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第三章 二人の聖女編
3-40.瀕死と覚悟
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3ー40.瀕死と覚悟
「もう……もうダメ、後十秒で聖女ミレーヌの超重力の神聖力を全て使い切ってしまうわ。せっかくMP回復薬で精霊力を回復したのに、このままじゃ超重力の力で押さえつけていた白いヒュドラが解放されてしまう。もう押さえつけられない!」
バッチン、シュゥゥゥゥゥ!
ついに精霊力を使い果たした蛾の妖精のルナは邪妖精の衣に取り込んでいた超重力の力を全て使い切ってしまう。
超重力攻撃の効力が無くなった事で白いヒュドラは体の自由を取り戻し、大きな土煙を上げながら直ぐに活動を開始する。
ゴッオオォォォォーーン、ゴッオオォォォォーーン!
精霊力を使い果たした事でフラフラと逃げ帰る蛾の妖精のルナと入れ替わるかのように前へと出たラエルロットは黒い不格好な木刀を構えると、迫りくる白いヒュドラに叩き込もうと手に持つ木刀を前へと突き出す。
「伸びろ、黒い木刀に宿る、思いを具現化する苗木よ。奴にこの一撃を直撃させてその思いを読み取るんだ!」
力強く思いを言葉にしたラエルロットは、その思いを届けるかのように黒い不格好な木刀に送る。
その瞬間黒い不格好な木刀の刃先は瞬時に伸び、前方にいる大きな的と化した白いヒュドラの体の一部にその木刀の刃先が豪快にヒットする。
バッキィィィーーン!
「ギッイイィィィィーーィィン!」
その瞬間白いヒュドラの胴体から伸びる無数ある蛇女の一つの頭が行き成り悲鳴を上げると、まるで電波が繋がるかのように呪いを発動させたラエルロットの脳裏に名も知らない一人の少女の記憶が濁流のように流れ始める。
その記憶の中の少女は他のサンプル体の少女達と同じように培養液に満たされた培養カプセルの中で目を覚まし、他のサンプル体の少女達と共に一般的な教育を受け、最後はまるで家畜が出荷されるかのように白いヒュドラの部品の一部に吸収された最後の映像が流れて消える。
まるで消耗品のような非人道的な一人の少女の哀れな一生を目にしたラエルロットは、怒りで体を震わせると、かつては人だった者の集合体でもある白いヒュドラに悲しい目を向ける。
(この白いヒュドラの胴体から無数に伸びている蛇女達は皆元はサンプル体の少女達の成れの果てという事か。くそ、ダクト所長の奴、酷い事をするな。だが安心しろ、俺がこの命を賭けてでも必ずお前たちを安らかに成仏させてやる。とはいえダクト所長の話だとこの白いヒュドラは限りなく不死に近い自己再生能力を持つ古代の怪物との事だから、あの怪物を消滅させるだけの火力とその方法を考えないとな。もうこれ以上、暁の聖女に光の力を使わせる訳にはいかないから、やはりここはできるだけ時間を稼いで、レスフィナの到着を待つのが賢明な判断なのかもな。黒神子でもあるレスフィナならあの古代の化け物を消滅させる方法を何か知っているはずだ。彼女の呪いの血液を操る能力ならあの白いヒュドラの体内に入り込んで、血液に感染し支配をして、その主導権をダクト所長から奪う事ができるはずだ。だからそれまでは俺がこの体を張って白いヒュドラの足止めをしてやるぜ!)
心の中で決意を新たにしたラエルロットは黒い不格好な木刀を振り上げると、物凄い気合いを込めながら白いヒュドラの元へと走り出す。
「もうこれ以上、前に進ませはしないぞ。これでもくらえぇぇぇ、横なぎからの中段の突きだぁぁぁ!」
走りながらも手に持つ黒い不格好な木刀を突き出すラエルロットに、白いヒュドラは心の一部を覗かれた事に警戒したのか、近距離から繰り出す接触攻撃ではなく、長距離から打ち出される権能攻撃で迎え撃つ。
「うっわあぁぁぁぁーー、風が、物凄い突風が襲ってくるぅぅぅ!」
物凄い風を生み出す風の権能攻撃で豪快に吹き飛ばされたラエルロットは、勢いのままに後ろから壁へと叩きつけられる。その瞬間手に持つ黒い不格好な木刀はどこかへと吹き飛び、まるで壊れた人形のようにあっけなくその場へと崩れ落ちる。
ドカッ、バキン、ズカン、ボッキン、ザックン、バッタン!
「ぐっわあぁぁぁーーぁぁ!」
「ラエルロットさん、大丈夫ですか!」
自分の体の異変をも帰り見ず、慌ててラエルロットの元へと駆け寄る暁の聖女テファはうつ伏せに倒れるラエルロットを抱き起こすと泣きそうな顔をしながら本気で心配する。そんな二人を守るかのように白魔法使いのタタラが爆裂魔法でもあるマジックミサイルを連発し、その横からは異世界召喚者の魔法剣士の女性が腰に下げた(細身の長剣)レイピアを引き抜くと物凄い速さで白いヒュドラから伸びる三体の蛇女の体を切り裂く。
「この怪物め、テファニアの体を返しなさい。くらえ、爆裂小規模魔法、マジックミサイル!」
「受けてみよ、私のレイピアから繰り出される剣速による華麗な剣激の舞を!」
ドッカアァァァァーーン、ドッゴォォォォォォーーン!
だがマジックミサイルの火力が足りないのか白いヒュドラの体は焼き付き破損するどころか傷一つ負う事なくその美しさを保ち。異世界召喚者の魔法剣士が切り付ける素早い斬撃は、いくら切りつけてもその傷口は瞬時に再生していく。
無謀にも懲りずに戦いを挑む愚かな二人の女性に対し、白いヒュドラはお返しとばかりに神聖力から連なる様々な権能攻撃で応戦する。
ズッゴゴゴゴゴーーゴゴゴゴゴゴゴーーィィン!
「くそ、やはりダメか。攻撃系の魔法は、私はこのマジックミサイルしか使えないし、このままじゃ手詰まりだわ。本来私は攻撃型の魔法使いじゃないからどうする事もできないわ。それにもうMP回復薬も無いし、このままじゃ魔力も尽きちゃうわ!」
「私もよ。このフロアにいるゾンビの群れを屠る為にHP回復薬とMP回復薬の全てを使い切ってしまった。せっかくあなたから貰おうと思っていたのに、宛が外れちゃったじゃない。こんなんじゃいずれは疲弊してみんな全滅してしまうわ!」
白魔法使いのタタラと異世界召喚者の魔法剣士が苦戦を強いられる中、強い突風による攻撃で体を壁に叩きつけられたラエルロットは(打撲により)大きく傷つき、意識を失う。
戦う度に白魔法使いのタタラの魔力は徐々に消耗し、異世界召喚者の魔法剣士の女性に至っては暁の聖女を助けたばかりにもう既に魔力が無く、素早さと剣技だけで無謀にも終わりの見えない戦いを強いられる。そして初見で白いヒュドラの足止めに貢献した蛾の妖精のルナはもう既に精霊力がなく、その為に邪妖精の衣を展開する事もできない。そう今現在唯一この場で戦えるのは暁の聖女テファ一人だけである。
暁の聖女テファは未だに意識朦朧のラエルロットを強く抱きしめると、目に一杯涙を溜めながら静かに感謝の言葉を贈る。
「ラエルロットさん、私のわがままに付き合ってくれて本当にありがとうございます。あなたの愛ある優しさと希望溢れる勇気に元気づけられて、私もどうにかここまで辿り着く事が出来ました。私がこの世に生まれて幾多の辛い事も悲しい事も確かにありましたが、幾人もの優しい人達に助けられ、そして知り合う事も出来ましたから、それだけで私の心は救われ暖かな気持ちになりました。人は泣いた分だけ優しくなれる、笑った分だけ幸せになれるのだと誰かが言っていましたが、ラエルロットさんの何事にも諦めない頑張りや希望溢れる姿勢を見ているとなんだかそう感じてなりません。知らず知らずのうちに私にも勇気と希望が湧いて来た物です。そんな憧れのラエルロットさんに近づき、こうやってお知り合いになれただけでも私は幸せです。もう何も悔いはありません。なので最後はこの命を引き換えにラエルロットさんを、私の大好きな人達を守って見せます。ああそれと、もしも奇跡的にテファニアさんが助かった時はどうか優しく迎え入れてあげて下さい。きっと彼女も人の情けや優しさに触れあってその大切さに気付く事ができれば、心を入れ替える日がもしかしたら来るかも知れません。そしてラエルロットさんが誰もが認める本当の勇者になれる日が来る事を私は信じています……いいえ違いますね、ラエルロットさんはもう本当の勇者です。正義の心で悪に立ち向かい、救われない人達の為に行動し涙を流す事ができるのなら、それはもう立派な勇者なのです。少なくとも私はそう思います。私はあなたの姿勢を初めて見た時からあなたを本物の勇者だと認めていました。さようなら私の愛した勇者様、あなたの今後のご活躍と幾多の試練が待ち受ける旅の無事を心から祈っています!」
耳元で唇を這わせながらにこやかにそう言うと暁の聖女テファは静かに立ち上がり、後ろにいるラエルロットを白いヒュドラから守りながら堂々と立ちふさがる。
「さあかかってきなさい。実験管理室から出た通路の外でなら存分に暁の聖女の力を振るう事が出来ます。この最強最高の最後の力で、救われない魂を幾つも持つ白いヒュドラをこの世界から完全に消滅させます!」
「「ギッイイィィィィーーィィン、ギッイイィィィィーーィィン!」」
両手の手のひらを胸元で合わせると心の中で今までにない程の強い願いを込める。その瞬間テファの体はきらびやかで美しい大きな光に包まれて行き、暖かな光が全てを覆っていく。
光の力が膨張し瞬時に広がるその様を見ていた白魔法使いのタタラは物凄く焦りながら、近くにいる異世界召喚者の魔法剣士に向けて叫ぶ。
「こ、これはやばい、もうこの光からは逃げられない。異世界召喚者の魔法剣士さん、目をつぶって地面にうつ伏せになりなさい。あの光のダメージを最小限にするにはもうそれしかないわ。まさか味方である私達をも巻き込んで、暁の光の能力を発動させるだなんて、余程切羽詰まっていたのね。もうこれ以外にラエルロットさんを救えないと思ったのかもね。つまりは彼女の体の崩壊が近いのかも」
「ふざけんな、それに巻き込まれたこっちはいい迷惑よ。でも仕方が無いわね、こうなったらあなたの指示に従うわ。白魔法使いのお嬢さん」
「でも恐らくは大丈夫よ。一番近くにいるラエルロットさんを巻き込んでの能力発動だから、きっと味方である私達は除外されるはず……きっとそうよ。そう信じるしかないわ」
「なによ、そのあやふやな言い方。あなたは暁の聖女の仲間じゃないの?」
「仲間と呼ぶには日が浅すぎるし、ろくに話もしたことがないわ」
「マジかよお前、なら私達はここで終わりかも知れないじゃない。死んじゃう、この世から消えて、文字道理亡くなってしまうわ。うわあぁぁぁーーぁぁ!」
暁の聖女の力が発動するのと同時に白魔法使いのタタラと異世界召喚者の魔法剣士の女性は直ぐに固く目を閉じ、そのままうつ伏せになり。蛾の妖精のルナはその小さな体を活かして、光が届かない何かの機材の中へと直ぐに逃げ込む。
そして少し離れた所にいるはずの言霊の聖女ツインと小撃砲使いのミランシェの二人は、戦いの場所を移したのか、その場にいるはずのダクト所長と共にいつの間にかこの場所から離れたようだった。
戦う条件が揃った暁の聖女テファは最後の締めとばかりに更に光の力を強めるが、その度に体中に光の亀裂が走り、その亀裂はついには顔を除いた体全体に広がってしまう。
ピキピキピキピキピキーーピリィン、パリパリパリパリン!
「うう、やはり体の崩壊は近いですか。どうやら私もここまでのようです。私が操る暁の力にこの体が耐えられなくなる前に、白いヒュドラとは早く決着をつけなくてわ」
暁の聖女の光を浴びながらも反撃とばかりにいろんな権能攻撃を繰り出す白いヒュドラだったが、その多彩溢れる様々な攻撃は暁の聖女の体に直撃する前に全てその場でかき消えてしまう。
危機感溢れる恐ろしい光を打ち消す為に不死身の力を持つ白いヒュドラは必死にも無駄な抵抗を繰り返していたが、時間切れとばかりについには終わりの時を迎える。
暁の聖女を中心に光り輝いていた黄金色の光の粒子は最高潮に色濃くなり、まるで全てを浄化するかのように辺り一帯を照らし尽していくのだった。
(だ、駄目だ……テファ……まだ消えるな。死なせはしないぞ……俺はまだ君に、お日様を……暖かな太陽を見せてはいないぞ……だからまだ諦めるな……望みは絶対にあるはずだ。動けーーぇぇ……動けーーぇぇぇ……俺の体よぉぉぉ!)
「もう……もうダメ、後十秒で聖女ミレーヌの超重力の神聖力を全て使い切ってしまうわ。せっかくMP回復薬で精霊力を回復したのに、このままじゃ超重力の力で押さえつけていた白いヒュドラが解放されてしまう。もう押さえつけられない!」
バッチン、シュゥゥゥゥゥ!
ついに精霊力を使い果たした蛾の妖精のルナは邪妖精の衣に取り込んでいた超重力の力を全て使い切ってしまう。
超重力攻撃の効力が無くなった事で白いヒュドラは体の自由を取り戻し、大きな土煙を上げながら直ぐに活動を開始する。
ゴッオオォォォォーーン、ゴッオオォォォォーーン!
精霊力を使い果たした事でフラフラと逃げ帰る蛾の妖精のルナと入れ替わるかのように前へと出たラエルロットは黒い不格好な木刀を構えると、迫りくる白いヒュドラに叩き込もうと手に持つ木刀を前へと突き出す。
「伸びろ、黒い木刀に宿る、思いを具現化する苗木よ。奴にこの一撃を直撃させてその思いを読み取るんだ!」
力強く思いを言葉にしたラエルロットは、その思いを届けるかのように黒い不格好な木刀に送る。
その瞬間黒い不格好な木刀の刃先は瞬時に伸び、前方にいる大きな的と化した白いヒュドラの体の一部にその木刀の刃先が豪快にヒットする。
バッキィィィーーン!
「ギッイイィィィィーーィィン!」
その瞬間白いヒュドラの胴体から伸びる無数ある蛇女の一つの頭が行き成り悲鳴を上げると、まるで電波が繋がるかのように呪いを発動させたラエルロットの脳裏に名も知らない一人の少女の記憶が濁流のように流れ始める。
その記憶の中の少女は他のサンプル体の少女達と同じように培養液に満たされた培養カプセルの中で目を覚まし、他のサンプル体の少女達と共に一般的な教育を受け、最後はまるで家畜が出荷されるかのように白いヒュドラの部品の一部に吸収された最後の映像が流れて消える。
まるで消耗品のような非人道的な一人の少女の哀れな一生を目にしたラエルロットは、怒りで体を震わせると、かつては人だった者の集合体でもある白いヒュドラに悲しい目を向ける。
(この白いヒュドラの胴体から無数に伸びている蛇女達は皆元はサンプル体の少女達の成れの果てという事か。くそ、ダクト所長の奴、酷い事をするな。だが安心しろ、俺がこの命を賭けてでも必ずお前たちを安らかに成仏させてやる。とはいえダクト所長の話だとこの白いヒュドラは限りなく不死に近い自己再生能力を持つ古代の怪物との事だから、あの怪物を消滅させるだけの火力とその方法を考えないとな。もうこれ以上、暁の聖女に光の力を使わせる訳にはいかないから、やはりここはできるだけ時間を稼いで、レスフィナの到着を待つのが賢明な判断なのかもな。黒神子でもあるレスフィナならあの古代の化け物を消滅させる方法を何か知っているはずだ。彼女の呪いの血液を操る能力ならあの白いヒュドラの体内に入り込んで、血液に感染し支配をして、その主導権をダクト所長から奪う事ができるはずだ。だからそれまでは俺がこの体を張って白いヒュドラの足止めをしてやるぜ!)
心の中で決意を新たにしたラエルロットは黒い不格好な木刀を振り上げると、物凄い気合いを込めながら白いヒュドラの元へと走り出す。
「もうこれ以上、前に進ませはしないぞ。これでもくらえぇぇぇ、横なぎからの中段の突きだぁぁぁ!」
走りながらも手に持つ黒い不格好な木刀を突き出すラエルロットに、白いヒュドラは心の一部を覗かれた事に警戒したのか、近距離から繰り出す接触攻撃ではなく、長距離から打ち出される権能攻撃で迎え撃つ。
「うっわあぁぁぁぁーー、風が、物凄い突風が襲ってくるぅぅぅ!」
物凄い風を生み出す風の権能攻撃で豪快に吹き飛ばされたラエルロットは、勢いのままに後ろから壁へと叩きつけられる。その瞬間手に持つ黒い不格好な木刀はどこかへと吹き飛び、まるで壊れた人形のようにあっけなくその場へと崩れ落ちる。
ドカッ、バキン、ズカン、ボッキン、ザックン、バッタン!
「ぐっわあぁぁぁーーぁぁ!」
「ラエルロットさん、大丈夫ですか!」
自分の体の異変をも帰り見ず、慌ててラエルロットの元へと駆け寄る暁の聖女テファはうつ伏せに倒れるラエルロットを抱き起こすと泣きそうな顔をしながら本気で心配する。そんな二人を守るかのように白魔法使いのタタラが爆裂魔法でもあるマジックミサイルを連発し、その横からは異世界召喚者の魔法剣士の女性が腰に下げた(細身の長剣)レイピアを引き抜くと物凄い速さで白いヒュドラから伸びる三体の蛇女の体を切り裂く。
「この怪物め、テファニアの体を返しなさい。くらえ、爆裂小規模魔法、マジックミサイル!」
「受けてみよ、私のレイピアから繰り出される剣速による華麗な剣激の舞を!」
ドッカアァァァァーーン、ドッゴォォォォォォーーン!
だがマジックミサイルの火力が足りないのか白いヒュドラの体は焼き付き破損するどころか傷一つ負う事なくその美しさを保ち。異世界召喚者の魔法剣士が切り付ける素早い斬撃は、いくら切りつけてもその傷口は瞬時に再生していく。
無謀にも懲りずに戦いを挑む愚かな二人の女性に対し、白いヒュドラはお返しとばかりに神聖力から連なる様々な権能攻撃で応戦する。
ズッゴゴゴゴゴーーゴゴゴゴゴゴゴーーィィン!
「くそ、やはりダメか。攻撃系の魔法は、私はこのマジックミサイルしか使えないし、このままじゃ手詰まりだわ。本来私は攻撃型の魔法使いじゃないからどうする事もできないわ。それにもうMP回復薬も無いし、このままじゃ魔力も尽きちゃうわ!」
「私もよ。このフロアにいるゾンビの群れを屠る為にHP回復薬とMP回復薬の全てを使い切ってしまった。せっかくあなたから貰おうと思っていたのに、宛が外れちゃったじゃない。こんなんじゃいずれは疲弊してみんな全滅してしまうわ!」
白魔法使いのタタラと異世界召喚者の魔法剣士が苦戦を強いられる中、強い突風による攻撃で体を壁に叩きつけられたラエルロットは(打撲により)大きく傷つき、意識を失う。
戦う度に白魔法使いのタタラの魔力は徐々に消耗し、異世界召喚者の魔法剣士の女性に至っては暁の聖女を助けたばかりにもう既に魔力が無く、素早さと剣技だけで無謀にも終わりの見えない戦いを強いられる。そして初見で白いヒュドラの足止めに貢献した蛾の妖精のルナはもう既に精霊力がなく、その為に邪妖精の衣を展開する事もできない。そう今現在唯一この場で戦えるのは暁の聖女テファ一人だけである。
暁の聖女テファは未だに意識朦朧のラエルロットを強く抱きしめると、目に一杯涙を溜めながら静かに感謝の言葉を贈る。
「ラエルロットさん、私のわがままに付き合ってくれて本当にありがとうございます。あなたの愛ある優しさと希望溢れる勇気に元気づけられて、私もどうにかここまで辿り着く事が出来ました。私がこの世に生まれて幾多の辛い事も悲しい事も確かにありましたが、幾人もの優しい人達に助けられ、そして知り合う事も出来ましたから、それだけで私の心は救われ暖かな気持ちになりました。人は泣いた分だけ優しくなれる、笑った分だけ幸せになれるのだと誰かが言っていましたが、ラエルロットさんの何事にも諦めない頑張りや希望溢れる姿勢を見ているとなんだかそう感じてなりません。知らず知らずのうちに私にも勇気と希望が湧いて来た物です。そんな憧れのラエルロットさんに近づき、こうやってお知り合いになれただけでも私は幸せです。もう何も悔いはありません。なので最後はこの命を引き換えにラエルロットさんを、私の大好きな人達を守って見せます。ああそれと、もしも奇跡的にテファニアさんが助かった時はどうか優しく迎え入れてあげて下さい。きっと彼女も人の情けや優しさに触れあってその大切さに気付く事ができれば、心を入れ替える日がもしかしたら来るかも知れません。そしてラエルロットさんが誰もが認める本当の勇者になれる日が来る事を私は信じています……いいえ違いますね、ラエルロットさんはもう本当の勇者です。正義の心で悪に立ち向かい、救われない人達の為に行動し涙を流す事ができるのなら、それはもう立派な勇者なのです。少なくとも私はそう思います。私はあなたの姿勢を初めて見た時からあなたを本物の勇者だと認めていました。さようなら私の愛した勇者様、あなたの今後のご活躍と幾多の試練が待ち受ける旅の無事を心から祈っています!」
耳元で唇を這わせながらにこやかにそう言うと暁の聖女テファは静かに立ち上がり、後ろにいるラエルロットを白いヒュドラから守りながら堂々と立ちふさがる。
「さあかかってきなさい。実験管理室から出た通路の外でなら存分に暁の聖女の力を振るう事が出来ます。この最強最高の最後の力で、救われない魂を幾つも持つ白いヒュドラをこの世界から完全に消滅させます!」
「「ギッイイィィィィーーィィン、ギッイイィィィィーーィィン!」」
両手の手のひらを胸元で合わせると心の中で今までにない程の強い願いを込める。その瞬間テファの体はきらびやかで美しい大きな光に包まれて行き、暖かな光が全てを覆っていく。
光の力が膨張し瞬時に広がるその様を見ていた白魔法使いのタタラは物凄く焦りながら、近くにいる異世界召喚者の魔法剣士に向けて叫ぶ。
「こ、これはやばい、もうこの光からは逃げられない。異世界召喚者の魔法剣士さん、目をつぶって地面にうつ伏せになりなさい。あの光のダメージを最小限にするにはもうそれしかないわ。まさか味方である私達をも巻き込んで、暁の光の能力を発動させるだなんて、余程切羽詰まっていたのね。もうこれ以外にラエルロットさんを救えないと思ったのかもね。つまりは彼女の体の崩壊が近いのかも」
「ふざけんな、それに巻き込まれたこっちはいい迷惑よ。でも仕方が無いわね、こうなったらあなたの指示に従うわ。白魔法使いのお嬢さん」
「でも恐らくは大丈夫よ。一番近くにいるラエルロットさんを巻き込んでの能力発動だから、きっと味方である私達は除外されるはず……きっとそうよ。そう信じるしかないわ」
「なによ、そのあやふやな言い方。あなたは暁の聖女の仲間じゃないの?」
「仲間と呼ぶには日が浅すぎるし、ろくに話もしたことがないわ」
「マジかよお前、なら私達はここで終わりかも知れないじゃない。死んじゃう、この世から消えて、文字道理亡くなってしまうわ。うわあぁぁぁーーぁぁ!」
暁の聖女の力が発動するのと同時に白魔法使いのタタラと異世界召喚者の魔法剣士の女性は直ぐに固く目を閉じ、そのままうつ伏せになり。蛾の妖精のルナはその小さな体を活かして、光が届かない何かの機材の中へと直ぐに逃げ込む。
そして少し離れた所にいるはずの言霊の聖女ツインと小撃砲使いのミランシェの二人は、戦いの場所を移したのか、その場にいるはずのダクト所長と共にいつの間にかこの場所から離れたようだった。
戦う条件が揃った暁の聖女テファは最後の締めとばかりに更に光の力を強めるが、その度に体中に光の亀裂が走り、その亀裂はついには顔を除いた体全体に広がってしまう。
ピキピキピキピキピキーーピリィン、パリパリパリパリン!
「うう、やはり体の崩壊は近いですか。どうやら私もここまでのようです。私が操る暁の力にこの体が耐えられなくなる前に、白いヒュドラとは早く決着をつけなくてわ」
暁の聖女の光を浴びながらも反撃とばかりにいろんな権能攻撃を繰り出す白いヒュドラだったが、その多彩溢れる様々な攻撃は暁の聖女の体に直撃する前に全てその場でかき消えてしまう。
危機感溢れる恐ろしい光を打ち消す為に不死身の力を持つ白いヒュドラは必死にも無駄な抵抗を繰り返していたが、時間切れとばかりについには終わりの時を迎える。
暁の聖女を中心に光り輝いていた黄金色の光の粒子は最高潮に色濃くなり、まるで全てを浄化するかのように辺り一帯を照らし尽していくのだった。
(だ、駄目だ……テファ……まだ消えるな。死なせはしないぞ……俺はまだ君に、お日様を……暖かな太陽を見せてはいないぞ……だからまだ諦めるな……望みは絶対にあるはずだ。動けーーぇぇ……動けーーぇぇぇ……俺の体よぉぉぉ!)
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