陰陽ノ花〜現代陰陽師奇譚〜

第四集 参ノ巻

襲撃

かづきとの闘いから少し経ったある日。



またもや紫苑の家に、結界の壊された音が響き渡った。




    紫苑｢また？!今度は何なのよ？!｣


紫苑は札を持つと、庭に向かった。


＊

紫苑｢あなたは....｣


　正明｢お久しぶりですね。姫。｣


　  正明は庭にある岩に優雅に座っていた。その様子は、とても結界を壊した襲撃者本人のものとは思えない。



　正明｢姫、僕と闘っていただきたい。｣


　　　紫苑｢そりゃ、襲撃者なんだから闘うわよ。でも、なぜ家を襲撃したの。｣　　


　　　　正明｢それは秘密です。｣

正明は岩から飛び降りると、刀印を組んで指先に霊力を集中させる。

　　　正明｢臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前。｣



　正明の指先から、とても強い霊力が放たれた。紫苑はそれを簡易式の結界術で防いでしまった。



　　正明｢さすが姫は力が強い。まさか僕の術を簡易結界で防いでしまうとはね。｣


　　　紫苑｢臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!｣



　そう言った正明も、呪文を唱える事なく刀印を組み変えるだけで攻撃を防いでしまった。紫苑は、武器が入った札を取り出すと、こう呟いた。



　　紫苑｢我ともに闘う弓よ。今、その封印を解き、我がもとに参じよ!｣


　紫苑が呪文を唱え終えると、札の中から紫苑の身長程もある弓矢があらわれた。


紫苑は呪文を唱えると、弓に手をかける。よく見ると、先程まで弓にあった筈の矢が無くなっている。....そう。紫苑の先程の呪文は、矢を弓かやら抜くためのものだったのだ。


　

正明(あれは...！まさか武式...？姫は武式を持っていたのか。)

　

　紫苑｢弓よ。自身の力を解き放て！我の力と共に!｣



　　紫苑がそう言い放つと、弓から光とともに紫苑の霊力が正明に向かって放たれる。が...それもすぐに防がれてしまった。



　　
　紫苑(霊力が集中してる指先を狙わないとダメかしら...よし。)


　紫苑｢弓よ。自身の対となる物を再び目覚めさせよ。｣



　　紫苑は再び弓に手をかけると、矢を放った。矢はまた紫苑の霊力を帯び、正明の手を狙う。


弓矢は見事、正明の手に命中した。が、まったく痛がる様子はない。


　紫苑(どうゆう事？何か術でもかけているの？)


正明｢どこを狙っているのですか？｣


　　いつのまにか、正明は紫苑の真後ろにいた。


　
　紫苑｢嘘...さっきまで確かにあっちに居たのに...｣

　
　正明｢あれは僕の式神ですよ。よく出来ているでしょう？｣


　　確かに、正明の式神はよく出来ていた。なぜなら、見た目だけでなく、攻撃の仕方まで本人にそっくりだったからだ。しかも、正明は式神との感覚の共有を切っていたので、本人にはまったく害はないのだ。