39 / 43
18
しおりを挟む今日はリナリアに見せたい物があると言ってラシュエルがやって来たのは昼。丁度昼食を摂る時間帯。聖域に行ってからの二日間は多忙を極め大教会に来る時間が取れなかったらしく、今日は隙間時間を見つけリナリアに会いに来た。いつもの如く、変装魔法を使って街のリストランテで昼食をとなり、タイミングよく席があった為二人は座った。
「私に見せたい物とは?」
「これだよ」
給仕にランチセットを注文後、テーブルに封が切られていない手紙がいくつも並べられた。
「これって……」
リナリアには見覚えがあった。
あって当然だ。全てリナリアがラシュエルに送った手紙なのだから。
「私が『魔女の呪い』に苦しんでいた時、君が送ってくれた手紙だ。やはりヘヴンズゲート侯爵が握っていた」
「てっきり、とっくの昔に処分したものだとばかり……」
「ああ、私も」
しかし綺麗に残されていた。回収をしたラシュエルの部下曰く、侯爵は破棄するよう指示したそうだが任された侍女はこれをイデリーナが書いたことにして細工をしようと思い付いたらしい。が、リナリアは聖域に行ってしまい、イデリーナは聖女の能力に目覚めラシュエルの病を完治させてしまったので不要だとし、廃棄もせず存在を忘れ去った。
見つけられたのはヘヴンズゲート侯爵に仕える者達を一人ずつ聴取した甲斐あってのもの。
更に、これも、とラシュエルは別の手紙の束を出した。
「これは私がリナリアに送った手紙。これはイデリーナが隠し持っていた」
「イデリーナが?」
「リナリアに送られた手紙でも、私が書いたのならと侍女を使って回収させていたそうだ」
呆れて物も言えないとは正にこのこと。
テーブルに並べられたリナリアからの手紙を綺麗に一纏めにしたラシュエルはそのまま懐に仕舞った。リナリアとしてはもう必要ないからと回収したかったのだが。
「どうして? リナリアが私の為に送ってくれたんだ、大事に置いていたい」
あまりに手紙を嬉しげに見つめられてしまうと返してほしいと言えない。
ラシュエルが送った手紙を自分の方へ引き寄せる。病に苦しんでいる最中にも関わらず書いてくれた手紙。達筆な字を書くのに、宛先の文字は歪でインクも滲んでしまっている。
必死で書いた手紙の返事が来なければ、信頼の篤い人であっても不安と疑心が募るのは当然。
——原作のラシュエルがリナリアを信じられなくなるのは道理って訳ね……
側で支え続けたイデリーナに心変わりした彼を非難するのも難しい。
——今は原作と展開が違うとは言え、リナリアの末路だけがどうしても分からない。
自分が目指すのは平凡な結末。バッドエンドではなくてもメリバは嫌だ。
「クローバー侯爵夫妻の養子になる話は進んでいるそうだな」
「私が今までお父様達から受けていた仕打ちを教皇様がクローバー侯爵様達に話したので予定より早くなりそうです」
「聖域に拒絶されてもイデリーナは聖女の能力を失ったわけではなかったのだな」
「はい……教皇様もユナンも驚いていましたね」
結界に触れた直後に吹き飛ばされ、盛大に拒絶されたイデリーナに最早聖女の能力は残っていないと本人も悟った。のだが、大教会に戻った際、試しに検査をするとかなり微量だが残っていた。結果を見た教皇は腰を抜かし、文句を言いながらユナンが支えていたのを思い出す。
「元々の予定通り、イデリーナを修道院へ送る手配も今している最中です。ただ、仮に修道院に行ったとしてもイデリーナが聖女の能力を取り戻せるかは希望薄だとか」
「そうだろうな。教皇も聖域にあそこまで拒絶されるとは予想していなかった。寧ろ、聖女の能力が未だ残っていたことが信じられない」
イデリーナが父の娘ではない可能性が浮上している。この件については親子鑑定で明らかとなる。
「お父様はする方向で、義母は反対して二人は毎日喧嘩をしていると様子を見に行っている神官様が仰っていました……本当にイデリーナがお父様の子ではなかったら、清々すると思う自分がいて吃驚してしまって」
「散々君を蔑ろにしてイデリーナばかりを溺愛してきたんだ。それがイデリーナが実子ではなかったなら、因果が回ってきただけだ。リナリアがどう思うと君が悪いとは思わない」
検査実施日は聞かされていないが恐らくそう遅くはない。二人の注文したランチセットが運ばれた。熱々のグラタンとサラダ、スープが並べられ、早速頂きましょうとスプーンを持った。
リナリアがグラタンをスプーンで掬った際、一羽の白い鳩がテーブルに降りた。
「身体に大教会の印が刻まれているな……伝言鳩だろう」とラシュエル。鳩に触れると託された伝言が魔法陣に表示されるらしく、早速鳩に触れた。
展開された魔法陣に表示された文字には、現在イデリーナが大教会で拘束されている旨が書かれていた。
「どうしてイデリーナが」
「続きを見てみよう」
更に読んでいくと、突然現れたかと思うとリナリアに会わせろと喚き、騒ぎを聞き駆け付けたユナンを見るなり魔法攻撃で危害を加えようとした。荒事には慣れているらしいユナンや周りの神官達にあっという間に拘束され、現在尋問部屋にいる。
イデリーナとて聖女の能力の消滅は免れたい筈なのに、何故暴挙に出たのか。経緯を知りたく、昼食が終わり次第戻ってほしいと最後にあった。
「私も知りたい。ラ……エル、ごめんなさい、昼食が終わったらすぐに戻ります」
「私も行く。大教会内だから危険はないと考えたいが万が一がある。それに私もイデリーナの行動の理由を知りたい」
伝言を預かった鳩にお礼として魔力を分け与え空へ飛ばした。
折角の楽しいランチが、と残念に感じながらも、理由が理由だけに仕方ない。
384
あなたにおすすめの小説
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる