行動あるのみです!

文字の大きさ
49 / 81

終わったら2

しおりを挟む


「これとそれをこっちに置いてあれはあっちへ……」
 
 
 風の魔法を使って今までレーヴから贈られたプレゼントを全て部屋の真ん中に集めるシェリ。ミエーレは侍女ルルが淹れてくれたハニーホットミルクを味わっている。レーヴへの想いを完全に断ち切る為の決断として、全てのプレゼントの処分を決行。婚約が結ばれてから、彼は婚約者として定期的に贈り物をくれた。小さな物から大きな物までシェリ好み。口は利いてもらえず、目も合わせてもらえなくても望みがあると抱いていたのはプレゼントの存在が大きかった。本当に嫌っているなら、少なくともシェリ好みの贈り物はしないと。
 ずっと、ずっと待っていた。
 待っていた結果が現在。
 ルルは突然の奇行に驚きながらも、次々にプレゼントを置いていくシェリに黙って従う。
 衣類、装飾類、日用品その他で分けた品物を前に顎を人差し指でトントン叩く。
 燃やして終わりなら早いが再利用可能な品ばかり。日用品は使用済みなので難しいが……。
 
 
「ルル」
「はい、お嬢様」
「ドレスと装飾類は全て売り払って。日用品はそうね……未使用の物だけ残して、後は処分してちょうだい」
「本当によろしいのでしょうか? これ全部……」
 
 
 言い難そうに口籠るルルを心配させまいと「いいのよ。もうわたしは第2王子とは他人だもの」と気丈に振る舞った。まだ何か言いたげなルルだが、言われた通り準備を始めた。他の使用人と協力してドレスを丁重に外へ運び出し、装飾類もジュエリーボックスに仕舞って外へ。処分する日用品は適当な箱に乱雑に入れ、残す物は屋敷に仕える者で希望者がいれば与える方針となった。
 シェリは空っぽになった隣室に寂しさを抱いた。ずっと此処はシェリの宝部屋だった。レーヴから頂いたプレゼントの山で溢れかえっていたのに……物がなくなると実際の広さよりとても広々と感じた。
 ハニーホットミルクを飲み終えたミエーレが「シェリ」と隣に立った。
 
 
「本当にあれで良かったの?」
「ええ。いいのよ、これで」
 
 
 時間が経てば、初恋も失恋も何れ若さ故の苦い思い出となってシェリの記憶となる。
 頬を自身の手で叩いて「さて」とミエーレを見上げた。
 
 
「これからの話をしましょう」
「そうだね」
 
 
 元の部屋に戻り、中央に置かれるソファーに座った。
 ミエーレが早速切り出した。
 
 
「アデリッサのやらかしを暴露する前に、件の従者をどうにかしないとならない」
「接触する方法を考えましょうか」
「いや、それなら当てはある」
 
 
 魔法研究に力を注ぐライトカラー男爵は主に王宮魔法師研究所に勤めている。優秀な魔法使いの手を借りたいと常にボヤているとか。事の経緯を知るナイジェル公爵にある依頼をする予定。
 
 
「ナイジェル公爵にマティアスを王宮魔法師研究所に同行させてと頼んでみるよ。娘の従者の素性くらい、把握していない人じゃないと思うしね」
「そうね。アデリッサからマティアスを引き離す正当な理由といったら、それくらいね」
「ああ。“アデリッサがごねても頑張って♪”って応援するから、きっとやってくれるよ」
 
 
 声色からして状況を愉しんでいるのが明白な昔馴染み。長く付き合いがあるから、彼の性格が普通とは違うのはシェリがよく理解しているのに。時々頭が痛くなるとはこのことか。
 昼食時、核心をついたシェリの発言に大いに動揺したアデリッサが果たして簡単にマティアスを王宮へ行かせるだろうか。例え父親の同行だとしても、自身のやらかしを天敵に知られていると知ったアデリッサでも重要な協力者を自由にさせない気がする。
 ナイジェル公爵の力を信じるしかないか、と今度は溜め息を吐いた。
 
 
「知ってた? 溜め息を吐いた数だけ、幸せは逃げるって」
「なら、わたしの幸せはとっくの昔になくなってるわ」
「はは、違いない」

 
 シェリはミエーレを静かで硬い声で呼んだ。
 最初、レーヴが好きなのはミルティーだと誤解して婚約解消をし、ミルティーと婚約を結ばせたこと。ヴェルデがミルティーを好きだと知らず、あの2人の婚約を結んだことに強い罪悪感を抱いたこと。だが、実際はレーヴが好きだったのは自分で、その気持ちをアデリッサに利用されてしまったこと。
 ここ最近の出来事を第3者目線で語ると見慣れた天井を見上げた。
 
 
「きっと、バチが当たったのね。だから神様はわたしにこんな不幸を齎すのかしら」
「さあ? おれは無神論も有神論も信じてない。つか、どうでもいい。ただ、レーヴ殿下の気持ちが本物だったのは知ってる」
「……気持ちと決別した人間にそれを言うの?」
「言うよ。おれは言いたいことは言うし、言いたくないことは言わない」
「はいはい。そうだったわね」
 
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

処理中です...