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42 歪な関係
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42 歪な関係
ヴァラドルにクロウス君の発情期が治まりつつある、と連絡した時のことだった。
弟であるユリウス君が、ヴァラドルのところに来るのは、俺もヴァラドルも分かってはいただろう。
ヴァラドルの人を見る目はだいたい当たっている。ユリウス君が自分と同じ目をしていた、と言った。
兄弟だからじゃないのか、とも思ったがヴァラドルが言うにはそうではないらしい。別にそこに俺も偏見なんてモノはなかった。
しかし、クロウス君は弟の一方的に向けられた好意の意味を履き違えているようで、兄弟の間ではこれくらいが普通なのだろうと思っているのだろう。
弟君がなんとかして違法ドラッグについて、元の取引先さえ見つけ出してくれれば、クロウス君の身体へのこれからの対処、治すことも可能かもしれない。
しかし非常に面倒な関係を持ち合わせたな、とも思う。Ωであるクロウス君を好いているαのヴァラドルとユリウス君、そのクロウス君を助けるには協力する他ない。
ユリウス君が他の医者へとクロウス君を連れていこうと、彼らの父がそれに気づかないわけがない。
クロウス君と今は変に繋がらない方が良いのだとユリウス君も分かっているようだ。
ヴァラドルもジェイラード家の裏での取引なんて調べることは難しいだろう。ましてや対立した関係にもあるのだから、向こうがヴァラドルを信用しているわけが無い。
そして、この厄介な関係にもう1人加わったらしい。それがαをβだと偽っているユリウス君の付き人。
ヴァラドルの見立てだと、ユリウス君に好意を寄せている。しかし、Ωの兄の近くにいたい彼が、他のαを近くに置くわけがないと思っているのか、βだと言っているらしい。
正直、これをクロウス君に言うのかは迷った。しかし、ヴァラドルはどうにもユリウス君と付き人を共に家へと招くという約束をしたらしい。
ヴァラドルは何を考えているのだろうか。確かにクロウス君に執着するユリウス君が暴走しかねない、と点を踏まえるとそれは分かる。しかし、αの付き人も一緒……例え好きではなくとも、本能はΩを求めるはずだ。
α3人にΩのクロウス君1人を同じ建物内に置くことがどれだけ大変なのか分かっているのだろうか。
ヴァラドルがクロウス君を手放す、弟に譲ることはないだろう。
もしかして、ユリウス君と付き人をくっつける気なのか? と思い、電話越しにヴァラドルに尋ねた。
「それはどうだろうな、あの二人が決めることだ」
と返答された。
αとα……別におかしくはないがあくまで主従関係のような二人だろう……。
それにヴァラドルはクロウス君がOKを出すまで番う気はないらしい。
番のいないαはΩ相手に発情する。 2人がそんな関係にあろうとも、クロウス君がいればαの本能が出てしまう。
「……面白いけど、大丈夫なのかい? クロウス君が狙われる可能性だって」
「大丈夫だ、クロウスを1人にするようなことはしない。 常に一緒に居れば良いだけだ」
そう何の迷いもなく言うヴァラドルに笑い声をあげる。
電話の向こうでは、イラつかせた表情をしているのだろうな、なんて思う。
「……いいのか? 一応敵のご子息だぞ? それをお前の父も、向こうの父も許すと思うのか」
「父は恐らく、もうほとんど俺に全てを託した状態だ。 ここ最近体調も良くない日が続いている。 ジェイラード家の方は……ふっ、まぁこちらに何かしてこない方がおかしいな。 後継ぎがいなくなる、いや対立している家の次期当主のもとにいるなんて……。
だが、どちらにせよ、ユリウスをこちらに招くのはあくまで違法ドラッグについてが解決してからだ。 裏でのことが分かってしまえば、ジェイラード家の格は下がる。 地位もなくなるだろう、そんな家が後継ぎをまだ必要とする余裕があるかどうか」
……ああ、こいつはいつも無表情で少し怖いし、何を考えているのか分からない。たまに俺も何を考えているのだろうと思うような男だ。
これまで、クロウス君に違法ドラッグが使われていたことを淡々とした顔で聞いていたように見えて、腹の奥底ではジェイラード家当主に相当怒りがあるようだ。家を潰すほどには。
「俺はお前が怖いよ、ジェイラード家の現当主様が可哀想だ」
「……はは、思ってもいないことをよく言えるな。 医者よお前が人への違法ドラッグ投与をする人間を心配するわけないだろう、それに違法ドラッグなんて使っていなければ、弟も家も失うことはなかった。やった事には落とし前が必要なんだ」
確かに可哀想なんてあまり思ってはいない。 それだけの事をしたんだ。 実の息子に。そしてそれに苦しむのは誰でもないクロウス君だ。
「……もう、決まったような話し方だな。 まだ情報が掴めるか分からないんだろう」
「……まぁな、でも俺と同じくらい執着心と独占欲の持ち主であるあの弟と、αを隠すほどの付き人、かなりやってくれるとは思うな」
心做しか電話の向こうで少し笑いながら、そう言っている気がする。
ヴァラドルにクロウス君の発情期が治まりつつある、と連絡した時のことだった。
弟であるユリウス君が、ヴァラドルのところに来るのは、俺もヴァラドルも分かってはいただろう。
ヴァラドルの人を見る目はだいたい当たっている。ユリウス君が自分と同じ目をしていた、と言った。
兄弟だからじゃないのか、とも思ったがヴァラドルが言うにはそうではないらしい。別にそこに俺も偏見なんてモノはなかった。
しかし、クロウス君は弟の一方的に向けられた好意の意味を履き違えているようで、兄弟の間ではこれくらいが普通なのだろうと思っているのだろう。
弟君がなんとかして違法ドラッグについて、元の取引先さえ見つけ出してくれれば、クロウス君の身体へのこれからの対処、治すことも可能かもしれない。
しかし非常に面倒な関係を持ち合わせたな、とも思う。Ωであるクロウス君を好いているαのヴァラドルとユリウス君、そのクロウス君を助けるには協力する他ない。
ユリウス君が他の医者へとクロウス君を連れていこうと、彼らの父がそれに気づかないわけがない。
クロウス君と今は変に繋がらない方が良いのだとユリウス君も分かっているようだ。
ヴァラドルもジェイラード家の裏での取引なんて調べることは難しいだろう。ましてや対立した関係にもあるのだから、向こうがヴァラドルを信用しているわけが無い。
そして、この厄介な関係にもう1人加わったらしい。それがαをβだと偽っているユリウス君の付き人。
ヴァラドルの見立てだと、ユリウス君に好意を寄せている。しかし、Ωの兄の近くにいたい彼が、他のαを近くに置くわけがないと思っているのか、βだと言っているらしい。
正直、これをクロウス君に言うのかは迷った。しかし、ヴァラドルはどうにもユリウス君と付き人を共に家へと招くという約束をしたらしい。
ヴァラドルは何を考えているのだろうか。確かにクロウス君に執着するユリウス君が暴走しかねない、と点を踏まえるとそれは分かる。しかし、αの付き人も一緒……例え好きではなくとも、本能はΩを求めるはずだ。
α3人にΩのクロウス君1人を同じ建物内に置くことがどれだけ大変なのか分かっているのだろうか。
ヴァラドルがクロウス君を手放す、弟に譲ることはないだろう。
もしかして、ユリウス君と付き人をくっつける気なのか? と思い、電話越しにヴァラドルに尋ねた。
「それはどうだろうな、あの二人が決めることだ」
と返答された。
αとα……別におかしくはないがあくまで主従関係のような二人だろう……。
それにヴァラドルはクロウス君がOKを出すまで番う気はないらしい。
番のいないαはΩ相手に発情する。 2人がそんな関係にあろうとも、クロウス君がいればαの本能が出てしまう。
「……面白いけど、大丈夫なのかい? クロウス君が狙われる可能性だって」
「大丈夫だ、クロウスを1人にするようなことはしない。 常に一緒に居れば良いだけだ」
そう何の迷いもなく言うヴァラドルに笑い声をあげる。
電話の向こうでは、イラつかせた表情をしているのだろうな、なんて思う。
「……いいのか? 一応敵のご子息だぞ? それをお前の父も、向こうの父も許すと思うのか」
「父は恐らく、もうほとんど俺に全てを託した状態だ。 ここ最近体調も良くない日が続いている。 ジェイラード家の方は……ふっ、まぁこちらに何かしてこない方がおかしいな。 後継ぎがいなくなる、いや対立している家の次期当主のもとにいるなんて……。
だが、どちらにせよ、ユリウスをこちらに招くのはあくまで違法ドラッグについてが解決してからだ。 裏でのことが分かってしまえば、ジェイラード家の格は下がる。 地位もなくなるだろう、そんな家が後継ぎをまだ必要とする余裕があるかどうか」
……ああ、こいつはいつも無表情で少し怖いし、何を考えているのか分からない。たまに俺も何を考えているのだろうと思うような男だ。
これまで、クロウス君に違法ドラッグが使われていたことを淡々とした顔で聞いていたように見えて、腹の奥底ではジェイラード家当主に相当怒りがあるようだ。家を潰すほどには。
「俺はお前が怖いよ、ジェイラード家の現当主様が可哀想だ」
「……はは、思ってもいないことをよく言えるな。 医者よお前が人への違法ドラッグ投与をする人間を心配するわけないだろう、それに違法ドラッグなんて使っていなければ、弟も家も失うことはなかった。やった事には落とし前が必要なんだ」
確かに可哀想なんてあまり思ってはいない。 それだけの事をしたんだ。 実の息子に。そしてそれに苦しむのは誰でもないクロウス君だ。
「……もう、決まったような話し方だな。 まだ情報が掴めるか分からないんだろう」
「……まぁな、でも俺と同じくらい執着心と独占欲の持ち主であるあの弟と、αを隠すほどの付き人、かなりやってくれるとは思うな」
心做しか電話の向こうで少し笑いながら、そう言っている気がする。
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