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不可解③
しおりを挟むさて、この先はどうしようと悩む。やっぱり、グレン様を追い掛けるのが筋。大体彼の考えがさっぱり不明だ。散々私を放置して、冷たくしておきながら、婚約解消の話が出た途端拒否する姿勢が意味不明過ぎる。グレン様を追い掛けよう。お父様とシュタイン公爵が話し合いをしている部屋に向かい、扉前に待機する騎士に話を通すとすんなり入れてもらえた。
室内には既にグレン様がいて。お父様とシュタイン公爵に頭を下げていた。
「お願いですっ、ロリーナとの婚約解消は待ってもらえませんか」
「……だ、そうだがロリーナ」
お父様はグレン様ではなく、入室した私に回答を求めた。頭を上げたグレン様の縋るような目を見ると絆されそうになる。……でも、さっきも見たクリスタベル殿下との仲睦まじい姿を思い出すと首を振るしかなかった。
「ロリーナっ」
「今まで散々下に見てきた婚約者がいなくなるんです。喜んだらどうですか」
「な、お前は俺がそんな人間に見えるのか!」
「グレン様がどの様な考えで私に冷たくしていたのかは知りません。ただ……もうグレン様を待つのは疲れたんです。少しでも私の事を想って下さるなら、この苦痛から解放してください」
「っ……」
カラー侯爵家の魔法技術に関して私が口を挟む権利はない。そこは当主であるお父様が片付ける。シュタイン公爵を見ると申し訳なさそうされていて、ぺこりと頭を下げた。グレン様と違ってシュタイン公爵夫妻にはよくしてもらった。特に公爵夫人には、息子のグレン様しか子供がいないから娘のように可愛がってもらった。
ここまで言えば諦めてくれるだろうと思ったら、間違いだった。
「一度だけでいいっ、俺に機会をくれ」
「ですからっ」
しつこい、と溜息を吐くと慌てたグレン様の相貌が近くなった。
「態度も改める。これからはロリーナを優先するから、だから」
「はあ……もういい。グレン、見苦しいぞ」
頑なに私との婚約解消を嫌がるグレン様に痺れを切らしたのはシュタイン公爵だった。呆れ果てた声色と顔とは裏腹に、慌てふためくグレン様を冷徹な眼で射抜いていた。
「お前の今までの態度は私やカラー侯爵から見ても目に余るものだった。お前が招いた結果だ。シュタイン公爵家は婚約解消を受け入れる」
「な、待ってください!!」
「そんなにロリーナ嬢と別れるのが嫌ならお前自身でどうにかしろ。十日後、陛下に婚約解消の受理を求める。反論は認めん」
「っ……」
悔し気に唇を噛み締め、項垂れたグレン様からそっと離れた私はお父様の側に移った。婚約解消には様々な手続きが必要となる。貴族の婚姻は王家の承認が必要となり、破棄・又は解消も王家の承認が要る。
お父様はシュタイン公爵とグレン様に声を掛けてから私を連れて部屋を出た。出る間際、グレン様が見せた悲し気な面が忘れられない。
部屋で出ても黙る私を見兼ねてか、お父様が話し掛けた。
「グレン殿と外で会ったのか?」
「は、はい……薔薇園でクリスタベル殿下といるところに」
「そうか」
「お父様はグレン様が婚約解消を嫌がる理由を知ってますか?」
「知ってはいるがグレン殿はお前に何も言っていない様だから、何も知らなくていい」
「どういう意味ですか?」
訊ねてもお父様は再度知らなくていいと言うだけで何も教えてくれなかった。
騎士の方にロードナイト殿下といるお姉様を呼んでもらい、揃ったところで私達は侯爵家に戻った。
馬車から降りた私は別の馬車が停車されているのに気付いた。先に降りていたお父様とお姉様は馬車に乗車されていた方といた。
「ロリーナ嬢。好い天気ですね」
「カリアス様」
青みがかった黒髪は風が吹くとサラサラと揺れ、夕日と蜂蜜を混ぜた美しい瞳が嬉し気に細められた。
カリアス様はベルローズ公爵家の嫡男でグレン様の従兄。グレン様繋がりでカリアス様と知り合った。グレン様と違って初対面の時から私に親切にしてくださる方で、周囲は踊り子の子と私を嘲笑うのにカリアス様は平等に接してくれた。
淑女の礼を見せると「そう固くならないで。朗報を聞き付けてやって来てしまっただけだから」と言われた。
「朗報?」
「カリアス殿。少々気が早いようですな」
「逃したら次はありませんから」
カリアス様とお父様の会話から察するに何か政治的やり取りでの内容だろう。私は聞くべきじゃないと先に退散しようするがカリアス様に止められた。
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