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第2章 5年前の亡霊
第19話 へギンスの企みとは
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お風呂での着替えを済ませ、私は今人生で一番緊張している。私の前に2人のイケメン。
片やこの国の第1王子、コーネリアス殿下。メイドさんからおっぱいモンスターの情報を得てもそのマイナスを打ち消す程のイケメン!
片やクルトレス・サンクトルム黒の若き隊長、爵位とかわかんないけど王子殿下と仲良いあたり間違いなく上流貴族の御令息のイケメン!
うーん、どちらも優良物件だけど私のモノになるわけがないので、せいぜい目の保養だけでもさせてもらうとしよう。
「マレフィカさん。この度は我等クルトレス・サンクトルムに潜む悪魔を退治してくれたことに感謝を。並びに我等の至らなさで辛い思いをさせたことに謝罪をさせていただきたい」
ローランさんが口を開くと頭を深々と下げる。
「マレフィカ=アマーレ。私を守ってくれたことに感謝を。そして新しく誕生した聖女に喜びの言葉を述べたいと思う」
さすがに殿下が頭を下げることはないが、直接のお言葉など私には身に余りすぎる。ええもうご2人の尊顔を拝見させていただいただけで十分でございますとも。
「あの、私には過ぎたる言葉です! ローラン様も頭をお上げください! 畏れ多くて心臓が持ちません!」
沸騰しそうな頭をなんとか落ち着かせながら懇願する。いやほんと、心臓に悪すぎる。
「うむ、今日はその詫びと祝いを兼ねて食事を用意させてもらった。今回はマナーを気にしなくていいから好きなだけ食べてくれ」
気にしなくていい、と言われて本当に気にしないのはただのバカだと思う。でもマナー知らないから大目に見てくれるのは有難い。
「ありがとうございます」
私は深々と頭を下げる。しかしマナーを気にしなくてもいいと言われても、やはり2人を前に食事をするのは本当に心臓に悪い。しかし目の前には美味しそうなご馳走が並べられていく。これ1皿いったいいくらするのやら。聞くのが怖いから絶対聞かないけどね?
まずは前菜。かぼちゃの甘味とトマトの酸味のバランスが素晴らしい。1口食べると広がるトマトの酸味は、かぼちゃの甘味で角が抑えられている。その甘味もくどさがなく、舌に残りつつも爽やかさがあった。冒険者の作るある程度食えりゃオッケーな料理とは次元が違いすぎる……。
「ときにマレフィカさん。へギンスはクルトレス・サンクトルムで何をしていたと思う? 奴の力なら1人でも街を壊滅に近い状態まで持っていけたはずだ 」
うーん、ある程度検討はつく。ただそこまでする理由がわからないのよね。キャトルならわかるのかな?
「キャトル、わかる?」
「わかりますです。奴の目的はこの国の精鋭をウテロに食わせてデモノイドを増やすことなのですよ。というよりそれ以外に答えがないのです」
あーやっぱりそれか。戦力増強かー。
「ちょっと待ってくれ。ウテロだって? 悪魔の女王ウテロは聖女アナスタシアによって滅ぼされたはずだ」
うんまぁ、信じたくないよね。では聖女アナスタシア様が滅ぼしたウテロはなんだったのか、ってことになるんだけど……。
「ウテロは一体ではないのです。人間の王は1人しかいないのですか?」
「いや、国ごとに1人おられるが……」
「それと同じことなのです。残るウテロは3体のはずなのです」
「なんということだ……」
2人は揃って頭を抱える。まぁ、知りたくなかったかもね。多分だけどスゼレンテラ教国は上層部なら知っていると思う。
「それにデモノイドを増やすだって? ウテロは人間を餌にして子供を産むのか?」
「正確には作り替えてるのだと母さまから聞いているのです。デモノイドは元々人間であるということなのです」
「……!」
あー、2人の顔色が真っ青だわ。そらショッキングだよね。この情報は正直秘匿すべきだと私は思う。
「そして産まれるデモノイドは元の人間の能力に依存するのです」
「だから最精鋭を餌にしていたのか……!」
しばらく沈黙が続いた。それだけ内容がショッキングだったのだろう。それでもローラン様は口を開く。
「つまり、数を増やして人間を滅ぼそうというつもりだったのか」
「それは違うのです。というより有り得ないのですよ」
私もそう思っていたんだけど、キャトルはサラッとそれを否定する。
「それはなぜだい?」
「デモノイドにとって人間はただの仲間を増やすための餌に過ぎないのです。街を滅ぼしたいなら上位種2人もいれば簡単なのですよ」
キャトルは間違いなく上位種だ。そのキャトルが言っているのだから本当にそうかもしれない。もしキャトルが人間に牙を向けば、私にだって対抗手段は無い。力が違い過ぎるのよね。
「つまり歯芽にもかけてない、ってこと?」
「そうなのです。デモノイドの敵はデモノイドなのですよ? 人間に対する考え方は母たるウテロの考えに依存しているのです。僕の母様は人間を捕らえて食うつもりは無いのです。だから僕の仲間はとても少ないのですよ」
キャトルの母様は人間の敵、というわけではないみたいね。でも仲間が少なくて対抗できるの?
「それを聞いて少し安心したが……。ということは5年前にへギンスが遠方に最精鋭部隊を派遣させたのはウテロに食わすためということだったことになる。ということはこないだ派遣した最精鋭もか!」
あー、5年前にもやってるのか。それで今回も派遣していると。恐らく同じ場所だよねぇ。
「ローラン! それは一大事だ! 止める方法は無いのか?」
「くそっ! ロームまでは1週間もかかる! 今から出ても追いつかないぞ!」
悔しそうにローラン様が机を両の握りこぶしでテーブルを叩く。
ロームか。確かに徒歩なら1週間程だ。しかし私なら3日分の距離も1時間で飛べる。キャトルがいれば2人くらいは連れて行けそうかな。そこから更に戦闘して帰ってきたわけだから、片道なら少し休憩すれば1日で行けるかも?
さすがに放置するわけにもいかないし、ここは私が名乗りをあげようじゃないの!
「あの、私なら多分1日で着けます。アーガス山までなら1時間ほどでしたし、日帰りできましたから」
「おお! それは素晴らしい! ならば殿下に命令書をお願いし、それを渡せば!」
「それはいい考えだ! よし、食事が終わったらすぐに書きあげよう!」
私が名乗りを挙げると2人は顔を見合わせ、笑顔を向け合う。なんという神構図!
そのまま口付けを交わしてくれたら私、なんでも出来そうな気がするわ。
「後2人なら連れて行けますよ? 私が近づいても追い払われて話を聞いて貰えないと思うので、ローラン様にも来ていただきたいのですが……」
「そういうことなら喜んで。もう1人メンバーを選出したいな」
ローラン様にお願いすると喜んで引き受けてくれた。もう1人連れて行けるね。なら相棒に選ぶなら1人しかいない。
「アルマ連れて来てください。戦闘にはならないかもしれないですけど、フルグルもいるので頼りになりますから」
「2人は知り合いだったね。もしかして恋仲だったりするのかい?」
「私とアルマがですか? 10歳ほど離れているのでそれは無いですね。女扱いされていませんし」
別にして欲しいわけじゃないけどね。無精ひげのおっさんは好みじゃないし。
「そうか。金と銀が派遣されたのは4日前だ。明日に出ても間に合うなら、明日10時にサンクトルムの方まで来て貰えないだろうか」
「わかりました」
私は快諾すると食事を続けた。お腹ペコペコなんだから沢山食べてやる!
片やこの国の第1王子、コーネリアス殿下。メイドさんからおっぱいモンスターの情報を得てもそのマイナスを打ち消す程のイケメン!
片やクルトレス・サンクトルム黒の若き隊長、爵位とかわかんないけど王子殿下と仲良いあたり間違いなく上流貴族の御令息のイケメン!
うーん、どちらも優良物件だけど私のモノになるわけがないので、せいぜい目の保養だけでもさせてもらうとしよう。
「マレフィカさん。この度は我等クルトレス・サンクトルムに潜む悪魔を退治してくれたことに感謝を。並びに我等の至らなさで辛い思いをさせたことに謝罪をさせていただきたい」
ローランさんが口を開くと頭を深々と下げる。
「マレフィカ=アマーレ。私を守ってくれたことに感謝を。そして新しく誕生した聖女に喜びの言葉を述べたいと思う」
さすがに殿下が頭を下げることはないが、直接のお言葉など私には身に余りすぎる。ええもうご2人の尊顔を拝見させていただいただけで十分でございますとも。
「あの、私には過ぎたる言葉です! ローラン様も頭をお上げください! 畏れ多くて心臓が持ちません!」
沸騰しそうな頭をなんとか落ち着かせながら懇願する。いやほんと、心臓に悪すぎる。
「うむ、今日はその詫びと祝いを兼ねて食事を用意させてもらった。今回はマナーを気にしなくていいから好きなだけ食べてくれ」
気にしなくていい、と言われて本当に気にしないのはただのバカだと思う。でもマナー知らないから大目に見てくれるのは有難い。
「ありがとうございます」
私は深々と頭を下げる。しかしマナーを気にしなくてもいいと言われても、やはり2人を前に食事をするのは本当に心臓に悪い。しかし目の前には美味しそうなご馳走が並べられていく。これ1皿いったいいくらするのやら。聞くのが怖いから絶対聞かないけどね?
まずは前菜。かぼちゃの甘味とトマトの酸味のバランスが素晴らしい。1口食べると広がるトマトの酸味は、かぼちゃの甘味で角が抑えられている。その甘味もくどさがなく、舌に残りつつも爽やかさがあった。冒険者の作るある程度食えりゃオッケーな料理とは次元が違いすぎる……。
「ときにマレフィカさん。へギンスはクルトレス・サンクトルムで何をしていたと思う? 奴の力なら1人でも街を壊滅に近い状態まで持っていけたはずだ 」
うーん、ある程度検討はつく。ただそこまでする理由がわからないのよね。キャトルならわかるのかな?
「キャトル、わかる?」
「わかりますです。奴の目的はこの国の精鋭をウテロに食わせてデモノイドを増やすことなのですよ。というよりそれ以外に答えがないのです」
あーやっぱりそれか。戦力増強かー。
「ちょっと待ってくれ。ウテロだって? 悪魔の女王ウテロは聖女アナスタシアによって滅ぼされたはずだ」
うんまぁ、信じたくないよね。では聖女アナスタシア様が滅ぼしたウテロはなんだったのか、ってことになるんだけど……。
「ウテロは一体ではないのです。人間の王は1人しかいないのですか?」
「いや、国ごとに1人おられるが……」
「それと同じことなのです。残るウテロは3体のはずなのです」
「なんということだ……」
2人は揃って頭を抱える。まぁ、知りたくなかったかもね。多分だけどスゼレンテラ教国は上層部なら知っていると思う。
「それにデモノイドを増やすだって? ウテロは人間を餌にして子供を産むのか?」
「正確には作り替えてるのだと母さまから聞いているのです。デモノイドは元々人間であるということなのです」
「……!」
あー、2人の顔色が真っ青だわ。そらショッキングだよね。この情報は正直秘匿すべきだと私は思う。
「そして産まれるデモノイドは元の人間の能力に依存するのです」
「だから最精鋭を餌にしていたのか……!」
しばらく沈黙が続いた。それだけ内容がショッキングだったのだろう。それでもローラン様は口を開く。
「つまり、数を増やして人間を滅ぼそうというつもりだったのか」
「それは違うのです。というより有り得ないのですよ」
私もそう思っていたんだけど、キャトルはサラッとそれを否定する。
「それはなぜだい?」
「デモノイドにとって人間はただの仲間を増やすための餌に過ぎないのです。街を滅ぼしたいなら上位種2人もいれば簡単なのですよ」
キャトルは間違いなく上位種だ。そのキャトルが言っているのだから本当にそうかもしれない。もしキャトルが人間に牙を向けば、私にだって対抗手段は無い。力が違い過ぎるのよね。
「つまり歯芽にもかけてない、ってこと?」
「そうなのです。デモノイドの敵はデモノイドなのですよ? 人間に対する考え方は母たるウテロの考えに依存しているのです。僕の母様は人間を捕らえて食うつもりは無いのです。だから僕の仲間はとても少ないのですよ」
キャトルの母様は人間の敵、というわけではないみたいね。でも仲間が少なくて対抗できるの?
「それを聞いて少し安心したが……。ということは5年前にへギンスが遠方に最精鋭部隊を派遣させたのはウテロに食わすためということだったことになる。ということはこないだ派遣した最精鋭もか!」
あー、5年前にもやってるのか。それで今回も派遣していると。恐らく同じ場所だよねぇ。
「ローラン! それは一大事だ! 止める方法は無いのか?」
「くそっ! ロームまでは1週間もかかる! 今から出ても追いつかないぞ!」
悔しそうにローラン様が机を両の握りこぶしでテーブルを叩く。
ロームか。確かに徒歩なら1週間程だ。しかし私なら3日分の距離も1時間で飛べる。キャトルがいれば2人くらいは連れて行けそうかな。そこから更に戦闘して帰ってきたわけだから、片道なら少し休憩すれば1日で行けるかも?
さすがに放置するわけにもいかないし、ここは私が名乗りをあげようじゃないの!
「あの、私なら多分1日で着けます。アーガス山までなら1時間ほどでしたし、日帰りできましたから」
「おお! それは素晴らしい! ならば殿下に命令書をお願いし、それを渡せば!」
「それはいい考えだ! よし、食事が終わったらすぐに書きあげよう!」
私が名乗りを挙げると2人は顔を見合わせ、笑顔を向け合う。なんという神構図!
そのまま口付けを交わしてくれたら私、なんでも出来そうな気がするわ。
「後2人なら連れて行けますよ? 私が近づいても追い払われて話を聞いて貰えないと思うので、ローラン様にも来ていただきたいのですが……」
「そういうことなら喜んで。もう1人メンバーを選出したいな」
ローラン様にお願いすると喜んで引き受けてくれた。もう1人連れて行けるね。なら相棒に選ぶなら1人しかいない。
「アルマ連れて来てください。戦闘にはならないかもしれないですけど、フルグルもいるので頼りになりますから」
「2人は知り合いだったね。もしかして恋仲だったりするのかい?」
「私とアルマがですか? 10歳ほど離れているのでそれは無いですね。女扱いされていませんし」
別にして欲しいわけじゃないけどね。無精ひげのおっさんは好みじゃないし。
「そうか。金と銀が派遣されたのは4日前だ。明日に出ても間に合うなら、明日10時にサンクトルムの方まで来て貰えないだろうか」
「わかりました」
私は快諾すると食事を続けた。お腹ペコペコなんだから沢山食べてやる!
応援ありがとうございます!
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