心からの愛してる

マツユキ

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「…これでよし…」

少し厚みのある書類の束を『処理済み』と書かれたボックスへ入れる。デスクの前には『副会長 花瀬結良』と書いてあるネームプレートが置かれていた



――――


ここは晴嵐学園。山奥に建てられた、初中高一貫全寮制の男子校で、在籍する生徒はみな、全国または世界に名が知れた家柄の生徒ばかりの、所望お坊ちゃま学園である。隔離された環境のせいか、恋愛対象が自然と『男性』になる生徒が大半を占めており、学園内には抱きたい抱かれたいランキングなんてものや、人気のある生徒には『親衛隊』まで存在する

現に生徒会や風紀委員はそのランキングから選出され、学力と照らし合わせ決められていた

晴嵐学園は大企業の後継者ばかりが集まるせいか、学園の年間行事内容等の運営は生徒会が、学園の治安であったり等の取り締まりは、風紀が執り行うようになっている

容姿の良し悪しで、ランキング上位になり、生徒会や風紀の候補に上がったとしても、学力が無けれ承認はされないのだ

承認は、教師が会議を行い、決める事なので、生徒が異を唱えたとしても、決定が覆る事はない

良い例が、副会長の結良だ。当時副会長に選ばれるはずだった生徒がいた。容姿はランキング上位、しかも副会長に選ばれる程に整っていた。だが、学力が生徒会に入るには低かった為に、主席であった結良がその座に就く事になったのだ


結良は静かな室内を見渡した。広々とした室内には6つのデスクが置かれており、結良の席以外、誰も座る人はいない

「……」

哀しそうに目を伏せ腕時計を見ると、時刻は既に19時を回っていた

「…もう、こんな時間なのか」

目の前にある、山積みになった未処理の書類を見る

「…提出期限が近いのは、寮でするしかないな」

山積みの書類の中から、期限が近いものを選びまとめると、pcと鞄を持って生徒会室を後にする

一人でこなすには多すぎる書類の数。期限に間に合わせるために、生徒会の特権を使って処理しているため、授業もまともに出られない日が、すでに3か月も続いていた

毎日、終わりのない書類の処理を、淡々とこなす日々。どうして、こんな状況になっているのか、そんな事すら考える余裕など、結良にはなかった



事の始まりは、4月の新学期の始まりに転入してきた生徒、矢井田光が来てからだった

現生徒会メンバーの数人は、一年の頃から役職についており、人見知りだった結良は、積極的に会話をする事は無かったが、それでも仲は良好だった様に思う。仕事だって皆、問題なくきちんとこなしていた。結良は変わらず、この状況が続くと思っていたが、それは間違いだった

一人、また一人と生徒会室に来なくなり、溜まっていく書類に追われながら、気づけば結良一人だけ

この3か月の間、結良は書類の期限を間に合わせるのに必死で、生徒会室にこもっている為、何故皆来ないのかその理由も、原因すら知らないでいた
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