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第一章 運命の出会い
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「組長、よろしかったのですか?まだ使い道が…」
「構わん。予定が早まっただけだからな」
海藤組 組長海藤晃。冷酷非道、その道の者に知らない者はおらず、畏怖の対象として恐れられている。そして人間離れした、その容貌で別の意味でも有名であった
「承知いたしました。この後はいかがいたしますか?」
「あぁ―――」
答えようとした晃は、突如感じた異変に眉を寄せ、周囲を見回した
「どうかされましたか?」
「いや…」
感じた異変に説明の言葉が浮かばない晃は、いまだに周囲を探る様に見ていた
「何か、匂わないか…?」
「…匂いですか?私は何も…」
幹弥は『匂い』と言われ周囲を見るが、何も感じない。幹弥は考えた。晃が言っている『匂い』が何なのかを。そしてある答えにたどり着く
「…っ!もしかして…!」
幹弥の表情は期待に満ちていた
「番、なのではないですか!?」
柄にもなく、興奮したように言う幹弥に、晃は眉をひそめる
「―――番」
海藤晃はその容貌から、女はもちろん男すら放っておかない程。晃は来る者は拒まず、去る者は追わないと言う性格であったが『番』に対しては特別な思いがあった
『自分でも愛する事が出来る者』
冷酷非道と言われる晃は、その名に違わぬ人物である。生まれてこの方、人を愛した事の無い晃。愛おしいと言う気持ちを感じた事が無いのだ。しかし、本人にしてみれば、自分が人を愛することが出来るのならば愛したい。その思いがない訳ではない
何もかもが空虚に感じられ、心には何も入ってこない。そんな日常に飽き飽きとしていたのだ。32歳の現在でも、かなりのオメガに出会っているのにもかかわらず、番には出会えていなかった
普段上がる事の無い口角が、自然と上がっていくのを感じる
「―――これが、番の…」
そう言った晃はゆっくりと、匂いを辿るように歩き出した。その表情には、期待と喜びが浮かんでいた
嗅ぐだけで、心に湧き上がる熱い思い。早く、早く会いたいと、思いは募るばかり。心に呼応するかのように、晃の歩みは速くなって行った
番が居るであろう場所へと向かう背中を見つめながら、幹弥の内心は喜びと期待で一杯であった
海藤組にはアルファが多く、殆どの者には番がおり、当然ながら幹弥にも番がいる。自分だけの番と言う存在は、何物にも代えがたい、大きな存在だ
番がいると言うだけで、言いようのない安心感で、幸せとはこの事を言うのだろうと思う程に。だから、自分の上司で、尊敬している晃にも、番を得て欲しいと常に思っていた
ずっと側で見て来た幹弥は、晃の番に対しての思いも、気づいていた。しかし、晃にはその前兆すらなかった為、出会う事を諦めている事も。晃の思いを知っている幹弥としては、嬉しい事この上ないのだ
「―――どうか…」
間違いであって欲しくない。晃が向かった先に、晃のただ一人の番がいますようにと、幹弥は祈る様に晃の跡を追ったのだった
「構わん。予定が早まっただけだからな」
海藤組 組長海藤晃。冷酷非道、その道の者に知らない者はおらず、畏怖の対象として恐れられている。そして人間離れした、その容貌で別の意味でも有名であった
「承知いたしました。この後はいかがいたしますか?」
「あぁ―――」
答えようとした晃は、突如感じた異変に眉を寄せ、周囲を見回した
「どうかされましたか?」
「いや…」
感じた異変に説明の言葉が浮かばない晃は、いまだに周囲を探る様に見ていた
「何か、匂わないか…?」
「…匂いですか?私は何も…」
幹弥は『匂い』と言われ周囲を見るが、何も感じない。幹弥は考えた。晃が言っている『匂い』が何なのかを。そしてある答えにたどり着く
「…っ!もしかして…!」
幹弥の表情は期待に満ちていた
「番、なのではないですか!?」
柄にもなく、興奮したように言う幹弥に、晃は眉をひそめる
「―――番」
海藤晃はその容貌から、女はもちろん男すら放っておかない程。晃は来る者は拒まず、去る者は追わないと言う性格であったが『番』に対しては特別な思いがあった
『自分でも愛する事が出来る者』
冷酷非道と言われる晃は、その名に違わぬ人物である。生まれてこの方、人を愛した事の無い晃。愛おしいと言う気持ちを感じた事が無いのだ。しかし、本人にしてみれば、自分が人を愛することが出来るのならば愛したい。その思いがない訳ではない
何もかもが空虚に感じられ、心には何も入ってこない。そんな日常に飽き飽きとしていたのだ。32歳の現在でも、かなりのオメガに出会っているのにもかかわらず、番には出会えていなかった
普段上がる事の無い口角が、自然と上がっていくのを感じる
「―――これが、番の…」
そう言った晃はゆっくりと、匂いを辿るように歩き出した。その表情には、期待と喜びが浮かんでいた
嗅ぐだけで、心に湧き上がる熱い思い。早く、早く会いたいと、思いは募るばかり。心に呼応するかのように、晃の歩みは速くなって行った
番が居るであろう場所へと向かう背中を見つめながら、幹弥の内心は喜びと期待で一杯であった
海藤組にはアルファが多く、殆どの者には番がおり、当然ながら幹弥にも番がいる。自分だけの番と言う存在は、何物にも代えがたい、大きな存在だ
番がいると言うだけで、言いようのない安心感で、幸せとはこの事を言うのだろうと思う程に。だから、自分の上司で、尊敬している晃にも、番を得て欲しいと常に思っていた
ずっと側で見て来た幹弥は、晃の番に対しての思いも、気づいていた。しかし、晃にはその前兆すらなかった為、出会う事を諦めている事も。晃の思いを知っている幹弥としては、嬉しい事この上ないのだ
「―――どうか…」
間違いであって欲しくない。晃が向かった先に、晃のただ一人の番がいますようにと、幹弥は祈る様に晃の跡を追ったのだった
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