砂糖漬けの日々~元侯爵令嬢は第二王子に溺愛されてます~

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5 愛でるのは毎日のこと

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 夜会で着るドレスの採寸をヨハン監修の下行われた。
 ドレスの色はヨハンの瞳と同じ紫色。身に付ける装飾品も、爪も、なんだったら靴の色まで。

 顔を真っ赤して、ヨハンの膝の上で愛でられているエウフェミアは、乱れたネグリジェ姿のまま、大きな背中にしがみつくだけで精一杯。
 第2王子妃専属の女性デザイナーのリリィは、スケッチに描いたデザインをヨハンに広げ見せた。


「如何でしょう、殿下」
「ふむ……フェミーの胸と背中を開いたドレスを見るのが楽しみだったが、そうなると跡を付けるなと煩く言わるからな……。仕方ない。露出は控えめで、その代り俺の妻として相応しいドレスにしてくれ」
「畏まりました」


 ヨハンの中盤の台詞は聞かなかったことにして、リリィはエウフェミアの魅力を最大限に引き出す、露出控え目なデザインを脳内で組み上げペンを走らせていく。
 肝心のエウフェミアはというと、反論したいのに愛でられているので口に出来るのはヨハンの与える愛情に感じる声だけ。


 ――エウフェミアがぐったりする頃にドレスの下書きは終え、ヨハンのOKのサインが出た。スケッチブックを閉じたリリィは出来上がり次第すぐに城に届けますと言い残して部屋を出て行った。

 ヨハンは上気する身体を抱き上げ、ベッドに寝かせて覆い被さった。
 妖艶に火照る肌、甘い吐息を零すエウフェミアをじぃっと見下ろす。


「あ、あまり見ないで」
「可愛いな、フェミー。他人がいるのにいつもより反応は良かった。見られて興奮したか?」
「っ~~~」


 リリィがいる前でエウフェミアを愛でたのは他でもない、ヨハン自身。エウフェミアは必死に抵抗したが、力の差が激しいのと朝抱き潰された後に起きた直後だったので、身体に力が入らなかった。
 これ以上ないというくらい真っ赤な顔で口をパクパク開閉させる様子が、魚みたいで面白い。虐め過ぎると暫く喋ってくれなくなるので止めようにしようと額にキスをした。

 
「意地悪もこれくらいにしておこう」
「もう……知らない」
「怒るな。フェミー」
「知らない」
「フェミー」
「……」


 多分な愛情が含んだ紫水晶に見つめられて、声に囁かれて、これ以上拗ねることは許されない。
 ヨハンを見上げると、唇に触れるだけの口付けを落とされた。


「夜会まで日はあるがこれだけは覚えていてくれ。
 ――絶対に俺の側から離れるなよ? フェミーを狙う連中は多いから」
「はい。ふふ、私を狙うのはヨハンの妻の地位を欲しがる人だけよ」
「馬鹿を言うな。フェミーは魅力的過ぎるんだ。嫉妬に荒れる女だけじゃない。男でもお前を狙っているのは大勢いる」
「ヨハンの考え過ぎよ」


 呑気に微笑を零すエウフェミアに小さく溜息を吐く。彼女が自分の魅力は普通だと思うのは仕方ない。

 育ってきた環境がそうさせたのだから。


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