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4 こちらの世界
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4 こちらの世界
ーーーーーーー違和感、違和感……
この朝霧が言うがままに歩いて来た道には、ずっとどこか違和感がある。その違和感を拭えないまま、気の所為だと片付けてしまっていた。
しかし、その違和感が確信に変わった。
僕だから気づく事ができなかった。同級生なら、近所の子供なら、大人ならすぐに気が付けたのかもしれない。
朝霧が最初に指差した曲がり角。
そんなもの、なかったんだ。
僕の外にいる時間、知っている道なんて限られている。学校の登下校の時間とその通学路。だから、普段歩かない道を進んでいても、「こんな場所があったのか」で済んでしまった。
よくよく考えれば、思い出せば……アパート前を真っ直ぐ行って曲がり角なんてない。直進すれば、そこは一軒家を囲う塀があり、行き止まりだった。
そちらの方向に歩いたことがない僕は、すぐにおかしいと思えなかった。目の前に当たり前のようにあった曲がり角を、もとからあったのだと思い込んでしまっていた。
つまり、この道は……存在しなかったはずの道だった。
しかし、現実、僕は朝霧と2人で曲がる、直進、曲がるを何度もして、先へと進んでいた。そして、細い道に出た。
今になって、朝霧と歩いてきた道で他の人と出会うことはなかったことに気づいた。ずっと2人だけの空間が続いていることにどうして、もっと早く気が付かなかったのか。
それほど僕は混乱、動揺をしていたのかもしれない。
それより、ここはどこだ。どんどんと路地裏のような薄暗い道の奥へ奥へと進んで行ったため、辺りは暗い。
ついに行き止まりとなり、壁の前に僕ら2人は立ち止まった。
「……さて、と。この辺でいいかな。
虹、こちらの世界へようこそ」
朝霧がその言葉にハッとした。朝霧を両手の人差し指だけを壁の前に出し、四角を描くように左右対称に半四角をなぞった。
ほんの少し、僕と朝霧の髪の毛がフワリと浮いた。風なんてなかったはずなのに、目の前の壁から風のようなものが吹き出した。
微かな光が灯ったと思えた壁に驚いたのも一瞬で、光が一気に強さを増した。
「!! な、んだ…コレ」
「ほら、虹。おいで」
壁の中に堂々と足を踏み入れる朝霧に呆気を取られ、膝がカタカタと少し震えている。
僕は分かっていたはずだ。 朝霧という男は普通ではない。 現実にいて良い人間じゃないことを。それでも、ありえない現象が目の前で起こっていることに恐ろしさを感じた。
正直、あと少しで腰が抜けるところまでいっていた。けれど、なんとか自身で立っている。
あの作り笑いの顔で朝霧は、右手を僕に向かって差し出す。この手を取れと言わんばかりに真っ直ぐに伸びた彼の手を取ろうとヨロヨロと足を進める。
左手を朝霧の手に置くと、一気に引き寄せられる。
「っあ……」
大声も出ず、瞬きもできない一瞬の間に、僕は光の中に吸い込まれた。
あまりの眩しさに僕は目を閉じると、気が抜けたのか身体に力が入らなくなり、意識が遠のいていった。
「……虹、こちらの世界を助けてね」
朝霧が小さくそう言ったところで、ブツリと頭の中で何かが切れたように意識がなくなった。
ーーー「ワタシタチハカゾクダ」ーーー
知らない男の声がした。聞いたこともない、少し低めの声だった。けれどどこか若々しさがあった。
「カゾク」なんて1番聞きたくもない言葉だ。
ジーッジーッと頭の中で音がする。何か機械が壊れたような音だ。とにかく嫌いな音だな。
ジッと音が途切れたと思ったら、また男の声がした。さっきと同じ男だと思うが、先程よりもずっとずっと声が低く、一言だけポツリと呟いた。
「ダカラ、モウキミタチイガイハイラナインダ」
その時、ゾクリと背筋が凍るような感覚に襲われた。ハァッハァッと過呼吸になりそうなほど、身震い、歯がガチガチと音を立てる。
僕はなんでこの言葉に、こんなに恐れている…?恐怖する……?今日もっと凄いことがあっただろう……。義父母だと思っていた人たちは、金目当てで僕を育てた、知らない男は僕を知っていて、人を操った、知らない存在しないはずの道へと連れていかれた、壁に謎の穴を開いて僕はその中に吸い込まれた……。
普通じゃないことばかりだ、それなのに……姿も見えない男の一言が1番怖く感じる。
ーーーイヤダ、ここから早く抜け出したいーーー
するとブツッと電源を切られたように、男の声も頭で鳴り響いた機械のような音も止んでいった。
ーーーーーーー違和感、違和感……
この朝霧が言うがままに歩いて来た道には、ずっとどこか違和感がある。その違和感を拭えないまま、気の所為だと片付けてしまっていた。
しかし、その違和感が確信に変わった。
僕だから気づく事ができなかった。同級生なら、近所の子供なら、大人ならすぐに気が付けたのかもしれない。
朝霧が最初に指差した曲がり角。
そんなもの、なかったんだ。
僕の外にいる時間、知っている道なんて限られている。学校の登下校の時間とその通学路。だから、普段歩かない道を進んでいても、「こんな場所があったのか」で済んでしまった。
よくよく考えれば、思い出せば……アパート前を真っ直ぐ行って曲がり角なんてない。直進すれば、そこは一軒家を囲う塀があり、行き止まりだった。
そちらの方向に歩いたことがない僕は、すぐにおかしいと思えなかった。目の前に当たり前のようにあった曲がり角を、もとからあったのだと思い込んでしまっていた。
つまり、この道は……存在しなかったはずの道だった。
しかし、現実、僕は朝霧と2人で曲がる、直進、曲がるを何度もして、先へと進んでいた。そして、細い道に出た。
今になって、朝霧と歩いてきた道で他の人と出会うことはなかったことに気づいた。ずっと2人だけの空間が続いていることにどうして、もっと早く気が付かなかったのか。
それほど僕は混乱、動揺をしていたのかもしれない。
それより、ここはどこだ。どんどんと路地裏のような薄暗い道の奥へ奥へと進んで行ったため、辺りは暗い。
ついに行き止まりとなり、壁の前に僕ら2人は立ち止まった。
「……さて、と。この辺でいいかな。
虹、こちらの世界へようこそ」
朝霧がその言葉にハッとした。朝霧を両手の人差し指だけを壁の前に出し、四角を描くように左右対称に半四角をなぞった。
ほんの少し、僕と朝霧の髪の毛がフワリと浮いた。風なんてなかったはずなのに、目の前の壁から風のようなものが吹き出した。
微かな光が灯ったと思えた壁に驚いたのも一瞬で、光が一気に強さを増した。
「!! な、んだ…コレ」
「ほら、虹。おいで」
壁の中に堂々と足を踏み入れる朝霧に呆気を取られ、膝がカタカタと少し震えている。
僕は分かっていたはずだ。 朝霧という男は普通ではない。 現実にいて良い人間じゃないことを。それでも、ありえない現象が目の前で起こっていることに恐ろしさを感じた。
正直、あと少しで腰が抜けるところまでいっていた。けれど、なんとか自身で立っている。
あの作り笑いの顔で朝霧は、右手を僕に向かって差し出す。この手を取れと言わんばかりに真っ直ぐに伸びた彼の手を取ろうとヨロヨロと足を進める。
左手を朝霧の手に置くと、一気に引き寄せられる。
「っあ……」
大声も出ず、瞬きもできない一瞬の間に、僕は光の中に吸い込まれた。
あまりの眩しさに僕は目を閉じると、気が抜けたのか身体に力が入らなくなり、意識が遠のいていった。
「……虹、こちらの世界を助けてね」
朝霧が小さくそう言ったところで、ブツリと頭の中で何かが切れたように意識がなくなった。
ーーー「ワタシタチハカゾクダ」ーーー
知らない男の声がした。聞いたこともない、少し低めの声だった。けれどどこか若々しさがあった。
「カゾク」なんて1番聞きたくもない言葉だ。
ジーッジーッと頭の中で音がする。何か機械が壊れたような音だ。とにかく嫌いな音だな。
ジッと音が途切れたと思ったら、また男の声がした。さっきと同じ男だと思うが、先程よりもずっとずっと声が低く、一言だけポツリと呟いた。
「ダカラ、モウキミタチイガイハイラナインダ」
その時、ゾクリと背筋が凍るような感覚に襲われた。ハァッハァッと過呼吸になりそうなほど、身震い、歯がガチガチと音を立てる。
僕はなんでこの言葉に、こんなに恐れている…?恐怖する……?今日もっと凄いことがあっただろう……。義父母だと思っていた人たちは、金目当てで僕を育てた、知らない男は僕を知っていて、人を操った、知らない存在しないはずの道へと連れていかれた、壁に謎の穴を開いて僕はその中に吸い込まれた……。
普通じゃないことばかりだ、それなのに……姿も見えない男の一言が1番怖く感じる。
ーーーイヤダ、ここから早く抜け出したいーーー
するとブツッと電源を切られたように、男の声も頭で鳴り響いた機械のような音も止んでいった。
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