思い込み、勘違いも、程々に。

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悩みは尽きない〜義母シェリア視点〜

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 恐らくだが、私や旦那様の目が届かない所でお母様やトロントが何らかの方法でフィオーレに言い続けていた可能性が大いにある。私達が気付けたら全て排除してきた。……が、悪巧みに関してトロントはお母様よりも上手い。もっと別の方に頭を使うというのを幼少期もっと叩き込めば良かったと今更ながら後悔した。
 何度もエーデルシュタイン家を継ぐのはフィオーレだと、フィオーレもエルミナ2人共を愛していると伝えた。それでもあの子は信じようとしなかった。
 私や旦那様と似ていないことを随分と気にしていたから、旦那様と同じ仕草をしていたり、私と好きな物が似ていたらすぐに教えたりもした。
 フィオーレはミランダ様、そして遠い公爵家の血を濃く引いているから、気にするのも仕方ない。
 青みがかった銀髪はミランダ様譲り、紫紺色の瞳は公爵家。容姿に関してはミランダ様と瓜二つ。ミランダ様を愛してやまない旦那様のフィオーレへの溺愛ぶりはすごかった。……本人に全く伝わってない上、現状伝えても信じてもらえない。
 私とて、母と娘らしく、フィオーレとエルミナを交えお出掛けをしたり、一緒にドレスのデザインを考え、時にお茶の時間をしたい。
 それも10歳以降、何かしら理由を付けて断られる為殆ど叶えていない。

 食堂に戻り、未だ固まったままの旦那様の肩を叩いた。ハッと、やっと現実に戻った旦那様に2人が出発したと告げた。ナイフとフォークを置き、肩を落とした旦那様から発せられる陰鬱な空気が鬱陶しく、窓を全開にしてもらった。


「酷くないか!?」
「空気の入れ替えは大事ですわ」


 こっちまで気分が重くなってしまう。


「……シェリア……フィオーレは覚えているだろうか」
「どうかしら……稀に赤ん坊の頃の記憶がある人はいるけど……」
「ふむ……。フィオーレが隣国の公爵令嬢と親しくしているのはただの偶然だろうか……」
「同じクラスなら、気が合って仲良くなるのもあるでしょう?」
「そうだが……」


 旦那様は何を深刻に考えていらっしゃるのか。フィオーレが出した名前は隣国のとある方の隠し名。フィオーレを覚えているかは定かじゃないが目的があって近付いたのなら……うーん……だが覚えている確率の方が高い。


「悩みは尽きないわね」
「ああ……ロードクロサイト家からの縁談話もある」
「あちらも粘るわね」
「御子息がとんでもない条件を公爵に叩き付けたからだ。公爵からはいい加減返事を急かされているが……だがなあ……」


 悩みは今日生まれたものだけじゃない。2年前から存在する悩みもある。どれにもフィオーレが関わっている。


「フィオーレがエルミナに跡取り教育を受けさせるよう言い出した時、最初は反対したが……今となってはエルミナにも受けさせて良かったと思ってる。だが私としてはやはりフィオーレに継いでほしい。エルミナにも良縁に恵まれてほしい。……はあ~……」


 特大の溜め息を吐いた旦那様の肩を強く叩いた。


「しっかりしなさい。あなたがそんな風では、困るのはあの子達よ?」
「分かっている。分かっているが……なんでフィオーレなんだ……! 私はあの子には伯爵家にいてほしいんだ……! ミランダに瓜二つなあの子が嫁ぐなんて心配で心配で……!」


 始まった……。
 何故かロードクロサイト家の御子息はフィオーレを婚約者にと望まれている。だけど2人共家を継ぐ予定の子達。我が家にはエルミナがいるから、フィオーレを嫁がせても問題はないけれど……この娘馬鹿がそれを断固として許さない。ミランダ様との唯一の娘を大事にしたい気持ちは分からないでもない。


「けれど、いい加減決めないと。ロードクロサイト家向こうもいつまでも待っててくれない」
「フィオーレの人一倍思い込みの激しいところはミランダそっくりなんだ。私はそれが心配で心配で……!」


 私達の言葉がフィオーレに届かないのは、あの子の1度思い込むと中々信用してくれない部分にある。彼はミランダ様に容姿だけじゃなく、性格までそっくりなフィオーレを過剰な程心配する。

 何度か顔を合わせる機会はあったが私自身、ミランダ様と親しかった訳じゃないから、どういった人だったのかは詳しくは知らない。

 婚約の件と大教会にいる方の件……両方どうにかせねば。

 悩みは尽きないが、今はフィオーレとエルミナが平穏な学生生活を送れていればいい。


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