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第三章 二人の聖女編
3-24.言霊の聖女・ツインの能力
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3ー24.言霊の聖女・ツインの能力
困惑した顔をしながら長剣を持っていたはずの右手を見つめるエドワードに対し、その隙を見逃さなかったラエルロットは隙ありとばかりに果敢にも黒い不格好な木刀を振り回すがその攻撃を全て寸前の所で軽々と避けて見せる。
それでも猛然と迫るラエルロットの攻撃に少し無気になった耳長族のエドワードは、近づくラエルロットの胸の辺りを目がけて軽い掌底打ちを喰らわせると、今自分に起きているある一つの謎について考えを口走る。
「こ、これは、一体どういうことだ。どうなっている。俺は剣をしっかりと持っていたはずなのに、いつの間にか長剣を落としてしまっていた。しかも一度ならず二度までもだ。もしかして俺が剣を落としたその訳は……その要因は……ツインテールの髪型をしたお嬢ちゃん、これはもしかしてお前の仕業か。お前はまさか、強い思いによる一つの言葉を発する事で、その言葉になぞらえた通りの結果を生み出す事のできる言霊のような能力を使える、と言う事なのか。だとしたならば、これはかなり厄介な能力だぞ。その言葉による能力範囲や命令ができる言葉の種類は未だに謎だが、もしもその言葉の強制威力に決してあらがうことのできない絶対的な命令権があるのだとしたら、この聖女はかなり強い神聖力を持つ聖女と言う事になる。だが今も尚恐怖に震える小心な少女が、そんな強い力を持つ聖女では当然ないはずだ。なぜならこの少女は自分のことをCランクの聖女だと言って自信なさげに自分を卑下していたからだ。と言う事はそれは即ち、あの少女が放つその言葉には、それ程強い絶対命令権は無いと言う事を意味している。そうだろう、お嬢ちゃん!」
疑問と疑惑の目を向ける耳長族の青年エドワードに対し、今尚頑なな態度を崩さないサンプル体の少女・ツインは、その思いをなにも言わない沈黙と言う名の否定で返す。
だが実の所はエドワードの推測はほぼ外れてはおらず、その分析は的を得ていた。
Cランクの言霊の聖女・ツインの能力は、強い言葉の強制力で、声を掛けた相手を言葉の通りに、一瞬だけ意のままに操る事ができるという微妙な能力だ。その能力の全貌に迫れないからこそエドワードは自分の考えに確信が持てず、目の前にいる少女ツインに言葉による揺さぶりを掛けているのだ。
少し離れた通路の壁には今し方耳長族のエドワードの素手から繰り出された掌底によってラエルロットが吹き飛び、そのまま壁へと激突して数秒ほど体の痛みで悶絶していたが、直に立ち上がり攻撃態勢を取る。
手を抜いていたとはいえ結構早くに復活したラエルロットを見たエドワードは、このまま戦いを長引かせて、このCランクの聖女と共闘させるのはちょっと不味いと本気で考える。
なのでなんとしてでもサンプル体の少女・ツインから言霊による能力についての情報を引き出したいエドワードは、数少ない表情と言動から突破口を探ろうと更に話を続ける。
「なんだ、だんまりかよ。人がせっかく質問をしているのに何か話してくれないと話が進まないだろ。大体お嬢ちゃんのあの『落とせ』という言葉が聞こえたのと同時に俺は自分の長剣を落としてしまったんだから、その謎と疑問について説明をしてくれないとフェアじゃないだろ」
耳長族のエドワードのフェアと言う言葉にだんまりを続けていたツインだったが、少しムッとしたのか、気難しい顔をしながらいきなり話し出す。
「ふ、フェアって、あなたがそれを言いますか。大体あなたが、女子供しかいない私達と戦おうとしている時点でもうフェアなんかじゃないじゃないですか。レベル90の超絶に強い反則級の剣士がレベル1の私達に戦いを挑んできた時点でこの戦いはもう既に一方的で、理不尽すぎます。そんなあなたに卑怯呼ばわりされたくはないです!」
「クククク、やっと話をしてくれたか。そうだ、そうでなくてはCランクの聖女としての威厳と誇りが示せなくなるだろ。いくら下級ランクとはいえ誇り高い聖女である事に変わりは無いのだからな。確かに俺はお前らの遙か先を行く超絶に強い剣士だが、まだ聖女としての能力を隠し持っているお前もまた特別な存在だろ。もしもお嬢ちゃんが使うその能力がこの俺を御する事のできる能力なら、もうそんな余裕めいた事は言っていられなくなるからな。だから聞いているのだよ」
「聖女の命を狙っているくせに、何を勝手な事を……」
「そんな中でも、だんまりを決めて中々自分の能力の事を明かさないお前だが、この戦いの中でお前は二回もあの冴えない平民の剣士もどきの事を救っている。お前が見せたあの能力が俺が推測している予想の物なら、まさに初見殺しとも言えるトリッキーな能力だ。だがその言霊には術を発動し相手を確実に罠へと嵌める特別な条件と制限が必ずあるはずだ。もしもそうでなかったら俺はもうとっくの昔にその言葉による命令を受けて攻撃されているはずだからだ。それが未だに無いと言う事は俺を殺すに至る命令を出せない訳があると考えるのが普通だ。だがそれでもお嬢ちゃんの言霊の能力にはまだ俺が知らない謎の多い部分があるだろうから武器の使用は……真剣による攻撃はやめておく事としよう。まずはお嬢ちゃんとの間合いを取りながら一歩ずつ近づいて、相手の出方を探って見るか」
エドワードの「まずは近づいて、相手の出方を探ってみるか」という言葉に一瞬不安と焦りの表情を見せたサンプル体の少女・ツインは、一歩・二歩と後ろへと後退する。
だが、その僅かな心の動きを見逃さなかったエドワードはツインの言霊には必ず何らかの狭い制限がある事に気づき、その疑問を確信へと変える。そしてその確信がツインの真実であり、今まさに必死に隠している事だ。
エドワードはその事実を証明しようと、その答え合わせをする為に、まずは目の前に立ちはだかる邪魔なラエルロットをどうにかしようと渋々動き出す。
そんな策謀を巡らす耳長族のエドワードに対しラエルロットは何も考えること無く、シンプルに、そしてただ夢中に戦いを挑み続ける。
「くそぉぉ、いくら攻撃しても奴にはやはり擦りもしないぞ。これだけ至近距離で打ち込んでいるんだから一発くらいは当たってもいいはずなんだが。やはりレベル90とレベル1とじゃそのレベルの差はいかんともし難いか!」
激しい木刀による攻撃を何度も何度も繰り返すラエルロットの打撃を全て綺麗に躱して見せるエドワードは、床に落ちている聖剣チャームブレードを再度拾い上げると仕方が無いとばかりにその剣先を前へと突き出す。
「少し試してやる。こい、ラエルロットとやら」
「いくぞ、耳長族のエドワード!」
互いに相手の名前を叫び合いながら手に持つ愛用の武器を激しくぶつけ合いつばぜり合いをするラエルロットとエドワードの二人だったが、当然のようにラエルロットの方が押し負けてしまい、何度も何度も吹き飛ばされてはまた果敢にも立ち上がるという動作を繰り返す。
まるで子供の相手をするかのようにその手に持つ長剣を振るうエドワードに対し、ラエルロットは幾度となく吹き飛び、壁にぶつかり、そしてそのまま地面へと倒れ込む醜態を晒す。だがアドレナリンの分泌で興奮状態にあるのか、勝てないと分かってはいても果敢にも何度も挑み続けるラエルロットは、黒い不格好な木刀を前に突き出すと更に闘志を激しく燃やす意気込みを見せる。
エドワードはそんな闘志剥き出しのラエルロットに始めは、弱いのによく頑張るな~程度しか思ってはいなかったが、だんだんその異常性に気づき始めると長剣を振るうスピードも心なしか徐々に早く……そして強くなっていく。
(おのれ、一体どうなっている。高々レベル1の人間のはずなのに、なぜ奴は未だに倒れないんだ。俺が死なないように手を抜いて相手をしているのも当然あるが、それにしても粘り強すぎる。こいつの戦い方は高々レベル1の人間の範囲をとっくに越えているレベルの強さだ。俺の推測では間違いなくレベル三か四はあるはずなんだが、一体どうなっているんだ。それにもう一つ気になる点がある。それは奴が振るっているあの黒い不格好な木刀の事だ。一体あの木刀はどんな代物なんだ。見た感じは黒い艶のある金属のような堅い物でコーティングされた、ただの不格好な木刀なんだが? だがあの黒い不格好な木刀はかなり強い何らかの呪いの加護を受けているそんな極めてやばい代物のようだ。そうその剣はまるで俺が持つ聖剣チャームブレードの類いのような物にも見えなくもないが、あんな強い呪いに掛かった木刀のような代物は今まで見たことが無いから、あれが一体何なのかが全く分からない。でもまあ特にこれと言った害はまだ無さそうだから、もう少しだけこのまま様子を見てみるか。そしてあの聖女もどきの……ツインテールのお嬢ちゃんの能力の秘密がわかったら、この人間族の男にはそのまま気絶をして貰い。当然その後は、天足のアトリエに命令されている通りに、聖女に関わるその機材の破壊とデータの後始末だけはなんとしてでも遂行して置く事にしよう。そして当然その中には偽りの聖女の抹殺も含まれているから、あの黄金色の長い髪を持つ聖女もどきと、ツインテールの髪型をした聖女もどきの二人にはこのままここで速やかに死んでもらう事とする。でもまあ正直に言ってしまえばはっきり言って可哀想だし、まだ死ぬには若すぎる年齢の少女達だが、黒神子に害をなす為に人工的に作られ、人類を外敵から守る為に人のことわりに反して生まれてきた存在なのだから、俺が責任を持って遙か闇なる世界の神様が御座す闇の底へ再び返してやるとするぜ。フフフフ、全く人形とは言え、まだ年端も行かぬ少女達を殺さねばならないとは、これもまさに俺に課せられた因果なのかも知れないな!)
そんな事を心の中で考えていた耳長族の青年エドワードは、内心では果敢にも挑んで来るラエルロットの事をできるだけ殺さないようにと気を遣いながらその長剣を振るう。
その戦いの中で最初から手加減をされていることに気づいたラエルロットは不思議に思いながらも戦いに手を抜く耳長族の青年エドワードに対し怒りの声を上げる。
「ハア、ハア、ハア、ハア、お、おい、これは一体なんの真似だ。無駄に傷つけるばかりでなぜ俺を本気で殺そうとしない。まさか戦士として未熟な俺とは本気で戦うまでも無いと思っているのか。つまりは俺を甘く見て馬鹿にしているのか。もしそうなら許さないぞ。俺にだって弱いまでも戦士としての最低限度のプライドと誇りはあるんだ、だから本気で戦えよ!」
「フフフフ、戦士としての誇りだって、ふざけるな、まだレベル1の未熟者風情に戦いの何かを語る資格は最初からないわ。それにお前、もしかして冒険者の資格すら持ってはいないな。そんな奴が戦いの前線で戦士の真似事をして無謀にも高レベルの俺に迷わず戦いを挑んで来るなど、戦いを馬鹿にしているのはむしろお前の方だ。誇りある上級剣士である俺に、まだ戦士の資格すら無いただの平民を斬らせるつもりか。お前が国や冒険者組合に認められた資格がある戦士なら死を覚悟して挑んでいると見なして誇りある生死を賭けた戦いを挑むのもやぶさかでは無いが、それがただの平民では興ざめという物だ。俺は確かに人を平気であやめる剣士ではあるが、それは単純に上司の命令で仕事だから行っているのであって、別に人を殺すのが趣味の異常者という訳じゃない。だからただの平民である、まだ戦士としての覚悟すらないお前を殺すことは俺の信念とプライドが許さないと言う事だ。なぜなら俺はどんな戦いでも、戦士の資格を持たないただの平民とは殺し合いをした事は一度も無いからだ。分かってもらえたかな!」
「ハア、ハア、ハア、ハア……せ、戦士としての資格だとう……それを俺が持たないと見抜いたから、俺を殺さないのか。くそぉぉ、なめやがって。つまりは俺を敵とも認識すらしてはいないと言う事か。その場にいても特に脅威にはならないとそう言いたいわけだな。とことん舐めてやがる。だ、だが、流石にもう動けん。くそ、くそぉぉ、少し休憩をして、息を整えなくては……ハア、ハア!」
「フフフフ、高々レベル1の平民の分際であんな無理な動きをするからだ。後先考えずにただ闇雲にあんな計画性の無い動きをする事事態がお前がただの素人であると言う事を示している。その戦い方一つを取ってみても未熟さが分かるいい事例だ。そんな不甲斐ない動きしかできないお前はいい加減そこで倒れてへばっていろ。俺が本当に用があるのはお前では無く、そこにいる聖女もどきの少女の方なのだからな!」
「ふ、ふざけるな。俺はまだやれる……まだやれるぞ。お前を……ツインちゃんの元へは絶対にいかせない……行かせるものかあぁぁぁ!」
虚勢を張ってはいるが流石に疲れ果てたのか、ラエルロットは荒い息を吐きながらもつい片膝を床へとついてしまう。
そんなラエルロットの無様な醜態を確認した耳長族の青年エドワードは今度はラエルロットの後ろで警戒をしている言霊の聖女ことツインちゃんにゆっくりと近づく。
「こ、来ないで、来ないで下さい。もしそれ以上近づいたら、その時はあなたの命を確実に奪う死の命令を下します。そんな恐ろしい命令を私に叫ばせないで下さい!」
「面白い、その死の言霊による命令、ぜひ俺に降してみろ。その力が本物か、それともただのはったりかどうかを見届けてやる!」
エドワードの凄みに威圧をされているのか、強がりながらも少しずつ後ずさりをするツインは必死にその場にとどまってはいるが、今にも倒れそうな足取りだ。
泣きそうな顔を見せる聖女ツインの前まで来た耳長族の青年エドワードは、右手に持つ聖剣・チャームブレードを高らかに掲げると、渾身の力をその長剣に込める。
「ではいくぞ、サンプル体の少女。この一太刀、今度はどう止める。この一撃でお前の進化が分かる!」
怯えるツインを煽りながら、エドワードは上段からの兜割りの一撃をそのままツインテールの頭に目がけて振り下ろすが、聖女・ツインの「落とせぇぇ!」という言葉にエドワードは手に持つ長剣をなんの前触れも無く、再び地面へと落としてしまう。
ガッシャン!
「くそ、どんなにしっかりと手に剣を持ち、この娘を切りつけようとしても、その言葉の強制力で無意識にその手を離してしまう。これじゃまともに剣を握る事も、ましてや振り降ろす事もできない。これは物凄く地味だが、中々に手こずる能力ではないか。もしももっと計画的に強い戦士とタックを組んで俺に挑んでいたら、これほど厄介な能力はない事がこれで実証されたな。同レベルの戦士同士での戦いではコンマ一秒の一瞬の隙がそのまま命取りになる。もしも剣によるつばぜり合いの最中にこの言霊の能力を突然発動されたら俺は間違いなく所見で倒されていたかも知れない。俺の今の相手がたまたま未熟なレベル1の人間だったから剣を落としても相手の攻撃を難なく余裕で躱す事ができたと言う事か。ほんと俺は、いろんな意味で付いている耳長族だぜ!」
そう独り言を言ったエドワードは自分の言葉に何かのヒントと疑問が隠されている事に気づく。
(剣によるつばぜり合いだとう……なまじ武器を持っているから剣を落としてしまうのであって、もしも剣を使わなかったら一体どうなるんだ。つまりは素手だったら……彼女の言霊の能力は無効になるんじゃないのか。それ以前に、彼女は先程から『落とせ!』という言葉しかまだ発してはいない。つまりあのお嬢ちゃんは他の言霊は一切使えず、ただ落とせという言霊しか使えないと言う事だ。ならその可能性を実証するためにも俺は敢えて素手で挑まないといけないようだな。災厄読みが外れて、死に至る他の言霊を使ってきたら【天足のアトリエが近くにいない以上】俺の戦いはここで終わってしまうかもしれんが、このまま疑問を長引かせてもなにも始まらないからな。だから俺も覚悟を決めるぜ!)
地面に落ちてある聖剣チャームブレードを再度拾い上げた耳長族の青年エドワードは腰に下げてある鞘にその長剣を綺麗に納めると、覚悟の隠った眼差しをツインに向ける。
「では、お嬢ちゃんの間合いの中に、自らの意思で入っていくとするかな。果たして鬼が出るか蛇が出るか、覚悟の決め時だぜ!」
まるで自分に酔っているかのように堂々と迫る耳長族のエドワードに対し、サンプル体のツインは絶望に打ち震えながらも「もうこれ以上は傍に近づかないで下さい。近づいたら、あなたは本当に死んでしまいますよ。それで本当にいいんですか。もう容赦はしませんよ。本当ですよ!」と必死に言葉を発していたが、当然エドワードの歩みは止まらない。
そうこうしている内にツインちゃんの目の前まで来た耳長族のエドワードは、震えながら後ずさるツインちゃんの額に軽いデコピンを当てると、その難なく触ることの出来た結果に素直に納得をする。
パッシン!
エドワードにしてみたらツインちゃんの言霊による能力が一体どのくらいのバリエーションと応用力に対応できるのかが分からなかったので、死に繋がるダメージを返されないようにと、あえて軽いデコピンでツインちゃんの額を人差し指で優しく弾くが、レベル90とレベル1の差は余りにも大きかったのか、まるで額を弾丸で撃たれたかのように大きく後ろにのけぞると豪快に後頭部から倒れる。
「きゃあぁぁぁぁーーぁぁ!」
ドッサリ!
「言霊の聖女……か、強敵だったぜ!」
額に赤い擦り傷を作りながら気絶をする言霊の聖女・ツインは口元から泡を吐くと、体を小刻みにピクピクと震わせる。
「なんだ、やっぱり素手での接触は通ったじゃないか。デコピンがお嬢ちゃんに当たったと言う事は、俺の読みは正しかったと言う事になる。つまりこのお嬢ちゃんの聖女としての能力は、手に持つ武器を(お嬢ちゃんが放つ一文句の言葉の力だけで)無自覚に手元から落とさせる……ただそれだけの事に特化した能力と言う事になる。しかし一文句の言葉の力しか使えないと言う事は、そのネタが敵側にばれてしまえばもう後が無い一発芸的な能力と言う事だ。故に使いどころが限られていて、かなり厄介で使い勝手が悪く、それでいて地味で下らない応用力の乏しい能力のようだ。そのはずなんだが、しかしこのお嬢ちゃんはこのはったりのような能力を巧みに使い、間違いなく三分は時間を稼いで見せたと言う事になる。そして更には俺の注意を引く為に、黒い不格好な木刀を持つラエルロットが絶えず攻撃をし、無謀にも俺に戦いを挑んで来ている。故に絶対に逃がしてはいけないはずの、あの黄金色の長い髪と白い肌を持つ、麗しの聖女の逃亡を許してしまった。全く、俺の前に無謀にも立ちはだかるラエルロットとツインテールのお嬢ちゃんは、二人共々高々レベル1にも関わらず結構ねばってみせるから正直かなりビックリしたぞ。その機転と勇気はまさに称賛に値する。フフフフ、全く……健気な事だな!」
「やった、やったぜ。なら早くそのツインという生意気そうなそのクソガキを、エドワード様が持つ聖剣チャームブレードで突き殺して下さい。それでここでの任務は完了するのですから。そしてその可笑しな人間の男はここに放置して、そのまま俺達はあの黄金色の髪を持つ聖女の後を追いましょう!」
言霊の聖女・ツインの能力の謎を解明しその術者を見事に打ち負かしたエドワードに、遠くで隠れるように一部始終を見ていた豚人族のドラムが早くツインにとどめを刺すようにと言葉を掛けるが、今の所はまだ聖女・ツインをその長剣で刺し貫く気はないようだ。だがラエルロットからしてみたらまるで死んだかのように仰向けに地面へと倒れているツインの安否がまだ分からないので、その衝撃的な光景を見てしまったラエルロットは血の気の引いた顔をしながらも片膝を突く。
その状態から中々立ち上がる事のできないラエルロットは疲れ切ったボロボロの体を引きずると、再び立ち上がろうと必死にもがく。
「ツインちゃん……無事か……ツインちゃん……返事をしてくれ。今、今助けに行くからな。待っていてくれ。くそぉぉ、動けぇぇ、俺の体よ。頼むから動いてくれぇぇぇ。このままではツインが……ツインの命が、危うくなる。俺が弱いせいで……頼りないせいで……ツインちゃんに怪我をさせてしまった。くそぉぉ、情けない。本当に情けないぜ。俺は……女の子一人守れないのか!」
耳長族の青年エドワードのデコピンによる攻撃を受け、まるで死んだかのように床に仰向けとなり体をピクピクと震わせる聖女・ツインの状態を見たラエルロットは片膝をつく足を動かしながら無理矢理にその体を立たせる。
「うっりゃあああぁぁぁーーぁぁ、俺の体よ、今一度だけ、立てぇぇぇぇぇ!」
このままでは確実に殺されるかも知れない聖女・ツインの厳しい状況に、ラエルロットは直ぐには動く事のできないその体を無理に動かすと、目の前にいるエドワードに向けて叫ぶ。
「そこまでだ。もうこれ以上、ツインちゃんに攻撃は一切させないぞ。俺はサンプル体の少女達全てをこの研究所から出して、外の世界を見せてやると、そう約束したんだ。だからツインちゃんには是が非でも生きてこの研究所から出て貰うぞ。その為にも耳長族のエドワード、お前にサンプル体の少女達を殺させる訳にはいかない。俺は勇者を目指す者として、彼女達を守ると約束したんだから、絶対にお前の目論見は阻止して見せる。たとえどんなに無謀と言われてもこの約束だけは絶対に違える訳にはいかないんだ。人の勝手な欲望と願いで作られたサンプル体の少女達を今度は身勝手にもまた悪意ある人々の都合で理不尽にもその命を奪おうとするとは、その悪業たる残酷な行いを、この事件に関わった俺がただ黙って指を加えて見ていることは絶対にないんだ。そうだ、だからこそ俺を信じて助けを求めてきた彼女達を必ず守ってみせるとそう約束したんだ」
「高々レベル1の平民が、言ってくれる」
「それに、それにだ、サンプル体の少女達は皆、この研究所を出て、まだ見たことの無い太陽を一目見るのが悲願らしいから、その希望ある小さな悲願を無事に達成させる為にも俺はツインちゃんを……いいやサンプル体の少女達全てを必ず守らないといけないんだ。そうだ、もう誰一人として彼女達を死なせはしないぞ!」
「もう誰一人として死なせない……か、中々面白いことを言う偽善者だな。勇者を目指す者だとう、高々レベル1の、まだ冒険者の資格すら無いただのか弱い平民がか。フフフフ、夢を見るのは結構だが、現実たる残酷さをまだ理解してはいないようだな。圧倒的な力の差があるというのにまだその事に気づかないとは筋金入りの偽善者か、恐れを知らないただの馬鹿と言う事なのかな。全く、ここに来て可笑しな人間に遭遇してしまったようだ!」
ラエルロットは耳長族のエドワードに再び攻撃する隙を伺いながらもその間合いを図っていると、今まで気絶をしていた聖女・ツインが息を吹き返したかのようにいきなりうわごとのように話し出す。
「そうだ、そうだよ、私はこんな所で死ぬ訳にはいかないんだ。生きてお外へ出て、お手紙をくれたオリジナルの……本体の少女と、その本当の家族に会いに行くんだ。会って私もあなた達の……本当の家族になりたいという想いを伝えないと。一人の人間になりたいという意思を伝えないと……いけないんだ。私はあの写真入りのお手紙を見て……まだ会った事の無いオリジナルの自分と会って、そして仲良くなりたいと必ず伝えて見せるわ。仲良くなって、そして家族として向かい入れて貰いたい……だから私はこの研究所を絶対生きて、出て行くんだ!」
赤く腫らすおでこをさすりながらけなげにも立ち上がろうとした聖女・ツインに対し、耳長族の青年エドワードは笑いながら残酷な言葉を放つ。
「ハハハハ、偽物でありサンプル体の少女であるお前が、オリジナルの少女と仲良くなるだって。本当の家族として向かい入れて貰うだって、またおかしな事をいう人形だな。ただのホムンクルスでもあるクローン体のお前が本当の人間と仲良くなれる訳がないじゃないか。高々消耗品たる人形風情と仲良くなる人間がこの世にいる訳がないだろ。そのオリジナルの少女はただ単にお前からその命の源とも言うべき七色魔石を取り出したいが為にこの研究所でお前を作って貰ったんだから、お前の価値はただ七色魔石を取り出す為の消耗品となんら変わらないと言う事にもういい加減に気づけよな!
「おい、やめろ……」
「その血も涙も無い家族達と仲良くなりたいだって……家族として受け入れてもらいたいだって……笑わせるな、聖女になりたいが為に他の命をないがしろにする人物が、人のことわりを無視してその欲望のために人ならざる者になろうとする者がお前の想いなど汲み取ってくれる訳がないだろ。その貰ったとされる写真入りの手紙だってお前に対する罪悪感から送った物だろ。お前にその心地良い希望に満ちたきれい事を語ることで自分の罪悪感をただ消したかったのだろうぜ!」
「もういい、もう喋るな……」
「そしてその思いが本物では無いことはお前に一切会いに来ないことが、その事実が、その現実が証明している。つまりそのオリジナルの少女は、いいやその家族達は、お前に対するかわいそうという罪の意識はあったとしても念願の聖女になるためにお前の死を常に願っていると言う事だ。人間は家畜の肉を食べるが、その家畜に済まないという気持ちはあっても、その食べるはずの家畜にはまず絶対に会いには来ないだろ、もしも会ってしまったらそこから罪悪感が生まれてしまうからだ。それと同じだ。つまりそのオリジナルの家族達にとってお前は、家畜以下の民芸品レベルの存在だと言う事だ!」
「やめろ、やめてくれ。そんな事を言われたら、その日を楽しみに生きてきたツインちゃんの心が壊れてしまう……だからやめるんだ!」
「そんな血も涙も無い鬼のような奴らに愛情を抱くなど滑稽だし言語道断だぜ。恨みこそすれ愛情を持って接する価値はその家族もどきには最初から無いと俺は思うがな。だからそのようなありもしない幻想は、希望は抱かない方がいいと思うぜ。正直見ていて痛々しいわ!」
「おい、いい加減にしろ!」
ラエルロットの制止も聞かずに自分が思っている事を素直にぶつける耳長族の青年エドワードは厳しく小馬鹿にしたような事を言いながらもどこか悲しげに聖女・ツインの顔を見るが、そんな対照的な二人の言動にめげること無く聖女・ツインははっきりとした口調で言う。
「ええ、もしかしたらそうなのかも知れない……私は誰にも愛される事のないただのいらない存在なのかも知れない。でも……それでも……それでも……私はその僅かな望みを、希望を信じて外へと出るわ。そしてもしもそのオリジナルの家族達に会う事ができたら私は心を込めて言ってやるの。私はあなた達を恨んではいないって……愛しているって……だからその私の一方的な思いだけは本物だと言う事を、是非ともその家族に届けたいの。もしかしたらただの迷惑かも知れないけど、嫌われているのかも知れないけど……言うだけならただだから別にいいですよね。だってこの世に生を受けて以来、初めてそのオリジナルの家族からお手紙と写真を貰った時、私は本当に嬉しかったんだから。だからこの想いを届けに行くの。ただ純粋に想いを伝えたいの。この想いこそが今の私の生きる意味であり、渇望であり、そして希望なのだから!」
「生きる意味か……それが分かっていて、あえて会いに行こうとしているのか。その先には落胆と絶望しか待ってはいないと言うのに……その事実をあえて自ら受け止めに行くと言うのだな。ハハハハ、なるほどな、案外お前がもしもそのオリジナルの家族達と会うことができたら、お前のその純粋な思いを知ったその家族達は一体どんな顔をするのか見物ではあるかな。お前のその純粋な愛が、思いが、まるで合せ鏡となってその醜き心を持つ者達の姿を嫌でも垣間見る事になるだろうぜ。お前にその気は無くとも、その家族はお前に会った事でその罪悪感から、もしかしたら一生苦しむ事になるかも知れないな。そんな想いを直接聞いてしまったら、普通の心ある人間ならまず後悔は避けられないだろうからな」
「私に会ったらそのオリジナルの家族達は傷付きますか。悩みますか。私としては彼らを傷つける気は全くないのですが。ただ私は、私という存在を作る為に多額の資金を出してくれたオリジナルの少女の家族達や……サンプル体の仲間達や、テファお姉様や、ラエルロットのお兄さんや、蛾の妖精のルナさんや、ミランシェさんに会わせてくれて、ありがとうと伝えたいだけなのに」
純粋かつ強い、その思いを知った耳長族のエドワードは心の底から笑いながらも、そのどこか優しげな笑みをツインという少女に向ける。
「ハハハハ、面白いなお前、それにいい覚悟だ。お前は見かけによらず強い少女のようだな。少しお前に対する認識を改めないとな。Cランクの力を持つ聖女との話だが、その精神力はもう既にAランクの聖女に匹敵するほどの強い慈愛と希望の力を持つ少女である事を実感するよ。しかも辛い出来事や困難を乗り越える事のできる強い意思と勇気も併せ持っている。面白い、お前は中々に面白いぞ!」
「耳長族のエドワードさん?」
「そんなお前ら二人は果敢にも俺に挑み、りっばに三分という時間を越えて約五分間時間を見事に稼いで見せたではないか。にも関わらずだ、あの黄金色の長い髪を持つ聖女はどうやら一人で逃げ去ってしまったようだな。三分間だけ時間を稼いでくれとか言って地下の下水道に降りたはずだが、五分経っても未だにその姿を見せはしないではないか。と言う事はお前達……二人を囮にして、あの特Aランクの聖女は、近くにいたあの蛾の妖精と共に下水道から遠くに逃げ去ったと考えるのが普通だろう。まあ極めて稀で特殊な力を持つ特Aランクの聖女がその安全性を保つために、使えないCランクの聖女とただの平民の為に命を賭けて戦う事は合理的に考えてあえて避けたのかもな。つまりはお前達二人の命よりも特Aランクの聖女の存在価値の方が明らかに上だからな、これからの世界に対する貢献度を考えて、あえて逃げたのも頷ける。賢明な判断だ。あの聖女はこの俺が持つ聖剣チャームブレードの特質した力にどうやら気づいていた節があるからな。なら逃げて当然と言った所か。この剣の前ではたとえどんな力を持つ聖女でも切られたら、その自我を保つことはまずできないのだからな!」
「聖剣・チャームブレードだとう……まさかお前は、十二人いる黒神子の中の一人の眷属だとでもいうのか?」
「さあ、それはどうかな。別に黒神子の眷属じゃなくとも、あらゆる召喚術で召喚した悪魔や魔神との契約や、隠しダンジョン内でのボス戦討伐の際の宝物の一つの品として、探(非常に困難ではあるが)聖剣や魔剣といった類いの法具の入手は可能だろ。どこかで聞いた話では、俺が持つこの聖剣チャームブレードはどうやらこの世界には複数存在するという噂だ。だから黒神子の眷属だけが持つ唯一無二の法具では決して無いのだよ。わかっていただけたかな」
「マジかよ、そんな危険極まりない聖剣が複数存在するだけでは無く、その気になったらどこかで手に入れる事も可能なのかよ。そんな話しは初めて聞いたが」
そんな話をラエルロットと耳長族のエドワードがする中で、怒りに満ちた表情で立ち上がる聖女・ツインがその視線をエドワードに向ける。
「耳長族のエドワードさん、今のお姉様への侮辱の言葉を撤回して下さい。テファお姉様はどんな事になっても私達を見捨てて逃げたりはしないわ。お姉様はただ優しいだけでは無く、とても頭のいい賢い人なんですから、きっとあなたに打ち勝つ対策を考えているはずです」
「ふふふふ、そんな対策がある訳がないだろ。俺はレベル90の身体能力を持つ最強の魅惑の剣士・耳長族のエドワードだぞ。そんな俺にそのテファとかいう聖女が(身体的に)勝てる訳があるまい。彼女がいくら特Aランクの聖女でもその身体能力のレベルは恐らくはレベル1だからな。特別な訓練を受けているならそのレベルを上げた状態で聖女になることも可能らしいが、先程パッと見た所彼女のレベルはやはりレベル1だったからその力は普通の小娘となんら変わらないと言う事だ。となればやはり彼女もまた自らの聖女の力に頼った戦い方をすると思われるが、その時は彼女が聖女の力を発動するよりも早く動いて、その首を切り飛ばしてやるよ。まあ、それが所見でできなかったその時は、あの神聖・白百合剣魔団に所属をしていたAランク聖女にして超重力使いのミレーヌと呼ばれていたあの少女を倒した時のように、また人質を取って、そのテファとかいう聖女もこの聖剣チャームブレードの毒牙に掛けてやるとしよう。俺は自分の任務を遂行する為だったら手段は選ばないからな!」
「お姉様は来る、絶対に来るわ。そしてそんな邪な考えでその長剣を振るうあなたにお姉様は絶対に倒せないわ!」
「ハハハハ、大した信頼関係だな。なら先にお前がこの聖剣チャームブレードの毒牙に掛ってみるか。この剣でお前を殺してから復活させて、そのお前にそのお姉様とやらの寝首を掻かせるのも一興かもしれんな。信じていたお前に後ろを取られる、そのお姉様の顔が目に浮かぶぜ!」
「この外道が、私に近づかないで!」
「くそぉぉ、エドワード、ツインちゃんに近づくな。まずは俺を倒してからにしろ!」
「ラエルロット、もうお前はお呼びじゃないぞ。弱いんだし、いい加減大人しく寝ていろよ」
聖女・ツインを守る為に素早く前へと突進を噛ますラエルロットに耳長族のエドワードは大きく溜息を付くと素手での攻撃に移ろうと構えるが、そんな三人の耳にうら若い女性の声が飛ぶ。
「遅くなってすいません。大変長くお待たせしました。ラエルロットさん、99754番のツインちゃん、よく耐えて頑張りましたね。ここからは二人に代わって私がこの耳長族の剣士のお相手をしますから、二人は下がって下さい!」
そこに現れたのは下水道に繋がる地下階段から一人で現れた95657番のサンプル体こと、暁の聖女・テファその人である。
テファは周りの状況を確認すると、ゆっくりとその視線を耳長族の青年エドワードに向ける。
「随分お二人を痛めつけてくれましたね。この償いは受けてもらいますよ。耳長族の剣士さん」
「ついに現れたか。逃げずによく再びここに戻ってきたな。お人好しのお優しい聖女は俺には絶対に勝てないという事を、その命を対価に厳しい現実を教えてやるぜ。それにどうやら下に降りたという仲間は見つからなかったようだな。もしかして一人で逃げてしまったのかな……それとも仲間のあの蛾の妖精が代わりにその仲間とやらを今も必死に探しているのかな? まあいずれにしてもだ、一人でのこのこと俺の前に現れた事を今すぐに後悔させてやるぜ!」
白い衣をなびかせながら目の前に立つ暁の聖女・テファに対し睨みを効かせる耳長族のエドワードは、近くにいるラエルロットと聖女・ツインを物凄いスピードであっという間に床へと叩き落とすと、なにも抵抗が出来ずに倒れるラエルロットとツインの二人に、腰から抜いた聖剣チャームブレードの刃先を突きつける。
「動くな、そこから少しでも動いたり、能力を発動させるポーズを取ったらこの二人を殺すぜ!」
とお決まりのえげつない台詞を言ってのける。
ここに圧倒的な力で人質を取る耳長族のエドワードと、今現在絶体絶命の危機を迎えている暁の聖女・テファとの戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
困惑した顔をしながら長剣を持っていたはずの右手を見つめるエドワードに対し、その隙を見逃さなかったラエルロットは隙ありとばかりに果敢にも黒い不格好な木刀を振り回すがその攻撃を全て寸前の所で軽々と避けて見せる。
それでも猛然と迫るラエルロットの攻撃に少し無気になった耳長族のエドワードは、近づくラエルロットの胸の辺りを目がけて軽い掌底打ちを喰らわせると、今自分に起きているある一つの謎について考えを口走る。
「こ、これは、一体どういうことだ。どうなっている。俺は剣をしっかりと持っていたはずなのに、いつの間にか長剣を落としてしまっていた。しかも一度ならず二度までもだ。もしかして俺が剣を落としたその訳は……その要因は……ツインテールの髪型をしたお嬢ちゃん、これはもしかしてお前の仕業か。お前はまさか、強い思いによる一つの言葉を発する事で、その言葉になぞらえた通りの結果を生み出す事のできる言霊のような能力を使える、と言う事なのか。だとしたならば、これはかなり厄介な能力だぞ。その言葉による能力範囲や命令ができる言葉の種類は未だに謎だが、もしもその言葉の強制威力に決してあらがうことのできない絶対的な命令権があるのだとしたら、この聖女はかなり強い神聖力を持つ聖女と言う事になる。だが今も尚恐怖に震える小心な少女が、そんな強い力を持つ聖女では当然ないはずだ。なぜならこの少女は自分のことをCランクの聖女だと言って自信なさげに自分を卑下していたからだ。と言う事はそれは即ち、あの少女が放つその言葉には、それ程強い絶対命令権は無いと言う事を意味している。そうだろう、お嬢ちゃん!」
疑問と疑惑の目を向ける耳長族の青年エドワードに対し、今尚頑なな態度を崩さないサンプル体の少女・ツインは、その思いをなにも言わない沈黙と言う名の否定で返す。
だが実の所はエドワードの推測はほぼ外れてはおらず、その分析は的を得ていた。
Cランクの言霊の聖女・ツインの能力は、強い言葉の強制力で、声を掛けた相手を言葉の通りに、一瞬だけ意のままに操る事ができるという微妙な能力だ。その能力の全貌に迫れないからこそエドワードは自分の考えに確信が持てず、目の前にいる少女ツインに言葉による揺さぶりを掛けているのだ。
少し離れた通路の壁には今し方耳長族のエドワードの素手から繰り出された掌底によってラエルロットが吹き飛び、そのまま壁へと激突して数秒ほど体の痛みで悶絶していたが、直に立ち上がり攻撃態勢を取る。
手を抜いていたとはいえ結構早くに復活したラエルロットを見たエドワードは、このまま戦いを長引かせて、このCランクの聖女と共闘させるのはちょっと不味いと本気で考える。
なのでなんとしてでもサンプル体の少女・ツインから言霊による能力についての情報を引き出したいエドワードは、数少ない表情と言動から突破口を探ろうと更に話を続ける。
「なんだ、だんまりかよ。人がせっかく質問をしているのに何か話してくれないと話が進まないだろ。大体お嬢ちゃんのあの『落とせ』という言葉が聞こえたのと同時に俺は自分の長剣を落としてしまったんだから、その謎と疑問について説明をしてくれないとフェアじゃないだろ」
耳長族のエドワードのフェアと言う言葉にだんまりを続けていたツインだったが、少しムッとしたのか、気難しい顔をしながらいきなり話し出す。
「ふ、フェアって、あなたがそれを言いますか。大体あなたが、女子供しかいない私達と戦おうとしている時点でもうフェアなんかじゃないじゃないですか。レベル90の超絶に強い反則級の剣士がレベル1の私達に戦いを挑んできた時点でこの戦いはもう既に一方的で、理不尽すぎます。そんなあなたに卑怯呼ばわりされたくはないです!」
「クククク、やっと話をしてくれたか。そうだ、そうでなくてはCランクの聖女としての威厳と誇りが示せなくなるだろ。いくら下級ランクとはいえ誇り高い聖女である事に変わりは無いのだからな。確かに俺はお前らの遙か先を行く超絶に強い剣士だが、まだ聖女としての能力を隠し持っているお前もまた特別な存在だろ。もしもお嬢ちゃんが使うその能力がこの俺を御する事のできる能力なら、もうそんな余裕めいた事は言っていられなくなるからな。だから聞いているのだよ」
「聖女の命を狙っているくせに、何を勝手な事を……」
「そんな中でも、だんまりを決めて中々自分の能力の事を明かさないお前だが、この戦いの中でお前は二回もあの冴えない平民の剣士もどきの事を救っている。お前が見せたあの能力が俺が推測している予想の物なら、まさに初見殺しとも言えるトリッキーな能力だ。だがその言霊には術を発動し相手を確実に罠へと嵌める特別な条件と制限が必ずあるはずだ。もしもそうでなかったら俺はもうとっくの昔にその言葉による命令を受けて攻撃されているはずだからだ。それが未だに無いと言う事は俺を殺すに至る命令を出せない訳があると考えるのが普通だ。だがそれでもお嬢ちゃんの言霊の能力にはまだ俺が知らない謎の多い部分があるだろうから武器の使用は……真剣による攻撃はやめておく事としよう。まずはお嬢ちゃんとの間合いを取りながら一歩ずつ近づいて、相手の出方を探って見るか」
エドワードの「まずは近づいて、相手の出方を探ってみるか」という言葉に一瞬不安と焦りの表情を見せたサンプル体の少女・ツインは、一歩・二歩と後ろへと後退する。
だが、その僅かな心の動きを見逃さなかったエドワードはツインの言霊には必ず何らかの狭い制限がある事に気づき、その疑問を確信へと変える。そしてその確信がツインの真実であり、今まさに必死に隠している事だ。
エドワードはその事実を証明しようと、その答え合わせをする為に、まずは目の前に立ちはだかる邪魔なラエルロットをどうにかしようと渋々動き出す。
そんな策謀を巡らす耳長族のエドワードに対しラエルロットは何も考えること無く、シンプルに、そしてただ夢中に戦いを挑み続ける。
「くそぉぉ、いくら攻撃しても奴にはやはり擦りもしないぞ。これだけ至近距離で打ち込んでいるんだから一発くらいは当たってもいいはずなんだが。やはりレベル90とレベル1とじゃそのレベルの差はいかんともし難いか!」
激しい木刀による攻撃を何度も何度も繰り返すラエルロットの打撃を全て綺麗に躱して見せるエドワードは、床に落ちている聖剣チャームブレードを再度拾い上げると仕方が無いとばかりにその剣先を前へと突き出す。
「少し試してやる。こい、ラエルロットとやら」
「いくぞ、耳長族のエドワード!」
互いに相手の名前を叫び合いながら手に持つ愛用の武器を激しくぶつけ合いつばぜり合いをするラエルロットとエドワードの二人だったが、当然のようにラエルロットの方が押し負けてしまい、何度も何度も吹き飛ばされてはまた果敢にも立ち上がるという動作を繰り返す。
まるで子供の相手をするかのようにその手に持つ長剣を振るうエドワードに対し、ラエルロットは幾度となく吹き飛び、壁にぶつかり、そしてそのまま地面へと倒れ込む醜態を晒す。だがアドレナリンの分泌で興奮状態にあるのか、勝てないと分かってはいても果敢にも何度も挑み続けるラエルロットは、黒い不格好な木刀を前に突き出すと更に闘志を激しく燃やす意気込みを見せる。
エドワードはそんな闘志剥き出しのラエルロットに始めは、弱いのによく頑張るな~程度しか思ってはいなかったが、だんだんその異常性に気づき始めると長剣を振るうスピードも心なしか徐々に早く……そして強くなっていく。
(おのれ、一体どうなっている。高々レベル1の人間のはずなのに、なぜ奴は未だに倒れないんだ。俺が死なないように手を抜いて相手をしているのも当然あるが、それにしても粘り強すぎる。こいつの戦い方は高々レベル1の人間の範囲をとっくに越えているレベルの強さだ。俺の推測では間違いなくレベル三か四はあるはずなんだが、一体どうなっているんだ。それにもう一つ気になる点がある。それは奴が振るっているあの黒い不格好な木刀の事だ。一体あの木刀はどんな代物なんだ。見た感じは黒い艶のある金属のような堅い物でコーティングされた、ただの不格好な木刀なんだが? だがあの黒い不格好な木刀はかなり強い何らかの呪いの加護を受けているそんな極めてやばい代物のようだ。そうその剣はまるで俺が持つ聖剣チャームブレードの類いのような物にも見えなくもないが、あんな強い呪いに掛かった木刀のような代物は今まで見たことが無いから、あれが一体何なのかが全く分からない。でもまあ特にこれと言った害はまだ無さそうだから、もう少しだけこのまま様子を見てみるか。そしてあの聖女もどきの……ツインテールのお嬢ちゃんの能力の秘密がわかったら、この人間族の男にはそのまま気絶をして貰い。当然その後は、天足のアトリエに命令されている通りに、聖女に関わるその機材の破壊とデータの後始末だけはなんとしてでも遂行して置く事にしよう。そして当然その中には偽りの聖女の抹殺も含まれているから、あの黄金色の長い髪を持つ聖女もどきと、ツインテールの髪型をした聖女もどきの二人にはこのままここで速やかに死んでもらう事とする。でもまあ正直に言ってしまえばはっきり言って可哀想だし、まだ死ぬには若すぎる年齢の少女達だが、黒神子に害をなす為に人工的に作られ、人類を外敵から守る為に人のことわりに反して生まれてきた存在なのだから、俺が責任を持って遙か闇なる世界の神様が御座す闇の底へ再び返してやるとするぜ。フフフフ、全く人形とは言え、まだ年端も行かぬ少女達を殺さねばならないとは、これもまさに俺に課せられた因果なのかも知れないな!)
そんな事を心の中で考えていた耳長族の青年エドワードは、内心では果敢にも挑んで来るラエルロットの事をできるだけ殺さないようにと気を遣いながらその長剣を振るう。
その戦いの中で最初から手加減をされていることに気づいたラエルロットは不思議に思いながらも戦いに手を抜く耳長族の青年エドワードに対し怒りの声を上げる。
「ハア、ハア、ハア、ハア、お、おい、これは一体なんの真似だ。無駄に傷つけるばかりでなぜ俺を本気で殺そうとしない。まさか戦士として未熟な俺とは本気で戦うまでも無いと思っているのか。つまりは俺を甘く見て馬鹿にしているのか。もしそうなら許さないぞ。俺にだって弱いまでも戦士としての最低限度のプライドと誇りはあるんだ、だから本気で戦えよ!」
「フフフフ、戦士としての誇りだって、ふざけるな、まだレベル1の未熟者風情に戦いの何かを語る資格は最初からないわ。それにお前、もしかして冒険者の資格すら持ってはいないな。そんな奴が戦いの前線で戦士の真似事をして無謀にも高レベルの俺に迷わず戦いを挑んで来るなど、戦いを馬鹿にしているのはむしろお前の方だ。誇りある上級剣士である俺に、まだ戦士の資格すら無いただの平民を斬らせるつもりか。お前が国や冒険者組合に認められた資格がある戦士なら死を覚悟して挑んでいると見なして誇りある生死を賭けた戦いを挑むのもやぶさかでは無いが、それがただの平民では興ざめという物だ。俺は確かに人を平気であやめる剣士ではあるが、それは単純に上司の命令で仕事だから行っているのであって、別に人を殺すのが趣味の異常者という訳じゃない。だからただの平民である、まだ戦士としての覚悟すらないお前を殺すことは俺の信念とプライドが許さないと言う事だ。なぜなら俺はどんな戦いでも、戦士の資格を持たないただの平民とは殺し合いをした事は一度も無いからだ。分かってもらえたかな!」
「ハア、ハア、ハア、ハア……せ、戦士としての資格だとう……それを俺が持たないと見抜いたから、俺を殺さないのか。くそぉぉ、なめやがって。つまりは俺を敵とも認識すらしてはいないと言う事か。その場にいても特に脅威にはならないとそう言いたいわけだな。とことん舐めてやがる。だ、だが、流石にもう動けん。くそ、くそぉぉ、少し休憩をして、息を整えなくては……ハア、ハア!」
「フフフフ、高々レベル1の平民の分際であんな無理な動きをするからだ。後先考えずにただ闇雲にあんな計画性の無い動きをする事事態がお前がただの素人であると言う事を示している。その戦い方一つを取ってみても未熟さが分かるいい事例だ。そんな不甲斐ない動きしかできないお前はいい加減そこで倒れてへばっていろ。俺が本当に用があるのはお前では無く、そこにいる聖女もどきの少女の方なのだからな!」
「ふ、ふざけるな。俺はまだやれる……まだやれるぞ。お前を……ツインちゃんの元へは絶対にいかせない……行かせるものかあぁぁぁ!」
虚勢を張ってはいるが流石に疲れ果てたのか、ラエルロットは荒い息を吐きながらもつい片膝を床へとついてしまう。
そんなラエルロットの無様な醜態を確認した耳長族の青年エドワードは今度はラエルロットの後ろで警戒をしている言霊の聖女ことツインちゃんにゆっくりと近づく。
「こ、来ないで、来ないで下さい。もしそれ以上近づいたら、その時はあなたの命を確実に奪う死の命令を下します。そんな恐ろしい命令を私に叫ばせないで下さい!」
「面白い、その死の言霊による命令、ぜひ俺に降してみろ。その力が本物か、それともただのはったりかどうかを見届けてやる!」
エドワードの凄みに威圧をされているのか、強がりながらも少しずつ後ずさりをするツインは必死にその場にとどまってはいるが、今にも倒れそうな足取りだ。
泣きそうな顔を見せる聖女ツインの前まで来た耳長族の青年エドワードは、右手に持つ聖剣・チャームブレードを高らかに掲げると、渾身の力をその長剣に込める。
「ではいくぞ、サンプル体の少女。この一太刀、今度はどう止める。この一撃でお前の進化が分かる!」
怯えるツインを煽りながら、エドワードは上段からの兜割りの一撃をそのままツインテールの頭に目がけて振り下ろすが、聖女・ツインの「落とせぇぇ!」という言葉にエドワードは手に持つ長剣をなんの前触れも無く、再び地面へと落としてしまう。
ガッシャン!
「くそ、どんなにしっかりと手に剣を持ち、この娘を切りつけようとしても、その言葉の強制力で無意識にその手を離してしまう。これじゃまともに剣を握る事も、ましてや振り降ろす事もできない。これは物凄く地味だが、中々に手こずる能力ではないか。もしももっと計画的に強い戦士とタックを組んで俺に挑んでいたら、これほど厄介な能力はない事がこれで実証されたな。同レベルの戦士同士での戦いではコンマ一秒の一瞬の隙がそのまま命取りになる。もしも剣によるつばぜり合いの最中にこの言霊の能力を突然発動されたら俺は間違いなく所見で倒されていたかも知れない。俺の今の相手がたまたま未熟なレベル1の人間だったから剣を落としても相手の攻撃を難なく余裕で躱す事ができたと言う事か。ほんと俺は、いろんな意味で付いている耳長族だぜ!」
そう独り言を言ったエドワードは自分の言葉に何かのヒントと疑問が隠されている事に気づく。
(剣によるつばぜり合いだとう……なまじ武器を持っているから剣を落としてしまうのであって、もしも剣を使わなかったら一体どうなるんだ。つまりは素手だったら……彼女の言霊の能力は無効になるんじゃないのか。それ以前に、彼女は先程から『落とせ!』という言葉しかまだ発してはいない。つまりあのお嬢ちゃんは他の言霊は一切使えず、ただ落とせという言霊しか使えないと言う事だ。ならその可能性を実証するためにも俺は敢えて素手で挑まないといけないようだな。災厄読みが外れて、死に至る他の言霊を使ってきたら【天足のアトリエが近くにいない以上】俺の戦いはここで終わってしまうかもしれんが、このまま疑問を長引かせてもなにも始まらないからな。だから俺も覚悟を決めるぜ!)
地面に落ちてある聖剣チャームブレードを再度拾い上げた耳長族の青年エドワードは腰に下げてある鞘にその長剣を綺麗に納めると、覚悟の隠った眼差しをツインに向ける。
「では、お嬢ちゃんの間合いの中に、自らの意思で入っていくとするかな。果たして鬼が出るか蛇が出るか、覚悟の決め時だぜ!」
まるで自分に酔っているかのように堂々と迫る耳長族のエドワードに対し、サンプル体のツインは絶望に打ち震えながらも「もうこれ以上は傍に近づかないで下さい。近づいたら、あなたは本当に死んでしまいますよ。それで本当にいいんですか。もう容赦はしませんよ。本当ですよ!」と必死に言葉を発していたが、当然エドワードの歩みは止まらない。
そうこうしている内にツインちゃんの目の前まで来た耳長族のエドワードは、震えながら後ずさるツインちゃんの額に軽いデコピンを当てると、その難なく触ることの出来た結果に素直に納得をする。
パッシン!
エドワードにしてみたらツインちゃんの言霊による能力が一体どのくらいのバリエーションと応用力に対応できるのかが分からなかったので、死に繋がるダメージを返されないようにと、あえて軽いデコピンでツインちゃんの額を人差し指で優しく弾くが、レベル90とレベル1の差は余りにも大きかったのか、まるで額を弾丸で撃たれたかのように大きく後ろにのけぞると豪快に後頭部から倒れる。
「きゃあぁぁぁぁーーぁぁ!」
ドッサリ!
「言霊の聖女……か、強敵だったぜ!」
額に赤い擦り傷を作りながら気絶をする言霊の聖女・ツインは口元から泡を吐くと、体を小刻みにピクピクと震わせる。
「なんだ、やっぱり素手での接触は通ったじゃないか。デコピンがお嬢ちゃんに当たったと言う事は、俺の読みは正しかったと言う事になる。つまりこのお嬢ちゃんの聖女としての能力は、手に持つ武器を(お嬢ちゃんが放つ一文句の言葉の力だけで)無自覚に手元から落とさせる……ただそれだけの事に特化した能力と言う事になる。しかし一文句の言葉の力しか使えないと言う事は、そのネタが敵側にばれてしまえばもう後が無い一発芸的な能力と言う事だ。故に使いどころが限られていて、かなり厄介で使い勝手が悪く、それでいて地味で下らない応用力の乏しい能力のようだ。そのはずなんだが、しかしこのお嬢ちゃんはこのはったりのような能力を巧みに使い、間違いなく三分は時間を稼いで見せたと言う事になる。そして更には俺の注意を引く為に、黒い不格好な木刀を持つラエルロットが絶えず攻撃をし、無謀にも俺に戦いを挑んで来ている。故に絶対に逃がしてはいけないはずの、あの黄金色の長い髪と白い肌を持つ、麗しの聖女の逃亡を許してしまった。全く、俺の前に無謀にも立ちはだかるラエルロットとツインテールのお嬢ちゃんは、二人共々高々レベル1にも関わらず結構ねばってみせるから正直かなりビックリしたぞ。その機転と勇気はまさに称賛に値する。フフフフ、全く……健気な事だな!」
「やった、やったぜ。なら早くそのツインという生意気そうなそのクソガキを、エドワード様が持つ聖剣チャームブレードで突き殺して下さい。それでここでの任務は完了するのですから。そしてその可笑しな人間の男はここに放置して、そのまま俺達はあの黄金色の髪を持つ聖女の後を追いましょう!」
言霊の聖女・ツインの能力の謎を解明しその術者を見事に打ち負かしたエドワードに、遠くで隠れるように一部始終を見ていた豚人族のドラムが早くツインにとどめを刺すようにと言葉を掛けるが、今の所はまだ聖女・ツインをその長剣で刺し貫く気はないようだ。だがラエルロットからしてみたらまるで死んだかのように仰向けに地面へと倒れているツインの安否がまだ分からないので、その衝撃的な光景を見てしまったラエルロットは血の気の引いた顔をしながらも片膝を突く。
その状態から中々立ち上がる事のできないラエルロットは疲れ切ったボロボロの体を引きずると、再び立ち上がろうと必死にもがく。
「ツインちゃん……無事か……ツインちゃん……返事をしてくれ。今、今助けに行くからな。待っていてくれ。くそぉぉ、動けぇぇ、俺の体よ。頼むから動いてくれぇぇぇ。このままではツインが……ツインの命が、危うくなる。俺が弱いせいで……頼りないせいで……ツインちゃんに怪我をさせてしまった。くそぉぉ、情けない。本当に情けないぜ。俺は……女の子一人守れないのか!」
耳長族の青年エドワードのデコピンによる攻撃を受け、まるで死んだかのように床に仰向けとなり体をピクピクと震わせる聖女・ツインの状態を見たラエルロットは片膝をつく足を動かしながら無理矢理にその体を立たせる。
「うっりゃあああぁぁぁーーぁぁ、俺の体よ、今一度だけ、立てぇぇぇぇぇ!」
このままでは確実に殺されるかも知れない聖女・ツインの厳しい状況に、ラエルロットは直ぐには動く事のできないその体を無理に動かすと、目の前にいるエドワードに向けて叫ぶ。
「そこまでだ。もうこれ以上、ツインちゃんに攻撃は一切させないぞ。俺はサンプル体の少女達全てをこの研究所から出して、外の世界を見せてやると、そう約束したんだ。だからツインちゃんには是が非でも生きてこの研究所から出て貰うぞ。その為にも耳長族のエドワード、お前にサンプル体の少女達を殺させる訳にはいかない。俺は勇者を目指す者として、彼女達を守ると約束したんだから、絶対にお前の目論見は阻止して見せる。たとえどんなに無謀と言われてもこの約束だけは絶対に違える訳にはいかないんだ。人の勝手な欲望と願いで作られたサンプル体の少女達を今度は身勝手にもまた悪意ある人々の都合で理不尽にもその命を奪おうとするとは、その悪業たる残酷な行いを、この事件に関わった俺がただ黙って指を加えて見ていることは絶対にないんだ。そうだ、だからこそ俺を信じて助けを求めてきた彼女達を必ず守ってみせるとそう約束したんだ」
「高々レベル1の平民が、言ってくれる」
「それに、それにだ、サンプル体の少女達は皆、この研究所を出て、まだ見たことの無い太陽を一目見るのが悲願らしいから、その希望ある小さな悲願を無事に達成させる為にも俺はツインちゃんを……いいやサンプル体の少女達全てを必ず守らないといけないんだ。そうだ、もう誰一人として彼女達を死なせはしないぞ!」
「もう誰一人として死なせない……か、中々面白いことを言う偽善者だな。勇者を目指す者だとう、高々レベル1の、まだ冒険者の資格すら無いただのか弱い平民がか。フフフフ、夢を見るのは結構だが、現実たる残酷さをまだ理解してはいないようだな。圧倒的な力の差があるというのにまだその事に気づかないとは筋金入りの偽善者か、恐れを知らないただの馬鹿と言う事なのかな。全く、ここに来て可笑しな人間に遭遇してしまったようだ!」
ラエルロットは耳長族のエドワードに再び攻撃する隙を伺いながらもその間合いを図っていると、今まで気絶をしていた聖女・ツインが息を吹き返したかのようにいきなりうわごとのように話し出す。
「そうだ、そうだよ、私はこんな所で死ぬ訳にはいかないんだ。生きてお外へ出て、お手紙をくれたオリジナルの……本体の少女と、その本当の家族に会いに行くんだ。会って私もあなた達の……本当の家族になりたいという想いを伝えないと。一人の人間になりたいという意思を伝えないと……いけないんだ。私はあの写真入りのお手紙を見て……まだ会った事の無いオリジナルの自分と会って、そして仲良くなりたいと必ず伝えて見せるわ。仲良くなって、そして家族として向かい入れて貰いたい……だから私はこの研究所を絶対生きて、出て行くんだ!」
赤く腫らすおでこをさすりながらけなげにも立ち上がろうとした聖女・ツインに対し、耳長族の青年エドワードは笑いながら残酷な言葉を放つ。
「ハハハハ、偽物でありサンプル体の少女であるお前が、オリジナルの少女と仲良くなるだって。本当の家族として向かい入れて貰うだって、またおかしな事をいう人形だな。ただのホムンクルスでもあるクローン体のお前が本当の人間と仲良くなれる訳がないじゃないか。高々消耗品たる人形風情と仲良くなる人間がこの世にいる訳がないだろ。そのオリジナルの少女はただ単にお前からその命の源とも言うべき七色魔石を取り出したいが為にこの研究所でお前を作って貰ったんだから、お前の価値はただ七色魔石を取り出す為の消耗品となんら変わらないと言う事にもういい加減に気づけよな!
「おい、やめろ……」
「その血も涙も無い家族達と仲良くなりたいだって……家族として受け入れてもらいたいだって……笑わせるな、聖女になりたいが為に他の命をないがしろにする人物が、人のことわりを無視してその欲望のために人ならざる者になろうとする者がお前の想いなど汲み取ってくれる訳がないだろ。その貰ったとされる写真入りの手紙だってお前に対する罪悪感から送った物だろ。お前にその心地良い希望に満ちたきれい事を語ることで自分の罪悪感をただ消したかったのだろうぜ!」
「もういい、もう喋るな……」
「そしてその思いが本物では無いことはお前に一切会いに来ないことが、その事実が、その現実が証明している。つまりそのオリジナルの少女は、いいやその家族達は、お前に対するかわいそうという罪の意識はあったとしても念願の聖女になるためにお前の死を常に願っていると言う事だ。人間は家畜の肉を食べるが、その家畜に済まないという気持ちはあっても、その食べるはずの家畜にはまず絶対に会いには来ないだろ、もしも会ってしまったらそこから罪悪感が生まれてしまうからだ。それと同じだ。つまりそのオリジナルの家族達にとってお前は、家畜以下の民芸品レベルの存在だと言う事だ!」
「やめろ、やめてくれ。そんな事を言われたら、その日を楽しみに生きてきたツインちゃんの心が壊れてしまう……だからやめるんだ!」
「そんな血も涙も無い鬼のような奴らに愛情を抱くなど滑稽だし言語道断だぜ。恨みこそすれ愛情を持って接する価値はその家族もどきには最初から無いと俺は思うがな。だからそのようなありもしない幻想は、希望は抱かない方がいいと思うぜ。正直見ていて痛々しいわ!」
「おい、いい加減にしろ!」
ラエルロットの制止も聞かずに自分が思っている事を素直にぶつける耳長族の青年エドワードは厳しく小馬鹿にしたような事を言いながらもどこか悲しげに聖女・ツインの顔を見るが、そんな対照的な二人の言動にめげること無く聖女・ツインははっきりとした口調で言う。
「ええ、もしかしたらそうなのかも知れない……私は誰にも愛される事のないただのいらない存在なのかも知れない。でも……それでも……それでも……私はその僅かな望みを、希望を信じて外へと出るわ。そしてもしもそのオリジナルの家族達に会う事ができたら私は心を込めて言ってやるの。私はあなた達を恨んではいないって……愛しているって……だからその私の一方的な思いだけは本物だと言う事を、是非ともその家族に届けたいの。もしかしたらただの迷惑かも知れないけど、嫌われているのかも知れないけど……言うだけならただだから別にいいですよね。だってこの世に生を受けて以来、初めてそのオリジナルの家族からお手紙と写真を貰った時、私は本当に嬉しかったんだから。だからこの想いを届けに行くの。ただ純粋に想いを伝えたいの。この想いこそが今の私の生きる意味であり、渇望であり、そして希望なのだから!」
「生きる意味か……それが分かっていて、あえて会いに行こうとしているのか。その先には落胆と絶望しか待ってはいないと言うのに……その事実をあえて自ら受け止めに行くと言うのだな。ハハハハ、なるほどな、案外お前がもしもそのオリジナルの家族達と会うことができたら、お前のその純粋な思いを知ったその家族達は一体どんな顔をするのか見物ではあるかな。お前のその純粋な愛が、思いが、まるで合せ鏡となってその醜き心を持つ者達の姿を嫌でも垣間見る事になるだろうぜ。お前にその気は無くとも、その家族はお前に会った事でその罪悪感から、もしかしたら一生苦しむ事になるかも知れないな。そんな想いを直接聞いてしまったら、普通の心ある人間ならまず後悔は避けられないだろうからな」
「私に会ったらそのオリジナルの家族達は傷付きますか。悩みますか。私としては彼らを傷つける気は全くないのですが。ただ私は、私という存在を作る為に多額の資金を出してくれたオリジナルの少女の家族達や……サンプル体の仲間達や、テファお姉様や、ラエルロットのお兄さんや、蛾の妖精のルナさんや、ミランシェさんに会わせてくれて、ありがとうと伝えたいだけなのに」
純粋かつ強い、その思いを知った耳長族のエドワードは心の底から笑いながらも、そのどこか優しげな笑みをツインという少女に向ける。
「ハハハハ、面白いなお前、それにいい覚悟だ。お前は見かけによらず強い少女のようだな。少しお前に対する認識を改めないとな。Cランクの力を持つ聖女との話だが、その精神力はもう既にAランクの聖女に匹敵するほどの強い慈愛と希望の力を持つ少女である事を実感するよ。しかも辛い出来事や困難を乗り越える事のできる強い意思と勇気も併せ持っている。面白い、お前は中々に面白いぞ!」
「耳長族のエドワードさん?」
「そんなお前ら二人は果敢にも俺に挑み、りっばに三分という時間を越えて約五分間時間を見事に稼いで見せたではないか。にも関わらずだ、あの黄金色の長い髪を持つ聖女はどうやら一人で逃げ去ってしまったようだな。三分間だけ時間を稼いでくれとか言って地下の下水道に降りたはずだが、五分経っても未だにその姿を見せはしないではないか。と言う事はお前達……二人を囮にして、あの特Aランクの聖女は、近くにいたあの蛾の妖精と共に下水道から遠くに逃げ去ったと考えるのが普通だろう。まあ極めて稀で特殊な力を持つ特Aランクの聖女がその安全性を保つために、使えないCランクの聖女とただの平民の為に命を賭けて戦う事は合理的に考えてあえて避けたのかもな。つまりはお前達二人の命よりも特Aランクの聖女の存在価値の方が明らかに上だからな、これからの世界に対する貢献度を考えて、あえて逃げたのも頷ける。賢明な判断だ。あの聖女はこの俺が持つ聖剣チャームブレードの特質した力にどうやら気づいていた節があるからな。なら逃げて当然と言った所か。この剣の前ではたとえどんな力を持つ聖女でも切られたら、その自我を保つことはまずできないのだからな!」
「聖剣・チャームブレードだとう……まさかお前は、十二人いる黒神子の中の一人の眷属だとでもいうのか?」
「さあ、それはどうかな。別に黒神子の眷属じゃなくとも、あらゆる召喚術で召喚した悪魔や魔神との契約や、隠しダンジョン内でのボス戦討伐の際の宝物の一つの品として、探(非常に困難ではあるが)聖剣や魔剣といった類いの法具の入手は可能だろ。どこかで聞いた話では、俺が持つこの聖剣チャームブレードはどうやらこの世界には複数存在するという噂だ。だから黒神子の眷属だけが持つ唯一無二の法具では決して無いのだよ。わかっていただけたかな」
「マジかよ、そんな危険極まりない聖剣が複数存在するだけでは無く、その気になったらどこかで手に入れる事も可能なのかよ。そんな話しは初めて聞いたが」
そんな話をラエルロットと耳長族のエドワードがする中で、怒りに満ちた表情で立ち上がる聖女・ツインがその視線をエドワードに向ける。
「耳長族のエドワードさん、今のお姉様への侮辱の言葉を撤回して下さい。テファお姉様はどんな事になっても私達を見捨てて逃げたりはしないわ。お姉様はただ優しいだけでは無く、とても頭のいい賢い人なんですから、きっとあなたに打ち勝つ対策を考えているはずです」
「ふふふふ、そんな対策がある訳がないだろ。俺はレベル90の身体能力を持つ最強の魅惑の剣士・耳長族のエドワードだぞ。そんな俺にそのテファとかいう聖女が(身体的に)勝てる訳があるまい。彼女がいくら特Aランクの聖女でもその身体能力のレベルは恐らくはレベル1だからな。特別な訓練を受けているならそのレベルを上げた状態で聖女になることも可能らしいが、先程パッと見た所彼女のレベルはやはりレベル1だったからその力は普通の小娘となんら変わらないと言う事だ。となればやはり彼女もまた自らの聖女の力に頼った戦い方をすると思われるが、その時は彼女が聖女の力を発動するよりも早く動いて、その首を切り飛ばしてやるよ。まあ、それが所見でできなかったその時は、あの神聖・白百合剣魔団に所属をしていたAランク聖女にして超重力使いのミレーヌと呼ばれていたあの少女を倒した時のように、また人質を取って、そのテファとかいう聖女もこの聖剣チャームブレードの毒牙に掛けてやるとしよう。俺は自分の任務を遂行する為だったら手段は選ばないからな!」
「お姉様は来る、絶対に来るわ。そしてそんな邪な考えでその長剣を振るうあなたにお姉様は絶対に倒せないわ!」
「ハハハハ、大した信頼関係だな。なら先にお前がこの聖剣チャームブレードの毒牙に掛ってみるか。この剣でお前を殺してから復活させて、そのお前にそのお姉様とやらの寝首を掻かせるのも一興かもしれんな。信じていたお前に後ろを取られる、そのお姉様の顔が目に浮かぶぜ!」
「この外道が、私に近づかないで!」
「くそぉぉ、エドワード、ツインちゃんに近づくな。まずは俺を倒してからにしろ!」
「ラエルロット、もうお前はお呼びじゃないぞ。弱いんだし、いい加減大人しく寝ていろよ」
聖女・ツインを守る為に素早く前へと突進を噛ますラエルロットに耳長族のエドワードは大きく溜息を付くと素手での攻撃に移ろうと構えるが、そんな三人の耳にうら若い女性の声が飛ぶ。
「遅くなってすいません。大変長くお待たせしました。ラエルロットさん、99754番のツインちゃん、よく耐えて頑張りましたね。ここからは二人に代わって私がこの耳長族の剣士のお相手をしますから、二人は下がって下さい!」
そこに現れたのは下水道に繋がる地下階段から一人で現れた95657番のサンプル体こと、暁の聖女・テファその人である。
テファは周りの状況を確認すると、ゆっくりとその視線を耳長族の青年エドワードに向ける。
「随分お二人を痛めつけてくれましたね。この償いは受けてもらいますよ。耳長族の剣士さん」
「ついに現れたか。逃げずによく再びここに戻ってきたな。お人好しのお優しい聖女は俺には絶対に勝てないという事を、その命を対価に厳しい現実を教えてやるぜ。それにどうやら下に降りたという仲間は見つからなかったようだな。もしかして一人で逃げてしまったのかな……それとも仲間のあの蛾の妖精が代わりにその仲間とやらを今も必死に探しているのかな? まあいずれにしてもだ、一人でのこのこと俺の前に現れた事を今すぐに後悔させてやるぜ!」
白い衣をなびかせながら目の前に立つ暁の聖女・テファに対し睨みを効かせる耳長族のエドワードは、近くにいるラエルロットと聖女・ツインを物凄いスピードであっという間に床へと叩き落とすと、なにも抵抗が出来ずに倒れるラエルロットとツインの二人に、腰から抜いた聖剣チャームブレードの刃先を突きつける。
「動くな、そこから少しでも動いたり、能力を発動させるポーズを取ったらこの二人を殺すぜ!」
とお決まりのえげつない台詞を言ってのける。
ここに圧倒的な力で人質を取る耳長族のエドワードと、今現在絶体絶命の危機を迎えている暁の聖女・テファとの戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
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