遥か闇なる世界 ~世界の絶望に立ち向かう黒神子の少女と、真の勇者になる事を夢見る心優しい青年の物語

藤田作磨

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第二章 黒神子・妖精喰いのヨーミコワ編

2-24.壮絶な攻防

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              2ー24.壮絶な攻防


 ドッツウゥゥゥーーン、ゴッカアアァァァーーン!

 遙か上空から地上に落ちてきた黒神子ヨーミコワは強烈な落下音と大量の土煙を上げながら、蛾の妖精達が住んでいた隠れ里付近にまた落下という形で舞い戻って来る。だが黒神子レスフィナの黑血食術で呪いの拘束を受けているその体は思うように動かす事が出来ず、まるで大きな大岩を背負っているかのようにその動きは完全に制限を受けてしまう。

 その術中にはまってしまった体でクレーターと化した陥没した穴の中から必死に這い出て来る黒神子ヨーミコワだったが、なぜ自分がこんな目に遭っているのかを考えながら恨みがましい思考で思いを巡らせる。

(なぜ、なぜ私がこんな目に……遭っているんだ。くそぉぉぉ、これも全てラエルロットとかいうクソ生意気な勇者もどきの人間族と、黒神子としての本分を……使命を……その邪悪にして凶悪生を無くしてしまったレスフィナのせいだ。あいつらが蛾の妖精達にだけでは無く、邪妖精の女王の末裔にも力を貸して共に戦っているからいけないんだ。しかも犬人族の神官見習いの服装をした闘士と、名も知らない若手の狼魔族の青年の二人も何故か共に共闘をしている。その数少ない可笑しな連中にこの私がここまで追い詰められるとは、もうこれはまさに悪夢としか言いようがないわ。この最悪な状況を打破する為にも……今はなんとしてでもこの場所から抜け出して何処か遠くへ逃げなけねば、巧妙に仕掛けたレスフィナの術中に本当にはまってしまう。先ずは一度撤退して態勢を立て直してから改めて蛾の妖精達を殲滅してくれるわ!)

 地面に落ちた時のダメージがまだ残っているのか口から血ヘドを吐きながらクレーターの穴の中から這い出た黒神子ヨーミコワは自己修復されていく自分の体の進行具合とHPの回復上昇を実感しながら立ち上がるが、そこに行き成り投げつけられた鉄をも瞬時に腐食させる事ができるという薬物、火薬を練り込ませた腐食玉が命中する。

 パアーン!

「だ、誰だ、このようなふざけた事をする奴は、この場で八つ裂きにされたいか!」

「よし、当たった、当たった。これでまた奴の鋼鉄と化している両翼の翼を壊れやすい陶器のように脆くする事ができるぞ。だがまさか本当にあの黒い鎧の似非勇者があの黒神子ヨーミコワを地面に叩き落としてしまうとは……シャクティの奴の言葉を信じてこの辺りで待ち伏せをしていて良かったぜ!」

 黒神子ヨーミコワの鬼のような怒鳴り声にも臆すること無くその場に現れたのは狼魔族の青年、ゴンタである。

 ゴンタはシャクティから渡された腐食玉を二~三個ほど手に持つと、怒り心頭の黒神子ヨーミコワを威嚇する。

「ヨーミコワ様よ、あの似非勇者を殺してやるとか言って上空へと無理やり連れ去ったようだが、しばらく見ないウチにボロボロになって帰ってきたじゃないか。あんたに連れさらわれた黒い似非勇者はあの後、どうなったんだよ?」

「や、奴は……」

「いや、喋らなくていい、お前のその姿を見て大体は分かった。お前、レスフィナ姐さんの呪いの攻撃を受けているな。お前のその体全体を覆うように赤黒く光る血の塊は黒神子レスフィナの姐さんの物だ。俺も一日前は散々逃げようとして、その度にその赤黒い呪われた血には嫌と言うほど、煮え湯を飲まされたからな。今のあんたのその状況は飛ぶどころか歩くのもやっとの状態のはずだ。なら今ならあんたを殺す事はできないまでも、その歩みを行動不能にする事はできるかも知れないな」

「まだ二十年も生きていない狼魔族の小便臭いガキが粋がるな。下級種族のお前など三秒であの世に送ってくれるわ!」

 激高しながら目の前にいる狼魔族のゴンタに目がけて両翼の翼から発射される高速の徹甲弾を放とうとするが、羽自体を動かす事ができない。まるで一つ一つの羽が超強力な接着剤で貼り付けられているかのようだ。

 そんなイメージを体で感じながら発射されない一枚の羽を見た黒神子ヨーミコワは自分の感じた感覚が間違ってはいない事を確認する。そう黒神子ヨーミコワの鋼鉄の羽の隙間には、かつては赤い液体だったはずの粘着質のあるレスフィナの血が薄くではあるが体全体に浸透しており、両翼の翼全体の隙間で硬質化し、その呪いによる強固な粘着力で徹甲弾の発射を防いでいる。
 そしておまけとばかりに今の黒神子ヨーミコワはまともに歩けないくらいに重力の力が掛かっているので(三分の一の力しか出せないとはいえ)先ほどまで出せていた圧倒的な攻撃力も速さも完全に封じられた状態にあるのだ。

 そう今こそがゴンタ達に取って黒神子ヨーミコワに大ダメージを与える事ができる、最大にして最後のチャンスなのだ。

「クソおぉぉぉぉぉ、レスフィナの呪われた血液が邪魔で、翼から無数に発射されるはずの徹甲弾を一発も放つ事ができない。レスフィナ、レスフィナ、どこにいる。もうお前が賢者の魔石の中から出て、何処かで復活をしている事は分かっているんだぞ。ならコソコソと何処かに隠れていないで、そのいけ好かない姿を表しやがれ!」

「おいおい、レスフィナ、レスフィナって、目の前にいる俺は無視かよ」

「ほざけぇぇぇぇーー、下級種族の出来損ないがあぁぁ、こんな状態とは言え、お前程度が、私を傷つけるどころか触れる事もできないだろ。調子こいてんじゃねえよ!」

「なら逃げる……元い、後退する俺に一瞬で追いつく事のできたあの驚異のスピードをもう一度見せてみろよ。もうそれすらもできないんだろ。黒神子ヨーミコワ様よ」

「だまれ、だまれぇぇぇ、徹甲弾を発射できないなら、両翼の翼から繰り出される切れ味抜群な刃物と全てを引き裂く強力な鉤爪付きの蹴りで、お前の体を切り裂いてくれるわ!」

「そう上手く行くかな!」

 そうゴンタが言葉を返した瞬間、ゴンタが再び投げつけた煙玉が黒神子ヨーミコワの目の前で破裂をし、その濃い煙の中からゴンタと入れ替わるような形で行き成り現れた犬人族の神官見習いでもあるシャクティが、両手の拳を固めながら一瞬で黒神子ヨーミコワの間合いの中に入る。

「もうだれも傷つけさせはしません。受けてみなさい、私の必殺の一撃を! 犬人族流聖拳、五方の構え。上中段火の型【乱れ直突き連打!】」

「犬人族の神官見習い兼闘士の女、またお前か。いい加減しつこいぞ!」

 犬人族のシャクティが行き成り目の前に現れた事に反応して鋭い刃物と化した両翼の翼を直ぐさま振り抜くが、その気持ちとは裏腹に明らかに出遅れたその一撃をかい潜った犬人族のシャクティが必殺の拳を連続で叩き込む。

「はああぁぁぁぁーーぁぁ!」

 ドカ・ドカ・ドカ・ドカ・バキッ・ドカ・ドカ・ドカ・バッコーン・バキーン・ドカ・ドカ・ドカ・ゴツン・ドッシン・ドカ・ドカ・ドカ・ドッババババアァァーーン!

「ぐっわあぁぁぁぁぁーー、ぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーぁぁ!」

 大量の連打の突きを腹部に浴びせられ、溜まらず黒神子ヨーミコワも両翼の翼で反撃に移るが、その素早い攻撃もシャクティの回し受けで全て流されてしまい一発も当てる事ができない。

「バカな、バカな、やはりこのシャクティとか言う犬人族の女はただの神官見習いでは決してない。明らかに自分の本当のレベルを隠しているな。その本当のレベルを見せて貰うぞ。黒神子ヨーミコワ観察特定術、鑑定眼力、集中強化!」

 黒神子ヨーミコワの大きな目がカッと見開かれた瞬間、レベル1と表示されていたステータスが崩れ、新たな数値が表示される。
 
(神官職のレベルは確かにレベル1だが、闘士職としてのレベルはレベル55と出ている。つまりこのシャクティという女は二つの職業を一つのレベルに統合しているのではなく。敢えて職種としての能力値を二つに分けて使用しているのか。本来ならその職業は神官と闘士を合わせて神聖闘士のクラスとなるはずだが、理由は分からんが敢えて独立させているのか。だからこの場で職業を切り替えるさいは時間のタイムラグが出来てしまうし、直ぐに二種類のスキルが使えないからどちらかの得意な職業に偏りがちで特に意味が無いんだが、なるほど……闘士としてのレベルは55か。だがその数値すらも更に偽装されているやも知れないがな!)

「黒神子ヨーミコワ、そろそろご自身の負けを認めて、いい加減に倒れて下さい!」

「ほざけぇぇぇぇーー、レベル55の元闘士野郎があぁぁぁぁぁぁーーぁぁ!」

 黒神子ヨーミコワも負けずと両翼の刃で何度もその刃先を振り回すがシャクティの体に当たることは無く、その隙をかいくぐってシャクティが繰り出す強烈な蹴り技をその顔面にまともに受けてしまう。

「犬人族流聖拳、五方の構え、激流から繰り出される【水構えの回し蹴り!】」

 その瞬間、黒神子ヨーミコワの体は後ろへと豪快に吹き飛び、大きな土煙を上げながら後ろにある大きな岩へと叩き付けられる。

 ドッカアァァァァァァァーーン!

「ぐっはあぁぁぁ!」

「今の連続攻撃であなたのHPはゼロになったはずですが、また回復して数値が上がって来ていますね。でも弱体している今ならあなたを賢者の魔石の中に封じる事が出来ます。なのであなたの首から提げている賢者の魔石を私に貸して下さい。その魔石の中に直ぐに外に溢れ出たあなたの思念体の力を戻して差し上げますから!」

「うわぁぁぁあぁぁぁぁ、く、来るな、よるんじゃない。ちくしょうぉぉ、本来の力を引き出せていたらお前なんかには絶対に負けないのに……負ける訳がないのに……口惜しい、口惜しいぞ!」

「もう終わりです」

「認めない、認めないぞ。私は不老不死だから、私が負けを認めない限りは、例えHPとMPがゼロになったとしても絶対に負ける事は無いのだ。 このまま二時間耐えしのいで、ラエルロットに叩き込まれた、思いを具現化する苗木の効力が切れるのを待ってレベルダウンの効果を耐えしのいでやる。その間は私の首に提げている賢者の魔石は絶対に死守してくれるわ。そしてレベルが戻ったら……覚えていろよ。賢者の魔石の中から(一瞬でも)三分の二の力を引き出して、レベル60前後の強さで、お前のレベルを圧倒してやる!」

「そう上手くは行くかな。お前の相手は上にもいるぞ!」

「な、なにぃぃぃーーっ?」

 上から聞こえて来る聞き覚えのある声に思わず頭上を見上げてしまった黒神子ヨーミコワは、その瞬間上から猛スピードで落下して来るラエルロットの渾身の一撃をその身に受けてしまう。

 バッキィィィィィィーーン!

「がっはぁ、ぐっわあぁぁぁぁぁーーぁぁ……ラ、ラエルロットォォォォォォ!」

 ラエルロットが持つ黒い不格好な木刀から放たれる、頭部から爪先までの綺麗な直線の一撃を受けてしまった黒神子ヨーミコワは、そのまま地面に頭を叩き付けながらうつ伏せに倒れる。
 その攻撃は凄まじく、上空から地上まで加速させた一撃なだけあって頭は見事にたたき割られ、回りには凄惨な返り血が飛び散る。
 だがその渾身の攻撃すらも黒神子ヨーミコワに取ってはただ単に時間がほんの少し伸びただけに過ぎない。

 ラエルロットにたたき割られたその頭は見る見るうちにその傷が自己修復されていく。

 シュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーっ!

「くそ、いくらダメージを与えてもやはり傷は直ってしまうか。まあ、分かってはいた事だがな」

 手には黒い不格好な木刀【思いを具現化する苗木】を持ち。

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 ラエルロットは地面に倒れている黒神子ヨーミコワと間合いを取ると、両手でしっかりと持つ黒い不格好な木刀を構える。

「もう終わりだ、黒神子ヨーミコワ。もうお前に勝機が無い事は分かっているだろ。諦めて降参するんだ」

「この私が負けるだとう、ふざけんな、ラエルロットォォォォォォ、この私がお前らごときに負ける訳がないじゃないか。もう勝ったつもりでいるのなら、とんだ見当違いだ。いくら私の体がボロボロになっても私は死なないし、私を封じる事のできる賢者の魔石は私の首にしっかりと掛かってあるからな。まずはこいつを取り返さないといけないのだろうがこの私がそんな事を許すと思うか。絶対に賢者の魔石は渡さないし、二時間が過ぎてラエルロットの一時的なレベルダウンの効果がなくなったら、その時こそは確実にお前達を殺してやる。それとももうめんどくせえから、あの黒神子レスフィナをも(一時的とはいえ)再起不能にした最後の切り札で一気に葬ってやってもいいんだぞ!」

「レスフィナを倒した技だとう……確か凝縮された精霊力だったかな。その力は妖精達の命を喰らう事で己の体内に貯蔵する事ができる、禁断にして最後の切り札ともいえるあの力の事か。確か自然に干渉できるその力は、本来持つ、遙か闇なる世界の神様から貰っている魔力とは違い、独立した力だったな。だから賢者の魔石の封印の中から分身体が外に出て来ても魔力の方は三分の一程しか引き出せなかったが、精霊力の方は外では100パーセントの力を振るう事ができる。そしてこの力はレベルダウンの効果の影響も一切受けないから文字通りの隠し玉にして最後の秘密兵器と言う訳か。だがその溜に溜めた精霊力のエネルギーには当然限りがあるので、そうむやみやたらに使うのをためらっていると言った所かな」

「ああ、そうだとも、この精霊力の力を使うのは私が本当に……絶体絶命のピンチの時だけだ!」

「絶体絶命か。それはつまり……具体的にはまたレスフィナの奴に攻撃された時のことを言っているのか。確かにレスフィナは、一度目は黒神子ヨーミコワの思わぬ隠し玉に少しびっくりして敗北を期してしまったが、その秘密が分かった今そう何度も同じ手が通用するかな」

「な、なんだとう!」

『例えばこんな復活の仕方はどうでしょうか。黒神子ヨーミコワさん!』

 涼しい声でラエルロットとヨーミコワの会話の中に行き成り割り込んできたのは自ずと知れた黒神子レスフィナである。

 その近づいて来る気配や存在すらも全く感じなかった事に少し油断をしていた黒神子ヨーミコワは行き成り耳元で声を掛けられた事に思わず後ろを振り向くが、そこで見たのはヨーミコワの両翼の翼を繋ぐ背中の中心で急激再生を遂げて少女の形になっていく黒神子レスフィナの姿だった。

 黒神子ヨーミコワは空の上でレスフィナの大量の血を浴びた事でレスフィナの遺伝子情報が残り、死角となるその背中の見えない背後で密かに超再生を遂げるレスフィナの復活を阻止する事が出来ない。

 そしてラエルロット達の努力と奮闘で黒神子ヨーミコワのHPとMPが確実に減らされているその今こそが最大のチャンスなのだ。

 そんな最大のチャンスを物にしようと行動に出た黒神子レスフィナは、黒神子ヨーミコワの体を後ろから両手でがっしりと押さえつけると、その澄ました顔を近づける。

「あらあら、先程は随分と面白いおもてなしであなたの本体がいる賢者の魔石の中にご招待をしてくれましたね。中々の退屈なお持てなしでしたけど……ようやく戻ってこれました。そして晴れてあなたの背後を取る事が出来ましたわ。こうなったらもう離しませんよ。同じ同族でもあるあなたのレベルダウンの吸収は基本的には出来ませんが、一時的ならそのHPとMPをゼロにして、その数値による急激上昇の回復も約五分ほど遅らせる事ができます。そしてその五分もあれば無力と化したあなたを押さえつけて、賢者の魔石を奪ってから改めてあなたを再度封印し直して差し上げる事が出来ますわ!」

「黒神子レスフィナ……やはり私の体に付着したあの血液を利用して背後から急激再生を遂げていたか。ちくしょう、最初からこうする腹だったか。だが、そうは、そうは、させないぞ。ちくしょう、ちくしょう、私の背中から離れろおぉぉぉぉぉ、離しやがれぇぇぇぇーーぇぇぇ!」

 後ろから羽交い締めにされた黒神子ヨーミコワはその締め付けから逃れようと必死に暴れるが、両腕でがっしりと首を押さえつけられているばかりか、両翼の翼の隙間に満遍なく浸透したレスフィナの血液による呪いの締め付けで無闇に引き剥がす事ができない。

「くそうぅぅ、徹甲弾を発射して引き剥がそうかとも思ったが、そもそもこいつの血液が固まって徹甲弾を発射する事ができない。このままでは、このままでは不味い。レスフィナに直に触られたら、英雄殺しの異名と同じようにそのHPとMPを急激に吸い取られてしまう!」

「ええ、そうですわね。でも黑血食術による束縛の血の呪いも、HPとMPを吸い取るとされているこの手も絶対に離しませんよ。私、握力だけにはかなり自信がありますからね!」

 不気味に耳打ちしながら語るレスフィナをどうしても振りほどけないでいる黒神子ヨーミコワは仕方なく最後の行動に移る。そう内なる力を解放しながら溜に溜めた濃縮な精霊力のエネルギーを爆発させたのだ。

「な、舐めるなあぁぁぁぁぁぁーーぁぁ!」

 カアァァァァァァァアッァアァァァァァァァァァァァァァァーーァァ!

 その瞬間、黒神子ヨーミコワの体にしがみついていたレスフィナの両腕と体は何か神秘的な見えない力で何処かへと吹き飛び。虹色のような神々しい光を体全体から放つ黒神子ヨーミコワがその場へと立つ。

 だがその大きく広げた両翼の翼には羽は一枚も無く、まるで羽が抜けた情けない鳥の手羽先のようにその骨格があらわとなる。

 その強烈な七色の光を放つ衝撃波で一本の大きな大木へとぶつかった黒神子レスフィナは、自由を失った自分の体を支えることが出来ないまま、地面へとズリ落ちる。

「し、しまった……です。HPとMPを吸い取って……無効かしてしまう前に……精霊力の力で……身動きを封じられてしまいました。非常に……無念……です」

「レ、レスフィナ!」

「ラエルロット、先に動きますよ!」

「こら、似非勇者、ボヤボヤしてんな。俺達も直ぐさま攻撃に移るぞ!」

 大きな大木の下に倒れるレスフィナの元に向かおうとしたラエルロットの後ろを猛スピードで通り抜け、目の前にいる黒神子ヨーミコワに最速で攻撃しようとしたシャクティとゴンタの二人だったが、虹色に光る第二波の衝撃波で豪快に後ろへと吹き飛ばされてしまう。

「「ぐっわあぁぁぁぁぁーーぁぁ!」」

 精霊力の直撃を受け急激に体力と精神力を削られたシャクティとゴンタは、落下後はそのまま動かなくなる。

「レスフィナ。シャクティ。ゴンタ。ちくしょう、よくも三人を……次は俺が相手だあぁ!」

 一気に形勢を逆転されたと感じたラエルロットは自分も直ぐさま相手の間合いの中に走りだそうと構えるが、精霊力から流れる、恐怖や憎悪や嘆きや絶望と言った負のエネルギーを竜巻のエネルギーに変換して自分の身を守る黒神子ヨーミコワの姿にラエルロットは強い怒りを覚える。

「妖精達の命の無念の嘆きを力なんかに変えやがって、そんな横暴絶対に許しはしないぞ。大体その精霊力は本来はお前の力じゃないだろ。自分勝手なわがままな欲望を叶える為だけに幾多の妖精達を食べ続けて来た代償は必ず払ってもらうからな!」

 そんな怒り心頭のラエルロットとは対照的に黒神子ヨーミコワは、絶対的な自信と余裕を見せると直ぐにでも攻撃に移れるようにと凝縮された精霊の流れの渦の力を更に激しく大回転させる。
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