もう1つの世界で家族を見つけた話

永遠

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H大学事件編

22本当の姿

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22本当の姿

「アンタ、誰だよ」


僕のその言葉にポカンと口を開ける真城 白葉は、驚きながらも、暫くすると僕の手を振り払った。


「……私は、真城 白葉よ……。 急に何……? この子」


少し冷たい視線で地べたに座る僕を見下げる。払われた手をもう一度彼女の腕にやる。
ぐっと少し力を入れる。



「……ちょ、朝霧さん! この子なんなの? 白葉から手を離さないんだけど……」


千夏は慌てて、友人の手を掴む僕を危ない奴だと思い、朝霧の服の袖を掴み、揺らす。
朝霧も僕が何を言っているのか、やっているのかは分かっていないみたいだ。

そうだ、僕だって分かっていない。

理由とか、根拠とか、そんなものない。 ただ、頭と身体が直接繋がったように、捕まえておけと身体に脳から命令されている気がするんだ。


「……川神 千夏と真城 白葉は、昨日もあの事が起きる前も一緒にいた。 女の子って、集団行動が好きなんだなって……、思ってた。 ……だから、化け物が出てきて、避難して……普通知り合いとか気の休まる相手の近くにいるのが、怖い時とか危ない時では当たり前だと思う。 ……僕には分からないけど、それが人の心情で勝手に身体がそうするんだと思う……」



長々と話し始める僕を千夏と白葉はなんだこいつと言うような目で見てくる。この視線は嫌いだ。皆から突き放されるような目で……。
朝霧、哀歌、海未は何もせず、ただ黙って僕の話を聞いている。3人もそんな目をしていたらどうしようと顔が見れない。


「……けど、 化け物が現れて……、僕は出来ることが無くて、周りを見渡して……なんか出来ることはないかって……、思ってた……。 そしたら、川神 千夏の姿が見えた。っその時は、ただあの子も怪我せずに避難していたんだ、って思った……。けど、その時も、彼女が化け物に掴まれた時も、君は横に、近くにいなかった……! それどころか、僕は君の姿を見ていない……」



……もし、僕だったら、人を襲うのに、それを操るのに、狙われる位置に立つわけがない。あれだけ人が密集していれば、操ったとして、上手く自分のいる近く以外を狙うのも難しい……。かといって、近くの人は襲われたのに、自分だけ助かっている状況もおかしい。……まるで、自身だけは襲うな、と化け物に前もって言っておいたようにしか思えない。



「……だから、君はあの時……、人の避難の場にいなかった……、遠くから、襲われないようなところから見ていた……」


もちろん、全て憶測でしかない。けれど、この手を離せば、この事の発端は、あの化け物……いや、中に取り込まれ焼け焦げた人が作り上げたことになる。

違う、あの人は……ただ、何かを助けたかっただけなんだ。それが何故か、こんな悲劇を起こしてしまった。理由も過程も分からない。けれど、これを全てあの人のせいにしてはいけない。



「……白葉……は、確かに、変な黒いやつ出てからは、私も、見てない……けど……」


千夏は僕の話を聞くと、チラリと横目に白葉の顔を疑うような目で見る。
千夏も少しおかしいと思ったのかもしれない。彼女たちの関係性も、日常も知らないが、もしかしたら、本当にずっと一緒の2人だったのかもしれない。


「違うよ、私は真城 白葉。 ここの普通の学生だよ」


普通の人から見たらそうだ、この子は普通の人間で、女の子で、何もおかしくはない。



「……君以外に、避難者の中であの場に姿がなかった人はいない。 僕は見ていたし、覚えている。それに、アレは誰かに操られて、方向を指示されて動いていただけだ。 自分の思い通りに動いていたわけじゃない」


…………この子、誰だ……。真城 白葉……? 見た目、声……昨日と何も変わらない、はずなのに……



「…………んで……」


小さく俯き、白葉……の見た目をする人が小さく呟いた。座り込んだ僕の腕を振り払う動作はしなくなり、力なくダランと腕を下げているだけだ。


ーーーーードクン


僕の心臓が1度大きく鳴った。下から見上げたソイツの顔は、俯き垂れた髪の毛の影でよく見えなかったが、口角が上がっているのが分かる。外の上からの日差しで、下から見るそいつの顔はほとんど真っ黒な影だ。




「……なんで、操られてるって分かっちゃったの、かなぁ?」


掴んだ僕の手は、パッと力が抜ける。こいつ、こいつ……やはり真城 白葉ではない。不気味な笑みを浮かべながら、僕を見下し、瞳の全てが真っ暗で光も入らない……死んでいるみたいな、目……。


そいつの腕からずりっと力の抜けた僕の手が落ちていく。
すると、次は僕の離れそうになった腕をそいつが強く掴んできた。僕は呼吸困難になりそうで、「はっ、っはぁ…」と息を必死でする。


「……俺の、真城 白葉は完璧だったと、思うけど、なぁ??」


顔の肌がビキビキとひび割れ始める。ボロリと皮膚の1部が落ちた。その皮膚の隙間の中には、もう1人……違う奴がいる。


こいつが、こいつが……この事件の発端、あの化け物を動かした……!
どんどん、真城 白葉の顔の皮膚がビリビリと落ちていく。声も低く、低く……


「…っあ、……あ」


ここまで、強気で自分の考えを並べたくせに今になって嘘であって、僕の勘違いであって欲しいと思ってしまう。声が出せないほどに今、恐怖感に駆られている。



「……なァ、おめぇ、誰だよ」


先程まで僕がしていた内容と同じ質問を返してくる。男、こいつ……男だ……。ドスの効いた声で僕に問いかける。
僕の掴んでいたはずだったのに、今度は僕が腕を強く強く掴まれ、逃げられないようにされる。


「…………原因は、てめぇか……」


ボソッとそう言うと、しゃがみ込み、僕と目線を合わせる。怖くて顔を見れなかった、それなのに向こうから僕の顔を覗き込んでくる。
太い眉毛に凛々しい目元、右目……いや、額部分から頬にかけての大きな縫ったような傷跡。
大きな口がまた、口角をグッとあげる。


「……はな、……」


離して、と言いたい。言いたかった。


束の間、僕とそいつの下だけ黒い影が現れる。
朝霧、哀歌、海未もその男の存在の出現に呆気を取られていたが、その黒い影が僕の下にも出てきたことに気づくと顔を青くし、手を伸ばす。


「虹!!!」


朝霧の今までにない焦りの顔、声に僕は驚き伸ばされた手の方を見た。
目の前は真っ黒で何が起きたか理解できなかった。
真っ黒が僕の周りを包み、僕には腕を掴んだ白葉だった男しか見えなかった。


その男はニヤッと笑い、僕を黒い影の中に閉じ込めたのだと、理解したときには既に誰の声も聞こえなかった。
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