと止んだ。そして、その静寂の奥底から、まるで応えるかのように、か細く、しかし、温かい「ありがとう」という鼓動が、リアンの心に響き返ってきた。
それと同時に、リアンの脳裏に、一本の、揺るぎない光の道筋が、すっと浮かび上がった。それは、森の悲しみの、さらに奥深く…この森の本当の「心臓」へと続く道だった。
目を開けたリアンの瞳には、もう迷いはなかった。その瞳には、仲間たちには見えない、金色の光の道が、確かに映っている。
「…こっちだ。僕が、案内する」
その言葉は、まだ少し震えていたが、間違いなく、彼が一行のリーダーとして、最初の一歩を踏み出した瞬間だった。
フィンとセラフィナは、驚きと、そして、確かな信頼の眼差しで、前を歩き始めた彼の背中を見つめていた。
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