お金がないので黒魔術を何とか正当化させて天下無双してみた。

neeck

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第一話 

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 ジリリアは期待に胸を膨らませてその門をくぐり抜けた。たった一人田舎娘のために、村の全員が奨学金の保証人になってくれたのだ。勉学に励むことも大切だが、しっかり学生生活を楽しまなければ村のみんなに示しが付かない。

「いよいよだ。私の物語が始まる。」

 生まれてこの方、自分と同じ世代の人間を見たことがなかった。周りを見渡してみると学生、学生、学生、たまに先生。もうわくわくが止まらない。

「あれ、あなた新一年生?質問室はこっちよ。」

 眼鏡をかけた美人の先生に声を掛けられた。

「えっと、ここに来るの初めてで迷子になっちゃって。」

「私もその部屋に行くから、付いて来なさい。」

 先生は言葉こそ端的なものの優しい口調でそう言った。名札を見るとリルラと書いてある。専門分野は風魔術ならしい。部屋に入るとそこには資料の山があり、よく見ると全て風魔術のことが書かれているようだった。

「おじさんたちはいないようだから、私が話を聞きましょうかね。」

 リルラ先生はそのまま目の前にある椅子に座った。

「あの・・・これのことなんですけど。」

 ジリリアはリュックから数冊の本を出した。

「なんであなたがこれを持ってるの?」

 リルラ先生が急に大きな声を出した。

「おばあちゃんの家にあったんです。」

 ジリリアは物心ついたころからその本を頼りに魔術を勉強してきた。

「でかしたわ。こんなもの存在しちゃいけないもの。」

「そうなんですね。え?どういう意味ですか?」

「この本に載っているのは全て黒魔術よ。世界に散らばった一万冊の禁書、その一部がこれよ。これは学内で預からせてもらいます。複雑すぎて読めなかったでしょうけど、これを使ったら即死刑だから気をつけてね。」

 どうしよう。全部読めたし、全部覚えたし、全部使えるし、全部使ったことがある。ジリリアは死にたくなかったので黙っておくことにした。

「あなたは確かジリリアだったわね。今回のお礼として、一番下のクラスから一番上のクラスに変えておくわ。高等魔術が必要になるけど、禁書を手に入れるだけの実力を持ったおばあさまはいたんだもの。きっと大丈夫よ。」

「はぁ。」

 ジリリアは気の抜けた返事をして、部屋を後にした。本当は自分の魔術がどれぐらいのレベルか知りたかっただけなのに。ジリリアはリュックの中を確認した。その中には空間拡張と重力無視の魔術がかけられており、さっき渡したのも含めると一万冊の魔術書があった。

「これ多分、全部黒魔術だよなぁ。」

 入学式の後には、簡易的な魔術演習がある。そこで普通の魔術が使えないことがバレたら退学になるかもしれない。入学式まであと一週間だ。その間に何とかして普通の魔術が使えるようにならなければとジリリアは思った。









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