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第115話 アマラの影
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その日はもう時間的に遅かったため、次の日の昼前にその情報を依頼主であるボンズ様に伝えることにした。後は領主様の判断に任せる、という約束だったからね。
ちなみに今回は龍炎光牙のメンバー全員で行っている。これはサルヴァンの采配だ。
「ええ!? もう見つけたのですか!」
執務室で報告を行うとボンズ様はめちゃくちゃ驚いていた。いやもう目ん玉飛び出るんじゃないか、ってくらい目を見開いてたよ。
「ええ、これがその詳細です」
サルヴァンがミラに書いてもらった地図を報告書として提出する。そこには建物の造りの一部やどこに誰が囚われているか、どんな様子だったかが書かれている。
「いやはや素晴らしい。早速領主様に報告することにしましょう。それで、教団の実態の方は……?」
「いや、人質を救った後は実態も何もないでしょう。領主様の御子息を誘拐して領主様を脅していたんですよね? 救い出した後は領主様が兵を出して制裁を加えると思います」
報告書を見てボンズ様は白い顎髭を撫でつつ感嘆した。教団の実態も気になるところではあるけど、領主様を敵に回すわけだから壊滅させられることになるだろう。
「おお、それもそうですな。ではこれで依頼は完了ということになりますな」
ボンズ様も納得し、依頼の完了を告げる。これは期待できるだろう。
「とりあえず私どもからは成果報酬を合わせて金貨25枚。それと領主様からもきっと報酬が支払われることになると思われます。使いの者が来ると思いますのでそれまでの滞在費用で金貨5枚、合わせて金貨30枚でいかがですかな?」
「ええ、それで問題ありません」
それから泊まっている宿屋の名前を伝えて報酬を受け取ると、僕らは神殿を後にした。そして少し歩いてからサルヴァンが口を開く。
「でだ、ルウ、リーネ。今から俺たちだけで話し合うことがある。他でもない教団のことについてだ。ここじゃなんだし、その辺の飯屋に入るぞ」
「うん、わかった」
サルヴァンは妙に神妙な面持ちだった。人質さえ解放すれば後は壊滅が見えているのに何があるんだろうか?
入ったお店はよくある定食屋で冒険者の姿も多い。真っ昼間から飲んでいる人達もいるおかげで結構賑やかだ。
店員に案内され、僕らは4人用のテーブル席に案内され腰掛けた。そして4人が全員サービスランチを頼む。
「今回の件なんだが、もしかしたら領主様の手には負えないかもしれないんだ」
「どういうこと?」
教団は烏合の衆じゃない……?
「落ち着いて聞いてくれ。クリフォトの種の教祖はあのアマラだ。そして教団の構成員にはこの街の闇ギルドのメンバーが多数いるらしい」
アマラのやつ、あのドレカヴァクとの戦いから逃げたと思ったらこんなことをしていたのか。それにしてもよく闇ギルドのメンバーを傘下に加えられたものだ。確かに高い戦闘力は持っていたけど……。
「アマラがこの街の闇ギルドの元締めってこと?」
「それはわからない。今この街の教団を取り仕切っているのはアマラの配下だそうだ。アマラは既にこの街にはいないらしいから幸いとも取れるな」
「そっか、ルカ……」
ルカが冒険者をしているのはアマラに復讐するためだ。もしあいつがいると知れば暴走したかもしれない。しかし手がかり得てしまったのは拙い方向に傾く可能性がある。
「ああ。そうなるとルカは教団を追いたいだろうし壊滅を目論むかもしれない。彼女は確かに力をつけたが、今のアマラの力はわからないし、組織を立ち上げた以上おいそれと手を出せる相手でもなくなっているだろ?」
「そうだね。少なくとも僕らだけでやり合うのは得策じゃない」
闇ギルドのメンバーが配下にいるなら相応の手練もいるだろう。やつに辿り着くのは容易じゃない。
「一応そのあたりもルカは納得してくれたようだが、いつなんどき暴走するかはわからないからな。教団と関わるときは注意していてくれ」
「わかった。しかしアマラが関わっているとなると本当に悪魔が潜んでいそうだね」
仮にもドレカヴァクと行動を共にしていたんだ。もしかしたら他にも仲間がいた可能性は十分に考えられるし、まだ悪魔が残っていてもおかしくはない。
「うん、それなんだけどね? アマラには不思議な力があるらしいんだよ。なんでもアマラに恩恵スキルをもらった人もいるんだって」
「ええ!?」
その話に驚き、思わず声をあげる。
一般に人に加護や恩恵を与えられるのは精霊や聖獣の類か魔神クラスの悪魔か神族だ。いくら魔力の高い人間でもそんなことはできるはずがない。
「それが本当なら少なくとも魔神クラスの悪魔がいると考えるべきだろ? だから領主軍とぶつかった場合、領主軍が壊滅する可能性は十分考えられるわけだ」
魔神とは侯爵級以上の悪魔を指す。つまりはドレカヴァクと同程度の悪魔がいることになってしまうのだ。そんな相手に一介の領主が太刀打ちできるとは思えない。
「そのことを領主様は知っているのかな?」
「さぁ? まだ裏の取れていない情報だから報告書には可能性がある、とだけは書いておいたぞ?」
「そっか」
うーん、思った以上に厄介だな。アマラがこの街にいないならここにその魔神がいる可能性は低いのかもしれない。しかしそれは他の場所で勢力を広げようと画策していると捉えるのが自然だろう。
そうこうしている内に料理が運ばれ、僕たちは無言のまま料理を平らげるのだった。
ちなみに今回は龍炎光牙のメンバー全員で行っている。これはサルヴァンの采配だ。
「ええ!? もう見つけたのですか!」
執務室で報告を行うとボンズ様はめちゃくちゃ驚いていた。いやもう目ん玉飛び出るんじゃないか、ってくらい目を見開いてたよ。
「ええ、これがその詳細です」
サルヴァンがミラに書いてもらった地図を報告書として提出する。そこには建物の造りの一部やどこに誰が囚われているか、どんな様子だったかが書かれている。
「いやはや素晴らしい。早速領主様に報告することにしましょう。それで、教団の実態の方は……?」
「いや、人質を救った後は実態も何もないでしょう。領主様の御子息を誘拐して領主様を脅していたんですよね? 救い出した後は領主様が兵を出して制裁を加えると思います」
報告書を見てボンズ様は白い顎髭を撫でつつ感嘆した。教団の実態も気になるところではあるけど、領主様を敵に回すわけだから壊滅させられることになるだろう。
「おお、それもそうですな。ではこれで依頼は完了ということになりますな」
ボンズ様も納得し、依頼の完了を告げる。これは期待できるだろう。
「とりあえず私どもからは成果報酬を合わせて金貨25枚。それと領主様からもきっと報酬が支払われることになると思われます。使いの者が来ると思いますのでそれまでの滞在費用で金貨5枚、合わせて金貨30枚でいかがですかな?」
「ええ、それで問題ありません」
それから泊まっている宿屋の名前を伝えて報酬を受け取ると、僕らは神殿を後にした。そして少し歩いてからサルヴァンが口を開く。
「でだ、ルウ、リーネ。今から俺たちだけで話し合うことがある。他でもない教団のことについてだ。ここじゃなんだし、その辺の飯屋に入るぞ」
「うん、わかった」
サルヴァンは妙に神妙な面持ちだった。人質さえ解放すれば後は壊滅が見えているのに何があるんだろうか?
入ったお店はよくある定食屋で冒険者の姿も多い。真っ昼間から飲んでいる人達もいるおかげで結構賑やかだ。
店員に案内され、僕らは4人用のテーブル席に案内され腰掛けた。そして4人が全員サービスランチを頼む。
「今回の件なんだが、もしかしたら領主様の手には負えないかもしれないんだ」
「どういうこと?」
教団は烏合の衆じゃない……?
「落ち着いて聞いてくれ。クリフォトの種の教祖はあのアマラだ。そして教団の構成員にはこの街の闇ギルドのメンバーが多数いるらしい」
アマラのやつ、あのドレカヴァクとの戦いから逃げたと思ったらこんなことをしていたのか。それにしてもよく闇ギルドのメンバーを傘下に加えられたものだ。確かに高い戦闘力は持っていたけど……。
「アマラがこの街の闇ギルドの元締めってこと?」
「それはわからない。今この街の教団を取り仕切っているのはアマラの配下だそうだ。アマラは既にこの街にはいないらしいから幸いとも取れるな」
「そっか、ルカ……」
ルカが冒険者をしているのはアマラに復讐するためだ。もしあいつがいると知れば暴走したかもしれない。しかし手がかり得てしまったのは拙い方向に傾く可能性がある。
「ああ。そうなるとルカは教団を追いたいだろうし壊滅を目論むかもしれない。彼女は確かに力をつけたが、今のアマラの力はわからないし、組織を立ち上げた以上おいそれと手を出せる相手でもなくなっているだろ?」
「そうだね。少なくとも僕らだけでやり合うのは得策じゃない」
闇ギルドのメンバーが配下にいるなら相応の手練もいるだろう。やつに辿り着くのは容易じゃない。
「一応そのあたりもルカは納得してくれたようだが、いつなんどき暴走するかはわからないからな。教団と関わるときは注意していてくれ」
「わかった。しかしアマラが関わっているとなると本当に悪魔が潜んでいそうだね」
仮にもドレカヴァクと行動を共にしていたんだ。もしかしたら他にも仲間がいた可能性は十分に考えられるし、まだ悪魔が残っていてもおかしくはない。
「うん、それなんだけどね? アマラには不思議な力があるらしいんだよ。なんでもアマラに恩恵スキルをもらった人もいるんだって」
「ええ!?」
その話に驚き、思わず声をあげる。
一般に人に加護や恩恵を与えられるのは精霊や聖獣の類か魔神クラスの悪魔か神族だ。いくら魔力の高い人間でもそんなことはできるはずがない。
「それが本当なら少なくとも魔神クラスの悪魔がいると考えるべきだろ? だから領主軍とぶつかった場合、領主軍が壊滅する可能性は十分考えられるわけだ」
魔神とは侯爵級以上の悪魔を指す。つまりはドレカヴァクと同程度の悪魔がいることになってしまうのだ。そんな相手に一介の領主が太刀打ちできるとは思えない。
「そのことを領主様は知っているのかな?」
「さぁ? まだ裏の取れていない情報だから報告書には可能性がある、とだけは書いておいたぞ?」
「そっか」
うーん、思った以上に厄介だな。アマラがこの街にいないならここにその魔神がいる可能性は低いのかもしれない。しかしそれは他の場所で勢力を広げようと画策していると捉えるのが自然だろう。
そうこうしている内に料理が運ばれ、僕たちは無言のまま料理を平らげるのだった。
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