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第二章 愛おしい人のために
13 ギルド職員にもイキれ!
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「あー、こりゃ両腕折れてるかもしれんなぁ。まず右腕」
右腕を思いっきり握り潰す。
ゴキボキィッ!
すると変な方向に右腕が曲がった。
「ギャアアアアッ!」
「あ、やっぱり折れてるわ。てことは左腕も折れてるかもしれんな」
ゴキボキィッ!
そして左腕。もうこれ複雑骨折だな。引退直行じゃね?
「ギャアアアアアッッ!!」
「あーやっぱり折れてるわ。すまんなぁ俺がお前の脚に引っかかったばっかりにこんな目に遭わせちまって。あら、気絶しちまったか。よっぽど痛かったんだなかわいそうに。いやはや、本当に悪かったな」
「て、てめぇわざと折りやがったな?」
「なんのことだ? 俺はこいつの差し出した脚で転んだだけだ。いやー、しかしたったこれだけで両腕両脚の骨が折れるなんて随分弱っちい身体だな。丈夫に産んでもらえなかったんだな。ちゃんと治療費をこいつの言った金額払ってやるから安心してくれ」
俺は金貨10枚と銅貨1枚をハゲ頭のツレに手渡した。
「両腕両脚だぞ! これだけで足りるかよ」
「えー? でもこいつの請求額は金貨10枚だっただろ。銅貨1枚は俺の気持ちだからな? 快く受け取ってくれ」
俺はドヤ顔でこいつの不満に答えてやった。慰謝料の指定はなかったからこれで問題ないよな?
「ふざけんなてめぇ!」
「お前も金貨10枚欲しいのか?」
俺はニタリと笑い、右手をワキワキと動かして握る動作をした。するとツレは引きつった顔で冷や汗を垂らす。どうやら実力じゃ勝てないと理解したか?
「いや、いい。でもこれはあんまりだろう。このままじゃハゲームは引退するしかない。こんなの治そうと思ったら金貨10枚じゃ絶対足りねぇよ……」
ハゲ頭の名前はハゲームというのか。名が体を表してんな。俺は治療の相場なんて知らねぇよ。自業自得なんだし知るかボケ。
「あのー、トラブルは困るんですけど」
俺達のやり取りに割って入ったのはギルド職員か。おっぱいでけーな。
「いやー、こいつの脚に引っかかって俺が転んじゃいましてね。見た感じ両腕両脚骨折してたから治療費を払ったところです」
「金貨10枚で足りるわけねーだろ。こっちも確かに悪かったけどよ、これはあんまりじゃねぇか。こんなんじゃもう剣を持つどころか歩けなくなっちまう」
握り潰して粉砕骨折させたからな。普通の治療じゃ再起不能だろう。俺に喧嘩を吹っかけたのが悪い。
ハゲームのツレはもう半泣きでギルド職員に泣きついてやがる。うーん、ギルド職員の心象を悪くするのは得策じゃないかもしれんな。
「確かにこれは非道いですね……。もう冒険者として活動するのは無理でしょう。私も見ていましたがハゲームさんにも問題があります。しかしあの一瞬で骨を折るなんてあなたは何者ですか?」
ギルド職員はどう見ても怒ってるな。とりあえず質問に答えるべく俺は九尾にかけていたギルド証を職員に渡す。
「俺はリンドンから来た冒険者だよ。ほれ、これがギルド証だ」
「確認します。第5位冒険者ジェノスさですか。登録されてからまだ一ヶ月そこそこのようですね。つまり相当な実力をお持ちということですか」
「まぁな。で、本題なんだが絡まれたのは俺の方だ。まさか俺が悪いなんて言わないよな?」
少なくともこの職員はハゲームとやらの非は認めていた。どういう裁定を下すのか観物だね。
「基本的には当事者同士の話し合いで決められます。ですが、どう見てもお互い納得してないですよね?」
「納得いくかよ」
「俺は言い値の治療費は払ったぞ」
まぁそうなるよな。ま、最悪俺が治してやってもいいが、それなら金貨は返してもらうからな。
「困ったものですね……。解決しない場合は両方護法取締り所に突き出して裁判になりますよ?」
「そうなるとどうなるんだ?」
護法取締り所……?
この世界にそんなもんあるのか。警察組織みたいなもんか?
「ハゲームさんは脅迫未遂罪、ジェノスさんは第一級傷害罪に問われる可能性がありますね」
「なんだよ、その第一級傷害罪って」
傷害罪に等級があるのか。医療の発達していない世界じゃ怪我は軽くねぇってことか。
「これは職を辞するほどの怪我を負わせた場合に適用されます。結構罪は重いですよ? 最低10年の強制労働か罰金金貨100枚ってとこですかね。ハゲームさんは実害を与えていませんので未遂ですが罰金刑ですね。金貨1枚ほどです」
「落差すげぇな! 俺の方が不利ってことかよ」
勝ち目ないじゃんかよこれ。ちっ、俺のイキりタイム終了のお報せが来やがったか。仕方ねぇな。
「ええ、そうですね。自分の置かれた状況理解しましたか?」
ギルド職員は額に青筋を浮かべつつもニッコリと笑う。目が笑ってなくて怖えんですけど。
「はぁ、仕方ねぇな。じゃあその怪我今すぐ治してやるよ。それで納得しろ」
「は? やれるもんならやってみろよ。こんな骨折を治せる魔法を扱えるのは聖人クラスの治癒魔法だけなんだぞ!」
「できたら金貨は返して貰う。異論はないな?」
俺はツレの男に念を押した。後で慰謝料寄越せと言っても聞かねぇからな?
「できるんならな!」
「よし、言質は取ったぞ。職員のねぇちゃんも聞いていたな?」
「ええ、確かに聞きましたけど……」
職員のねぇちゃんはちょっと困った様子で俺を見た。そんなことが本当にできるのか疑問なんだろうな。
「リザレクション!」
俺はそんなことなど気にせずリザレクションを使用する。一定時間内であれば蘇生すら叶う最上位治癒魔法。本日何度目だよまったく。
俺のリザレクションにより、ハゲームの折れ曲がった腕や脚は見事に整復され治っていく。よくよく考えると整復まで行うってすげぇな。
「マジかよ!」
「うえええ!? リザレクションの使い手がいるなんて驚きです」
さすがに2人とも驚いてるな。フッフッフッ、まだ俺にイキるチャンス到来ってやつだな。
「約束は果たした。これで俺は無罪放免だし金貨も返してくれるんだよな?」
俺はドヤ顔で2人を見てほくそ笑む。どうだ、言葉も出まい。
「そ、そうだな……。もう骨を折った証拠もなくなっちまったしな。金貨は返すわ。それと、ありがとうな。悪かった、ハゲームの代わりに謝らせてくれ」
するとツレの方は笑顔になって俺に謝り始めた。あれ?
なんか予想したのと違うぞ。
「納得されたようですし解決ということでいいですね。しかしまさか伝説レベルの魔法を目にすることになるとは思いませんでした」
職員の俺を見る目が変わった。なんか感動してるのか?
目がちょっと潤んでるぞ。
「ハゲームとやらに言っとけ。もうすんなよ、ってな。じゃあな」
まぁいっか。じゃあカッコよく立ち去らせてもらうとするか。俺は立ち上がって背中を見せ、軽く振り向いて右手でスチャッと挨拶をする。そして真っ直ぐ出口へと向かった。
そしてバタンと扉を締め、扉によりかかる。そしてふと思い出したことがあった。
「あ、オススメの宿屋聞き忘れた」
俺は仕方なく街を彷徨い歩き、宿屋を探す羽目になったのだった。
宿屋、ハズレだったよチクショー!
右腕を思いっきり握り潰す。
ゴキボキィッ!
すると変な方向に右腕が曲がった。
「ギャアアアアッ!」
「あ、やっぱり折れてるわ。てことは左腕も折れてるかもしれんな」
ゴキボキィッ!
そして左腕。もうこれ複雑骨折だな。引退直行じゃね?
「ギャアアアアアッッ!!」
「あーやっぱり折れてるわ。すまんなぁ俺がお前の脚に引っかかったばっかりにこんな目に遭わせちまって。あら、気絶しちまったか。よっぽど痛かったんだなかわいそうに。いやはや、本当に悪かったな」
「て、てめぇわざと折りやがったな?」
「なんのことだ? 俺はこいつの差し出した脚で転んだだけだ。いやー、しかしたったこれだけで両腕両脚の骨が折れるなんて随分弱っちい身体だな。丈夫に産んでもらえなかったんだな。ちゃんと治療費をこいつの言った金額払ってやるから安心してくれ」
俺は金貨10枚と銅貨1枚をハゲ頭のツレに手渡した。
「両腕両脚だぞ! これだけで足りるかよ」
「えー? でもこいつの請求額は金貨10枚だっただろ。銅貨1枚は俺の気持ちだからな? 快く受け取ってくれ」
俺はドヤ顔でこいつの不満に答えてやった。慰謝料の指定はなかったからこれで問題ないよな?
「ふざけんなてめぇ!」
「お前も金貨10枚欲しいのか?」
俺はニタリと笑い、右手をワキワキと動かして握る動作をした。するとツレは引きつった顔で冷や汗を垂らす。どうやら実力じゃ勝てないと理解したか?
「いや、いい。でもこれはあんまりだろう。このままじゃハゲームは引退するしかない。こんなの治そうと思ったら金貨10枚じゃ絶対足りねぇよ……」
ハゲ頭の名前はハゲームというのか。名が体を表してんな。俺は治療の相場なんて知らねぇよ。自業自得なんだし知るかボケ。
「あのー、トラブルは困るんですけど」
俺達のやり取りに割って入ったのはギルド職員か。おっぱいでけーな。
「いやー、こいつの脚に引っかかって俺が転んじゃいましてね。見た感じ両腕両脚骨折してたから治療費を払ったところです」
「金貨10枚で足りるわけねーだろ。こっちも確かに悪かったけどよ、これはあんまりじゃねぇか。こんなんじゃもう剣を持つどころか歩けなくなっちまう」
握り潰して粉砕骨折させたからな。普通の治療じゃ再起不能だろう。俺に喧嘩を吹っかけたのが悪い。
ハゲームのツレはもう半泣きでギルド職員に泣きついてやがる。うーん、ギルド職員の心象を悪くするのは得策じゃないかもしれんな。
「確かにこれは非道いですね……。もう冒険者として活動するのは無理でしょう。私も見ていましたがハゲームさんにも問題があります。しかしあの一瞬で骨を折るなんてあなたは何者ですか?」
ギルド職員はどう見ても怒ってるな。とりあえず質問に答えるべく俺は九尾にかけていたギルド証を職員に渡す。
「俺はリンドンから来た冒険者だよ。ほれ、これがギルド証だ」
「確認します。第5位冒険者ジェノスさですか。登録されてからまだ一ヶ月そこそこのようですね。つまり相当な実力をお持ちということですか」
「まぁな。で、本題なんだが絡まれたのは俺の方だ。まさか俺が悪いなんて言わないよな?」
少なくともこの職員はハゲームとやらの非は認めていた。どういう裁定を下すのか観物だね。
「基本的には当事者同士の話し合いで決められます。ですが、どう見てもお互い納得してないですよね?」
「納得いくかよ」
「俺は言い値の治療費は払ったぞ」
まぁそうなるよな。ま、最悪俺が治してやってもいいが、それなら金貨は返してもらうからな。
「困ったものですね……。解決しない場合は両方護法取締り所に突き出して裁判になりますよ?」
「そうなるとどうなるんだ?」
護法取締り所……?
この世界にそんなもんあるのか。警察組織みたいなもんか?
「ハゲームさんは脅迫未遂罪、ジェノスさんは第一級傷害罪に問われる可能性がありますね」
「なんだよ、その第一級傷害罪って」
傷害罪に等級があるのか。医療の発達していない世界じゃ怪我は軽くねぇってことか。
「これは職を辞するほどの怪我を負わせた場合に適用されます。結構罪は重いですよ? 最低10年の強制労働か罰金金貨100枚ってとこですかね。ハゲームさんは実害を与えていませんので未遂ですが罰金刑ですね。金貨1枚ほどです」
「落差すげぇな! 俺の方が不利ってことかよ」
勝ち目ないじゃんかよこれ。ちっ、俺のイキりタイム終了のお報せが来やがったか。仕方ねぇな。
「ええ、そうですね。自分の置かれた状況理解しましたか?」
ギルド職員は額に青筋を浮かべつつもニッコリと笑う。目が笑ってなくて怖えんですけど。
「はぁ、仕方ねぇな。じゃあその怪我今すぐ治してやるよ。それで納得しろ」
「は? やれるもんならやってみろよ。こんな骨折を治せる魔法を扱えるのは聖人クラスの治癒魔法だけなんだぞ!」
「できたら金貨は返して貰う。異論はないな?」
俺はツレの男に念を押した。後で慰謝料寄越せと言っても聞かねぇからな?
「できるんならな!」
「よし、言質は取ったぞ。職員のねぇちゃんも聞いていたな?」
「ええ、確かに聞きましたけど……」
職員のねぇちゃんはちょっと困った様子で俺を見た。そんなことが本当にできるのか疑問なんだろうな。
「リザレクション!」
俺はそんなことなど気にせずリザレクションを使用する。一定時間内であれば蘇生すら叶う最上位治癒魔法。本日何度目だよまったく。
俺のリザレクションにより、ハゲームの折れ曲がった腕や脚は見事に整復され治っていく。よくよく考えると整復まで行うってすげぇな。
「マジかよ!」
「うえええ!? リザレクションの使い手がいるなんて驚きです」
さすがに2人とも驚いてるな。フッフッフッ、まだ俺にイキるチャンス到来ってやつだな。
「約束は果たした。これで俺は無罪放免だし金貨も返してくれるんだよな?」
俺はドヤ顔で2人を見てほくそ笑む。どうだ、言葉も出まい。
「そ、そうだな……。もう骨を折った証拠もなくなっちまったしな。金貨は返すわ。それと、ありがとうな。悪かった、ハゲームの代わりに謝らせてくれ」
するとツレの方は笑顔になって俺に謝り始めた。あれ?
なんか予想したのと違うぞ。
「納得されたようですし解決ということでいいですね。しかしまさか伝説レベルの魔法を目にすることになるとは思いませんでした」
職員の俺を見る目が変わった。なんか感動してるのか?
目がちょっと潤んでるぞ。
「ハゲームとやらに言っとけ。もうすんなよ、ってな。じゃあな」
まぁいっか。じゃあカッコよく立ち去らせてもらうとするか。俺は立ち上がって背中を見せ、軽く振り向いて右手でスチャッと挨拶をする。そして真っ直ぐ出口へと向かった。
そしてバタンと扉を締め、扉によりかかる。そしてふと思い出したことがあった。
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