上 下
120 / 408
第一集 弐ノ巻

*甘い夢の中で微睡む

しおりを挟む
紫苑が本家に到着すると、戸は開けられており、すぐに中に入ることが出来た。

  そして、本家内へと入った紫苑は、すぐ様とある場所に向かった。




紫苑「癒良....」


   紫苑が向かったとある場所、というのは、話会の際にいつも癒良が泊まっている部屋だった。

そこには、大阪分家に仕える陰陽師の言葉通り力無く横たわり、寝息を立てる癒良の姿があった。


   紫苑(確かに顔色は悪くないし、体がかなり痩せた。とかは無さそうね。それに....)


ーーほんとに幸せそうな表情だわ。



....夢から目覚めたくないくらい、辛い事があったのかな。でも、癒良は昔から辛そうな表情を私の前で見せた事がないし....


紫苑『私、幼なじみなのに癒良の事で知らない事がたくさんあるわね.....』


  紫苑は、誰に言うでもなく小声でそう呟いた。


    紫苑「ねぇ、癒良。どんな夢をみてるの?私に教えてよ。」



しかし、紫苑が耳元で話し掛けても、癒良の瞼も、体も呼吸以外では動く事はなかった。それも、全くだ。



  癒良「紫苑....」


紫苑「え....?」


   癒良に名前を呼ばれた癒良は、癒良が起きたのだと思い、癒良を再度見つめ直した。しかし、先程と変わらず、癒良は眠り続けたままだった。



   紫苑(小さい頃の記憶でもみてるのかしら。....確かに、小さい頃は今より少し自由だったし、楽しかったものね。)
しおりを挟む

処理中です...