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第167話 人魔王妃(予定)ナーラ3
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「効かねぇよ!」
「なにぃっ!?」
球体から突き出た針はサルヴァンの身体を貫くことなくへし折られていく。まさかの力技にナーラは驚き、反応が遅れたようだ。
サルヴァンが斧を振り下ろす。
ナーラはその一撃を剣で受けとめた。
「泥化」
と同時にサルヴァンお得意の泥化戦法。地面が泥になれば踏ん張りが効かなくなる。当然ナーラは泥に足を取られバランスを崩す。
「なっ!?」
「おらよ!」
サルヴァンの前蹴りがナーラの腹に食い込む。バランスの崩れていたナーラは蹴りに押されて尻もちをついた。それはナーラが格闘戦においては素人同然であることを示している。生まれたばかりだから戦闘経験の少なさが如実に出ているんだろうね。
「くらえ、解放!」
さらにサルヴァンが斧を斜めに振り下ろし、武器に込めた魔法を発動させる。封じてある魔法は強化した破壊だ。
「ギャアアアアアッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!!」
鮮血が飛んだ。
そしてナーラの絶叫。
うーん、さすがサルヴァン。女性相手でも容赦無しは僕には真似できないかもしれない。ここからだとよくわからないが、サルヴァンのことだから多分首筋あたりを狙ってそう。
「トドメだ」
「ひっ……!」
サルヴァンが更に斧を振り上げる。サルヴァンの抑揚のない声にナーラの弱気な呻きが聞こえた。
と、そこへ割って入る影が2つ。
「ナーラ様!」
「させない!」
「ちっ!」
女悪魔の大量の魔法の矢をサルヴァンが盾で受け止める。そしてもう一体の女悪魔がナーラを泥から引き揚げた。
「ナーラ様、ご無事で!」
「メリッサか、すまんな。下手を打った」
メリッサとかいう女悪魔に抱えられ、ナーラは悔しそうに小声で答える。
「もう少しだったんだがな。何者だ?」
サルヴァンが悪役臭いセリフを吐きつつもう一体の悪魔と対峙する。あの悪魔、前に見たことあるような?
「よくもナーラ様を傷つけてくれたな。許さんぞこのクソ野郎が!」
「ああ、思い出した。確かクリフォトの神殿にいた男爵級悪魔だったね。リティスだったかな?」
「……今は侯爵級よ。メリッサ、私一人じゃキツイわ。手を貸して」
ああ、そうそう。確か前もこんな艶めかしい赤いワンピース着てたっけ。もう一体のメリッサとかいう悪魔も同じ格好だ。
「わかってるわよ。ナーラ様はお逃げ下さい。貴方が滅べばアマラ様が悲しみます」
「すまぬ、出直すとしよう。二人とも死ぬなよ?」
逃げる気か。空中に逃げたら収束砲撃魔法でも食らわすか。
「わかっておりますとも」
「ここは我らにお任せを!」
ナーラはふらふらになりながらも空に浮かび、僕らに背を向けて飛び立つ。
今だ!
拡大解釈による無声発動。
神気発衝!
瞬時に魔力を両手に収束。ナーラ目がけて収束砲撃魔法を放った。
「させるものか!」
リティスが空中に立ちはだかり、砲撃魔法を受け止める。
「ぬおおおおおおっっ!!」
おお、さすが侯爵級だね。砲撃をギリギリのところで抑え込んでいる。でも!
「強化」
「ぬおおおおおっっ!?」
威力の増強を行ったことでリティスは抑えきれず砲撃魔法により吹き飛ばされていった。うーん、呑み込まれていないなら多分滅んではいないよね……?
「ああっ、リティスぅぅぅっ!!」
リティスが吹き飛ばされ、メリッサが焦りの声をあげた。
「残るはお前だけだな。覚悟はいいか?」
「ちょ、ちょっと待って! 降参する!」
「却下」
メリッサの降参宣言をサルヴァンが即座に却下した。残念だけど侯爵級悪魔なんてほっとけるわけないんだよね。
「侯爵級悪魔なんか捕虜にできるわけねーだろ。味方が全滅するわ!」
サルヴァンは一気に間合いを詰めると三度その斧を振り下ろす。
メリッサは断末魔の悲鳴をあげ、最後は浄滅魔法により魔石を残して消滅した。
* * *
「くっ……!」
どのくらいそうしていたのか、砲撃魔法に呑み込まれはしなかったものの魔力の大半を失ったメリッサは地面に仰向けになったまま動けずにいた。加えて落下によるダメージも深刻でまだ当分は動けそうもない。周りには木々が生えていて人の気配も魔物の気配もなかった。ただ1つの気配を除いては。
「よぉ、いいザマだなリティス」
「お、お前は……! なぜお前がここにいる。アプールの街を攻めるように命令したはずだが?」
「ああ、受けたな。ちゃんと行ったぜ? 俺の複製だけどな。全く、なんで格下のお前に命令されなきゃならねぇんだよ。昔からそうだ、いつも俺のことを見下しやがって」
悪魔はリティスを見下ろすとニヤリと笑う。そこにリティスは違和感を覚えた。
(昔……!? 最近産まれたはずの存在が口にする言葉か?)
「貴様、本当にドレカヴァクか?」
「リティス、俺はこう言ったよな? 悪いなドレク。いや、俺の半身よ。お前を喰らい俺は完全な俺になる。そう、俺は俺を喰らい完全な俺になったのさ!」
ドレクはリティスにゆっくりと手を伸ばし首を掴んで吊り上げる。
「き、貴様……、アマラ様を裏切る気かっ」
「そうさ。だがまだまだ力が足りないからな。貴様を喰わせてもらうぞ」
ドレクは骸の顔を歪ませニタリと嗤う。その歪な嗤いにリティスは凍りついた。
「き、キサマ如きがアマラ様に敵うわけがないだろ……!」
「良いものを見せてやろう。これなーんだ?」
そう言ってドレクが見せたのはリティスにも見覚えがある黒い胸甲だった。その胸甲はズタズタにされており、元の美しさなど微塵もない。
「そ、それはナーラ様の……! き、貴様ナーラ様を喰ったのか!?」
「クックックッ、美味かったぜぇ? 女悪魔ってのもなかなか柔らかくてジューシーだったぞ。俺に喰われている最中にアマラ様ぁ、アマラ様ぁってピーピー泣いて傑作だったぞ。お前もさぞかし美味いのだろうな」
「き、貴様ぁぁぁぁっっっ!!」
リティスの慟哭が辺りに響く。
そして無情にもドレクの顎がリティスの右腕に歯を立てた。
「グアアアアアッッ!!」
骨の軋む音が響き、リティスが絶叫をあげる。ドレクは貪るようにリティスの身体に歯を立て噛み砕いていく。
骨は砕け、肉がひしゃげ、一噛み毎に広がる激痛がリティスの脳髄を貫いていった。貪る咀嚼音の気持ち悪さも相まって吐きそうになるが、吐くのは血ばかりである。
「美味い! 美味すぎるぞ貴様の肉!」
「あ、アマラ様……、も、申し訳ございません……」
リティスは苦痛に呻きながらも最期にアマラの名を口にする。共に過ごした時間を想い悪魔の目から一雫の涙が頬を伝った。
そしてやがて動かなくなり、最後は骨も魔石も残さず食べ尽くされてしまった。
「さて、これでアマラと同格くらいか? このままじゃニーグリには勝てんな。ならばいっそクリフォトの木を喰ってみるか」
そしてドレクは廃墟となった聖都を目指し飛び立つ。クリフォトの木を食い尽くすために。
「なにぃっ!?」
球体から突き出た針はサルヴァンの身体を貫くことなくへし折られていく。まさかの力技にナーラは驚き、反応が遅れたようだ。
サルヴァンが斧を振り下ろす。
ナーラはその一撃を剣で受けとめた。
「泥化」
と同時にサルヴァンお得意の泥化戦法。地面が泥になれば踏ん張りが効かなくなる。当然ナーラは泥に足を取られバランスを崩す。
「なっ!?」
「おらよ!」
サルヴァンの前蹴りがナーラの腹に食い込む。バランスの崩れていたナーラは蹴りに押されて尻もちをついた。それはナーラが格闘戦においては素人同然であることを示している。生まれたばかりだから戦闘経験の少なさが如実に出ているんだろうね。
「くらえ、解放!」
さらにサルヴァンが斧を斜めに振り下ろし、武器に込めた魔法を発動させる。封じてある魔法は強化した破壊だ。
「ギャアアアアアッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!!」
鮮血が飛んだ。
そしてナーラの絶叫。
うーん、さすがサルヴァン。女性相手でも容赦無しは僕には真似できないかもしれない。ここからだとよくわからないが、サルヴァンのことだから多分首筋あたりを狙ってそう。
「トドメだ」
「ひっ……!」
サルヴァンが更に斧を振り上げる。サルヴァンの抑揚のない声にナーラの弱気な呻きが聞こえた。
と、そこへ割って入る影が2つ。
「ナーラ様!」
「させない!」
「ちっ!」
女悪魔の大量の魔法の矢をサルヴァンが盾で受け止める。そしてもう一体の女悪魔がナーラを泥から引き揚げた。
「ナーラ様、ご無事で!」
「メリッサか、すまんな。下手を打った」
メリッサとかいう女悪魔に抱えられ、ナーラは悔しそうに小声で答える。
「もう少しだったんだがな。何者だ?」
サルヴァンが悪役臭いセリフを吐きつつもう一体の悪魔と対峙する。あの悪魔、前に見たことあるような?
「よくもナーラ様を傷つけてくれたな。許さんぞこのクソ野郎が!」
「ああ、思い出した。確かクリフォトの神殿にいた男爵級悪魔だったね。リティスだったかな?」
「……今は侯爵級よ。メリッサ、私一人じゃキツイわ。手を貸して」
ああ、そうそう。確か前もこんな艶めかしい赤いワンピース着てたっけ。もう一体のメリッサとかいう悪魔も同じ格好だ。
「わかってるわよ。ナーラ様はお逃げ下さい。貴方が滅べばアマラ様が悲しみます」
「すまぬ、出直すとしよう。二人とも死ぬなよ?」
逃げる気か。空中に逃げたら収束砲撃魔法でも食らわすか。
「わかっておりますとも」
「ここは我らにお任せを!」
ナーラはふらふらになりながらも空に浮かび、僕らに背を向けて飛び立つ。
今だ!
拡大解釈による無声発動。
神気発衝!
瞬時に魔力を両手に収束。ナーラ目がけて収束砲撃魔法を放った。
「させるものか!」
リティスが空中に立ちはだかり、砲撃魔法を受け止める。
「ぬおおおおおおっっ!!」
おお、さすが侯爵級だね。砲撃をギリギリのところで抑え込んでいる。でも!
「強化」
「ぬおおおおおっっ!?」
威力の増強を行ったことでリティスは抑えきれず砲撃魔法により吹き飛ばされていった。うーん、呑み込まれていないなら多分滅んではいないよね……?
「ああっ、リティスぅぅぅっ!!」
リティスが吹き飛ばされ、メリッサが焦りの声をあげた。
「残るはお前だけだな。覚悟はいいか?」
「ちょ、ちょっと待って! 降参する!」
「却下」
メリッサの降参宣言をサルヴァンが即座に却下した。残念だけど侯爵級悪魔なんてほっとけるわけないんだよね。
「侯爵級悪魔なんか捕虜にできるわけねーだろ。味方が全滅するわ!」
サルヴァンは一気に間合いを詰めると三度その斧を振り下ろす。
メリッサは断末魔の悲鳴をあげ、最後は浄滅魔法により魔石を残して消滅した。
* * *
「くっ……!」
どのくらいそうしていたのか、砲撃魔法に呑み込まれはしなかったものの魔力の大半を失ったメリッサは地面に仰向けになったまま動けずにいた。加えて落下によるダメージも深刻でまだ当分は動けそうもない。周りには木々が生えていて人の気配も魔物の気配もなかった。ただ1つの気配を除いては。
「よぉ、いいザマだなリティス」
「お、お前は……! なぜお前がここにいる。アプールの街を攻めるように命令したはずだが?」
「ああ、受けたな。ちゃんと行ったぜ? 俺の複製だけどな。全く、なんで格下のお前に命令されなきゃならねぇんだよ。昔からそうだ、いつも俺のことを見下しやがって」
悪魔はリティスを見下ろすとニヤリと笑う。そこにリティスは違和感を覚えた。
(昔……!? 最近産まれたはずの存在が口にする言葉か?)
「貴様、本当にドレカヴァクか?」
「リティス、俺はこう言ったよな? 悪いなドレク。いや、俺の半身よ。お前を喰らい俺は完全な俺になる。そう、俺は俺を喰らい完全な俺になったのさ!」
ドレクはリティスにゆっくりと手を伸ばし首を掴んで吊り上げる。
「き、貴様……、アマラ様を裏切る気かっ」
「そうさ。だがまだまだ力が足りないからな。貴様を喰わせてもらうぞ」
ドレクは骸の顔を歪ませニタリと嗤う。その歪な嗤いにリティスは凍りついた。
「き、キサマ如きがアマラ様に敵うわけがないだろ……!」
「良いものを見せてやろう。これなーんだ?」
そう言ってドレクが見せたのはリティスにも見覚えがある黒い胸甲だった。その胸甲はズタズタにされており、元の美しさなど微塵もない。
「そ、それはナーラ様の……! き、貴様ナーラ様を喰ったのか!?」
「クックックッ、美味かったぜぇ? 女悪魔ってのもなかなか柔らかくてジューシーだったぞ。俺に喰われている最中にアマラ様ぁ、アマラ様ぁってピーピー泣いて傑作だったぞ。お前もさぞかし美味いのだろうな」
「き、貴様ぁぁぁぁっっっ!!」
リティスの慟哭が辺りに響く。
そして無情にもドレクの顎がリティスの右腕に歯を立てた。
「グアアアアアッッ!!」
骨の軋む音が響き、リティスが絶叫をあげる。ドレクは貪るようにリティスの身体に歯を立て噛み砕いていく。
骨は砕け、肉がひしゃげ、一噛み毎に広がる激痛がリティスの脳髄を貫いていった。貪る咀嚼音の気持ち悪さも相まって吐きそうになるが、吐くのは血ばかりである。
「美味い! 美味すぎるぞ貴様の肉!」
「あ、アマラ様……、も、申し訳ございません……」
リティスは苦痛に呻きながらも最期にアマラの名を口にする。共に過ごした時間を想い悪魔の目から一雫の涙が頬を伝った。
そしてやがて動かなくなり、最後は骨も魔石も残さず食べ尽くされてしまった。
「さて、これでアマラと同格くらいか? このままじゃニーグリには勝てんな。ならばいっそクリフォトの木を喰ってみるか」
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