もう1つの世界で家族を見つけた話

永遠

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H大学事件編

21犯人

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21犯人

聞こえた知らない男の声、始まった計画、化け物の声、辛くもがく様な人の声。
どれもこれも僕にしか聞こえない。だから、止めるのも、助けるのも僕なしでは出来ないことなのではないか、そう思ったら自分の身体が痛みを麻痺させていた。恐怖を恐怖じゃなくした。


掴まれ、骨が軋む音よりもその真っ黒な腕からドンドンと流れ込む悲痛な叫び声が僕の中で響いた。


「……………っう……」


痛み、痛み、痛み…………、徐々に哀歌の回復魔法で砕けた骨が修復されていくような感じだ。繋ぎ合わせるとひび割れが痛むように、痛さの麻痺が解けていく。


「…!っアンタ!ばっかじゃないの!!?」


目を開くと同時に、哀歌の大きな声が僕の両耳を突き刺した。哀歌の膝の上に頭を置き、哀歌が僕の肩辺りを触っていた。そこから、温かさと光が広がっている。


「私の回復魔法は、全回復をしないの! 精々治せるのは7割が限界! ほぼ骨が折れていた状態で、あんな短時間で治るわけないのよ!!」


怒号が響く。僕はその声に肩を震わせながら、周りを見渡す。朝霧と海未の姿が遠くに見えた。



「……奏斗さん、これって」


「……ほとんど、焼け焦げたように黒くなって、破裂音と同時に、身体も跡形もなく裂けているけど…………



             もとは人間だね」



真っ黒に焼かれ、目も鼻も口も分からないが、パズルのように組み合わせれば人の形になりそうだった。化け物の黒い液体がその焼かれた身体のようなものに、多く散らばっている。


「……哀歌さん……、避難していた人達は……」



僕は……………ずっと、どこかに違和感がある。
朝霧と出会ったときの、道を行くときと同じ感覚だった。けれど、その違和感の正体はなんとなく気づいている。



「えっ……、今、外にようやく機関の隊員な集まってきたの。だから外に……」



僕の聞いた悲痛な声はおそらく、あの形も原型を留めないような人間の声だ。
「イタイ」「シタクナイ」「タスケタカッタ」

まるで、自分の意思とは全く逆のことをしているようだった。


「虹、痛みはどうだい? かなり無茶をしたようだね」


「あと一歩で死んでいたぞ」


朝霧、海未の2人は人間のようなものの方から僕の方へと向かってきた。朝霧は少しホッとしながら、海未は呆れたような声で僕に言う。




ーーーーーもう、全部終わったかのようだった。


「今回のは、今までとは比にならない強さ、速さがあった。それに化け物からあんな人みたいなものが出てきたなんて研究の方からも聞いていない」


これは計画、そうだ。計画なんだ。

街の外れで昨夜から朝にかけて唐突に増え、現れた化け物、機関の隊員はそちらへ取られ、こちらへの応援がやっと来れた状態。



僕の聞いた言葉にあった計画日の当日に、隊員がそう簡単に応援に来れないようにしたんだ。


テロかと思わせ、全員の連絡機械を出させたのは、誰にもこの室内で起きていることを外へと知らせないようにするため。


機関内部の人間には送られてこない招待の手紙。



そして、初めて見られた形態の化け物……。



「……朝霧、さん……、外に、行きませんか」


僕の申し出に朝霧は、少し驚きを見せた。申し出ではなく僕の申し出をする顔に驚いたのかもしれない。
さっきは痛みも恐怖もどこかへ言って、頭さえ働かず身体だけが勝手に動いていた。
いざ、痛みが引いていく中で、僕はこれまでにない恐怖に襲われている。


朝霧と海未に両肩を持たれ、やっとの状態で半ば引きずられながら外へ出る。


そこには、先程まで中にいた人達が地面に座っていたり、救護されていたりする。
僕はくるっと周りを見渡す。3人がどうした?というような顔で見てくる。




違和感、違和感……喉に小骨が引っかかるような違和感があった。


アイツは言った。「ミギ、ヒダリ」と。
言ったんだ、僕を「ソノコ」と。



ーーーー誰かに指示されるみたいに。


自分の意思で動いていたなら僕を「その子」なんて言わない。精々「お前」のはずだった。


きっと、行動先読みするかのように叫ぶ僕を見る「誰か」がアレを操っていたんだ。邪魔だと感じ、アイツに「その子を狙え」と「僕を狙え」と言った、僕はそう考えた。

あの場にいたのは、僕ら4人、アイツ、そして、悲鳴を上げ逃げる避難する人達しかいない。何度も何も出来ずに、出来ることはないかと周りを見渡していたが、その時、それ以外に人がいたようには思えなかった。


……この大勢の避難していた人達の中にいる。アレを操っていた張本人が。
……もしかしたら、朝霧のいうあの子、大罪人と言われた子がいるかもしれない。






見当、と言うほどの自信もない。僕の直感や違和感、一か八かの賭け位だが……



1人だけいるんだ。


外に出たところで、僕は自分の思うように足を進めると、それに朝霧と海未が合わせて、僕を引きずってくれる。
哀歌もそれに着いてくる。3人とも僕が何処へ進むのかは分かっていない。


そして、哀歌が「あっ」と声を出す。その先には、哀歌に先程、化け物に掴まれ、怪我を負い、手当てされていた千夏と、その横には白葉。

僕はそこで足を止める。そうすると、朝霧と海未は、僕を地面にペタンと座らせた。こちらの方が僕には楽だろうと思ったのだろう。


千夏と白葉が僕達、朝霧の方へと近づいてくる。


「あ、さっきの……! ありがとう、痛みがだいぶ楽になったよ」


そう哀歌に礼を言う千夏。


「大丈夫だったかい2人とも。 救護の方にも行った方が良い」

と2人に朝霧は促す。2人は座る僕を見た。


「……さっき、叫んでた子だよね、大丈夫?」


心配したような顔で僕の顔をじっと見つめてくる。僕は声を出すことが出来なかった。



「……千夏、一応救急隊の人に怪我見てもらった方がいいよ! 行こ」


そう言って、手を引っ張る。




これは賭けであって、的外れであれば人を不快にさせるような言葉だ。
…………けど、逃せばまた繰り返されるやと思うから。あの人と同じようになる人が増えるかもしれないから……



僕は手を掴み、引いた。顔は真っ青で、これから自分に襲いかかるかもしれない様々な最悪な状況を思い浮かべた。口がガタガタと震える。怖い、恐ろしい……、本当に"そうならば"





「………………アンタ、……誰だよ」



掴む手が震えて、あと少しで離しそうになる。正直離してしまいたい。力が上手く入らない。見た目だけ繋ぐように見えていて、実際僕の手にはほとんど握る力は入っていない。


「っえ、なにーーー」


僕が掴んだのは







真城 白葉の腕だった。
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