精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第二章 新たな出会い

第十五話

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~ラシード~




ヴァル殿から聞いた事に理解が追い付かない……ただ我々人間があまりにも無知であったという事がはっきりとした

ラシードはまだ聞いていない疑問をヴァルに聞く事にした

「一つお聞きしたいのだが…」

『構わぬ』

「先ほどセオドールから竜の子の姿について聞いたのだが…」

『そのことか…竜の子は愛し子が触れることで卵からその姿を変える。そして愛し子の力によってその姿は様々だ』

「では、この度のお姿は問題はないと?」

『これまでの愛し子の力は精霊に愛されているゆえ強大であったが、こたびの愛し子はそれよりも遥かに強大。それゆえ我はこの姿となった』

「シェリの力が…」

『この子の力は計り知れん。今まで竜の子が犠牲になってきたと先ほど申したな?』

「…はい」

『今までの愛し子たちも我等を助けようとしたが、本来愛し子にそこまでの力はないのだ。だが、こたびの愛し子は違った』

「それは私も疑問に思っておりました。今までの愛し子たちも竜の子を救おうと触れましたが救う事は叶いませんでした。ですから、今回卵を見つけた時私も殿下達と同様に手遅れだと思っていたのです」

「では、シェリのしたことは本来なら愛し子にも不可能であった事だと言う事なのだな」

「えぇ、不可能です。これは精霊王でも不可能な事なのです。」

「精霊王でも出来ないことがシェリちゃんに出来たのか!?」

「やはり、転生する際の魂に関係があるのでしょうか?」

「精霊王もその様にお考えです」

『転生の際、元の愛し子の魂と別の魂が融合したのだろうと考えておる』

「魂の融合…可能なのですか?」

『実質、可能な事ではない。魂とは個々に意志を持っておる。例えて言うならば、二人の人間が一つになり一人の人間になると言う事と同意』

「確かに、そんな事は可能なはずはありませんね…」

『まこと、不思議な愛し子よ……なれど、そのお陰で我は助かった』

ヴァルの瞳は慈愛に満ちていた

「シェリ…」

(君はいったい…)

ベットからゴソゴソと音がした

「…んっ」

「シェリ、起きたか」

「ラシード、さん…僕また眠ってしまって…」

目をこすりながら言うシェリ

「構わない。良く眠れたか?」

「はい……あっ…」

シェリの目の前に漆黒の竜が歩いてくる

『愛し子、助けていただき感謝する』

「君が無事で本当に良かった」

『我の名はヴァルと申す』

「僕はシェリだよ」

『シェリ、我は愛し子の守り人だ』

「そうなんだ…」

(そっか…じゃぁ、ずっとはいられないのかな…?)

『何故そのように残念そうにするのだ?』

首を傾げ不思議そうにするヴァル

「ふふ、シェリは自分が精霊の愛し子だと自覚していないのです」

『なんと!こんなに精霊に囲まれているのにか…なんと鈍感な愛し子だ』

目を見開き信じられないといった様子だ

「え、シェリちゃん知らなかったの!?」

「…私はてっきりセオドール殿から聞いているとばかり」

「今まで一人だったのです、シェリは精霊が何かも知らないのです」

「精霊?あ、精霊なら会った事があります!」

「シェリ様気づいていらしたのですね!」

「…?眠っていた時に夢で会いました!」

「…?夢でって、シェリちゃん?」

「ふふふ、シェリどんな精霊に会ったのですか?」

「は、はい!アティ…」

「あ、アティ…ですか?」

セオドールの顔が引きつっている

「セオドール?」

「えっと、確か深緑の精霊王?のアティアスと言っていました!」

「「「………」」」

『あやつ、我慢できなかったのだな』

「え?」

『いや、こちらの話だ。気にする必要はない』

「は、はい」

『そなたら、いつまでそうしているのだ』

「「「……っは!」」」
『まぁ、気持ちは分からんでもないがな』

「僕、なにか変な事言いましたか…?」

『そなたがいかに愛されているのか分かったのだ。気にするな』

「?」



(((怒ってたのか?…それとも……あぁああ!考えるだけでも怖すぎる!!)))

いまだ三人が固まっているとベットから少し離れた場所が丸い円を描くように光だしその中心から不思議な彩色の草花がなり始めた

「あれは…」

「も、もしや…」

セオドールの顔色が先ほどよりも悪くなっている

草花が成長を止めたと同時に中心には一人の美しい青年がたっていた

「シェリ…」

「あっ!アティ!」

アティアスはシェリの側まで来て頭を撫でた

「ふふ、会いに来たよ」

「でもさっき会ったばっかりだよ?」

「先ほど会ってからもう幾分か時が過ぎた。シェリに会いたくてね。シェリは会いたくなかったかい?」

「ううん!僕も会えて嬉しい!」

「ふふふ、愛しい子。これからはいつでも会いに来るゆえ」

「うん!」

『ふたりの世界に入りおって…』

「あ、アティアス様」

「…ケツァルではないか。ジンは元気か?」

「は、はい。アティアス様もご機嫌麗しく」

「あぁ…此度はシェリをよく探し出した。感謝する」

「っありがたきお言葉」

「…ん?その者達は…」



_________




突然の訪問者に戸惑う面々

これからの世界の行く末

考えることは数多

また、どうする事も出来ない事ばかり

願わくば万事が良い方へと行きますよう


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