婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

文字の大きさ
61 / 79

私に教えてください②



「お父様……」

 身体を家令に支えてもらいながらも足を踏む一歩は力強く、先程からの騒ぎの一部を聞いたと話された。黙っていても何れバレるなら、今話すしかないとベルティーナは事情を説明した。全てを聞き終えた父は深い溜め息を吐きビアンコの片思いが暴走したのだろうと口にした。


「……片思い?」
「昔の話だ。モルディオ家にクラリッサ以外の子がいないのでクラリッサとの婚約は無理だと言ったんだ」
「お兄様はクラリッサが好きだったのですか?」
「……お前に泣かされ、傷つくクラリッサが可哀想で守ってやりたかったそうだ」
「……」


 こんな状況下で二人湖に行ったのもきっとクラリッサの頼みを断れなかったからだろうと言われ、深く項垂れてしまった。性質が悪いのは魅了に掛かっていないのに、魅了に掛かった人以上にクラリッサを大事にし過ぎている点。子供の頃の片思いを消せず、今もなお有り続けるならお願いを聞いてしまうのだろう。

 が、すぐに顔を上げてリエトへ相手を変えた。


「殿下、モルディオ家の罪状はまだ正式には決まっていませんよね」
「ああ、大神官が尋問を終え、報告書を王家が確認次第、裁判に掛ける。財産、領地没収は免れないだろう」


 爵位は良くて男爵になるか、悪くて剥奪のどちらかとなる。


「なら、そうなる前にモルディオ家に仕える使用人達に新しい就職先の紹介、親族への報せを」
「それならロロ伯爵に報せるといい」とは父。
「モルディオ公爵と兄弟の中で最も交流があると聞く。今の時期、伯爵は領地で過ごしているから早急に報せを届けよう」
「お、お父様がですか?」


 いくらミラリアと思しき光る球形が力を貸しているとしても、顔色は若干悪く家令に身体を支えられて立っているのがやっとの人に任せても大丈夫なのかと不安が過った。

 しかしベルティーナの不安をよそに父は表情を変えず淡々と紡いだ。


「ビアンコの有様を聞いたら、ジッとはしていられない。怪我が完治するまでは意地でも私がしなければならない」
「今にも倒れる寸前のお父様が無理をして倒れたら二重の迷惑になりますわ」
「だとしても、領地運営や公爵家の仕事を何一つ教えていないお前にはさせられない」
「……」


 淡々とした鋭い指摘を受け、口を噤んだベルティーナ。どれも正論だ。跡取りのビアンコが怪我を負っている今、知識と経験を持つ父以外まともに機能させられる人がいない。
 このまま屋敷を出て行ったら気になってゆっくり過ごせない。自分の性格は自分がよく理解している。
 無言になってしまうと不意に母について切り出された。


「此処に来る前、カタリナに会ってきた」
「え?」
「アニエスの力が原因でもカタリナを壊したのは私だ。最後まで面倒は見る。その前に片付けられる仕事は全て片付けておきたい」


 良い思い出が全くないベルティーナに負担を強いたくないと父に言われたベルティーナは――


「お断りです」


 真っ向から拒否をした。


「私とてアンナローロ家の娘です。良い思い出が一つも無くても、何時怪我が治るか分からないお兄様や何時倒れるか分からないお父様に任せきりは出来ません。不安です」


 大きく見開かれた瞳を見ると自分は父にそっくり何だと改めて実感した。


感想 345

あなたにおすすめの小説

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。