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好意の方向は再び2

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 普段の愛らしい顔立ちも庇護欲をそそられる雰囲気もない、醜い女の本性を露わにしたアデリッサ。ミエーレから聞いた彼女のコンプレックス。ナイジェル公爵はこのこともあってアデリッサを殊更可愛がったのだろうが元からの本人の性格が災いして悪い方へ行ってしまった。


「で? 態々言いがかりをつける為に呼び止めたの? だったらもう行くわ。これから、ミルティー様と教会に行く予定なの」
「わたくしよりも平民の相手を優先するというの!?」
「彼女は伯爵令嬢よ。ラビラント伯爵が養女に迎えた正式な。それに、たとえ平民であろうと先約を優先するのは当然ではなくて?」
「わたくしを誰だと思ってるの!」
「ナイジェル公爵令嬢ね。それが何よ。わたしはオーンジュ公爵家の娘。身分は同じ」


 余裕のないアデリッサは次から次へと浅慮な言葉を投げかけてはシェリに一蹴される。周囲の目も増えてきた。いい加減離れたい。ミルティーが心配げに声をかけるも小声で「大丈夫よ」と返した。


「……に、本当に気に入らない女っ!!」


 途端、急激に上昇したアデリッサの魔力。周囲の生徒達が一目散に逃げていく。危険だと察知したシェリはミルティーに逃げるよう叫び、自身はアデリッサと対峙したまま残った。


「何をする気? 学院内での勝手な魔法使用は禁止されてるのよ」
「うるさい!! あんたさえ、あんたさえどうにかなればまたレーヴ様は……!!」
「っ!」


 鬼気迫り、殺気立つ迫力は途轍もない圧を放つ。真っ向から他人の殺気を受けた経験のないシェリも恐怖を感じ始めた。
 だが、意地でも逃げないと足を地面に強く押し付けた。逃げれば恥、とも思わなくもない。彼女のレーヴの婚約者だった意地とオーンジュ公爵家の娘としてのプライドが逃げる選択肢を消した。
 ミエーレに話した。アデリッサを嗾け、危害を加える様誘導すれば、必ず“魅了の魔法”を使ってくると。


「これさえ、これさえ使えばシェリ様……あんたは負け犬に成り下がるのよ」


 魔力を上昇させ不気味な笑みを零すアデリッサが片手に持つのは、淡い光を放つ銀の鍵。


「どうせ周りには誰もいないし、あんたの理性なんて吹っ飛ぶから教えてあげる。これはわたくしが従者に作らせた“魅了の魔法”を発動させる鍵よ」
「!」


 予想通り、アデリッサは“魅了の魔法”を仕掛けてきた。


「レーヴ様に使ったものよりも更に強力にしてもらったの」
「……アデリッサ。“魅了の魔法”を使ってまで人の心を手に入れて嬉しい? そんな、魔法で塗り固めた偽りの心を向けられて」
「何を言ってるの? “魅了の魔法”は相手を自分に魅了させる為の道具。偽りじゃない。現にレーヴ様はわたくしを愛してくれた。それが何故か今日になって急に冷たくなり出した……あんたさえいなくなれば、またレーヴ様に魔法をかければ今度こそずっとわたくしを見てくれる……!」


 レーヴに実際に掛けられたのが“転換の魔法”だと、やはり気付かないようだ。
 シェリは時間稼ぎの為に敢えて“魅了の魔法”の使い道を訊ねた。 


「わたしに“魅了の魔法”を使ってどうするのかしら? まさか、わたしにあなたを好きになれとでも?」
「馬鹿ね。あなたが好きになるのはレーヴ様よ。でも、レーヴ様にとっても嫌われているあなたはレーヴ様に邪険にされた瞬間、付加した“精神異常”で気が触れて廃人になるの。更にレーヴ様にはわたくし見えないようにする魔法をかけるの。そうして、わたくしとレーヴ様は邪魔者が消えて晴れて堂々と愛し合えるの!」
「……」


 かなり堂々と愛し合っているように見えたが……突っ込むことはしなかった。


「……“魅了の魔法”が禁術指定されている魔法と知っていて?」
「知っているわよ。でもそれが? 今ここにいるのはあなたとわたくしだけ。今からあなたは理性がなくなる。誰も証言なんてできないの」
「はあ……そう。アデリッサ、あなたの頭がおめでたいのは髪の毛の色のせいかしらね」
「!!」


 シェリが呆れるように紡いだ言葉にアデリッサの形相が瞬時に変わった。

 ミエーレの言っていたアデリッサのコンプレックス。


「“傾国の毒婦”と同じ髪をしてると性格まで同じになるみたいね」


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