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第118話 人質救出作戦2
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神殿の中は入ってすぐの所が集会所という簡素な造りになっていた。机や椅子など無くただ広い空間がそこにあり、奥の方に演説用のスデージが設けられている。事前にミラによって作られた大まかな地図通り通路もあるのだが、そこにはしっかり見張りのようなひとも立っていた。
「なかなか凄い人だね……」
「これ全部信者なんだろうね。ほとんどが闇ギルドの人間という訳でもなさそうだけど」
小声でルカが呟くと、僕もそれに答える。正直こんなに人が多いとは思わなかった。割と広い空間なんだけど、数十人どころか百人くらいいるんじゃなかろうか?
ざっと見た空間のキャパシティが150人くらいだからまだ少し余裕はあるけどね。
そしてその信者達は皆フードを被っているんだけど、もしかしたら街の有力者とかもいるんだろうか?
それに子供もいる。恐らくスラム街のストリートチルドレンだろう。食糧の無料配布などをやっているならそういった子供たちは付いてくるはずだ。
「ドレク様だ!」
「ドレク様がいらっしゃったぞ!」
信者たちがステージに視線を注ぐ。ステージに登ったのはボサボサの髪のおっさんだ。黒い司祭服を着ているが、その姿に威厳など感じられない。
「皆の者よく集まってくれた! 私がクリフォトの種ウォレンス支部の大司祭ドレクである。我らの神ニーグリ様はおっしゃった。欲望こそが人の生きる糧であると。アルテア教会のように他人を大事にし、思いやり、私欲を捨てて他人の為に尽くす。そんなものは嘘っぱちなのだ。確かに私は同志たちが大切な隣人であり、同志達のためならば私は喜んで力を振るうだろう。それは否定しない。しかし私欲を捨てては人は成長せぬ。他人の為に生きるな。自分のために生きることが正しいのだ!」
そのドレクが早速演説を始める。その内容に関しては間違っていないと思う。欲望は確かに人が生きる原動力足りうるのだから。しかしそれをアルテア教会だって否定している訳じゃないんだけどねぇ。
「そうだそうだ!」
しかしこの程度の説法に信者達が熱気を帯び始め、賛同の声をあげ始める。洗脳でもされたのかな?
「アルテア教会では人に洗礼を与え、力を授けると言う。しかしだ。犯罪歴のある人間はその権利を当分失う。それはあんまりだと私は思うのだ。そこのスラム街の子ども達よ。今日食べるパンも無く仕方なく盗みをしたことはないか? 仲間を守るために敵をその手にかけたことはないか?」
ドレクがスラム街の子供たちを指差し問いかける。するとその子供たちは涙ながらに訴え始めた。
「あります! 俺は仲間を食わすために何度も盗みを働いた。そして何度も捕まりその度に鞭打たれ、遂にはお前はもう神の洗礼を受けることは許されないと言われました! もう俺は冒険者になっても大成しない。俺たちストリートチルドレンは大きくなってもまともな職に付けない。だから殆どは冒険者になるんだ。でも俺は洗礼をもう受けられない。これは未来を奪われたのと同じだ! だったらどう生きたら良かったんだよ……。誰もそんなこと教えてくれないし、助けてくれないじゃないか!」
これは理解できる。僕らがやっていけたのはひとえに場所が良かったからだ。僕らストリートチルドレンはコミュニティを作り、年長者がお金や食糧を稼いでそれを分け合う。僕らは川の近くにテリトリーを持っていたから魚も取れたし、雑用を街の人から引き受けて僅かばかりのお金をもらうことができた。
しかし、スラム街はそうはいかない。半ば無法地帯と化しており、盗まれる方が馬鹿。コミュニティはあるものの、コミュニティ同士は敵対していることが多いのだ。なら場所を移せば、となるがコミュニティ単位で移動すれば抗争が生まれるのだ。
「そうだ。アルテア教会は愛を謳っておきながら犯罪者を切り捨てる。真っ当に生きようとする者もいるだろう。だから彼らは特定の者だけが盗みを働き、残りの者は大きくなってから冒険者になり仲間を支えていくのだ。その陰で犯罪を繰り返した仲間はやがて処刑されることもある。私は思うのだ。これは世の中が間違っていると!」
うんまぁ、でもこれって教会の仕事じゃなくて国や領主様の仕事なんじゃないかな……?
しかし言っていることは間違っていないし対応が追いついていないのも事実だ。
「だからこそ我等クリフォトの種は悪魔を信仰する。神は人を救わぬ。それが可能なほど大きな力を持っているにも関わらず、だ。それは怠慢ではないのか? そんな神を信じて何になるというのだ。しかしニーグリ様は違う。あのお方は公爵級の悪魔であり、欲望を叶える力をお持ちだ。君たちがかの神を信じるなら、その恩恵に授かることも可能だ。現に我等の王であり、クリフォトの守護者となったアマラ様は人を超越した力を授かり、近隣の村をお救いになられている。お前達も偉大なる神ニーグリ様を信じ、この世に多くの悪魔を迎え入れようではないか!」
「おおおおおおお!!」
観衆たちの歓声があがり、会場は異様な熱気に包まれていた。正論から自分たちの望む方向へ思考を誘導する。ストリートチルドレンの話は恐らく演出だろう。同情により民衆の気持ちを同調させて同調圧力に巻き込んだのだ。よくもまぁ思いついたものだ。
それより気になったのは公爵級悪魔の存在かな。ドレカヴァクは侯爵級だったからそれより格上ということになる。これはすぐにライミスさんやリオネッセさんに報告しないといけない事案だ。
さて、そろそろリーネ達の進捗を確認してサポートしないとね。この教団がどういうものかも少し見えてきたし、わざわざ潜入した意味はあったかもしれない。
「なかなか凄い人だね……」
「これ全部信者なんだろうね。ほとんどが闇ギルドの人間という訳でもなさそうだけど」
小声でルカが呟くと、僕もそれに答える。正直こんなに人が多いとは思わなかった。割と広い空間なんだけど、数十人どころか百人くらいいるんじゃなかろうか?
ざっと見た空間のキャパシティが150人くらいだからまだ少し余裕はあるけどね。
そしてその信者達は皆フードを被っているんだけど、もしかしたら街の有力者とかもいるんだろうか?
それに子供もいる。恐らくスラム街のストリートチルドレンだろう。食糧の無料配布などをやっているならそういった子供たちは付いてくるはずだ。
「ドレク様だ!」
「ドレク様がいらっしゃったぞ!」
信者たちがステージに視線を注ぐ。ステージに登ったのはボサボサの髪のおっさんだ。黒い司祭服を着ているが、その姿に威厳など感じられない。
「皆の者よく集まってくれた! 私がクリフォトの種ウォレンス支部の大司祭ドレクである。我らの神ニーグリ様はおっしゃった。欲望こそが人の生きる糧であると。アルテア教会のように他人を大事にし、思いやり、私欲を捨てて他人の為に尽くす。そんなものは嘘っぱちなのだ。確かに私は同志たちが大切な隣人であり、同志達のためならば私は喜んで力を振るうだろう。それは否定しない。しかし私欲を捨てては人は成長せぬ。他人の為に生きるな。自分のために生きることが正しいのだ!」
そのドレクが早速演説を始める。その内容に関しては間違っていないと思う。欲望は確かに人が生きる原動力足りうるのだから。しかしそれをアルテア教会だって否定している訳じゃないんだけどねぇ。
「そうだそうだ!」
しかしこの程度の説法に信者達が熱気を帯び始め、賛同の声をあげ始める。洗脳でもされたのかな?
「アルテア教会では人に洗礼を与え、力を授けると言う。しかしだ。犯罪歴のある人間はその権利を当分失う。それはあんまりだと私は思うのだ。そこのスラム街の子ども達よ。今日食べるパンも無く仕方なく盗みをしたことはないか? 仲間を守るために敵をその手にかけたことはないか?」
ドレクがスラム街の子供たちを指差し問いかける。するとその子供たちは涙ながらに訴え始めた。
「あります! 俺は仲間を食わすために何度も盗みを働いた。そして何度も捕まりその度に鞭打たれ、遂にはお前はもう神の洗礼を受けることは許されないと言われました! もう俺は冒険者になっても大成しない。俺たちストリートチルドレンは大きくなってもまともな職に付けない。だから殆どは冒険者になるんだ。でも俺は洗礼をもう受けられない。これは未来を奪われたのと同じだ! だったらどう生きたら良かったんだよ……。誰もそんなこと教えてくれないし、助けてくれないじゃないか!」
これは理解できる。僕らがやっていけたのはひとえに場所が良かったからだ。僕らストリートチルドレンはコミュニティを作り、年長者がお金や食糧を稼いでそれを分け合う。僕らは川の近くにテリトリーを持っていたから魚も取れたし、雑用を街の人から引き受けて僅かばかりのお金をもらうことができた。
しかし、スラム街はそうはいかない。半ば無法地帯と化しており、盗まれる方が馬鹿。コミュニティはあるものの、コミュニティ同士は敵対していることが多いのだ。なら場所を移せば、となるがコミュニティ単位で移動すれば抗争が生まれるのだ。
「そうだ。アルテア教会は愛を謳っておきながら犯罪者を切り捨てる。真っ当に生きようとする者もいるだろう。だから彼らは特定の者だけが盗みを働き、残りの者は大きくなってから冒険者になり仲間を支えていくのだ。その陰で犯罪を繰り返した仲間はやがて処刑されることもある。私は思うのだ。これは世の中が間違っていると!」
うんまぁ、でもこれって教会の仕事じゃなくて国や領主様の仕事なんじゃないかな……?
しかし言っていることは間違っていないし対応が追いついていないのも事実だ。
「だからこそ我等クリフォトの種は悪魔を信仰する。神は人を救わぬ。それが可能なほど大きな力を持っているにも関わらず、だ。それは怠慢ではないのか? そんな神を信じて何になるというのだ。しかしニーグリ様は違う。あのお方は公爵級の悪魔であり、欲望を叶える力をお持ちだ。君たちがかの神を信じるなら、その恩恵に授かることも可能だ。現に我等の王であり、クリフォトの守護者となったアマラ様は人を超越した力を授かり、近隣の村をお救いになられている。お前達も偉大なる神ニーグリ様を信じ、この世に多くの悪魔を迎え入れようではないか!」
「おおおおおおお!!」
観衆たちの歓声があがり、会場は異様な熱気に包まれていた。正論から自分たちの望む方向へ思考を誘導する。ストリートチルドレンの話は恐らく演出だろう。同情により民衆の気持ちを同調させて同調圧力に巻き込んだのだ。よくもまぁ思いついたものだ。
それより気になったのは公爵級悪魔の存在かな。ドレカヴァクは侯爵級だったからそれより格上ということになる。これはすぐにライミスさんやリオネッセさんに報告しないといけない事案だ。
さて、そろそろリーネ達の進捗を確認してサポートしないとね。この教団がどういうものかも少し見えてきたし、わざわざ潜入した意味はあったかもしれない。
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