精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第二章 新たな出会い

第十一話

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~執務室~



「セオドール、帰郷していたと言っていたが…」

「はい、まずは私の事からお話ししないといけませんね」

セオドールはそう言うと目を閉じた。するとセオドールの足元から風が少しずつ立ち始める

「こ、これは…!」

ユアンは信じられない気持ちでセオドールを見つめる。昔からよく知っていた筈の人物の知らない一面を見たのだ。風はどんどん強くなりとうとうセオドールが見えなくなった

「これはいったいどう言う事なんだ…」

ラシードもユアン同様、衝撃を受けていた。風が段々と治まってくる

セオドールが少しずつ確認できる様になってきた

「セオドール……お前はいったい…」

セオドールの姿が完全に見えたとき、そこには以前のセオドールとは全くの別人が立っていた

「っ!せ、セオドール殿…!?」

「ユアン、驚かせたかな?」

「やはり、セオドール殿なのですか?」

「信じられん…さっきとは全く別人じゃないか!」

ジェラルドは動揺していた

「ふふ、本当にあなたの知っているセオドールですよ?」

「でも…その姿は…まるでせ、精霊じゃないか!」

何処か以前の面影を感じつつも戸惑いは消せない

「ジェラルド…少し落ち着け」

「そうですよ。喚かないでください」

「わ、喚くってっ…」

「まぁまぁ……ふふ、その掛け合いも昔から変わっていませんね。ジェラルド、先ほど精霊の様だと言いましたね?」

「あぁ…」

「確かにその姿は精霊そのものです…」

「ふふ、では改めて自己紹介いたします。人間の姿の時は『セオドール』と名乗っていましたが、本当の名は『ケツァル』と言います。」

「ケツァル…どこかで聞いた名だ」

「この世界に精霊がいるのはもうご存知でしょうが、各属性の精霊の頂点に立つ王の存在はご存じですか?」

「精霊の王…古い書物で見たことがある。だが、その存在を見たものは数えるほどしかおらずもはや伝説となっている」

「えぇ、私もその様に理解しています」

「俺もだ。現代じゃ見たことある奴は存在しない。最後に確認されているのは数千年前と聞いている」

「えぇ、その通りです。普段人間の前に姿を現す精霊は中位までの者、魔力のある人間では上位の者までです」

「では、お前は……精霊の王だと言うのか?」

「ふふ…いいえ。私は人間でいう精霊王の側近と言いましょうか。ランクで言うと上位の上のランクになります」

「上位よりも上が…?」

「はい。人間に使役される事は殆どありません」

「殆どって事は…」

「えぇ、大昔に何度か」

フフッと笑いながら穏やかに答える

「じゃぁ、人間になっていたのにも理由があるんだな」

問いかけではなく確信をもってラシードが言った

「はい。その通りです」

「そうか…詳しいことを聞きたいが、私たちが聞いてもいいのか?」

「えぇ、その確認も含め帰郷していたのです。」

「そうか…では、話してくれるか?」

「もちろんです」




よく知っていると思っていた者の突然の告白

それは理解するにはあまりにも予想もつかない事だった

これから知る真実はそれぞれにいったい何をもたらすのであろうか…
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