対立していたはずの王子様に愛されたようで

永遠

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26発情期

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26発情期

「発情期まで、あと1週間程度かー、うん。 ここに来て正解だね」


ハーヴァはにっこりと笑顔で俺とヴァラドルを招き入れ、そう言った。今日も誰1人患者はいないようで、大きな声で楽しそうに言うのが癪に障る。



「……一応、発情期が終わるまでは頼んだ」


「はいはーい、後でその分の代金はちゃーんと貰いますよ」


それなりに交流があったらしいが、この医者は金が欲しいだけじゃないのか、と思いながらも言葉を飲み込んだ。


「それより、どう? 抑制剤を飲まずに生きるって、苦しいかな」


「……少しは、慣れてきた」



そう言うとハーヴァはニコニコとしながら、俺とヴァラドルを交互に見てくる。
どうせ、あんなに嫌がってたのに、なんだかんだ手伝ってもらってるんだ、と思っているのだろう。


こんな奴に本当であれば、頼りたくは無いものの、今信頼できる医者はこいつ位しかいない。結局、俺を診ていた医者も処方していたものが違法ドラッグであることを知っていたのだ。
こいつは父のことなんて知りもしないから、すぐにドラッグについて教えてくれた。


「……やっぱり、副作用は出ているのかな。 少しはマシになったとかもないかい」


「……ここに来てからは、毎日……特に夜は熱っぽくなる。 しかも、1度の処理では済まない。 クロウスが疲れ、気絶することがほとんどだ」



隣で俺はヴァラドルを顔を赤くして睨んだ。何もそこまで言う必要はないんじゃないか…! しかも、それじゃあ毎日お前に処理を手伝ってもらっていることが分かってしまうだろう。
思い通りハーヴァは、俺をニヤニヤと見てくる。


「……発情期じゃないのに毎日かぁ、発情期になったらクロウス君生きていられるのかな」


笑顔で怖いことを言うものだな、この医者は。しかし、実際、抑制剤を飲まずに発情期を乗り切れたことはない。 強制的に違法ドラッグを飲まされていたし、その副作用も相まって結果発情期ではなくとも、毎日発情状態に陥る始末。 発情期となれば、どうなるか自分でも分からない。


「まぁ、辛くなったら俺がクロウス君の相手を……、嘘だよ。 ヴァラドル睨まないでよ」


初めは陽気にそんなことを言ったが、ヴァラドルの殺気に負け、ははっと笑いながら冗談らしく言う。


「……にしても、お前偉いねー、項、噛んでないんだ。 さすがだね、ヴァラドル様は」


Ωを前にした‪α‬、しかもほとんどずっと一緒にいる。本当だったらすぐにでも噛みたいであろう、ヤりたいであろう。しかし、ヴァラドルは一切無理に俺を押し倒してくることはなかった。


「……約束を違えることはしない」


「お前らしいね、紳士的な王子様だ」


馬鹿にしたようにハーヴァはヴァラドルにそう言うと、ヴァラドルはもうそんな挑発を無視した。


「……クロウス、こんな奴でも医者だし、番もいる。安心しろ、それにお前の面倒を見るのはコイツだけじゃなく、ほとんど番相手……Ωだ」


……ここに、この医者以外にも誰かいたのか。そういえば、こいつ番がいるとか言っていたな……。あまり興味はなかったが。


「そうそう、俺は一応医者なんでね、お仕事もあるから普段は可愛い番のメイに見てもらおうと思ってね」


メイ……? それが名前なのか……?そんな話をしていると、部屋のドアがガチャと開いた。


「! あっ、メイ。 いいところに」


バッと反射的に振り返るとそこには、綺麗な顔をした男が立っていた。紙の束を抱えて、ドアを蹴るようにして閉めた。


「……ハーヴァ、人前でそう呼ぶのはやめろ」


思ったよりも低い声の持ち主だった。 Ωというより、‪α‬に居そうな容姿だな……。 冷たくハーヴァをあしらうこの男が、ハーヴァの番相手か……。
そう思って見つめていると、パチッと目が合う。ハーヴァの机の上に紙の束を山積みにして置くと、俺の方に向き直る。


「……メイリーだ、クロウス=ジェイラードだな。 よろしく頼む」


すごく男らしい男だった。差し出された手に手を差し出し握手をする。というか、こんなにいい男がこの医者の番相手とは……。


「……ヴァラドル様もお久しぶりです」


ヴァラドルの方を向いて、一礼する。そうか、こいつ一応王子だもんな……。 ハーヴァのせいで忘れていた。


「ああ、メイリー、久しぶりだな。 数日、クロウスを頼んだ」


メイリーは「はい」と返事をすると、ハーヴァの方へ行き、ハーヴァの足を蹴る。


「……ハーヴァ、世間話も結構だがいいからこの資料に目を通せと言っているだろ!」


怒りながら、ハーヴァに対して紙の山を叩きながらそう言った。 きっとしっかりした奴なんだな……。



「……クロウス、発情期が終わったら迎えに来る。 何かあれば………、メイリーに言え」


1度ハーヴァを見たが、すぐに俺の方を向いてメイリーの名前を口に出した。 やはりメイリーの方がしっかりしているらしい。そしてヴァラドルもそう思っているらしい。



「……あ、ああ……、お前は……城で仕事か……、無理はするな……」


そう言うと、ヴァラドルは目を見開き驚いて俺を見ていた。そして、俺は無自覚にもヴァラドルの心配をしていたこととそれを口に出していたことに気づく。
すると、ヴァラドルはふふっと笑う。


「あぁ、ありがとう。 クロウス、お前も身体には気をつけろ」


そう言って額にかかった俺の前髪を少し上にあげるように撫でて、露わになった額に唇をつけた。
……目の前に2人がいるのに!!


「…っや、やめろ!」


バシッと腕を叩き、ヴァラドルを押し返す。



見ていた2人は、ポカンと口を開いている。すぐにハーヴァは「あははっ」と声を出して笑う。


「……クロウスという男は、本当にヴァラドル様がお嫌いなのか」


「ははっ、はぁーっ、メイリー、多分クロウス君は嫌ってないよ、早く番になればいいのにね」


俺とヴァラドルには聞こえない声で2人は話しているようだった。ヴァラドルは、嬉しそうに俺の頭を撫でて笑っている。


暫く、ヴァラドルと顔を合わせないのか、と思うと少しだけ、ほんの少しだけ寂しくなる俺がいた。
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