もう1つの世界で家族を見つけた話

永遠

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H大学事件編

12 双子

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12 双子

朝霧に言われたように、起きたらすぐに出かけることになった。僕は不安、心配、諸々あったがいつの間にか寝ていたようだ。
朝霧がいつ帰って来たのかも知らなかった。ベッドで眠る僕のお腹辺りを叩いて、僕を起こした。
白のワイシャツを着て、あとはスーツの上を羽織ればすぐ出かけることのできる格好をしており、既にご飯の用意も出来ていた。

急かす様子もなかったが、彼自身の出る準備は整っているものだから、なんとなく急がなければと思い、慌てて起き上がり支度をした。

どこかに出かけると言っていたが、ここまで朝が早いとは思わなかった。


「別に急いで行くところでもないから、慌てなくても大丈夫だよ」


そうは言われても人間の心理なのだろうか、僕の性格なのだろうか、なんとなく待たせるのは悪いと思い、いつもより手早く動いてしまう。



「今日は私が働くところに連れていくよ、あとH大学の下見にも行く」

僕の手が止まった。ヒュっと息を吸い込む。明後日、いや明日何かが起こるかもしれない場所に行くのだと朝霧は言う。
さすがに少し躊躇いたい気持ちもあった。何があるか分からない。今日も何かが起こるかもしれない。

「……分かりました」

僕は支度を終えて、外に出れると朝霧に伝えた。怖くないと言えば嘘になるが、知ってしまった以上何もせずには居られない。
もしかしたら、何か出来ることがあるかもしれない。


「……紹介しないといけない子たちもいるしね」


「えっ、紹介……?」

そうそうと言うと、朝霧はドアをガチャリと開ける。
そして、僕は初めてこの世界での外に出た……

と、思ったのだが、開いた先は外ではなく、室内。部屋の前は廊下になっていて、まるで寮のような感じだ……。


「ここは、私が働いている国家機関、の本部の隅にある社員……っていうのかな、その人たちの部屋」


ここが安全だと言ったのは、そもそもここが、朝霧の働く国家機関の本部だったからだ。


よくよく聞いてみると、国家機関の本部へと化け物の発生などの知らせが来て、それを受けた本部の中での情報部隊が攻撃部隊、上層部へと通知し、そこへ派遣される人が決められるという。

「ここには、3つの部署がある。私がいるのが、攻撃部隊で、実際に化け物を駆除するところ、情報部隊は、言った通り街、街外……世界全体の状況、情報を常に把握している。 だから、この世界のあらゆる所には監視カメラみたいなものがある。もう1つは、研究部隊。これは、化け物の解析、元を辿るために捕まえた奴の実験、他にも私たちの攻撃部隊のために、害のない程度の薬を作ったりしてくれる」


薬……それは、危ない物ではなく、身体への異常、副作用が起きないように開発された能力の強化なんかをするための物らしい。

僕からしたらそんな怪しい薬飲みたくはない。

「朝霧さんもそれを……?」


「…私は元が恵まれていたみたいでね、能力、魔法……色々と他人より長けていたから。使う必要性がないと言われたよ」


少し腹立たしく感じる。外見もよく、元から恵まれた性質の持ち主、ということだろう……。


「……嫌に聞こえたかい? きっとそれは皆最初思うんだろうね」

返す言葉がなかった。嘘でいいえ、思っていません。なんて言うのも違うと思った。
それにこの人に嘘はつきたくなかった。
唯一、今までの中で僕の味方になってくれたこの人に嘘なんて言えるわけない。


「さて、入って」

話しながら歩き続けた廊下の途中で足を止め、ドアの横にあるパスワード式のボタン入力装置。こんなモノ本当にあるんだな…
ピピピッと慣れた手つきで朝霧は、ボタンを推していく。そして、自分の指を押し当てる。恐らく、指紋認証……。非常にセキュリティが厳しい部屋だ。

ガーッと自動で開いたドアの向こうにあったのは、大きなパソコン…?テレビ?? 何かを映し出す無数の画面だった。

「……これ、は街……?」

あまり、もとの僕がいた街と変わりない普通の街並み、という感じだった。もっと、テクノロジーというか、未来感のある街なのかと思っていた。
魔法なんて言うから、飛んでいる人とかが何人もいるのかと思ったが、そんな気配はない。

「……なんか、落胆した顔だね、もっと凄いなにかを期待していた? 表も裏も変わらないよ。魔法だ能力だなんて言ったけど、結局使えるのは、ほとんどいないし、使えたらこの機関に強制的に連れてこられる。 今の街には魔法を使ってる人なんて居ないよ」


心を読まれたのかと思った。そんなに顔に出ていたのか……と恥ずかしくなる。
期待をしていた、というのは違う気もするけれど、確かに思っていたのとは違ったとは思った。


「……ここ、もしかしてさっき言ってた……」

僕が声を出すと同時に「あっ!」と元気な声が聞こえた。バッと声のした方を見ると、そこには女の子が2人立っていた。


「奏斗くんだ! 珍しいねぇ、こんな朝早く!」

「……奏斗くん、昨日、大丈夫だった……?」

2人とも肩くらいまでの髪の長さで、元気な声でハキハキ話す子は金髪、落ち着いた雰囲気で話す子は真っ黒な髪の毛だった。

……顔がよく似ている。これは、双子なのか…?

「奏斗くんのお友達??」

「……見たことない、顔」


「……シノ、クノ、おはよう。 君たちは相変わらず早いね」


朝霧の目の動き方から、金髪がシノ、黒髪がクノという名前なのだと分かる。

「帰ってないもん! ずっといた!」

「……シノとここにいた……」


「……君たちは……、上からもここに残るなと言われているだろう」

はぁ、と一息つき、2人の頭を撫でる。 ……この人、人の頭撫でるの好きなのかな…それとも、癖?僕も何度か頭を撫でられた……。無意識に自分の頭の上を触る。

2人は嬉しそうにしている。シノっていう子は、朝霧の手を掴み、離さないようにし、クノっていう子は、恥ずかしがりながらも少し口角が上がっている。


「……この子は、虹って言うんだ。 仲良くしてあげてね」


急に僕の紹介を始めたのでドキッとする。2人はこちらジーッと見つめている。先に話し始めたのは、やはりシノの方だった。

「虹……? 男の子?? 何歳???」

疑問形を付けながら、僕に質問してくる。本当に気になるようで、僕から目を離さない。


「……え、と……うん、男……歳は17……」


「私たちの2個上だ! でも、ここの人みーんな20歳超えてるから、ほとんど同い年、同級生だ!!」


「……10代の子、嬉しい……」


よく分からない理論で押しのけてくるシノとほんのり嬉しそうに言うクノ。


「上の名前はっ???」

シノがそう言ってきた。上、の名前……苗字ってことかな……、僕の苗字って……


「……ない、分からない……」

僕は胸の当たりをギュッと掴んでそう言った。
『斎賀 虹』は、あっちの世界で義父母によってそうだと思わせられた名前だ。 虹すら本名なのかも怪しい。


「……、お揃い! 私たちも上の名前ない!」


「お揃い……」


返ってきた言葉が、予想外だった。どーゆうこと?とか聞かれると思っていた。こちらの世界では結構、苗字がない人もいるのか、と納得していた。


双子のうちの1人はずっとニコニコしていて、もう1人も少し暗いが、笑っているようだった。
気味の悪いと、蔑まれた目で見られないことはとても安心した。



しかし、少しだけこの2人に恐怖を感じている僕がいた。
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