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第114話 人質を探せ!
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「じゃあそろそろ本題に入っていいです?」
「ほ、本題とは……!?」
僕がそう切り出すとあからさまにボンズ様は狼狽えた。うん、ここまで話を聞いて気づかないと思ったのかね?
「なんで領主様は動いていないんですか? アルテア教は国教ですよね? 当然領主様にもアルテア教会を冒涜する団体を裁く義務があるはずです」
昔は異端審問官てのがいて、異端者を独自に裁いていたらしい。しかしそれにより恐怖で教えを押し付ける形になり、何十年か前に時の法王が異端審問を廃止したそうだ。それ以来邪教を裁くのは国の役目になったらしい。
「……はい、仰る通りです。我々はすぐに領主様に陳情致したました。しかし、領主様の御令息と御令嬢が既に奴らに人質として捕まっており、動けないそうなのです」
「先手を打たれていたわけですか。しかしそれならそうと言っていただかないと我々も適切な対応ができませんよ?」
人質がいるなら当然そちらを優先することになるんだけど。でないと何かあった時にこちらの動きを封じられてしまう。
「ええ、そうなんですが……。領主様からは絶対に口外するなと言われておりまして」
ボンズ様は少し言いにくそうに苦笑いして答えた。
まぁ、確かに誘拐された御令嬢となると風聞が悪いのかな?
領主様の方で何か手を打つつもりなのか、それとも……。
と、そこへ最悪の考えが頭をよぎる。ありえないはずだ。ここの領主様は仮にも伯爵の地位に就いている。実は奴らに取り込まれているなんて有り得ないだろう。
「領主様は何か手を打つと?」
「いえ、心配要らないから任せておけと」
「ではこの依頼については何か言われていませんか?」
「いえ、特には。ただどんなパーティが請け負ったか必ず報せるように、と」
うーん、報せるだけ?
一応万が一は考えておくべきかもしれないけど、それをやるにはエリオット殿下に助力をお願いしないといけなくなる。こんなことで王族に借りを作るのはどう考えても愚策だよねぇ……。
そもそも報せないよう切り出すこと自体が愚策だろう。領主様の心象を損なうのはリスクが高すぎる。
「そうですか。もし人質の御令息や御令嬢を見つけたらお知らせいたします。その場合は領主様の指示に従う、ということで」
「おお、そうしていただけるとありがたい」
僕がそう伝えるとボンズ様の顔に笑顔が戻る。板挟みにされないか心配していたのかもしれない。セフィロトの家のバックに王族や勇者様がいることは地位のある人なら大抵は知っていそうだからね。
「それでは報酬の方ですが、実態調査に金貨15枚、その他成果により追加報酬あり、ということでどうでしょうか?」
追加報酬には具体的な金額を提示しづらいからそれで十分かな。成果、というのは人質の解放や教団の壊滅も含めての言い回しだろうからね。
「それで大丈夫です」
「おお、ありがとうございます。それでは良い報告を期待しています」
それで話は終わり、僕とリーネはみんなの待つ宿屋へと戻ることにした。
「なるほど、だいたいわかった。そうなるとルカとミラのスキルが使えるな」
「そうだな。人質を探していることを気取られると拙い。先ずは2人のスキルを駆使して調査すべきか」
9人が四人部屋に集まり、それぞれの情報のすり合わせを行った。結論としては人質の居場所を突き止めることが第一だ。それも極秘裏にやらないとあけないため、聞いて回るのは問題がある。
ルードがミラとルカのスキルを使うことを提案し、サルヴァンも同意した。
ミラのスキルは遠隔発動。これも僕が強化をかければかなり離れた位置に魔法を発動させられる。魔法の射程は放たれた位置からになるので、これで調査系の魔法の発動位置をかなり遠くにできる。
そしてルカのスキルが魔法生物化だ。これがかなりとんでもないスキルで、例えば火球の形を火の鳥にして自分で追尾させる、なんてことまでできる。面白いのは回復を鳥にすると、その鳥が遠くの怪我人を治してくれることだ。色々応用が効くスキルなので非常に強力で便利なスキルなのだ。
「いいわよ。じゃあまずは遠視であいつらの本部を探ってみましょうか」
「ああ、頼んだぞミラ」
「任せなさい遠視」
ミラが目を閉じ、意識を遠くへ飛ばす。この魔法の欠点は使用中は周りに意識が向かなくなるところか。それゆえ使う場合は安全を確保しないといけない。
ちなみにこの魔法、実は秘匿魔法だったりする。これは元々探索という周囲を調べる魔法だったんだけど、それを拡大解釈して遠くを見る、という効果に変質させ、その魔法の詠唱文言と契約文言を解読で書き起こしたのだ。
この魔法は便利過ぎて軍事的利用価値がかなり高い。そのため魔導士教会には報告していない魔法で、使い手はミラとルカしかいないのだ。僕も探索の拡大解釈で使えるんだけど、ミラやルカほど遠くを視ることは出来ない。
30分後。
「うーん、結構立派な服を着ている男の子と女の子がいたわね。他にも女性が何人か囚われているみたい」
目を閉じたままルカが見つけた人たちを報告する。目を開けるとその時点でこの魔法は解除されてしまうのだ。
「その2人が領主様のかな?」
「さぁ? 顔も名前も知らないもの。わかるわけないじゃない」
そりゃそうだ。じゃあわかるようにすればいいだけだ。
「じゃあ鑑定を付与するね。付与、鑑定、拡大」
「お、名前が見えるわ。ここの領主様の名前なんだっけ?」
「グラン・フォン・ウェディッツだ」
フィンが領主の名前を答えると、ミラがほくそ笑む。
「見つけたわ。テオドール・フォン・ウェディッツ、リーゼロッテ・フォン・ウェディッツ」
「ほ、本題とは……!?」
僕がそう切り出すとあからさまにボンズ様は狼狽えた。うん、ここまで話を聞いて気づかないと思ったのかね?
「なんで領主様は動いていないんですか? アルテア教は国教ですよね? 当然領主様にもアルテア教会を冒涜する団体を裁く義務があるはずです」
昔は異端審問官てのがいて、異端者を独自に裁いていたらしい。しかしそれにより恐怖で教えを押し付ける形になり、何十年か前に時の法王が異端審問を廃止したそうだ。それ以来邪教を裁くのは国の役目になったらしい。
「……はい、仰る通りです。我々はすぐに領主様に陳情致したました。しかし、領主様の御令息と御令嬢が既に奴らに人質として捕まっており、動けないそうなのです」
「先手を打たれていたわけですか。しかしそれならそうと言っていただかないと我々も適切な対応ができませんよ?」
人質がいるなら当然そちらを優先することになるんだけど。でないと何かあった時にこちらの動きを封じられてしまう。
「ええ、そうなんですが……。領主様からは絶対に口外するなと言われておりまして」
ボンズ様は少し言いにくそうに苦笑いして答えた。
まぁ、確かに誘拐された御令嬢となると風聞が悪いのかな?
領主様の方で何か手を打つつもりなのか、それとも……。
と、そこへ最悪の考えが頭をよぎる。ありえないはずだ。ここの領主様は仮にも伯爵の地位に就いている。実は奴らに取り込まれているなんて有り得ないだろう。
「領主様は何か手を打つと?」
「いえ、心配要らないから任せておけと」
「ではこの依頼については何か言われていませんか?」
「いえ、特には。ただどんなパーティが請け負ったか必ず報せるように、と」
うーん、報せるだけ?
一応万が一は考えておくべきかもしれないけど、それをやるにはエリオット殿下に助力をお願いしないといけなくなる。こんなことで王族に借りを作るのはどう考えても愚策だよねぇ……。
そもそも報せないよう切り出すこと自体が愚策だろう。領主様の心象を損なうのはリスクが高すぎる。
「そうですか。もし人質の御令息や御令嬢を見つけたらお知らせいたします。その場合は領主様の指示に従う、ということで」
「おお、そうしていただけるとありがたい」
僕がそう伝えるとボンズ様の顔に笑顔が戻る。板挟みにされないか心配していたのかもしれない。セフィロトの家のバックに王族や勇者様がいることは地位のある人なら大抵は知っていそうだからね。
「それでは報酬の方ですが、実態調査に金貨15枚、その他成果により追加報酬あり、ということでどうでしょうか?」
追加報酬には具体的な金額を提示しづらいからそれで十分かな。成果、というのは人質の解放や教団の壊滅も含めての言い回しだろうからね。
「それで大丈夫です」
「おお、ありがとうございます。それでは良い報告を期待しています」
それで話は終わり、僕とリーネはみんなの待つ宿屋へと戻ることにした。
「なるほど、だいたいわかった。そうなるとルカとミラのスキルが使えるな」
「そうだな。人質を探していることを気取られると拙い。先ずは2人のスキルを駆使して調査すべきか」
9人が四人部屋に集まり、それぞれの情報のすり合わせを行った。結論としては人質の居場所を突き止めることが第一だ。それも極秘裏にやらないとあけないため、聞いて回るのは問題がある。
ルードがミラとルカのスキルを使うことを提案し、サルヴァンも同意した。
ミラのスキルは遠隔発動。これも僕が強化をかければかなり離れた位置に魔法を発動させられる。魔法の射程は放たれた位置からになるので、これで調査系の魔法の発動位置をかなり遠くにできる。
そしてルカのスキルが魔法生物化だ。これがかなりとんでもないスキルで、例えば火球の形を火の鳥にして自分で追尾させる、なんてことまでできる。面白いのは回復を鳥にすると、その鳥が遠くの怪我人を治してくれることだ。色々応用が効くスキルなので非常に強力で便利なスキルなのだ。
「いいわよ。じゃあまずは遠視であいつらの本部を探ってみましょうか」
「ああ、頼んだぞミラ」
「任せなさい遠視」
ミラが目を閉じ、意識を遠くへ飛ばす。この魔法の欠点は使用中は周りに意識が向かなくなるところか。それゆえ使う場合は安全を確保しないといけない。
ちなみにこの魔法、実は秘匿魔法だったりする。これは元々探索という周囲を調べる魔法だったんだけど、それを拡大解釈して遠くを見る、という効果に変質させ、その魔法の詠唱文言と契約文言を解読で書き起こしたのだ。
この魔法は便利過ぎて軍事的利用価値がかなり高い。そのため魔導士教会には報告していない魔法で、使い手はミラとルカしかいないのだ。僕も探索の拡大解釈で使えるんだけど、ミラやルカほど遠くを視ることは出来ない。
30分後。
「うーん、結構立派な服を着ている男の子と女の子がいたわね。他にも女性が何人か囚われているみたい」
目を閉じたままルカが見つけた人たちを報告する。目を開けるとその時点でこの魔法は解除されてしまうのだ。
「その2人が領主様のかな?」
「さぁ? 顔も名前も知らないもの。わかるわけないじゃない」
そりゃそうだ。じゃあわかるようにすればいいだけだ。
「じゃあ鑑定を付与するね。付与、鑑定、拡大」
「お、名前が見えるわ。ここの領主様の名前なんだっけ?」
「グラン・フォン・ウェディッツだ」
フィンが領主の名前を答えると、ミラがほくそ笑む。
「見つけたわ。テオドール・フォン・ウェディッツ、リーゼロッテ・フォン・ウェディッツ」
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