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第一章 邪神の加護を得た男
1 俺死亡
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「吠えてろ弱者どもがあっ!」
今回のイベントも俺の単独トップ。もはやゲーム内に俺様の敵はいねえ。ゲーム外の匿名掲示板じゃ俺様の悪口が書かれまくっているが、負け犬の遠吠えよ。
『あんな奴がトップだもんな、やってらんねーよ。あいつの誹謗中傷で引退したやつだっているのによ』
『全くだよな。俺もギルド勧誘断ったら毎日凸されて素材強奪だぜ? 1日一人3回まででもギルド員全員からやられたらたまったもんじゃねーよ。こんなクソ仕様のゲームやってらんねーぜ』
はっ、こいつもしかして「タマランチュラ」か?
このゲームは凸されると防衛力が減るからな。防衛力が減ると高コスト編成を維持できなくなるから誰にでも負ける可能性を秘めている。だから匿名掲示板ではこいつを凸してください、なんて依頼が来ることさえあるのだ。
俺を凸してくれなんてのも来たが1日張り込んで防衛力を維持し、全員返り討ちにしてやったぜゲハハハハ!
さて、そろそろ腹も減ったし飯の要求でもすっかな。俺は不摂生で肥えた身体を立ち上がらせ、一階へと降りる。そういや今日はやけに下がバタバタしてたような気がするな。
俺は台所に入る。誰もいない。仕方ないので冷蔵庫を開けようと思ったら冷蔵庫がどこにもない。そういやテーブルもないし食器棚もない。テレビもない。
俺は他の部屋を見て回った。親父の部屋に風呂場から今は使ってない弟の部屋まで。その全てが空っぽだった。玄関へ行けば靴もない。代わりにあったのは書き置きのみ。それがかつて玄関マットの合ったばしょにポツンと置かれていた。
「なになに……。孝之、お前にはほとほと愛想が尽きた。37にもなって働かないお前を養う気も失せた。これからは一人で頑張って生きてみろ、だとぉっ!?」
高卒職歴無しの俺なんかどこが雇ってくれるんだよ。しかもこの家は売り払ったから早く出ていくように、だと?
明日には電気も止まるらしい。これからどうやって生活していくんだよ。
クソっ、考えてもいい方法なんか思い浮かばねぇよ。とにかく部屋に戻ってゲームの続きだ。親父のカードが使える内に課金しないと!
俺は部屋に戻りゲームに戻る。そして早速高額アイテムの購入を試みた。しかしカードは既に止められ、購入は失敗に終わる。やべぇ、このままだとイベント1位逃しちまうじゃねぇか!
ならばまとめて支払いだ。引き落としは親父の口座だからな。俺の腹は傷まないはず。
しかし突如スマホは圏外になり、課金リンクへたどり着けなくなってしまう。もしかして解約されたのか?
そうなるとアカウントそのものが無くなってしまう。俺の、俺の育てたキャラクターがぁぁぁっ!!
俺は失意のままただひたすらにぼーっと時間を過ごす。気分は生ける屍。ゲーム内でイキるのが俺の人生の楽しみだったというのに……。
それから一ヶ月。俺は気がつけば河原のホームレスの仲間入りを果たしていた。俺の口座の残高は二十万あった。しかしそれも満喫で寝泊まりしていたら無くなっちまった。働いてないから勿論収入なんてない。
「あー人生クソつまんねー」
特にやることもなく、俺はダンボールに包まる。もう夜だし寝るか。そう思った矢先、誰かが近づいてきた。足音は複数ある。おい、まさか……!
「おい、ここに太ったゴミがいるぜ」
「社会のゴミってやつだな。俺さ、こう見えて結構綺麗好きなのよ。わかる?」
「わかるわかる。ゴミを見たら掃除したくなってきんじゃねぇの?」
「いいなそれ! じゃあゴミ掃除と洒落込もうぜ」
なんとも物騒な会話が聞こえ、俺は慌てて飛び起きた。まずい、こいつらホームレス狩りとかいうやつか!
「あ、ゴミが逃げるぞ」
「任せろ!」
その次の瞬間、俺の背中に強烈な痛みが走り、俺は膝をついた。こいつ、石投げやがったな!
「ナイスコントロール! 俺も投げるかな」
「よーし、俺もだ。一番大怪我を負わせた奴が優勝な」
こいつら、俺をゲーム感覚でいたぶろうってのか!?
ちくしょう、このクズどもが!
「ぐわっ!」
俺の頭に石がぶつかる。小石とはいえかなり痛い。傷口からは血が滴り、目に入る。
「やるじゃん。だったら俺はこいつでやってやんよ!」
「うおっ、それはさすがに死ぬんじゃねぇの?」
「へっ、未成年なんだから殺しても大丈夫なんだよ。これで俺が優勝だぜ!」
そいつの持つ石はでかかった。大きさが顔ほどもある。そんなんぶつけられたらマジで死ぬぞ!
「ま、待て。俺を殺したら死刑だぞ!」
「残念でしたー。俺等は未成年なんで死刑にはなりませーん。少年法知らねーのかよ。人殺しが楽しめるのは未成年の特権だぜイェーイ!」
男が石を持って俺を見下ろす。ダメダこいつ、完全にイッてやがる。
「いや、死刑になった事例はある! だからやめてくれ」
「知るかボケ。いいから死んどけ」
そして無情にも石は俺の頭の上に落ちて来た。そして俺の意識も消え失せる。
* * *
気がつけば真っ暗な暗闇だった。ちくしょう、俺は死んだのか?
真っ暗で何も見えねーよ。ここはいったいどこなんだよ。
「だ、誰か~、誰かいないのか!」
俺が叫ぶと俺の前に白い光が。その光は人型だが真っ白な人影のようだった。
「いよう。なかなか壮絶な死に方したみてぇじゃねぇか。安心しろ。お前を殺した奴らはそのうち警察に捕まる。余罪も多くて結構人を殺してるからな。未成年だが死刑になるぞ」
その白い影は愉快そうに話す。そうか奴らは死刑か。そうなるといいな。
「それよりここはどこなんだよ。俺はいったいどうなっちまったんだ?」
「お前は死んだよ、氏野孝之君。だが喜ぶがいい。俺はお前のその曲がり腐った根性が気に入った。俺の力で異世界に転生させてやろう。第二の人生を好きに生きてみるといい」
そうか、やはり俺は死んだか。でも異世界に転生させてくれるのならラッキーなのかもしれん。どうせならチートくれよチート!
「なぁ、だったらチートくれよ。チートがあれば好きに生きられるじゃねぇか」
「勿論そのつもりだとも。そうだな、お前がしていたゲームのステータス。それを新しいお前にしてやるよ」
俺のしていたゲームっつったら「俺様最強伝説」っていうゲームか!
あのゲームのプレイヤーキャラは色んなことができるからな。まさしく無双できるぜ。でも絶対裏があるよな。
「マジか! でもタダじゃないだろ。俺に何をさせたい」
「話が早いな。お前には使徒の抹殺を頼みたい。お前が行く世界、リレイダールには俺を含め七柱の神がいる。そして各神にはそれぞれが選んだ使徒がいる。つまりお前には俺以外の神の使徒をぶっ殺して欲しいわけだ」
「おいおい、他の神様にケンカ売れってことかよ。大丈夫なのか?」
一応人間社会だろ。人を殺して大丈夫なのかよ。
「問題ない。いわばこれは神のゲームみたいなもんさ。使徒を最後まで生き残らせた奴の優勝ってゲームだ。俺らが干渉できるのは一つのチートを与えることのみだ。俺が選んだチートはお前のしていたゲームキャラのステータスをお前に与える、というものだ。こいつはなかな強力なチートだろ?」
「確かにな。恐らく無敵だろうぜ。よしわかった、その取り引き応じようじゃねえか」
気に食わなきゃ国ごと滅ぼしゃいいだけか。俺のプレイヤーキャラクターならそれだって可能なはずだ。
「交渉成立だな。使徒には共通して鑑定とアイテムボックスを持たせている。それと言語理解もな。その代わりリレイダールという世界の情報は自分自身で確かめてくれ」
「わかった。そういやあんたなんていう神様なんだ?」
「俺はイヴェル。邪神イヴェルさ」
その名を聞いた瞬間、俺の意識はフェードアウトしていった。
今回のイベントも俺の単独トップ。もはやゲーム内に俺様の敵はいねえ。ゲーム外の匿名掲示板じゃ俺様の悪口が書かれまくっているが、負け犬の遠吠えよ。
『あんな奴がトップだもんな、やってらんねーよ。あいつの誹謗中傷で引退したやつだっているのによ』
『全くだよな。俺もギルド勧誘断ったら毎日凸されて素材強奪だぜ? 1日一人3回まででもギルド員全員からやられたらたまったもんじゃねーよ。こんなクソ仕様のゲームやってらんねーぜ』
はっ、こいつもしかして「タマランチュラ」か?
このゲームは凸されると防衛力が減るからな。防衛力が減ると高コスト編成を維持できなくなるから誰にでも負ける可能性を秘めている。だから匿名掲示板ではこいつを凸してください、なんて依頼が来ることさえあるのだ。
俺を凸してくれなんてのも来たが1日張り込んで防衛力を維持し、全員返り討ちにしてやったぜゲハハハハ!
さて、そろそろ腹も減ったし飯の要求でもすっかな。俺は不摂生で肥えた身体を立ち上がらせ、一階へと降りる。そういや今日はやけに下がバタバタしてたような気がするな。
俺は台所に入る。誰もいない。仕方ないので冷蔵庫を開けようと思ったら冷蔵庫がどこにもない。そういやテーブルもないし食器棚もない。テレビもない。
俺は他の部屋を見て回った。親父の部屋に風呂場から今は使ってない弟の部屋まで。その全てが空っぽだった。玄関へ行けば靴もない。代わりにあったのは書き置きのみ。それがかつて玄関マットの合ったばしょにポツンと置かれていた。
「なになに……。孝之、お前にはほとほと愛想が尽きた。37にもなって働かないお前を養う気も失せた。これからは一人で頑張って生きてみろ、だとぉっ!?」
高卒職歴無しの俺なんかどこが雇ってくれるんだよ。しかもこの家は売り払ったから早く出ていくように、だと?
明日には電気も止まるらしい。これからどうやって生活していくんだよ。
クソっ、考えてもいい方法なんか思い浮かばねぇよ。とにかく部屋に戻ってゲームの続きだ。親父のカードが使える内に課金しないと!
俺は部屋に戻りゲームに戻る。そして早速高額アイテムの購入を試みた。しかしカードは既に止められ、購入は失敗に終わる。やべぇ、このままだとイベント1位逃しちまうじゃねぇか!
ならばまとめて支払いだ。引き落としは親父の口座だからな。俺の腹は傷まないはず。
しかし突如スマホは圏外になり、課金リンクへたどり着けなくなってしまう。もしかして解約されたのか?
そうなるとアカウントそのものが無くなってしまう。俺の、俺の育てたキャラクターがぁぁぁっ!!
俺は失意のままただひたすらにぼーっと時間を過ごす。気分は生ける屍。ゲーム内でイキるのが俺の人生の楽しみだったというのに……。
それから一ヶ月。俺は気がつけば河原のホームレスの仲間入りを果たしていた。俺の口座の残高は二十万あった。しかしそれも満喫で寝泊まりしていたら無くなっちまった。働いてないから勿論収入なんてない。
「あー人生クソつまんねー」
特にやることもなく、俺はダンボールに包まる。もう夜だし寝るか。そう思った矢先、誰かが近づいてきた。足音は複数ある。おい、まさか……!
「おい、ここに太ったゴミがいるぜ」
「社会のゴミってやつだな。俺さ、こう見えて結構綺麗好きなのよ。わかる?」
「わかるわかる。ゴミを見たら掃除したくなってきんじゃねぇの?」
「いいなそれ! じゃあゴミ掃除と洒落込もうぜ」
なんとも物騒な会話が聞こえ、俺は慌てて飛び起きた。まずい、こいつらホームレス狩りとかいうやつか!
「あ、ゴミが逃げるぞ」
「任せろ!」
その次の瞬間、俺の背中に強烈な痛みが走り、俺は膝をついた。こいつ、石投げやがったな!
「ナイスコントロール! 俺も投げるかな」
「よーし、俺もだ。一番大怪我を負わせた奴が優勝な」
こいつら、俺をゲーム感覚でいたぶろうってのか!?
ちくしょう、このクズどもが!
「ぐわっ!」
俺の頭に石がぶつかる。小石とはいえかなり痛い。傷口からは血が滴り、目に入る。
「やるじゃん。だったら俺はこいつでやってやんよ!」
「うおっ、それはさすがに死ぬんじゃねぇの?」
「へっ、未成年なんだから殺しても大丈夫なんだよ。これで俺が優勝だぜ!」
そいつの持つ石はでかかった。大きさが顔ほどもある。そんなんぶつけられたらマジで死ぬぞ!
「ま、待て。俺を殺したら死刑だぞ!」
「残念でしたー。俺等は未成年なんで死刑にはなりませーん。少年法知らねーのかよ。人殺しが楽しめるのは未成年の特権だぜイェーイ!」
男が石を持って俺を見下ろす。ダメダこいつ、完全にイッてやがる。
「いや、死刑になった事例はある! だからやめてくれ」
「知るかボケ。いいから死んどけ」
そして無情にも石は俺の頭の上に落ちて来た。そして俺の意識も消え失せる。
* * *
気がつけば真っ暗な暗闇だった。ちくしょう、俺は死んだのか?
真っ暗で何も見えねーよ。ここはいったいどこなんだよ。
「だ、誰か~、誰かいないのか!」
俺が叫ぶと俺の前に白い光が。その光は人型だが真っ白な人影のようだった。
「いよう。なかなか壮絶な死に方したみてぇじゃねぇか。安心しろ。お前を殺した奴らはそのうち警察に捕まる。余罪も多くて結構人を殺してるからな。未成年だが死刑になるぞ」
その白い影は愉快そうに話す。そうか奴らは死刑か。そうなるといいな。
「それよりここはどこなんだよ。俺はいったいどうなっちまったんだ?」
「お前は死んだよ、氏野孝之君。だが喜ぶがいい。俺はお前のその曲がり腐った根性が気に入った。俺の力で異世界に転生させてやろう。第二の人生を好きに生きてみるといい」
そうか、やはり俺は死んだか。でも異世界に転生させてくれるのならラッキーなのかもしれん。どうせならチートくれよチート!
「なぁ、だったらチートくれよ。チートがあれば好きに生きられるじゃねぇか」
「勿論そのつもりだとも。そうだな、お前がしていたゲームのステータス。それを新しいお前にしてやるよ」
俺のしていたゲームっつったら「俺様最強伝説」っていうゲームか!
あのゲームのプレイヤーキャラは色んなことができるからな。まさしく無双できるぜ。でも絶対裏があるよな。
「マジか! でもタダじゃないだろ。俺に何をさせたい」
「話が早いな。お前には使徒の抹殺を頼みたい。お前が行く世界、リレイダールには俺を含め七柱の神がいる。そして各神にはそれぞれが選んだ使徒がいる。つまりお前には俺以外の神の使徒をぶっ殺して欲しいわけだ」
「おいおい、他の神様にケンカ売れってことかよ。大丈夫なのか?」
一応人間社会だろ。人を殺して大丈夫なのかよ。
「問題ない。いわばこれは神のゲームみたいなもんさ。使徒を最後まで生き残らせた奴の優勝ってゲームだ。俺らが干渉できるのは一つのチートを与えることのみだ。俺が選んだチートはお前のしていたゲームキャラのステータスをお前に与える、というものだ。こいつはなかな強力なチートだろ?」
「確かにな。恐らく無敵だろうぜ。よしわかった、その取り引き応じようじゃねえか」
気に食わなきゃ国ごと滅ぼしゃいいだけか。俺のプレイヤーキャラクターならそれだって可能なはずだ。
「交渉成立だな。使徒には共通して鑑定とアイテムボックスを持たせている。それと言語理解もな。その代わりリレイダールという世界の情報は自分自身で確かめてくれ」
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