卯の姫と辰の君

神無月 花

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一話 辰二朗の回想

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龍花「辰二朗兄様!」


   3年前。辰城家の経営する龍城学院の中等部の1年生だった龍花は、かなりのお兄ちゃん子だった。

ーー1人を除いては、だが。


  辰二朗は、龍城学院の高等部の3年だったが中等部と高等部では授業の時間にズレがある為、辰二朗の方が龍花より遅く帰宅していた。

その辰二朗を、龍花は制服姿のまま出迎えた。


   辰二朗「龍花、まだ着替えてなかったのか?いつも言うけど、先に着替えてて良いんだぞ。」


龍花「だって、それだともしお兄様が早く帰宅なさったらお出迎えができないじゃない!」


   そう言うと、龍花は辰二朗に抱き着いた。


龍花「おかえりなさい!」

辰二朗「ただいま。」
「あと龍花、これもいつも言ってるけど、もうお前も中学生。レディだろ。レディが男に軽々しく抱き着いちゃいけません。」


龍花「いいじゃない、兄妹なんだもの!私だってお兄様とお父様以外にはこんな事しないわ。」


  それを聞くと、辰二朗はしょうがないな。というような表情で龍花の手を繋いだ。


その時。




   「俺には挨拶もしてくれないじゃないか。龍花。」



龍花「っ、龍一兄様...」


  龍一「それとも、お前達のように強い“龍力“を持っていない俺など兄ではない。ということか?」


龍花「そ、そんなことありませんわ。龍一兄様。」


  辰二朗「龍花、行こう。」


   龍花と龍一の重い空気に耐えきれなくなった辰二朗は、龍花の手を引き歩き出した。


龍一「ふん。憎々しい弟妹どもめ。」


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