心からの愛してる

マツユキ

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結良が仮設入院部屋に移動して、3日がたった。結良が目を覚ます気配は、未だに無かった

意識が無いうちに、全ての検査を進められた。結果は、左腕の骨折が2か所に、右腕の骨折が1か所。左足は骨折が1か所あった。幸いな事に、頭などに重大な損傷は無かったとの事。それであっても、打撲などが無数にあり、酷い状態なのには変わりない

担当医の保険医も、顔を歪める位には、酷い状態だった

検査が終わり、適切な処置をされ、結良は安静にと、入院部屋に運ばれた。竜元は、結良のベットからほど近い所に置かれていた、デスクで仕事をしながら、結良の看病をする事に

看病と言っても、実際に竜元の出来る事は、殆どない。医療的な事は、在住している保険医が、常に行っているからだ

保険医は、結良のいるこの寮に、仮眠室兼仕事部屋を作り、24時間体制で結良を診ている。学園の保健室には、保険医の補佐をしていた人物が、臨時の保険医として仕事をしていた

万全の体制が整えられたが、未だに結良は目覚めなかった。保険医によれば、容体には問題ないとの事。目覚めないのは、精神的な部分が大きいだろうと

これまでの事を思うと、無理もないのかもしれない。転校生の光が来てからのせいとかの事。一人で全ての仕事をこなしていた時の、精神的な消耗。それからイジメの様な事をされた、精神的なショックも大きかっただろう。そして今回の事だ

目覚めたくない。そう思ったとしても、無理もないのかもしれない

仕事がひと段落し、竜元は結良が寝ているベットへ近づいた。表情も呼吸も穏やかな事に、ホッと息をつく

額に手を置くと、熱が出ていないかを確認する

「…大丈夫だな」

竜元はそっとその場を離れていった



――――――――



幼い頃の夢を見ていた。父さんに母さん。兄さんに姉さん。それに使用人の皆

皆可愛がってくれて、とても満ち足りていた。あの頃は本当に『幸せ』だったと言える

反対を押し切って、晴嵐学園に言ったのは、初等部の頃で、あの時は本当に家族みんなが反対したものだ。晴嵐学園のOBである、兄さんがおじいちゃんたちと一緒に、凄い剣幕で反対していたのには、とても驚いたものだった

兄曰く、「狼どもの巣くう場所に、みすみす可愛いうさぎさんを送り込む何て出来ない!」と言っていたけど、あの頃の僕には、全然理解できなかったっけ。まぁ、今となっては兄さんの言っていた事は、理解できているけれど、兄さんの言う「うさぎさん」は僕には当てはまらないと思うんだけどね

そんな経緯で入学した学園生活も、充実していた。あの時までは

そう、転校生の矢井田光君がやって来るまで

全てが彼が原因だとは思っていないけれど、要因となったのは確かだろう。閉鎖的な学園。それに加えて、優秀な子供達の集まり

この学園の生徒たちと、一般の学校の生徒たちとの違いは、生まれもあるけれど、みんな自身の親の跡を継ぐ為、そして継がないにしても、貢献できるようになるため。そう考えて行動し、勉学に励んだりする生徒が殆ど。そして、学園事態の方針も、一般の学校とは違っている所が大きい

それゆえに、一部の生徒は優秀であることを、理解した者が多く、優秀でなくてはならないと思っている者も多い。そして生徒の中には、それゆえの自尊心が強い者もいる。つまり自分の実家よりも格下の者に、負けるなんて許せない!そう思ってしまう人がいるのだ

それは、向上心や負けん気の強さと言う部分では、良い事と言えるかもしれないが、反面悪い事ともいえる。自尊心何てものは、あったっていい事は殆どないと思うから

家の格など関係なく、自分よりも優秀な人なんて、正直沢山いるのだから。その度に、妬み敵対していては、上手く行く事だって、上手くいかなくなってしまう。人の上に立つならば、まず必要の無いものだと言えるだろう

それよりも、一人一人の能力を認め、社の向上につなげて行く事の方が良いと言える

そんな彼らの日常に、溜まっていた不満や妬みを、「正しい」と「間違っていない」と肯定したのが、矢井田光と言う生徒だった

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