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第2品「じつは時間経過って、思ってるより遅かったり早かったりする」
タイマン!続・豆腐VS灰……美味しい麺の作り方
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――まさに豆腐の独壇場である。
「第六十五問! ソヨギさまの好きな豆腐の種類はなんでしょう。1、豆腐。2、木綿。3、絹ごし……うふふ♪ 4、豆腐の女神。5、豆腐野メガ美さんてなによぉっ!」
「……種類ですよね?」
「ご……五種類の選択肢とは……」
なんだか復活しつつあるソヨディラは、すっかりのめりこんでいるようだ。ソヨギはもはや半寝状態である。ていうかどうでもいい。
ただいちどマジ寝を始めたら殺されかけたので、ソヨギは頑張っていた。さすがにこんな豆腐クイズで殺されたくはない。だけど答えはテキトー。
「もう3ー4くらいで」
「なんですかその賭け馬みたいなのは!」
「……あるんだ異世界にも」
「ここは絹ごし一点か? いや……無難に3流しという手もあるが……」
「……手堅いっすね」
「穴はもちろん5だろうな」
「ですね。でも1番豆腐の逃げ足も期待できますが」
「確かに……だが後半でバテる傾向もあるからな。前回の問題では三着だったろう」
「あれはおしかった。短距離なら文句なしの一着でしたが……」
「クイズに距離も着順もありません! そしていつからソヨギさまは予想屋になったのです!」
「……いま?」
「だろうな」
「くうぅぅぅぅ……! これではいつまでたってもソヨギさまが分からない!」
メガ美さんの問題に問題がありますよ? なんかややこしいがそうなのだ。あ……そうか、バラせばいいのか。
「……こちらがシンディラさんです」
「なにをバカな。そちらこそ美しいシンディラさまだろう?」
「むむむ……どちらがソヨギさまなの!?」
ダメだこりゃ。どうすればいいかな。勘違いのパターンに入ってしまっている。しかし異世界の方々は、なんでみんなアレなんだろう。めんどいー。
「ではこの問題を出すしかありませんね……究極問題! ソヨギさまはいますぐにでもわたしを食べたいと思っている!? さあ答えなさい!」
「あ……まだ昼食には早いんで」
「……豆腐などいらん」
「 満場一致で拒絶なんていやあぁぁぁ!」
豆腐がものすっごいぶるんぶるんする。
ソヨディラがうげっと気持ち悪くなる。
ソヨギもじゃっかん気分が悪くなる。と――
「こ……の! 女狐えぇ……!」
ビデガンの声である。倒れて動かなくなったみんなのなかでたったひとり、ビデガンだけは意識をたもっていたようだ。そちらを見ると、血だらけになりながら上体を起こしているビデガンがいた。ビデガンは匍匐前進のように這いながら、こちらに向かってくる。
「豆腐の女神ぃ……! どっちがソヨギか知りてぇなら、俺が……こいつで教えてやる……」
「どういうつもりですかビデガン!」
「へ……ソヨギなら簡単に防げるだろうぜ……ハイヴォルトをなぁ……!」
「……ていどによりますけど?」
コンビニごと焦土にするようなのは無理である。あれかな? 紙皿いっぱい体にくっつければ助かるかな。まさか永眠チャンスなのだろうか……いや、いまは困る! メッシちゃん見せてー。
「このままじゃ死ねねぇ……ここまで誇りをコケにされてぇ…… 死ねるかってんだあぁぁぁ!」
「ビデガンやめなさい!」
「ぐ……さすがにハイヴォルトは……」
「……俺も死ねないっす」
メッシちゃんが見たいのだ! ビデガンは這ったまま右手を突きだした。ハイヴォルトに青い光の粒子が集まっていく……それにあわせ、カァンッ! と竹を打ったような音がした。同時、ビデガンが青黒いオーラをまとった。さらにはビデガンの周囲の地面から、青い閃光が次々に吹きあがる。ソヨディラが焦った。
「なんという魔力だ……デスケテスのほどこした魔装強化機構が魔力の凝縮効率を上昇させ、通常の魔装銃が放つ閃光束の三十倍以上の焦点化圧縮を可能にしている! まさに魔力の剛槍……蒼き憤墨!」
「……ひさしぶりの説明くささ」
しかも説明が意味分からないという。ようするに、ほかのよりも一点に集めることができるよ! ということだろう。さらに豆腐が参加する。
「シエルネットによれば、ハイヴォルトには雷属性も付与されています! わたしが放つソイソファデナムなんて、まるで児戯だわ!」
「……お疲れっす」
ソイソなんたらが分からないが、ビデガンがいま使う技は雷らしい。かっこよくすると墨雷属性って感じだろうか。でもそれがかっこいいかは疑問。
しかし雷までついてるとさすがに紙だけでは防げない。あのひとはどうしてソヨギなら大丈夫! って言ったのかな……
そうか! 勘違いーズだった……
「……後悔背負って寝んねしなぁ! 蒼雷闃偃砲……!」
無音――だがその光撃は放たれていた。ビデガンの右手から放出された青いレーザーの周囲で、極大の稲妻が螺旋を描いている。弾速はあまり早くない。というか遅い。投げられたスローボールのようだ。
「なんという熄滅の魔力……」
ソヨディラが絶望的につぶやく。確かにやばそうだ。なのでソヨギは豆腐の皿を持った。
「なにをするので――いえ、これはソヨギさまの温もり……?」
「その言いかた気持ち悪いので豆腐バリアー。早めに」
「はい! 局所魔法障壁いぃぃぃぃ!」
豆腐の魔法障壁が、ソヨギと豆腐の前方にだけ出現する。全包囲展開ではダメなのか。前方に集中しないと受けきれないのかもしれない。そんなことより、皿を持った手から温もりを感じるってなんだろう。
ソヨディラはと言えば、どうしようもなくたたずんでいた。せまり来るハイヴォルトの一撃を見つめている。アースクエイクとかいっぱいやったからだろうか、きっとまだ動きたくないんだろう。弾速の遅いハイヴォルトから逃げだすことなんて簡単だろうに。
ソヨギは理解できる。ね? 走るとか絶対に嫌ですよね? まさかゆいいつの理解者をこんな形で失うとは……まあでもメッシちゃん見せてくれないしな。
「バッドデビラスよ! きさまの狙いはこれだったのだな! これではよけることもできない!」
「シンディラ……このような形で終幕とは残念です」
「くっ……ふふふはは! ソフラ! これで終わったと思うなよ!」
「いいやぁ? 終わりなんだよ女狐……真・二重……鏡射閃……」
ビデガンはささやくようにそう言い、ガックリと地面に伏せた。だがハイヴォルトの光撃はとまらず、ソヨディラまであと数秒の距離にまで来ている。
「なに!? トゥー・トリックだと!」
「なんすかそれ」
「ビデガンの操る極技です! 実態は分かりませんが……ソヨギさま! この場から離れてください!」
「……え?」
「え、じゃなくて!」
「押さない駆けない喋らないっす。おかし」
「くそおぉぉぉぉ!」
「いったいなんの標語で――キャアァァァァァァ!」
ソヨディラはさすがに横に跳んだりした。そのせいで魔法障壁に光撃があたる。ズギョガカカーン! ビカビカしながら魔法障壁を雷の乱舞が打ちつける。
「なんという威力! まるでデスケテスの拳打をさらに強化したような! ぐぐぐ……こぉんのおぉぉぉぉぉぉ!」
「ふはは……さらばだソフ――ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
しかし、ソヨディラにも光撃が触れていた。
またビカビカしだして、ソヨディラが撃ち抜かれた直後に雷のタコ殴りに見舞われている。バゴギョココカババババババ! ソヨギがちょっとうえを見てみると、コンビニの天井付近にビデガンがいた。と言ってもなんかボンヤリした見た目で、地面に倒れた格好をしたままで、こっちに頭を向けている。なんか宙づりにされて気絶したみたいな感じだ。そしてふっと消える。トゥートリックとかいうやつで、うえからも撃っていたわけなのか。
ゴカカギャドクバガカキカカカ……! もうなんかスゴい。木と木がぶつかりあうようなかん高い音が連続する。そのなかでソヨディラが無尽の雷撃にさらされ、黒こげになりながら宙に浮いたりしている。いつ終わるんだろう。しかし無事なんだろうかメッシちゃんは……
「あうぅ……アニミスがもたないかもしれない……!」
「頑張ってください」
「ソヨギさまが逃げてくれればこんなことには……!」
「いや、メガ美さんの勇姿が見たくて」
「え? そうなのですか? わたしの全力はまだまだですよぉ!」
なるほど。豆腐のやる気スイッチを発見した! ジゴロソヨギの誕生である。しかしこれって寝ててもいいんじゃないだろうか。ソヨギはゆっくりと目を閉じた……
……………………
…………
……
「――ソヨギさま!」
「……ちっす」
――ソヨギが目を覚ますと、豆腐の魔法障壁が消えているのが目にはいった。コンビニの前面は、だいぶ黒こげになっている。
「ハイヴォルト……恐ろしい兵器です。対個人戦では間違いなく最強クラスですね」
「なるほど……」
確かに攻撃範囲は狭かった。コンビニの前面には瓦礫やらなんやらあるが、黒こげになっているのはレジ側の半分くらいである。
「シンディラ……」
豆腐を離してやると、黒こげになった塊へとふよよーっと近づいていく。豆腐を離したソヨギは、よろよろーっとメッシちゃんに近づいていく。寝起きだから。
「く……まさかこんな最後? これでよかったの? シンディラお姉さま……」
「……まさかこんな最後」
ソヨギはガックリした。見事に燃えつきたメッシちゃんである。
「嘆いている暇はない……飾神さまたちの様子を……」
豆腐は悲しげに、へよーんと飛んでいった。そう、嘆いている暇はない。漫喫にならばあるはずだ! 月刊サジャジンもメッシちゃんも! そしてとりあえず一服しよう。喫煙者は区切り区切りでタバコが吸いたいのだ。
ソヨギが喫煙所に向かうそのかたわらで、豆腐はウィッグノリさんとかに声をかけていた。
「ご無事ですか?」
「むぅ……灰の妖女……あのような強者がまだいようとは……」
「はい。なぜシンディラがこちらの世界に来ていたのか……ビデガンの物言いですと、どうやら復讐のためのようでしたが」
「破滅軍となにやら因縁があるのかもしれぬ……それとおぬしにもな。そうであろう豆腐の女神よ」
「はい……シンディラとわたしは同じ日、同じ場所にてアニミスを授かりました……いえ……アニミスを授かったのはわたしだけ。シンディラはアニミスも魔力も持たない中道の存在でした。そのため彼女はアニミスを持つ神でもなく、魔力を持つ魔族でもなかった――」
なんか長いので要約すると、ニュートラニマと呼ばれる魂があるらしい。それは善悪を持たずに宿った生命である。人間の魂に近いものだが、異世界の考えでは、人間は善悪の両方を持つために魂が中道である。しかしニュートラニマは善悪がないための中道なのだそうだ。そのため通常は赤子のような無心状態で存在し続ける。
しかしシンディラはなぜか、いつのまにやら魔力を得ていた。豆腐が産まれたカマドに使われていた薪――その灰から産まれたのがシンディラだが、どうやら木のアニミスが枯れる影響で、特殊な中道神として産まれたようである。無心ではなく有心で産まれ、シンディラは思考能力があった。
そして負の感情が積もり積もって、アニミスを持つ豆腐を恨むようになる。なぜわたしは悪なのか……ソフラは女神であるのに……同じ日同じ場所で産まれたわたしがなぜ……こんなにも醜いのだ!
「……逆恨みっすねぇ」
ソヨギは悲しくなった……その逆恨みでメッシちゃんが亡きものに……読みたい……
「そのようなことがあったのか……灰の妖女は中道神であるが、アニミスの影響にあったために有心であった……かなり特殊な事例だ」
「はい。思考があるためにわたしを恨むことに……魔力を持ったのはそのせいか、それ以前にだったのか……知るよしはありませんが……」
「むう……ともかくだ。体制を建て直さなくてはならぬ。デビロイドどもの処遇も決めねばならぬ」
「はい」
飾神たちがふらふらと立ち上がる。そして三人はデビロイドたちの様子を見始めた。豆腐がソヨギのほうへと飛んでくる。
「……お疲れっす」
「飾神がたの検分が終わるまで時間がかかると思います。デビロイドたちの処遇も決めなければなりません」
「……みなさんご存命?」
「恐らく。人間とは違い、我ら護神や魔族は生命力とアニミス、または魔力を持っています。なので人間より遥かに死ににくいのです」
そこらへんは代替エネルギーでもあるわけだ。異世界にはいろいろあるなと、ソヨギはタバコに火をつけた。フィルターカッターはやらない。吸いすぎな自覚はあるのだ。
「ソヨギさま? ぶしつけなお願いなのですが、アニミスの補給ができますか?」
「……使っちゃいましたか」
「倍率はかなりさがりました……十倍ほどに」
……充分なのでは? 不満に思うていどではない。これが給料なら、どんだけ自分が仕事できると思ってんだ? である。二十歳をすぎたら学生でも社会人なのだ! いまは関係ないけど!
「……ネタはつきましたが」
「そうですか。では道中で思いついたら試していただけます?」
「いっすよ」
「やった♪」
ソヨギのテキトー発言に豆腐は喜んだ。ジゴロソヨギは伊達じゃない。なんかもうダマしダマし行けないかな?
「う……」
「目覚めたかデビロイドよ」
会話を耳にしてティアラ係長を見る。ヒザをついてデビロイドをうかがう姿は、酔いつぶれた部下を起こしているかのようだ。
「……ウィンチェスターだ」
「ではウィンチェスター。そなたらはこれからどうするつもりだ」
「分からねぇ……だが戦うべきは護神でも魔族でもなかったことに気づいた。俺たち自身だった……裁量はビデガンに一任する。たぶん、全員が同じ意見だ」
「ふむ。まずはおのれら自身の意思を明確にするか。では待つことにしよう」
「許すのか? 俺たちを……」
「同胞を汚した罪は重い。だがビデガンの覚悟も同じく重い。あのハイヴォルトの一撃……本当にデビロイドが間違っていたのなら、あれは我らに向けられていたはず。そして豆腐の女神の慈悲がある。まずはビデガンの考えを聞き、そのあとに我らも決断することとしよう」
「……すまねえ。食神たちを取りだす手段はないのか。詫びをいれなきゃならねえ。一族全部で」
なんだか穏やかな方向に話がまとまりそうな雰囲気だ。ウィッグノリさんと軽傷だったデビロイドふたりが、ビデガンの容態を確認する。
「ビデガン……悪かった。俺たちは……」
「デビロイドよ。ビデガンの意識はないようだ。危険な状態かもしれぬ」
「あんな傷でハイヴォルトを使っちまったんだ。『魔力枯れ』の兆候もあるみてえだ」
魔力枯れ。代替エネルギーがないから生命力に代えられないってことだろう。便利なのか不便なのか分かりませんね。それを見ていた豆腐がウィッグノリさんに声をかけた。
「応援の飾神さまのなかに、治癒のできるかたは?」
「二柱おる。だが来るのがいささか遅すぎるのが気になる……」
「ではわたしがお迎えに行きます。ビデガンが目覚めなければ収集がつかない状況ですし」
「いいえ、それは困るわ」
「な――!」
そこで起きたのは声、それと灰の旋風だった。ビュアゴオッ! と刃のような灰が周囲に拡散し、完全な不意討ちのかたちで飾神やデビロイドたちを撃ち抜く。さまざまな悲鳴をあげながら、彼らは砕かれ、血しぶきをあげながら倒れていった。
ソヨギと豆腐は運がよかった。コンビニ横の喫煙所にいたからだった。
「なんということを……シンディラ!」
「利かぬわ!」
豆腐が怒号とともに光線を放つ。ソヨギはひょいとコンビニ前面をのぞいた。ソヨディラでなくなった倒したはずのシンディラがいて、光線が突き抜ける――
が、シンディラの体の中心がヒュンと空洞を作ると、そこを光線が抜けていく。なかなかに気持ち悪い。光線はシンディラの向こうにある、冷蔵室を破壊した。コー○が……さっき二本確保しておいてよかった!
「ククク……そうだ……最初から策などいらなかったのよ……デビロイドを利用した乱戦にまぎれる必要も、アニミスを消耗させる必要もなかった。ただ勝てばよかった! 真っ向から戦えばよかったのよ! あんな使えない奴らなどいらなかったのよ! 灰塵と化せ、ソフラ!」
「命や想いをなんだと……なんだと思っているのシンディラアァァァァ!」
豆腐がシンディラへと突進する。そして豆腐は新たな技を使う。白い剣を出現させたのである。同時にシンディラも灰の剣を出現させ、構えた。
「武豆式白刃!」
「灰と塵の魔剣!」
「……どっちもセンスない」
名前のインパクトのなさに反して、その衝突はとんでもなかった。二振りの剣がガキイィンッ! と打ち合うと、ゴアァッ! と余波が波紋を広げた。コンビニのなかは台風にあったかのようにメチャクチャになる。いろいろ買い物しといてよかった!
「踏み込みが甘くなったなソフラ!」
「……浮いてるしね」
「あなたの打ちこみなど軽いわ!」
「……灰だからね」
ツッコミをいれつつ煙を吐く。両者はギャギャギャギャ! と鍔競りあいながら外にでてきた。シンディラは上下左右から多角攻撃を繰りだすのに対し、豆腐はあえての防戦という感じである。しかし豆腐が押されている印象は受けない。なぜなら表情が分からないからだ!
「ソフラ! あのときのようにはいかぬぞ!」
「それはどうかしらね!」
ガンギャンガインガガガガッ! シンディラの高速の剣が豆腐を攻撃する。しかし豆腐は完璧に防いでいた。打ちあいを続ける両者を、徐々に力の余波が浮き上がらせたりする。ソヨギは思った。こういうの嫌いじゃないです。
空中で打ちあいを続ける両者――その真下のあたりでは、飾神三人とデビロイド数人が集まっていた。かろうじて生きていたビデガンがうめいている。意識が少しは戻ったようである。まあ虫の息だが。
「……やめなぁ」
「灰の妖女は女神との戦闘に気を取られているのだぞ! いまが好機ではないか!」
そう言ったのはツケマB系である。もめているのか、どうやらいまのうちにシンディラを倒しちゃおうという魂胆らしい。だがビデガンは、
「チャンスかもな……だけどよぉ……女神は俺たちのために……剣を取った。それをコケにするのは許さねぇ……! がはっ!」
ビデガンは血を吐いたりする。しかしいちいちセリフがカッコいいな……まさにフリーランスソヨギもあの感じなのだ。だからコケにしないように頑張って傍観するのだ。ぷは~。
「灰の妖女の力は飾神を越えている。それでもやるなと言うのか?」
「あんた……ウィッグだったか? 妖女を女神がいちど負かしてんだぜ……食神てのは下位だったよなぁ? それがなんでだって思わねぇのかぃ?」
「む……そうか、属性相性! 豆腐の女神は水の恩恵に厚い。すなわち水による攻撃が灰には有効なのだな」
「妖女は……魔装銃も恐れたんだろうぜ……なにせ――ごふっ! ハァ……ハァ……くっそ……!」
「ビデガンもういい! 飾神、俺たちの魔装銃は墨属性。水属性を内包してる変質属性だ。そうだったのか……妖女が俺たちを復讐に利用したのは、反属性の脅威を減らすためでもあったのか……」
「だからと言って黙っているわけにはいかぬぞ!」
「ツケマさんよぉ……ハイヴォルトは魔力と命の魔装銃……あと一発くれぇなら、てめぇを黙らせるために使ってやってもいいんだぜぇ?」
「い……命を捨てると言うのか……女神の想いを受けいれるためだけに!」
「……それが誇りだ……なぁ? てめぇら……」
「あ……ああそうだ! 女神が負けたら俺たちがやってやる。それがあんたらへの詫びだ。ビデガンのためにもここは!」
「ツケマよ。この者の覚悟と心意気、我が預かる……この場はそれで治めるのだ。なに、女神が敗れることがあれば、我もこやつらとともに果ててもよい」
「ティアラ……くっ! そのときは我も肩を並べよう……」
ティアラ係長が親指を立てたりする。おいしいとこ狙ってたんだろうな。最後に全部を持っていった係長である。それはそれとして、上空で激戦している豆腐とシンディラ――
「カウンターだと!?」
「おおぉぉぉぉぉ!」
シンディラの振りおろしたアッシュエッザーを、豆腐が魔法障壁で弾き返したようだ。その隙を突いて、豆腐が突進ぎみにソイソードを振り抜く!
ずじゃあっ! とシンディラが袈裟斬りの一撃をくらう。灰が舞い、水滴が舞う。どうやらソイソードは水の剣のようである。
「あなたを封じます、シンディラ!」
「クカカッ……! 以前のわたしと思っているのか、ソフラ!」
「! 魔装銃!?」
シンディラの残った頭から右腕――その右手には魔装銃と思われる銃口があった……あれかな。変身のついでに能力とかも覚えちゃうんだろう。ごくごく……タバコ吸ったらコー○にも手が伸びたのだ! ソヨギに抜かりはない。
「死ねえ! 擬装駆逐塵破!」
「魔法――!」
障壁は間にあわなかった。光撃を模した青い灰が、キュオッ! と放たれる。それは豆腐に直撃し、灰の混ざった弾幕がブワァッ! と拡散した。まるで煙幕のように広がった灰が、五メートルほどの範囲にただよう。
「め……女神が!」
「妖女が上手だったかぃ……んじゃまぁ……行くかねぇ……!」
「てめえらやるぞ! 女神の慈悲に応えねえで、誇りが取り戻せるかよ!」
「はーはっはぁ! 塵どもがぁ! そんなに死にたいなら殺してやるよお!」
シンディラがすさまじい形相で笑うと、弾幕になっていた灰がヒュオッとシンディラに集まり、その体を再生させる。不死身じゃん。どうするデビロイドたち! ソヨギはポテチを片手にしていた。気分はおもしろファンタジー映画を観ている感じだ! と――
「まだ終わりではありませんよ! イソゼクトロン!」
「なにぃ!?」
なんだかバチバチする球が、したを見ていたシンディラの背中へと放たれた。ギュアボーン! とシンディラを撃ち、イソゼクトロンは爆発四散する。
豆腐は生きていたのだ。灰がシンディラに集まっていくと、そこには豆腐が浮いていたのだ。そのことにはソヨギしか気づいていなかったようである。
「ソヨギさま!」
「なんすか? ぽりぽり」
シンディラが粉塵になると、豆腐がヒューンと近よってきた。ソヨギはあぐらをかいてぽりぽりする。
「知恵をお貸しください! シンディラはあの通り不死身なのです。ですから倒すことはできず、以前は水中へと封じました」
「灰は沈みますからね。沈殿。ごくごく」
「ですがこのあたりには大量の水などありません。さらには水でしかシンディラにダメージを与えられないのです。しかし全身に浴びせるような大量の水がなければ、シンディラはいつまでも復活してしまう……」
「シンディラさんが灰にならなきゃいんすよね? ていうかこれって雇用ですか?」
「え? あ……はい! そうですね、いまソヨギさまは傭兵中でしたね……まあ、男の子のようで可愛らしいですが……」
「報酬は? ぽりぽり」
「ほ……! こんなときに報酬ですか!」
「いや……報酬のために雇われるのが傭兵なんで。ごくごく」
「では……もれなく豆腐が一丁♪」
「あ、契約不成立で。さっした……」
「いやあぁぁぁぁ! あとでなにか考えますからぁ! 助けてくださいソヨギさまぁ!」
ソヨギはひさしぶりにオデコをコンコンされる。痛い。ソヨギは忘れかけられているエコバッグを手に持った。
「……俺がなんかやったらひたすら体当たりで」
「えと、それだけですか?」
「メガ美さんならダイジョウブ。ふぁいと」
「棒読みな感じが気になりますが……まあいいです……」
――灰が集まっていた。イソゼクトロンが爆発した上空である。どうやらシンディラが再生するのは破壊された場所でらしい。さっきもそうだった。頭から再生していくシンディラが喋る。
「ソフラ……よく生きていたものね」
「ソヨギさまが形成したお皿のおかげです。ソヨギさまはアルケミストなのですから」
「……うっす」
そこは皿属性とかではないんだ。異世界ってフシギである。まあとりあえず依頼を遂行します。
「シンディラさん……」
「なんだ? バッドデビラスよ」
「えい」
「く……回復途中で攻撃か! だが!」
シンディラが灰の刃を放った。そしてソヨギが投げた小麦粉を見事に切り裂く。ぶわはぁと小麦粉が舞う。小麦粉はシンディラに集まろうとしていた灰に混ざり、ずさささと吸収されていく。
「これは小麦粉! 灰に混ざり吸収してしまうではないか!」
「ダイ○ンびっくりの吸引力……ではメガ美さん。びしゃあ」
「水……ですがこんな量ではとても……」
「水を適量にして突進攻撃。ダイジョウブ、メガミサンナラダイジョウブ」
豆腐自身も水を吸収するのは経験ずみ。なのでペットボトル一本と半分くらいの水を豆腐は得たことになる。足りるかな? 勘違いで足らしてくれるか。メガミサンナラダイジョウブ。
「心配もありますが、行きます!」
「……うっす」
ギュイン! と豆腐が爆走した。そのまま上半身まで再生していたシンディラにつっこむ。シンディラは豆腐の早さに追いつけず、例の空洞回避が遅れる。びじゃしゃ! ソヨギはコー○を飲もうとしてちょっとこぼす。びしゃ!
「ソフラよ、そんな攻撃が通用するとでも? 笑わせてくれる!」
「わたしはソヨギさまを信じるだけです! 行きますよおぉぉぉぉ! アニミス全開お水は適量!」
豆腐の突進攻撃。びしゃ。さらにびしゃ。びしゃしゃしゃしゃしゃしゃ……まるで洗濯槽を見ているようだ。ぽりぽり。
「はははははっ! アニミスの無駄づかい、ご苦労だなソフラ。わたしはこうしているだけで、おまえを倒せるようになるわけだ!」
「ソヨギさま! お水がなくなりました!」
「……突進で」
「わたしはソヨギさまを信じ……信じ……ふえぇぇぇぇん。ほんとに大丈夫ですかぁ?」
「ダイジョウブふぁいとメガミサン」
大丈夫じゃなかったら、ビデガンさんたちが頑張るようです。ソヨギに抜かりはないのだ! 豆腐はなんどもなんども突進した。なんどもなんどもなんどもなんども――
いつしか――ドコオォォォォン!
「くあっ! かっ……なに……いぃ……!」
「突進攻撃がシンディラに通用した!」
「……任務完了。帰投する」
いつか言ってみたいランキング三位を口にして、ソヨギは喫煙所に歩いた。去り行く戦士の背後では、爆発した兵器とかがある気分なのだ。よし、スタッフロール入ります。
「バカな……ぐあ!」
「シンディラ! わたしは飛ぶだけならアニミス消費を抑えられますよ! 食らいなさい! 豆式疾走撃!」
こっからは豆腐の乱舞である。前後上下左右からの突進タコ殴り。シンディラは突進を食らうたびに、うげっとか、うごっとか言っている。まあ、勝ちですね。
「なぜだ! 灰に戻れない!」
「コシの強い麺ですから……」
なんか南のほうでは灰を水につけて木灰水を作り、そのアクを利用して麺を作るのだ。カン水の代わりであり、戦前ではよく利用された手法である。そのアクは小麦粉に混ざってタンパク質に作用し、とてもよいコシと香りを与えるのだ! フードワールド編でワキザ氏が言っていたので間違いない! 間違ってなくてよかったねメガ美さん!
そんなこんなで豆腐の突進が、見事な麺をこねたわけだ。まあこねるってあんなんじゃないけど……
ドゴアッ! 豆腐が道路のあたりまでシンディラをぶっ飛ばした。シンディラは空中停止しながらも、痛みに顔を歪めている。
「ダメージ? わたしがダメージを受けている? 灰を刃にすることも叶わぬ……くそっ……くそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「後悔しても遅いですよシンディラ! これが――最後のアニミス!」
豆腐が遥か上空へと飛び上がり、キラリと皿が 太陽の光を反射させた。すると、豆腐が直滑降で空気の螺旋を描きながら降りてくる。超速の突進攻撃である。シンディラは灰を操れないと移動もできないらしく、空に向かって驚愕していた。
「食らえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ド――その早さは音を置き去りにした――キュガオォォォォォン!
豆腐がシンディラごと道路に突っこんだ。その力はアスファルトなどたやすく破壊し、巨大なクレーターがボゴァッ! とできあがる。そしてその衝撃波に吹き飛ばされるデビロイドたち。死んじゃったかな? ソヨギはもちろん喫煙所に隠れている!
「シンディラ……可哀想なお姉さま……」
クレーターから浮きあがってきた豆腐が、悲しそうな声をだした。なんかいろいろあるのだろう。昔は仲良かったのに系の、お涙ちょーだい系のアレが。
飾神やデビロイドたちはなんとか生きていたようで、フラフラとしながらもクレーターをのぞきに行った。ソヨギは正直見たくない。スプラッターなのはじつはキライ。
「へ……さすがはトリックスター……」
ビデガンの声が聞こえたような気がする。そんなこんなでシンディラとの戦闘は終わったのである。
任務完了。漫喫に移動する――コソコソ……
続く
「第六十五問! ソヨギさまの好きな豆腐の種類はなんでしょう。1、豆腐。2、木綿。3、絹ごし……うふふ♪ 4、豆腐の女神。5、豆腐野メガ美さんてなによぉっ!」
「……種類ですよね?」
「ご……五種類の選択肢とは……」
なんだか復活しつつあるソヨディラは、すっかりのめりこんでいるようだ。ソヨギはもはや半寝状態である。ていうかどうでもいい。
ただいちどマジ寝を始めたら殺されかけたので、ソヨギは頑張っていた。さすがにこんな豆腐クイズで殺されたくはない。だけど答えはテキトー。
「もう3ー4くらいで」
「なんですかその賭け馬みたいなのは!」
「……あるんだ異世界にも」
「ここは絹ごし一点か? いや……無難に3流しという手もあるが……」
「……手堅いっすね」
「穴はもちろん5だろうな」
「ですね。でも1番豆腐の逃げ足も期待できますが」
「確かに……だが後半でバテる傾向もあるからな。前回の問題では三着だったろう」
「あれはおしかった。短距離なら文句なしの一着でしたが……」
「クイズに距離も着順もありません! そしていつからソヨギさまは予想屋になったのです!」
「……いま?」
「だろうな」
「くうぅぅぅぅ……! これではいつまでたってもソヨギさまが分からない!」
メガ美さんの問題に問題がありますよ? なんかややこしいがそうなのだ。あ……そうか、バラせばいいのか。
「……こちらがシンディラさんです」
「なにをバカな。そちらこそ美しいシンディラさまだろう?」
「むむむ……どちらがソヨギさまなの!?」
ダメだこりゃ。どうすればいいかな。勘違いのパターンに入ってしまっている。しかし異世界の方々は、なんでみんなアレなんだろう。めんどいー。
「ではこの問題を出すしかありませんね……究極問題! ソヨギさまはいますぐにでもわたしを食べたいと思っている!? さあ答えなさい!」
「あ……まだ昼食には早いんで」
「……豆腐などいらん」
「 満場一致で拒絶なんていやあぁぁぁ!」
豆腐がものすっごいぶるんぶるんする。
ソヨディラがうげっと気持ち悪くなる。
ソヨギもじゃっかん気分が悪くなる。と――
「こ……の! 女狐えぇ……!」
ビデガンの声である。倒れて動かなくなったみんなのなかでたったひとり、ビデガンだけは意識をたもっていたようだ。そちらを見ると、血だらけになりながら上体を起こしているビデガンがいた。ビデガンは匍匐前進のように這いながら、こちらに向かってくる。
「豆腐の女神ぃ……! どっちがソヨギか知りてぇなら、俺が……こいつで教えてやる……」
「どういうつもりですかビデガン!」
「へ……ソヨギなら簡単に防げるだろうぜ……ハイヴォルトをなぁ……!」
「……ていどによりますけど?」
コンビニごと焦土にするようなのは無理である。あれかな? 紙皿いっぱい体にくっつければ助かるかな。まさか永眠チャンスなのだろうか……いや、いまは困る! メッシちゃん見せてー。
「このままじゃ死ねねぇ……ここまで誇りをコケにされてぇ…… 死ねるかってんだあぁぁぁ!」
「ビデガンやめなさい!」
「ぐ……さすがにハイヴォルトは……」
「……俺も死ねないっす」
メッシちゃんが見たいのだ! ビデガンは這ったまま右手を突きだした。ハイヴォルトに青い光の粒子が集まっていく……それにあわせ、カァンッ! と竹を打ったような音がした。同時、ビデガンが青黒いオーラをまとった。さらにはビデガンの周囲の地面から、青い閃光が次々に吹きあがる。ソヨディラが焦った。
「なんという魔力だ……デスケテスのほどこした魔装強化機構が魔力の凝縮効率を上昇させ、通常の魔装銃が放つ閃光束の三十倍以上の焦点化圧縮を可能にしている! まさに魔力の剛槍……蒼き憤墨!」
「……ひさしぶりの説明くささ」
しかも説明が意味分からないという。ようするに、ほかのよりも一点に集めることができるよ! ということだろう。さらに豆腐が参加する。
「シエルネットによれば、ハイヴォルトには雷属性も付与されています! わたしが放つソイソファデナムなんて、まるで児戯だわ!」
「……お疲れっす」
ソイソなんたらが分からないが、ビデガンがいま使う技は雷らしい。かっこよくすると墨雷属性って感じだろうか。でもそれがかっこいいかは疑問。
しかし雷までついてるとさすがに紙だけでは防げない。あのひとはどうしてソヨギなら大丈夫! って言ったのかな……
そうか! 勘違いーズだった……
「……後悔背負って寝んねしなぁ! 蒼雷闃偃砲……!」
無音――だがその光撃は放たれていた。ビデガンの右手から放出された青いレーザーの周囲で、極大の稲妻が螺旋を描いている。弾速はあまり早くない。というか遅い。投げられたスローボールのようだ。
「なんという熄滅の魔力……」
ソヨディラが絶望的につぶやく。確かにやばそうだ。なのでソヨギは豆腐の皿を持った。
「なにをするので――いえ、これはソヨギさまの温もり……?」
「その言いかた気持ち悪いので豆腐バリアー。早めに」
「はい! 局所魔法障壁いぃぃぃぃ!」
豆腐の魔法障壁が、ソヨギと豆腐の前方にだけ出現する。全包囲展開ではダメなのか。前方に集中しないと受けきれないのかもしれない。そんなことより、皿を持った手から温もりを感じるってなんだろう。
ソヨディラはと言えば、どうしようもなくたたずんでいた。せまり来るハイヴォルトの一撃を見つめている。アースクエイクとかいっぱいやったからだろうか、きっとまだ動きたくないんだろう。弾速の遅いハイヴォルトから逃げだすことなんて簡単だろうに。
ソヨギは理解できる。ね? 走るとか絶対に嫌ですよね? まさかゆいいつの理解者をこんな形で失うとは……まあでもメッシちゃん見せてくれないしな。
「バッドデビラスよ! きさまの狙いはこれだったのだな! これではよけることもできない!」
「シンディラ……このような形で終幕とは残念です」
「くっ……ふふふはは! ソフラ! これで終わったと思うなよ!」
「いいやぁ? 終わりなんだよ女狐……真・二重……鏡射閃……」
ビデガンはささやくようにそう言い、ガックリと地面に伏せた。だがハイヴォルトの光撃はとまらず、ソヨディラまであと数秒の距離にまで来ている。
「なに!? トゥー・トリックだと!」
「なんすかそれ」
「ビデガンの操る極技です! 実態は分かりませんが……ソヨギさま! この場から離れてください!」
「……え?」
「え、じゃなくて!」
「押さない駆けない喋らないっす。おかし」
「くそおぉぉぉぉ!」
「いったいなんの標語で――キャアァァァァァァ!」
ソヨディラはさすがに横に跳んだりした。そのせいで魔法障壁に光撃があたる。ズギョガカカーン! ビカビカしながら魔法障壁を雷の乱舞が打ちつける。
「なんという威力! まるでデスケテスの拳打をさらに強化したような! ぐぐぐ……こぉんのおぉぉぉぉぉぉ!」
「ふはは……さらばだソフ――ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
しかし、ソヨディラにも光撃が触れていた。
またビカビカしだして、ソヨディラが撃ち抜かれた直後に雷のタコ殴りに見舞われている。バゴギョココカババババババ! ソヨギがちょっとうえを見てみると、コンビニの天井付近にビデガンがいた。と言ってもなんかボンヤリした見た目で、地面に倒れた格好をしたままで、こっちに頭を向けている。なんか宙づりにされて気絶したみたいな感じだ。そしてふっと消える。トゥートリックとかいうやつで、うえからも撃っていたわけなのか。
ゴカカギャドクバガカキカカカ……! もうなんかスゴい。木と木がぶつかりあうようなかん高い音が連続する。そのなかでソヨディラが無尽の雷撃にさらされ、黒こげになりながら宙に浮いたりしている。いつ終わるんだろう。しかし無事なんだろうかメッシちゃんは……
「あうぅ……アニミスがもたないかもしれない……!」
「頑張ってください」
「ソヨギさまが逃げてくれればこんなことには……!」
「いや、メガ美さんの勇姿が見たくて」
「え? そうなのですか? わたしの全力はまだまだですよぉ!」
なるほど。豆腐のやる気スイッチを発見した! ジゴロソヨギの誕生である。しかしこれって寝ててもいいんじゃないだろうか。ソヨギはゆっくりと目を閉じた……
……………………
…………
……
「――ソヨギさま!」
「……ちっす」
――ソヨギが目を覚ますと、豆腐の魔法障壁が消えているのが目にはいった。コンビニの前面は、だいぶ黒こげになっている。
「ハイヴォルト……恐ろしい兵器です。対個人戦では間違いなく最強クラスですね」
「なるほど……」
確かに攻撃範囲は狭かった。コンビニの前面には瓦礫やらなんやらあるが、黒こげになっているのはレジ側の半分くらいである。
「シンディラ……」
豆腐を離してやると、黒こげになった塊へとふよよーっと近づいていく。豆腐を離したソヨギは、よろよろーっとメッシちゃんに近づいていく。寝起きだから。
「く……まさかこんな最後? これでよかったの? シンディラお姉さま……」
「……まさかこんな最後」
ソヨギはガックリした。見事に燃えつきたメッシちゃんである。
「嘆いている暇はない……飾神さまたちの様子を……」
豆腐は悲しげに、へよーんと飛んでいった。そう、嘆いている暇はない。漫喫にならばあるはずだ! 月刊サジャジンもメッシちゃんも! そしてとりあえず一服しよう。喫煙者は区切り区切りでタバコが吸いたいのだ。
ソヨギが喫煙所に向かうそのかたわらで、豆腐はウィッグノリさんとかに声をかけていた。
「ご無事ですか?」
「むぅ……灰の妖女……あのような強者がまだいようとは……」
「はい。なぜシンディラがこちらの世界に来ていたのか……ビデガンの物言いですと、どうやら復讐のためのようでしたが」
「破滅軍となにやら因縁があるのかもしれぬ……それとおぬしにもな。そうであろう豆腐の女神よ」
「はい……シンディラとわたしは同じ日、同じ場所にてアニミスを授かりました……いえ……アニミスを授かったのはわたしだけ。シンディラはアニミスも魔力も持たない中道の存在でした。そのため彼女はアニミスを持つ神でもなく、魔力を持つ魔族でもなかった――」
なんか長いので要約すると、ニュートラニマと呼ばれる魂があるらしい。それは善悪を持たずに宿った生命である。人間の魂に近いものだが、異世界の考えでは、人間は善悪の両方を持つために魂が中道である。しかしニュートラニマは善悪がないための中道なのだそうだ。そのため通常は赤子のような無心状態で存在し続ける。
しかしシンディラはなぜか、いつのまにやら魔力を得ていた。豆腐が産まれたカマドに使われていた薪――その灰から産まれたのがシンディラだが、どうやら木のアニミスが枯れる影響で、特殊な中道神として産まれたようである。無心ではなく有心で産まれ、シンディラは思考能力があった。
そして負の感情が積もり積もって、アニミスを持つ豆腐を恨むようになる。なぜわたしは悪なのか……ソフラは女神であるのに……同じ日同じ場所で産まれたわたしがなぜ……こんなにも醜いのだ!
「……逆恨みっすねぇ」
ソヨギは悲しくなった……その逆恨みでメッシちゃんが亡きものに……読みたい……
「そのようなことがあったのか……灰の妖女は中道神であるが、アニミスの影響にあったために有心であった……かなり特殊な事例だ」
「はい。思考があるためにわたしを恨むことに……魔力を持ったのはそのせいか、それ以前にだったのか……知るよしはありませんが……」
「むう……ともかくだ。体制を建て直さなくてはならぬ。デビロイドどもの処遇も決めねばならぬ」
「はい」
飾神たちがふらふらと立ち上がる。そして三人はデビロイドたちの様子を見始めた。豆腐がソヨギのほうへと飛んでくる。
「……お疲れっす」
「飾神がたの検分が終わるまで時間がかかると思います。デビロイドたちの処遇も決めなければなりません」
「……みなさんご存命?」
「恐らく。人間とは違い、我ら護神や魔族は生命力とアニミス、または魔力を持っています。なので人間より遥かに死ににくいのです」
そこらへんは代替エネルギーでもあるわけだ。異世界にはいろいろあるなと、ソヨギはタバコに火をつけた。フィルターカッターはやらない。吸いすぎな自覚はあるのだ。
「ソヨギさま? ぶしつけなお願いなのですが、アニミスの補給ができますか?」
「……使っちゃいましたか」
「倍率はかなりさがりました……十倍ほどに」
……充分なのでは? 不満に思うていどではない。これが給料なら、どんだけ自分が仕事できると思ってんだ? である。二十歳をすぎたら学生でも社会人なのだ! いまは関係ないけど!
「……ネタはつきましたが」
「そうですか。では道中で思いついたら試していただけます?」
「いっすよ」
「やった♪」
ソヨギのテキトー発言に豆腐は喜んだ。ジゴロソヨギは伊達じゃない。なんかもうダマしダマし行けないかな?
「う……」
「目覚めたかデビロイドよ」
会話を耳にしてティアラ係長を見る。ヒザをついてデビロイドをうかがう姿は、酔いつぶれた部下を起こしているかのようだ。
「……ウィンチェスターだ」
「ではウィンチェスター。そなたらはこれからどうするつもりだ」
「分からねぇ……だが戦うべきは護神でも魔族でもなかったことに気づいた。俺たち自身だった……裁量はビデガンに一任する。たぶん、全員が同じ意見だ」
「ふむ。まずはおのれら自身の意思を明確にするか。では待つことにしよう」
「許すのか? 俺たちを……」
「同胞を汚した罪は重い。だがビデガンの覚悟も同じく重い。あのハイヴォルトの一撃……本当にデビロイドが間違っていたのなら、あれは我らに向けられていたはず。そして豆腐の女神の慈悲がある。まずはビデガンの考えを聞き、そのあとに我らも決断することとしよう」
「……すまねえ。食神たちを取りだす手段はないのか。詫びをいれなきゃならねえ。一族全部で」
なんだか穏やかな方向に話がまとまりそうな雰囲気だ。ウィッグノリさんと軽傷だったデビロイドふたりが、ビデガンの容態を確認する。
「ビデガン……悪かった。俺たちは……」
「デビロイドよ。ビデガンの意識はないようだ。危険な状態かもしれぬ」
「あんな傷でハイヴォルトを使っちまったんだ。『魔力枯れ』の兆候もあるみてえだ」
魔力枯れ。代替エネルギーがないから生命力に代えられないってことだろう。便利なのか不便なのか分かりませんね。それを見ていた豆腐がウィッグノリさんに声をかけた。
「応援の飾神さまのなかに、治癒のできるかたは?」
「二柱おる。だが来るのがいささか遅すぎるのが気になる……」
「ではわたしがお迎えに行きます。ビデガンが目覚めなければ収集がつかない状況ですし」
「いいえ、それは困るわ」
「な――!」
そこで起きたのは声、それと灰の旋風だった。ビュアゴオッ! と刃のような灰が周囲に拡散し、完全な不意討ちのかたちで飾神やデビロイドたちを撃ち抜く。さまざまな悲鳴をあげながら、彼らは砕かれ、血しぶきをあげながら倒れていった。
ソヨギと豆腐は運がよかった。コンビニ横の喫煙所にいたからだった。
「なんということを……シンディラ!」
「利かぬわ!」
豆腐が怒号とともに光線を放つ。ソヨギはひょいとコンビニ前面をのぞいた。ソヨディラでなくなった倒したはずのシンディラがいて、光線が突き抜ける――
が、シンディラの体の中心がヒュンと空洞を作ると、そこを光線が抜けていく。なかなかに気持ち悪い。光線はシンディラの向こうにある、冷蔵室を破壊した。コー○が……さっき二本確保しておいてよかった!
「ククク……そうだ……最初から策などいらなかったのよ……デビロイドを利用した乱戦にまぎれる必要も、アニミスを消耗させる必要もなかった。ただ勝てばよかった! 真っ向から戦えばよかったのよ! あんな使えない奴らなどいらなかったのよ! 灰塵と化せ、ソフラ!」
「命や想いをなんだと……なんだと思っているのシンディラアァァァァ!」
豆腐がシンディラへと突進する。そして豆腐は新たな技を使う。白い剣を出現させたのである。同時にシンディラも灰の剣を出現させ、構えた。
「武豆式白刃!」
「灰と塵の魔剣!」
「……どっちもセンスない」
名前のインパクトのなさに反して、その衝突はとんでもなかった。二振りの剣がガキイィンッ! と打ち合うと、ゴアァッ! と余波が波紋を広げた。コンビニのなかは台風にあったかのようにメチャクチャになる。いろいろ買い物しといてよかった!
「踏み込みが甘くなったなソフラ!」
「……浮いてるしね」
「あなたの打ちこみなど軽いわ!」
「……灰だからね」
ツッコミをいれつつ煙を吐く。両者はギャギャギャギャ! と鍔競りあいながら外にでてきた。シンディラは上下左右から多角攻撃を繰りだすのに対し、豆腐はあえての防戦という感じである。しかし豆腐が押されている印象は受けない。なぜなら表情が分からないからだ!
「ソフラ! あのときのようにはいかぬぞ!」
「それはどうかしらね!」
ガンギャンガインガガガガッ! シンディラの高速の剣が豆腐を攻撃する。しかし豆腐は完璧に防いでいた。打ちあいを続ける両者を、徐々に力の余波が浮き上がらせたりする。ソヨギは思った。こういうの嫌いじゃないです。
空中で打ちあいを続ける両者――その真下のあたりでは、飾神三人とデビロイド数人が集まっていた。かろうじて生きていたビデガンがうめいている。意識が少しは戻ったようである。まあ虫の息だが。
「……やめなぁ」
「灰の妖女は女神との戦闘に気を取られているのだぞ! いまが好機ではないか!」
そう言ったのはツケマB系である。もめているのか、どうやらいまのうちにシンディラを倒しちゃおうという魂胆らしい。だがビデガンは、
「チャンスかもな……だけどよぉ……女神は俺たちのために……剣を取った。それをコケにするのは許さねぇ……! がはっ!」
ビデガンは血を吐いたりする。しかしいちいちセリフがカッコいいな……まさにフリーランスソヨギもあの感じなのだ。だからコケにしないように頑張って傍観するのだ。ぷは~。
「灰の妖女の力は飾神を越えている。それでもやるなと言うのか?」
「あんた……ウィッグだったか? 妖女を女神がいちど負かしてんだぜ……食神てのは下位だったよなぁ? それがなんでだって思わねぇのかぃ?」
「む……そうか、属性相性! 豆腐の女神は水の恩恵に厚い。すなわち水による攻撃が灰には有効なのだな」
「妖女は……魔装銃も恐れたんだろうぜ……なにせ――ごふっ! ハァ……ハァ……くっそ……!」
「ビデガンもういい! 飾神、俺たちの魔装銃は墨属性。水属性を内包してる変質属性だ。そうだったのか……妖女が俺たちを復讐に利用したのは、反属性の脅威を減らすためでもあったのか……」
「だからと言って黙っているわけにはいかぬぞ!」
「ツケマさんよぉ……ハイヴォルトは魔力と命の魔装銃……あと一発くれぇなら、てめぇを黙らせるために使ってやってもいいんだぜぇ?」
「い……命を捨てると言うのか……女神の想いを受けいれるためだけに!」
「……それが誇りだ……なぁ? てめぇら……」
「あ……ああそうだ! 女神が負けたら俺たちがやってやる。それがあんたらへの詫びだ。ビデガンのためにもここは!」
「ツケマよ。この者の覚悟と心意気、我が預かる……この場はそれで治めるのだ。なに、女神が敗れることがあれば、我もこやつらとともに果ててもよい」
「ティアラ……くっ! そのときは我も肩を並べよう……」
ティアラ係長が親指を立てたりする。おいしいとこ狙ってたんだろうな。最後に全部を持っていった係長である。それはそれとして、上空で激戦している豆腐とシンディラ――
「カウンターだと!?」
「おおぉぉぉぉぉ!」
シンディラの振りおろしたアッシュエッザーを、豆腐が魔法障壁で弾き返したようだ。その隙を突いて、豆腐が突進ぎみにソイソードを振り抜く!
ずじゃあっ! とシンディラが袈裟斬りの一撃をくらう。灰が舞い、水滴が舞う。どうやらソイソードは水の剣のようである。
「あなたを封じます、シンディラ!」
「クカカッ……! 以前のわたしと思っているのか、ソフラ!」
「! 魔装銃!?」
シンディラの残った頭から右腕――その右手には魔装銃と思われる銃口があった……あれかな。変身のついでに能力とかも覚えちゃうんだろう。ごくごく……タバコ吸ったらコー○にも手が伸びたのだ! ソヨギに抜かりはない。
「死ねえ! 擬装駆逐塵破!」
「魔法――!」
障壁は間にあわなかった。光撃を模した青い灰が、キュオッ! と放たれる。それは豆腐に直撃し、灰の混ざった弾幕がブワァッ! と拡散した。まるで煙幕のように広がった灰が、五メートルほどの範囲にただよう。
「め……女神が!」
「妖女が上手だったかぃ……んじゃまぁ……行くかねぇ……!」
「てめえらやるぞ! 女神の慈悲に応えねえで、誇りが取り戻せるかよ!」
「はーはっはぁ! 塵どもがぁ! そんなに死にたいなら殺してやるよお!」
シンディラがすさまじい形相で笑うと、弾幕になっていた灰がヒュオッとシンディラに集まり、その体を再生させる。不死身じゃん。どうするデビロイドたち! ソヨギはポテチを片手にしていた。気分はおもしろファンタジー映画を観ている感じだ! と――
「まだ終わりではありませんよ! イソゼクトロン!」
「なにぃ!?」
なんだかバチバチする球が、したを見ていたシンディラの背中へと放たれた。ギュアボーン! とシンディラを撃ち、イソゼクトロンは爆発四散する。
豆腐は生きていたのだ。灰がシンディラに集まっていくと、そこには豆腐が浮いていたのだ。そのことにはソヨギしか気づいていなかったようである。
「ソヨギさま!」
「なんすか? ぽりぽり」
シンディラが粉塵になると、豆腐がヒューンと近よってきた。ソヨギはあぐらをかいてぽりぽりする。
「知恵をお貸しください! シンディラはあの通り不死身なのです。ですから倒すことはできず、以前は水中へと封じました」
「灰は沈みますからね。沈殿。ごくごく」
「ですがこのあたりには大量の水などありません。さらには水でしかシンディラにダメージを与えられないのです。しかし全身に浴びせるような大量の水がなければ、シンディラはいつまでも復活してしまう……」
「シンディラさんが灰にならなきゃいんすよね? ていうかこれって雇用ですか?」
「え? あ……はい! そうですね、いまソヨギさまは傭兵中でしたね……まあ、男の子のようで可愛らしいですが……」
「報酬は? ぽりぽり」
「ほ……! こんなときに報酬ですか!」
「いや……報酬のために雇われるのが傭兵なんで。ごくごく」
「では……もれなく豆腐が一丁♪」
「あ、契約不成立で。さっした……」
「いやあぁぁぁぁ! あとでなにか考えますからぁ! 助けてくださいソヨギさまぁ!」
ソヨギはひさしぶりにオデコをコンコンされる。痛い。ソヨギは忘れかけられているエコバッグを手に持った。
「……俺がなんかやったらひたすら体当たりで」
「えと、それだけですか?」
「メガ美さんならダイジョウブ。ふぁいと」
「棒読みな感じが気になりますが……まあいいです……」
――灰が集まっていた。イソゼクトロンが爆発した上空である。どうやらシンディラが再生するのは破壊された場所でらしい。さっきもそうだった。頭から再生していくシンディラが喋る。
「ソフラ……よく生きていたものね」
「ソヨギさまが形成したお皿のおかげです。ソヨギさまはアルケミストなのですから」
「……うっす」
そこは皿属性とかではないんだ。異世界ってフシギである。まあとりあえず依頼を遂行します。
「シンディラさん……」
「なんだ? バッドデビラスよ」
「えい」
「く……回復途中で攻撃か! だが!」
シンディラが灰の刃を放った。そしてソヨギが投げた小麦粉を見事に切り裂く。ぶわはぁと小麦粉が舞う。小麦粉はシンディラに集まろうとしていた灰に混ざり、ずさささと吸収されていく。
「これは小麦粉! 灰に混ざり吸収してしまうではないか!」
「ダイ○ンびっくりの吸引力……ではメガ美さん。びしゃあ」
「水……ですがこんな量ではとても……」
「水を適量にして突進攻撃。ダイジョウブ、メガミサンナラダイジョウブ」
豆腐自身も水を吸収するのは経験ずみ。なのでペットボトル一本と半分くらいの水を豆腐は得たことになる。足りるかな? 勘違いで足らしてくれるか。メガミサンナラダイジョウブ。
「心配もありますが、行きます!」
「……うっす」
ギュイン! と豆腐が爆走した。そのまま上半身まで再生していたシンディラにつっこむ。シンディラは豆腐の早さに追いつけず、例の空洞回避が遅れる。びじゃしゃ! ソヨギはコー○を飲もうとしてちょっとこぼす。びしゃ!
「ソフラよ、そんな攻撃が通用するとでも? 笑わせてくれる!」
「わたしはソヨギさまを信じるだけです! 行きますよおぉぉぉぉ! アニミス全開お水は適量!」
豆腐の突進攻撃。びしゃ。さらにびしゃ。びしゃしゃしゃしゃしゃしゃ……まるで洗濯槽を見ているようだ。ぽりぽり。
「はははははっ! アニミスの無駄づかい、ご苦労だなソフラ。わたしはこうしているだけで、おまえを倒せるようになるわけだ!」
「ソヨギさま! お水がなくなりました!」
「……突進で」
「わたしはソヨギさまを信じ……信じ……ふえぇぇぇぇん。ほんとに大丈夫ですかぁ?」
「ダイジョウブふぁいとメガミサン」
大丈夫じゃなかったら、ビデガンさんたちが頑張るようです。ソヨギに抜かりはないのだ! 豆腐はなんどもなんども突進した。なんどもなんどもなんどもなんども――
いつしか――ドコオォォォォン!
「くあっ! かっ……なに……いぃ……!」
「突進攻撃がシンディラに通用した!」
「……任務完了。帰投する」
いつか言ってみたいランキング三位を口にして、ソヨギは喫煙所に歩いた。去り行く戦士の背後では、爆発した兵器とかがある気分なのだ。よし、スタッフロール入ります。
「バカな……ぐあ!」
「シンディラ! わたしは飛ぶだけならアニミス消費を抑えられますよ! 食らいなさい! 豆式疾走撃!」
こっからは豆腐の乱舞である。前後上下左右からの突進タコ殴り。シンディラは突進を食らうたびに、うげっとか、うごっとか言っている。まあ、勝ちですね。
「なぜだ! 灰に戻れない!」
「コシの強い麺ですから……」
なんか南のほうでは灰を水につけて木灰水を作り、そのアクを利用して麺を作るのだ。カン水の代わりであり、戦前ではよく利用された手法である。そのアクは小麦粉に混ざってタンパク質に作用し、とてもよいコシと香りを与えるのだ! フードワールド編でワキザ氏が言っていたので間違いない! 間違ってなくてよかったねメガ美さん!
そんなこんなで豆腐の突進が、見事な麺をこねたわけだ。まあこねるってあんなんじゃないけど……
ドゴアッ! 豆腐が道路のあたりまでシンディラをぶっ飛ばした。シンディラは空中停止しながらも、痛みに顔を歪めている。
「ダメージ? わたしがダメージを受けている? 灰を刃にすることも叶わぬ……くそっ……くそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「後悔しても遅いですよシンディラ! これが――最後のアニミス!」
豆腐が遥か上空へと飛び上がり、キラリと皿が 太陽の光を反射させた。すると、豆腐が直滑降で空気の螺旋を描きながら降りてくる。超速の突進攻撃である。シンディラは灰を操れないと移動もできないらしく、空に向かって驚愕していた。
「食らえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ド――その早さは音を置き去りにした――キュガオォォォォォン!
豆腐がシンディラごと道路に突っこんだ。その力はアスファルトなどたやすく破壊し、巨大なクレーターがボゴァッ! とできあがる。そしてその衝撃波に吹き飛ばされるデビロイドたち。死んじゃったかな? ソヨギはもちろん喫煙所に隠れている!
「シンディラ……可哀想なお姉さま……」
クレーターから浮きあがってきた豆腐が、悲しそうな声をだした。なんかいろいろあるのだろう。昔は仲良かったのに系の、お涙ちょーだい系のアレが。
飾神やデビロイドたちはなんとか生きていたようで、フラフラとしながらもクレーターをのぞきに行った。ソヨギは正直見たくない。スプラッターなのはじつはキライ。
「へ……さすがはトリックスター……」
ビデガンの声が聞こえたような気がする。そんなこんなでシンディラとの戦闘は終わったのである。
任務完了。漫喫に移動する――コソコソ……
続く
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