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第92話 《リーネの視点》愛の奇跡〜ウイッシュ〜
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なに?
何が起こったの?
気がつけば私はルウに突き飛ばされ、尻もちをついていた。そして、私の目の前にいるルウの首筋にドレカヴァクの生首が噛みついている。
膝をついていたルウは吐血し、苦しそうに両手を血につけた。息が荒い。傷はそれほど深くはない。大した血は出ていないのにルウはとても苦しそうだ。
「ルウ君を離しなさい! 審判!」
リオネッセさんの審判の光がルウと私を包む。
光の中はとても眩しい。思わず腕で目を覆い隠す。ドレカヴァクの悲鳴は聞こえない。
それでも光が収まるとドレカヴァクは完全に消えていた。
ルウは両手を地面につけ、四つん這いになったままだ。そしてまた血を吐く。
「ルウ!」
「いけません、蘇生!」
暖かい光がルウを包む。
これでルウは助かる。そう思っていた。
なのにどうして!?
光は弾けるように散り散りに飛ばされ、ルウの傷は全く治っていない。
「そんな……!」
「ど、どうして……!? も、もう一度!」
再度リオネッセさんが蘇生をかける。しかしやはり光は弾けるように飛ばされ、傷は治らない。
「いったいなにが? 鑑定」
アレイスターさんが鑑定魔法をかける。
次の瞬間アレイスターさんの目が大きく広がり、ワナワナと震える。
「こ、こんなことが……!? ド、ドレカヴァク化……だと!?」
「ドレカヴァク化だって!?」
え?
一瞬何を言っているのかわからなかった。
ルウがドレカヴァクに?
「ま、参ったよ……」
ルウが苦しそうに言葉を吐き出す。
「魔法が使えないんだ……。拡大解釈も封じられてる……。どうやったら、ここから、巻き返せるのか……、全く思いつかないや……」
嫌だ!
嫌だよルウ。ルウの口からそんな言葉聞きたくないよ!
諦めないでよ!
ルウは、ルウは私のヒーローなんだから!
そのときだった。虚空に憎たらしいあの声が響いたのは。
『ギャーッハッハッハッ! 俺様の勝ちだぜライミスぅっ! こいつの身体はすげぇぞぉっ! 魔力に満ち満ちている上にとんでもねぇスキルを持っていやがった! こいつの魂を喰らい、肉体を戴くぜ! この力があれば俺様も公爵級の仲間入りだぜ!』
「はっ……、僕の身体を奪うとか好き勝手言わないで欲しいな……」
ルウ、なにか閃いたの?
そうだよね、ルウがこのままやられっぱなしでいるわけないよね?
そう思っていたのに、どうして……。
次にルウの口から出て来た言葉は、私が1番聞きたくない言葉だった。
「ごめん、みんな……。早く、僕を殺して」
「いや……!」
やだやだやだやだやだやだ!
どうしてそんなこと言うの?
ずっと一緒だって言ってくれたのに……。
とめどなく涙が溢れる。サルヴァンもアレサも目に涙を溜めていた。誰も望んでいないのに。誰か、誰かルウを助けてよ!
「わかった……。この罪、クランのリーダーとして、僕が背負おう。僕のことを恨んでくれて構わない。ルウ、君のことは忘れない」
ライミスさんが剣を掲げた。全身の光が剣に集約されていく。
「いや、 嫌だよルウ……。 ずっと、ずっと一緒だって言ったのに……」
私はルウに縋り付く。一緒に斬られたっていい。私の命をあげたっていい。ルウが、それでルウが助かるなら。
「お願い神様、ルウを助けて!」
私は祈るように叫ぶ。
すると、私のパパラチアサファイアの指輪が光り輝き始めた。ルウに貰った大切な指輪だ。
そしてその指輪から光り輝く文字が出て来る。
『リ』『ー』『ネ』『い』『つ』『も』『あ』『り』『が』『と』『う』『な』『か』『な』『か』『い』『え』『な』『い』『け』『ど』『あ』『な』『た』『の』『こ』『と』『を』『あ』『い』『し』『て』『い』『ま』『す』
リーネいつもありがとう。なかなか言えないけど、あなたのことを愛しています。
そうか、ルウが言ってた気持ちを込めた、ってそういうことだったんだ……。
バカ……。こんなときに言われたらどんな顔していいかわからないよ……。
「こ、これは……?」
みんなが驚くなか、その文字のいくつかが動き始める。そしてそれは1つの文を作った。
『あ』『な』『た』『の』『ネ』『が』『い』『を』『か』『な』『え』『ま』『す』
あなたの願いを叶えます……?
これは……。
「これはいったい……?」
「な、何が起こっているんだ?」
みんなも何が起こっているのかわからないようだった。
そして私の心の中に何か言葉が届けられた。
──呼びなさい、私の名を。至高の神聖魔法を貴方に。
とても優しく、それでいて厳かな声。その声の主が誰なのか、何となくわかる。そして私の心に1つの魔法が浮かびあがるのを感じた。
それはどんな魔法の書にもない、伝承にすら残っていない魔法だった。
「お願いしますアルテア様。ルウを、私のルウをお助けください。願い……」
全ての文字がクルクル回り始め、それはやがて光の粒子となって人の形を象る。
やがてその人の形は1人の美しく長い黒髪を結わえ、白い荘厳な衣装を身にまとった女性へと姿を変えた。目は閉じているけど、なんというか、神々しいとしか表現のしようがないほどの高みを感じる。
「ま、まさかアルテア様……?」
リオネッセさんが何かを感じたのかそう呟いた。そして涙を流し、両手を組んで跪く。
皆も感化された、というよりはその女性の持つ威光の前に跪いた。ただ私だけはちょっと呆然としていた。
「あなたの心の願い、確かに聞き届けました。魔神ドレカヴァク。我が愛し子に働く狼藉、これ以上は見過ごせません。愛と調和の神たるアルテアの名の元に貴方に裁きを」
アルテア様がそう宣言すると、その目が見開かれた。
何が起こったの?
気がつけば私はルウに突き飛ばされ、尻もちをついていた。そして、私の目の前にいるルウの首筋にドレカヴァクの生首が噛みついている。
膝をついていたルウは吐血し、苦しそうに両手を血につけた。息が荒い。傷はそれほど深くはない。大した血は出ていないのにルウはとても苦しそうだ。
「ルウ君を離しなさい! 審判!」
リオネッセさんの審判の光がルウと私を包む。
光の中はとても眩しい。思わず腕で目を覆い隠す。ドレカヴァクの悲鳴は聞こえない。
それでも光が収まるとドレカヴァクは完全に消えていた。
ルウは両手を地面につけ、四つん這いになったままだ。そしてまた血を吐く。
「ルウ!」
「いけません、蘇生!」
暖かい光がルウを包む。
これでルウは助かる。そう思っていた。
なのにどうして!?
光は弾けるように散り散りに飛ばされ、ルウの傷は全く治っていない。
「そんな……!」
「ど、どうして……!? も、もう一度!」
再度リオネッセさんが蘇生をかける。しかしやはり光は弾けるように飛ばされ、傷は治らない。
「いったいなにが? 鑑定」
アレイスターさんが鑑定魔法をかける。
次の瞬間アレイスターさんの目が大きく広がり、ワナワナと震える。
「こ、こんなことが……!? ド、ドレカヴァク化……だと!?」
「ドレカヴァク化だって!?」
え?
一瞬何を言っているのかわからなかった。
ルウがドレカヴァクに?
「ま、参ったよ……」
ルウが苦しそうに言葉を吐き出す。
「魔法が使えないんだ……。拡大解釈も封じられてる……。どうやったら、ここから、巻き返せるのか……、全く思いつかないや……」
嫌だ!
嫌だよルウ。ルウの口からそんな言葉聞きたくないよ!
諦めないでよ!
ルウは、ルウは私のヒーローなんだから!
そのときだった。虚空に憎たらしいあの声が響いたのは。
『ギャーッハッハッハッ! 俺様の勝ちだぜライミスぅっ! こいつの身体はすげぇぞぉっ! 魔力に満ち満ちている上にとんでもねぇスキルを持っていやがった! こいつの魂を喰らい、肉体を戴くぜ! この力があれば俺様も公爵級の仲間入りだぜ!』
「はっ……、僕の身体を奪うとか好き勝手言わないで欲しいな……」
ルウ、なにか閃いたの?
そうだよね、ルウがこのままやられっぱなしでいるわけないよね?
そう思っていたのに、どうして……。
次にルウの口から出て来た言葉は、私が1番聞きたくない言葉だった。
「ごめん、みんな……。早く、僕を殺して」
「いや……!」
やだやだやだやだやだやだ!
どうしてそんなこと言うの?
ずっと一緒だって言ってくれたのに……。
とめどなく涙が溢れる。サルヴァンもアレサも目に涙を溜めていた。誰も望んでいないのに。誰か、誰かルウを助けてよ!
「わかった……。この罪、クランのリーダーとして、僕が背負おう。僕のことを恨んでくれて構わない。ルウ、君のことは忘れない」
ライミスさんが剣を掲げた。全身の光が剣に集約されていく。
「いや、 嫌だよルウ……。 ずっと、ずっと一緒だって言ったのに……」
私はルウに縋り付く。一緒に斬られたっていい。私の命をあげたっていい。ルウが、それでルウが助かるなら。
「お願い神様、ルウを助けて!」
私は祈るように叫ぶ。
すると、私のパパラチアサファイアの指輪が光り輝き始めた。ルウに貰った大切な指輪だ。
そしてその指輪から光り輝く文字が出て来る。
『リ』『ー』『ネ』『い』『つ』『も』『あ』『り』『が』『と』『う』『な』『か』『な』『か』『い』『え』『な』『い』『け』『ど』『あ』『な』『た』『の』『こ』『と』『を』『あ』『い』『し』『て』『い』『ま』『す』
リーネいつもありがとう。なかなか言えないけど、あなたのことを愛しています。
そうか、ルウが言ってた気持ちを込めた、ってそういうことだったんだ……。
バカ……。こんなときに言われたらどんな顔していいかわからないよ……。
「こ、これは……?」
みんなが驚くなか、その文字のいくつかが動き始める。そしてそれは1つの文を作った。
『あ』『な』『た』『の』『ネ』『が』『い』『を』『か』『な』『え』『ま』『す』
あなたの願いを叶えます……?
これは……。
「これはいったい……?」
「な、何が起こっているんだ?」
みんなも何が起こっているのかわからないようだった。
そして私の心の中に何か言葉が届けられた。
──呼びなさい、私の名を。至高の神聖魔法を貴方に。
とても優しく、それでいて厳かな声。その声の主が誰なのか、何となくわかる。そして私の心に1つの魔法が浮かびあがるのを感じた。
それはどんな魔法の書にもない、伝承にすら残っていない魔法だった。
「お願いしますアルテア様。ルウを、私のルウをお助けください。願い……」
全ての文字がクルクル回り始め、それはやがて光の粒子となって人の形を象る。
やがてその人の形は1人の美しく長い黒髪を結わえ、白い荘厳な衣装を身にまとった女性へと姿を変えた。目は閉じているけど、なんというか、神々しいとしか表現のしようがないほどの高みを感じる。
「ま、まさかアルテア様……?」
リオネッセさんが何かを感じたのかそう呟いた。そして涙を流し、両手を組んで跪く。
皆も感化された、というよりはその女性の持つ威光の前に跪いた。ただ私だけはちょっと呆然としていた。
「あなたの心の願い、確かに聞き届けました。魔神ドレカヴァク。我が愛し子に働く狼藉、これ以上は見過ごせません。愛と調和の神たるアルテアの名の元に貴方に裁きを」
アルテア様がそう宣言すると、その目が見開かれた。
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