遥か闇なる世界 ~世界の絶望に立ち向かう黒神子の少女と、真の勇者になる事を夢見る心優しい青年の物語

藤田作磨

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第一章 黒神子レスフィナとの出会い編

14.三人の聖女達と合流する

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            14.三人の聖女達と合流する


 ラエルロットから百メートルほど離れたその場所では、怒濤の攻撃を繰り出すミランダ。リリヤ。カーラ。の三人の聖女達が、黒神子・レスフィナを確実に再起不能にする為に徐々にその間合いを詰めていく。
  何度も致命的な攻撃を与えても直ぐに死の淵から蘇り超再生を繰り返す黒神子・レスフィナは、自分からは特にこれと言った攻撃をする様子は見られなかったが、その事を知った聖女達は容赦なくその特質すべき攻撃を繰り返す。

 空気に伝わる衝撃波で全てを吹き飛ばす力を持つ、衝撃の聖女・ミランダや。思い描いた場所から瞬時にあらゆる物を爆破させる事が出来る、爆撃の聖女・リリヤ。そして体中から生やした謎の蔦で相手から生命エネルギーを奪う事が出来る、拘束樹の聖女・カーラを入れた三人が少しずつ黒神子レスフィナを追い詰めているようにも見えるが、その光景を遠くから見ていた勇者田中正は黒神子・レスフィナの底知れない力にかなりの不安を感じているようだ。そう思うのも無理はない。こんな一方的な結果になっているのにも関わらず攻撃を無抵抗のままに受けている黒神子レスフィナは未だに健在だからだ。

 いつ終わるとも知れないこの戦いに終止符を打つべく狂雷の勇者田中正は聖女達がいる戦場に馳せ参じようと動き出そうとするが、その行く手を完全に遮るかのように黒い不格好な木刀を携えたラエルロットが黒衣から伸びるマントをなびかせながら勇者田中の前に立ちはだかる。

「おい、一体何処に行くつもりだ。まさか俺を殺せない物だから先ずはか弱い女性から先に始末しようとか考えているんじゃないだろうな。お前の方が圧倒的に強いのに俺から逃げようとしてんじゃねえよ。女のケツを追い回そうとしていないで、正々堂々と男らしく俺と戦え。そうだろう、勇者田中正。本当の戦いはここから始まるんだからよ!」

 そのラエルロットの挑発に一瞬勇者田中正の顔は怒りでゆがむが、直ぐにつまらなそうな顔をするとラエルロットに言い放つ。

「何だよそれは、まさか挑発のつもりか。その安い挑発で俺をこの場にとどめておこうと思っているようだが、お前はもういいや、流石にいい加減お前との勝負にも飽きてきた所だしな。お前にその不死の力を与えている本体でもある黒神子の方を先に倒しに行かせて貰うぜ。その方がどうやら早そうだしな。流石のお前もその力の源でもある黒神子レスフィナを封じられてはもう不死ではいられないはずだ。そうだろう、ラエルロット!」

「くそ、レスフィナは俺のために三人の聖女達を相手に全て引き受けて戦ってくれていると言うのに、彼女をこの事件に巻き込んだ当事者でもある俺がそう安々と生きることを諦めてたまるか! 俺は死の境界線の淵で、あがいて……あがいて……あがききって……最後にお前が音を上げて戦いを諦めるまで挑戦し続けてやる。と言うわけでお前は何処にも行かせないぞ!」

 ラエルロットは自分自身に語りかけるかのように大きな声で叫ぶ。

「復讐の黒衣の鎧よ……俺に奴の速さや力について行けるだけの力を与えてくれ! 今度こそ奴の邪悪な雷撃に打ち勝つんだ。心と命を燃やせぇぇぇーーぇ!」

 そのまとっている黒衣の鎧に語りかけたラエルロットは、全ての意識の集中を体全体に通わせる。その強い意志に共鳴するかのように体中の感覚の全てが研ぎ澄まされ、物凄い気持ちの高ぶりがラエルロットの戦闘力を飛躍的に上昇させていく。

「その禍々しい黒衣の鎧はどうやらお前のレベルに関係なく飛躍的にその力をあり得ないほどに上げてくれるようだが、使えば使うほどにお前の体と心は壊れていくみたいだな。お前は幸か不幸か幸いな事に不死だからその諸刃の呪いを受けても直ぐに体は再生するのだろうが、常人が使えばその大きな力と引き換えに間違いなく良くて大怪我、悪くて即死をするレベルの呪物のようだな。だがラエルロットよ、その禍々しい鎧の力はもうそれ以上は使わない方が身の為だ。いくら不死とはいえ後でその代償は必ず何らかの形で払う事になるんだからな」

「ああ、そんな事はわかっているさ。だが今はこの鎧の力に頼る以外に道はない。出ないとお前が使う目にも写らない素早い雷撃のような動きや怒涛の力に対抗ができないからな。復讐の力に呑み込まれるその一歩手前で踏みとどまり、この呪われた力を十二分に引き出してやるぜ!」

 復讐の鎧から噴き出る禍々しい力に全身を覆われたラエルロットは今現在望むくらいの最高の一撃を放つ為に黒刀と化したその得物を構えるが、勇者田中正は尚も戦闘態勢のラエルロットに言葉を掛ける。

「ついさっき不知火先輩に聞いたんだが、お前が契約したと言う黒神子レスフィナの試練の呪いはこれからもまだまだ続くらしいぜ。お前はたまたま運良く最初の呪いに打ち勝つ事が出来たみたいだが、それはお前に取っては不幸の始まりなのかもな。だからこそこの世界の人達は黒神子が持つ強大な負の力を恐れて積極的に関わるのを拒否している。あの強大な負のエネルギーは確かに協力だが誰も扱えない以上黒神子の眷属になる契約その物が一種の呪いのような物なのだと前に誰かから聞いたことがある。ならその呪いから縁を切れるうちに切っておいた方がいいんじゃないのか。そうしなければお前は確実に何処かで闇の試練に失敗し外道に落ちるか、もしくは精神が崩壊して生きる屍になるのが落ちだぜ。そうなりたくないのならそこをどけ。俺がお前にその呪われた力を与えた黒神子レスフィナを封じて来てやるよ」

「それはまさか脅しのつもりか。例えレスフィナの力が呪われていたのだとしても、俺を助けてくれた力に違いは無いからな。俺はこの力を与えてくれたレスフィナを信じるぜ。大体お前が俺やハルお婆さんを殺したからこんな事になっているんじゃないか!」

「まあ確かにそうなんだがな……ラエルロットよ、もしお前が俺をこの場から通してくれるのなら、お前をこのまま見逃してやってもいいと俺は思っているんだがな。俺はお前をもう何回も殺しているし、この戦いを通じて成長し死ぬ事を全く恐れなくなったお前をこれ以上殺しても何も面白くはないからな。ハッキリ言ってお前は異常だぜ。勇敢さと狂気は正に紙一重と言うが、黒神子レスフィナを封じたらもうお前には関わらないようにするよ。どうだ、いい条件だろ。お前だってこれからも普通の人間として生きていきたいはずだ。そうだろう」

「ふ、俺をこのまま見逃してくれると言うのか。また随分と優しくなった物だな。だが答えは否だ。勇者田中正、ハルお婆さんや沢山の罪のない人々を殺した罪を正す為に俺は闇の力を借りて、お前の前に立っているんだ。だから最後の最後まで付き合って貰うぞ。その終わりの時が来るまでな!」

「まさか俺が疲弊をしてHPやMPが無くなるまで戦うつもりか。そのいつ終わるかもよく分からない無限ループ地獄に付き合うつもりは全くないぜ!」

「まさかこの真剣勝負から逃げるつもりじゃないだろうな。この戦いをお前自らの浅い情けで汚すなよ」

「ふ、真剣勝負か。ならいいだろう、ラエルロットよ。お前を正面から堂々と打ちのめして、黒神子レスフィナの元に行かせて貰うぜ!」

「いいや、絶対に行かせない。最後に勝つのは俺だからだ!」

 ラエルロットの体から噴き出る黒い禍々しいオーラと勇者田中正の体全体から鳴り響く狂わんばかりの雷に二人のスキルが間合いを広げながら真ん中付近で激しくぶつかり合う。
 その気迫と集中力から繰り出される張り詰めた殺気は凄まじく、その場の空気だけで周りの人が殺せる程だ。そのくらい二人の思いは頂点へと達していた。

「いくぞ、ラエルロットぉぉぉ!」

「こい、勇者田中ぁぁぁぁぁぁ!」

 文字通りの最後の一撃を共に放とうとしているそんな二人の元に、いつの間にか戦いを終わらせたミランダ・リリヤ・カーラの三人が、その雷の長剣を構える勇者田中正の元に近づいてくる。

(あれ、あの聖女達と戦っていた黒神子レスフィナは一体どこに消えたんだ?)

 恐らくはレスフィナの返り血でも浴びたのだろうか、着ている清楚な白い衣服を全て血で染め上げた三人の聖女達は勇者田中正の所まで来ると、その中の一人の爆撃の聖女・リリヤが、勇者田中正の足下にある物を投げつける。

「そ、それは……ま、まさか?」

 その信じがたい光景を見たラエルロットは無造作に投げ捨てられた物に対し、震える声で聖女リリヤに抗議の意思を示すが、その厳しい現実を突きつけるかのように聖女リリヤは無機質なその表情を崩す事無く真顔で言い放つ。

「そうです。それは、あの黒神子レスフィナの体の一部です」

 聖女リリヤが勇者田中正の足下に投げつけたのは、黒神子レスフィナの右腕の部分だった。

「ば、馬鹿な、黒神子レスフィナはCランクの聖女達では先ず絶対に倒せないんじゃなかったのか。だからこそあの三人の聖女様達は黒神子レスフィナを倒せずにその決定打を与える事が出来なかったはずだ。それなのになぜだ。まさか、本当は黒神子レスフィナのHPやMPには知られざる上限があって、その魔力が尽きてしまった黒神子レスフィナは志半ばで本当に死んでしまった……と言う事なのか?」

 その絶望的な不安や思いをつい口にしたラエルロットは、ついに合流してしまった勇者田中正と三人の聖女達に注意を払いながら、黒神子レスフィナの行方と安否を本気で心配するのだった。

 相手の生命を吸い取る権能を持つCランク、拘束樹の聖女カーラです。
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