心からの愛してる

マツユキ

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―――加賀城

最悪な事に、風紀委員の詰所から、旧体育館の倉庫までは、距離があった

数人の委員達を連れて、人込みをかき分けながら、倉庫を目指していた。もう少しで、到着だという時、先生方と合流し、そのまま倉庫へと向かう

(…これは、)

倉庫に到着した面々は、目の前の惨状に、絶句していた。悲惨何て物では済まされないくらいに、目を逸らしたくなるほどの、惨状だった

実行犯であろう3人の男は、既に意識を飛ばしてるのか、ピクリとも動かない。いや、この惨状だ。生きているのかも疑わしいかもしれない

(おい、おいおい!まさか、殺して無いよな!?)

ハッと我に返り、惨状の元凶である、竜元に歩み寄る。竜元は、まだ怒りが収まらないのか、意識の無い男を殴り続けていた

加賀城は止めようと、竜元の前に移動する。その時、見てしまった。結良の姿を

下着以外何も身に着けていない結良。酷い暴行の跡に、鬱血の跡。その姿を見て、一気に頭に血が上った。怒りで、今すぐにでも、実行犯の男どもを、ボコボコにしてやりたいと、思った

だが、竜元を見て、加賀城は冷静さを取り戻す事が出来たのだ。冷静だからと言って、怒りが収まった訳ではない。こんなクソ野郎どもには、死ぬなんて優しい罰だけでは、到底許せないと思っていた

「―――竜元、そこまでにしとけ」

竜元の肩に手を置いて、そう言った。動きを止めて、加賀城を見た竜華の瞳には、理性のかけらも残ってはいなかった

「お前には、そんな奴らにかまってやるよりも、他にやるべき事が、あるだろう?」

そう言うと、竜元の瞳に理性が戻る

「―――結良、」

「そうだ。お前は、何を置いても結良を優先するべきなんじゃないのか?」

「―――あぁ。すまない」

「俺に謝る事は無い。行ってやれ。こいつらは、俺が処理する」

「…あぁ」

「安心しろ。俺だって、怒りでどうにかなりそうなくらいには、キレてんだ」

「分かった。後の事は、任せた」

そう言って、竜元は掴んでいた男を話して、結良の元へ

結良の、脱がされてしまった制服を拾い集める。制服には、暴行を受けた名残が、色濃く残っていた。再び湧いてくる怒りを、抑え込みながら衣服を抱えて、結良の元へ

未だに意識が無い結良。遠目でも痛々しかった傷は、まじかで見てみると、酷いものだった。手加減など、一切されなかったのであろう事が、良く分かる

おもむろに制服の上着を脱ぎ、結良の体を隠す様に包んで、抱きかかえた。その仕草は大切な物を扱うかのような、大切にしていた物が壊れ、それを、欠片一つもこぼさぬように慎重に、そんな慈愛と、悲しみの籠った複雑なものだった

そんな弱々しい竜元など、見た事の無かった加賀城の心は、悲しみで一杯になる。俺が、もっとしっかりとしていれば…そんな、後悔ばかりが溢れてきてしまう

後悔など、起こった後にしても、何の解決にもならない事は、分かっている。だけど、そう思わずにはいられなかった。怒ってしまった事で、結良の心には、大きな傷が出来てしまっただろう。そして、竜元の心にも

加賀城は、自分が2人を支える事が出来るのか。2人の傷を癒す手伝いが出来るだろうかと、考える

(出来る、出来ないじゃねぇ。やるんだ。あいつらは、俺にとって友人でもあり、家族みたいに大切な2人なんだからな)



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