4 / 26
不可解②
しおりを挟む「来ているのはロリーナ様だけ?」とクリスタベル殿下。
「お姉様もいます。今はロードナイト殿下と一緒です」
「そうなの。ではグレン、私は行きますわ」
薔薇の花束を両手に持ったまま、複数の侍女を引き連れクリスタベル殿下は去った。残されたのは私とグレン様のみ。
一緒にいても会話が殆どないので、二人きりの空間は気まずい。何より、お父様やシュタイン公爵は私達の婚約解消について話し合っているので尚更。
「登城理由を聞いているか?」
この口振りからするにグレン様は事情を知らされていない?
正直に話そうか迷うも……私を嫌っているグレン様は、婚約解消について話し合っていると知ったら喜ぶに違いない。
さっさと彼を私から解放してあげようと私達の婚約を解消に向けての話し合いだと話した。
「は…………?」
「?」
あれ? 思っていた反応と違う……。
てっきり、喜んでくれるのだと思っていたグレン様から表情が抜け落ち、呆然と私を見る。
もう一度言うと急に慌てだした。
「な、何故だ、どうして!?」
「私の台詞ですが!?」
どれも今の私が口にしたい。
「どうして婚約解消などと……!」
「グレン様……本気で仰っているのですか? グレン様は私が嫌いでクリスタベル殿下が好きなのでしょう?」
「何の話だ!?」
「こっちが何の話ですか!?」
喜ばれるどころか、慌て怒り出したグレン様についていけない。
「いつ俺がお前を嫌いだと言った!?」
「心当たりがないと本気で言っていますか!?」
「っ」
心当たりはあるみたい……。なら尚更、自分の言葉がおかしいと気付いてほしい。
「私には冷たい態度しか取らないのに、他人……特に王女殿下には常に愛想をよくして、私と一緒だと常に嫌そうに目も合わせないグレン様にいい加減疲れました」
「ロリーナっ」
「大体、今までの態度の何処を見てグレン様が私を嫌いじゃないと言えるのです。好意的に見ていたと証言して下さる方がいたら連れて来てください」
周囲からも婚約者に嫌われた令嬢だと嘲笑われていた。私が出自不明な踊り子の子だから。母の出自はカラー侯爵家ととある家のみが知る。周囲に言ったところで信じる者ははたしてどの程度いるか。
私が本当の事を突き付けるとグレン様は言葉を詰まらせた。弁解しようにも事実だから他の言葉がない。
「お父様はシュタイン公爵家と繋がりがなくても我が家は困らないと言ってくれました。グレン様が不利にならないようにと頼んでいますのでお気になさらず」
「婚約解消なんて絶対認めない!」
「認めないと言われても……」
「い……今までの態度が悪かったのは認める。す、すまかった。お願いだ、やり直しの機会をくれないか」
「……無理です」
下に見ていた私に下手で出る程カラー侯爵家との繋がりが欲しいのだろうか? 魔法技術が絡んでいるからか。我が家が困らなくてもシュタイン公爵家にとっては痛手となるとグレン様の態度も頷ける。私が断ると傷付いた顔をなさるのは何故。私が嫌いなのでしょう?
「グレン様とこの先、一緒にいる未来を想像したら疲れ果てた自分しか浮かびませんでした。グレン様だって本当はクリスタベル殿下が好きなのでしょう?」
「王妃殿下と母が友人なのもあってクリスタとは幼少期から交流があるだけだ。王子達だって同じだ。クリスタに特別な気持ちは持っていない」
「だとしても、お断りです」
「ロリーナっ!」
殊勝なのはどうせ今だけ……時が過ぎたら元に戻る。
「俺は絶対に認めない。父上達に話をつけに行く」
「な、ちょ、ちょっと」
止める間もなくグレン様は行ってしまわれた。
そうまでしてカラー侯爵家と繋がりを持ちたいの……?
別の方法を探すにしても、きっと面倒じゃないから私と婚約したいままでいたいのだ。
311
あなたにおすすめの小説
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私を見ないあなたに大嫌いを告げるまで
木蓮
恋愛
ミリアベルの婚約者カシアスは初恋の令嬢を想い続けている。
彼女を愛しながらも自分も言うことを聞く都合の良い相手として扱うカシアスに心折れたミリアベルは自分を見ない彼に別れを告げた。
「今さらあなたが私をどう思っているかなんて知りたくもない」
婚約者を信じられなかった令嬢と大切な人を失ってやっと現実が見えた令息のお話。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる