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第168話 天鳳VS魔神龍 前編
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時間は少し遡る。
ルード率いる冒険者パーティ天鳳は伝説の魔神龍と対峙していた。
その赤黒い鱗を持つ龍人はおよそ5メートルというオーガ並みの巨軀であり、顔こそ龍のそれだが手には巨大な剣を手にしている。さながらそれは龍人の戦士を思わせる威圧感があり、鱗に覆われていない胸や腹に残る傷跡が歴戦の強者であることを物語っていた。
「よく来たな、人間。アマラ様に歯向かう愚か者よ」
魔神龍が天鳳のメンバー達を睨み吼える。その声だけで周りの草花が揺れ、ルードは空気さえも振動させているかのような重圧を覚えた。
「すげープレッシャーだな。あんたが魔神龍とかいう伝説の龍か?」
「貴様ら人間の伝説なんぞ知らん。魔神龍という分類がどういうものを指すのか知らんが、魔界最強の龍人を指すのならそれは間違いなく俺のことだろうな」
魔神龍は得意げに話すとニヤリと笑う。
「へー、魔界なんて本当にあるんだな。で、その最強の龍人様がなんでアマラなんかに従ってるんだよ」
「なんかだと? 今アマラ様をなんかと貶めたな?」
ルードの発言に魔神龍は目を血走らせ、身体を怒りで震わせながら聞き返した。剣を握っている手にも力がこもっている。
「知るかボケ」
「我らにとって強さとは絶対の理なり! 我を倒せし者への侮辱、死をもって償うがいい!」
そこを更にルードが煽ると、魔神龍は大声で吼えた後に思いっきり息を吸い込んだ。
「なに怒らせてんのよ! 聖霊の盾」
「わりぃわりぃ」
ブレスが来るのは明白。ルードに文句を言いつつミラが光属性の上位防御魔法を行使する。ルード達もまた龍神ザルスの血のお陰で半神となっており、光属性との親和性がAと非常に高くなっている。
「魔法矢、強化!」
そこを更にフィンが強化の魔法を矢にして盾に当てその強度を上げた。通常の強化魔法と違い、ルウが契約文言化させた特製の魔法専用増強魔法である。
そして龍の黒い咆哮がルード達を襲った。
強い闇の瘴気は草花を腐らせ、溶かしてゆく。ルード達のいる平原は彼等を中心に黒いもやが立ち籠めた。
「強風!」
しかしすぐにミラが風の魔法でその黒いもやを吹き飛ばす。姿を現したルード達はピンピンしていた。
「ほほう、我がブレスに耐えるか。俺のブレスに耐えた奴は貴様らが初めてだぞ?」
尊大な物言いだがフィンはなんとなく疑問に思ったことを口にする。
「アマラには使わなかったのか? アマラに負けたんなら戦ってるだろ」
「……使う前に負けた」
その疑問に答える魔神龍はどことなく頬に赤みが差していた。実は秒で負けているのだがさすがにそれは言えないようである。
「もしかして弱いのか? 今度はこっちから行くぜ!」
「サポートするわ。破壊」
ルードが駆け、間合いを詰める。ルカはサポートのために魔法生物化のスキルを使い、一匹の黄色い鳥を随行させた。その大きさは鳩程だが破壊のエネルギーが凝縮された破壊魔法そのものである。
「ふん、無駄だ」
ルードが剣を振るったところで急所には程遠い足くらいしか狙えない。自分の身体の頑丈さを良く知っている魔神龍は余裕をかましていた。
「いって!」
破壊の鳥が速度を上げ、魔神龍のすねにぶち当たる。そこから破壊の力が広がり、鱗が剥がれ落ちた。
「うらぁっ!」
そこを狙ってルードが剣を振るう。その剣はもちろん並みの剣ではない。龍神ザルスの力の一端がこもった神剣である。それはドラゴニウムより硬いと言われる魔神龍の鱗をも破壊する力が込められていた。
「ぐぉえっ!?」
ルードの剣が振り抜かれた脛に一直線の傷口が生まれ、僅かながらも血が垂れる。肉は切れたが骨までは切れなかったのだ。それでも予想外の痛みに魔神龍は思わず首を上げ、変な呻き声をあげた。
「魔法矢、爆発」
その傷口を狙い、フィンが爆発魔法を矢として放つ。その狙いは正確で、見事に傷口に入り込むと小爆発。ルードが近くにいたため大きな爆発ではないが、肉を抉るには十分な爆発だった。
「ぐわひっ……!?」
脛の傷口が広がり骨が視認できるほどの大きさとなる。大きさ的にはバスケットボール程だが、その爆発は骨にも衝撃を与えている。例え損傷がなくても骨への直接的な衝撃はかなりの痛みをともなうものだ。
魔神龍といえど痛いものは痛く、いやむしろ痛み慣れしていない分その痛みに堪えるのは困難だったのだろう。声にならないうめき声をあげ、強烈な痛みによる平衡感覚の消失により尻もちを付く。
ずしん、と地響きを起こし大地が揺れる。そしてベオグラードが剥き出しの骨目がけて槌を振るった。ドラゴニウム製の槌の威力は凄まじく、ベオグラードの怪力も合わさって鈍い音を立てる。
ピシリ。
骨に亀裂が入る。
「……っ!!」
痛みが脳天を突き抜け、声にならない叫びをあげる。魔神龍はその場で横に転げ回り、ルード達と距離を取った。その巨体で転がった分その速度は速く、ルード達はせっかく詰めた間合いを引き離されてしまう。
魔神龍はこれでも魔界の戦士である。当然戦士としての矜持があり、人間ごときに手傷を負わされたことで頭に血が登っていた。人間同様魔神龍も興奮状態に陥いれば痛みの感覚は和らぐ。痛みに堪えつつも魔神龍は立ち上がり、再び距離を詰めに来たルード達を睨みつけた。
「やってくれたな人間ごときが。人間では龍人に勝てぬことを教えてやろう!」
魔神龍は感情のまま怒鳴り散らすと翼をはためかせ上空へと舞い上がる。空を飛べる者の絶対的な優位性を利用するつもりである。
「ちっ、空に逃げやがった!」
「仕方ない、各自散開。取り囲むようにして回り込み、空中戦をしかけるぞ」
「「わかった」」
フィンの指揮により天鳳のメンバーは四方に散らばる。それを見て魔神龍は魔力球を大量に生み出すと大地へ向けて撒き散らした。もちろんこんなものでルード達をどうこうできるとは思っていない。
「さぁ、上空へ上がってこい。叩き落としてくれるわ」
空中戦での物理的衝突は体重の差が絶対的な優位性を持つ。空中戦に慣れた魔神龍はそれを良く知っていた。魔神龍は身長約5メートルもあり、ルード達の約2.7倍であるから体重は20倍近い計算になる。それだけ重くても動けるのは筋肉の質の違いと魔力による常時身体強化の恩恵だろう。
「ちっ、あれは狙ってるな。ルカ、撹乱を頼む」
「任せて!」
ふり注ぐ魔力球を避けつつフィンがルカに指示を出す。空中戦における体重の差の意味はフィンも当然知っていた。だからこそ魔神龍の狙いがわかるのだ。
「凍結!」
本来なら指定範囲を冷気で覆い、凍てつかせる魔法だが、ルカの魔法生物化によりそれは無数の青い鳥となり上空へと飛び立っていった。
ルード率いる冒険者パーティ天鳳は伝説の魔神龍と対峙していた。
その赤黒い鱗を持つ龍人はおよそ5メートルというオーガ並みの巨軀であり、顔こそ龍のそれだが手には巨大な剣を手にしている。さながらそれは龍人の戦士を思わせる威圧感があり、鱗に覆われていない胸や腹に残る傷跡が歴戦の強者であることを物語っていた。
「よく来たな、人間。アマラ様に歯向かう愚か者よ」
魔神龍が天鳳のメンバー達を睨み吼える。その声だけで周りの草花が揺れ、ルードは空気さえも振動させているかのような重圧を覚えた。
「すげープレッシャーだな。あんたが魔神龍とかいう伝説の龍か?」
「貴様ら人間の伝説なんぞ知らん。魔神龍という分類がどういうものを指すのか知らんが、魔界最強の龍人を指すのならそれは間違いなく俺のことだろうな」
魔神龍は得意げに話すとニヤリと笑う。
「へー、魔界なんて本当にあるんだな。で、その最強の龍人様がなんでアマラなんかに従ってるんだよ」
「なんかだと? 今アマラ様をなんかと貶めたな?」
ルードの発言に魔神龍は目を血走らせ、身体を怒りで震わせながら聞き返した。剣を握っている手にも力がこもっている。
「知るかボケ」
「我らにとって強さとは絶対の理なり! 我を倒せし者への侮辱、死をもって償うがいい!」
そこを更にルードが煽ると、魔神龍は大声で吼えた後に思いっきり息を吸い込んだ。
「なに怒らせてんのよ! 聖霊の盾」
「わりぃわりぃ」
ブレスが来るのは明白。ルードに文句を言いつつミラが光属性の上位防御魔法を行使する。ルード達もまた龍神ザルスの血のお陰で半神となっており、光属性との親和性がAと非常に高くなっている。
「魔法矢、強化!」
そこを更にフィンが強化の魔法を矢にして盾に当てその強度を上げた。通常の強化魔法と違い、ルウが契約文言化させた特製の魔法専用増強魔法である。
そして龍の黒い咆哮がルード達を襲った。
強い闇の瘴気は草花を腐らせ、溶かしてゆく。ルード達のいる平原は彼等を中心に黒いもやが立ち籠めた。
「強風!」
しかしすぐにミラが風の魔法でその黒いもやを吹き飛ばす。姿を現したルード達はピンピンしていた。
「ほほう、我がブレスに耐えるか。俺のブレスに耐えた奴は貴様らが初めてだぞ?」
尊大な物言いだがフィンはなんとなく疑問に思ったことを口にする。
「アマラには使わなかったのか? アマラに負けたんなら戦ってるだろ」
「……使う前に負けた」
その疑問に答える魔神龍はどことなく頬に赤みが差していた。実は秒で負けているのだがさすがにそれは言えないようである。
「もしかして弱いのか? 今度はこっちから行くぜ!」
「サポートするわ。破壊」
ルードが駆け、間合いを詰める。ルカはサポートのために魔法生物化のスキルを使い、一匹の黄色い鳥を随行させた。その大きさは鳩程だが破壊のエネルギーが凝縮された破壊魔法そのものである。
「ふん、無駄だ」
ルードが剣を振るったところで急所には程遠い足くらいしか狙えない。自分の身体の頑丈さを良く知っている魔神龍は余裕をかましていた。
「いって!」
破壊の鳥が速度を上げ、魔神龍のすねにぶち当たる。そこから破壊の力が広がり、鱗が剥がれ落ちた。
「うらぁっ!」
そこを狙ってルードが剣を振るう。その剣はもちろん並みの剣ではない。龍神ザルスの力の一端がこもった神剣である。それはドラゴニウムより硬いと言われる魔神龍の鱗をも破壊する力が込められていた。
「ぐぉえっ!?」
ルードの剣が振り抜かれた脛に一直線の傷口が生まれ、僅かながらも血が垂れる。肉は切れたが骨までは切れなかったのだ。それでも予想外の痛みに魔神龍は思わず首を上げ、変な呻き声をあげた。
「魔法矢、爆発」
その傷口を狙い、フィンが爆発魔法を矢として放つ。その狙いは正確で、見事に傷口に入り込むと小爆発。ルードが近くにいたため大きな爆発ではないが、肉を抉るには十分な爆発だった。
「ぐわひっ……!?」
脛の傷口が広がり骨が視認できるほどの大きさとなる。大きさ的にはバスケットボール程だが、その爆発は骨にも衝撃を与えている。例え損傷がなくても骨への直接的な衝撃はかなりの痛みをともなうものだ。
魔神龍といえど痛いものは痛く、いやむしろ痛み慣れしていない分その痛みに堪えるのは困難だったのだろう。声にならないうめき声をあげ、強烈な痛みによる平衡感覚の消失により尻もちを付く。
ずしん、と地響きを起こし大地が揺れる。そしてベオグラードが剥き出しの骨目がけて槌を振るった。ドラゴニウム製の槌の威力は凄まじく、ベオグラードの怪力も合わさって鈍い音を立てる。
ピシリ。
骨に亀裂が入る。
「……っ!!」
痛みが脳天を突き抜け、声にならない叫びをあげる。魔神龍はその場で横に転げ回り、ルード達と距離を取った。その巨体で転がった分その速度は速く、ルード達はせっかく詰めた間合いを引き離されてしまう。
魔神龍はこれでも魔界の戦士である。当然戦士としての矜持があり、人間ごときに手傷を負わされたことで頭に血が登っていた。人間同様魔神龍も興奮状態に陥いれば痛みの感覚は和らぐ。痛みに堪えつつも魔神龍は立ち上がり、再び距離を詰めに来たルード達を睨みつけた。
「やってくれたな人間ごときが。人間では龍人に勝てぬことを教えてやろう!」
魔神龍は感情のまま怒鳴り散らすと翼をはためかせ上空へと舞い上がる。空を飛べる者の絶対的な優位性を利用するつもりである。
「ちっ、空に逃げやがった!」
「仕方ない、各自散開。取り囲むようにして回り込み、空中戦をしかけるぞ」
「「わかった」」
フィンの指揮により天鳳のメンバーは四方に散らばる。それを見て魔神龍は魔力球を大量に生み出すと大地へ向けて撒き散らした。もちろんこんなものでルード達をどうこうできるとは思っていない。
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「ちっ、あれは狙ってるな。ルカ、撹乱を頼む」
「任せて!」
ふり注ぐ魔力球を避けつつフィンがルカに指示を出す。空中戦における体重の差の意味はフィンも当然知っていた。だからこそ魔神龍の狙いがわかるのだ。
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