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第七集

炎気の虎

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   清秋が山に着くと、そこには炎を纏った朱い虎が居た。
朱虎は、肉の焼けた鳥らしきものの羽などを爪で器用に剥がしながら、美味しそうに肉を食べていた。その様は、その身に炎を纏っていなければ、普通の猛獣に見える。




【隠れてねぇで出てこいよ。】



   そして、肉を全て食べ終えた朱き虎は、清秋達が隠れている木の陰に視線を向けてそう言った。
朱虎のその言葉を聞いた清秋達は、胸元で刀印を組んでその手に符を持つと、一斉に木陰から出て朱き虎の前へと歩み出た。




【へぇ。陰陽師か。で、オレに何の用だ。】




朱き虎は、威圧するかの様な声でそう言った。朱虎が話す度、その口からは獣らしい唸り声も聞こえてくる。




「最近、この山で原因不明の出火が多くある。今のところ大きな犠牲はないが、お前がその原因ならば、放っておく訳にはいかない。」



康名が更に一歩、朱き虎に近づきそう言った。



【 確かに、オレは獲物を仕留めるために火を使ってる。だから、その原因はオレだろうな。だけどな、オレは人間に害を与えてるわけじゃないし、山の動物も必要以上には殺してない。”しょうがなく”やってるんだぜ。お前ら人間だって、〝生きるため〝にじゃねぇか。それと同じだよ。】
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